悪人

著者 : 吉田修一
  • 朝日新聞社 (2007年4月6日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022502728

作品紹介

保険外交員の女が殺害された。捜査線上に浮かぶ男。彼と出会ったもう一人の女。加害者と被害者、それぞれの家族たち。群像劇は、逃亡劇から純愛劇へ。なぜ、事件は起きたのか?なぜ、二人は逃げ続けるのか?そして、悪人とはいったい誰なのか。

悪人の感想・レビュー・書評

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  • 「悪人」って、決め付けられる人なんていないんだよなぁ。
    人によって、立場によって、「悪人」はくるくる変わる。

    自分の持っている情報だけで物事を判断するのってすごく危険だなと思った。

    ただ・・・金髪で着古したピンクのトレーナーのイケメンって・・・想像できない。

  • 誰が本当の「悪人」なのか
    確かそんなような帯がついていた気が、、。

    誰が悪人なのか?
    「悪人」と「犯罪者」は違う。
    全てはボタンの掛け違い。
    でも一人の命が絶たれてしまったことに変わりはない。
    そこを美化してしまっては、きっといけない。
    でもボタンがもし掛け違える事無くいられたら。
    「悪人」を演じようとすることのできる清水の優しさ、強さをひしひしと感じるだけにそう思わずにはいられない。
    鶴田の存在がなんだかとても気になる。

  • 映画化されたから話題になっただけでしょ? とずっと思っていて、なかなか手が出なかった。ところが読んでみてびっくり。とんでもない傑作だった。

    人はどうして破滅的な愛に惹かれるのだろうか。思いつくだけでも「ロミオとジュリエット」「ウエストサイド物語」「フレンズ」といった系譜が僕は大好きで、この作品も僕の中ではそれと同じ系譜に含まれる破滅的ラブストーリーの傑作だ。しかもその空虚さとそれに反比例する情熱の激しさのコントラストが出色の出来栄え。こういう愛の形に、僕はずっと憧れている。ないものねだりだ(笑)。

    過去に読んだ吉田修一はそれほど良いという印象はなかったけれど、これはすごい。まいった。謝る。ごめんなさい。登場人物の心象風景に共感しまくりだったせいもある。伏線的なエピソードのからませ方も見事だった。大学生の増尾のキャラがちょっと戯画化されすぎかなとも思ったが、仕方ない。必要悪。クライマックスの舞台が灯台というのもまた泣かされた。

    一瞬だからこその美しさ。大切さ。過ぎてしまえばすべてのものは不確かなものに変わっていく。それでも信じたい。それでも僕は信じたい。

  • 「悪いひとなんかいない。淋しい人がいるだけなんだ。」
    この本を読み終わったときに思ったのは、どうしても出典が思い出せないこのセリフ。

    福岡県と佐賀県の県境の峠で殺された、保険外交員の佳乃。
    ここではないどこかへ連れていってくれる人を探して、現実が見えていない。

    出会い系で佳乃と出会った祐一。
    親に捨てられ祖父母に育てられ、車以外なんの夢も興味も持たなかった。

    出会い系で祐一と出会った光代。
    双子の妹と暮らす家と、職場を往復するだけの毎日。

    佳乃をナンパしたきり忘れていた増尾。
    マンションの最上階に住み、面白おかしく毎日を過ごす大学生。

    「悪人」とはいったい誰のことなのか。

    わかりやすい悪人は佳乃であり、増尾だろう。
    自分より下の人間を平気で見下し、踏みつける。
    人の痛みを知ろうとしない傲慢さ。

    でも佳乃は、多分あと2~3年もしたら現実に戻ってきたのではないかと思う、
    虚栄心は残るだろうけど、あんなに狂おしいほどの上昇志向は治まったのではないだろうか。
    親元を離れて都会に出て、ちょっとちやほやされたくて、でも思うほど華やかな暮らしはできず、少し焦ったのだろう。
    何かに負けたくなかったんだろう。
    本当はごくごく普通の女の子だったはずだ。

    増尾は苦労知らずのお坊ちゃんで、友だちグループのトップに君臨して何の問題もないように見える。
    だけど逃亡生活に脅えていたとき、誰にも相談ができなかった。
    親にも友だちにも、誰にも。
    本当に誰かを必要としていたときに誰もいない孤独。

    もちろん祐一も光代も悪い、ことをしている。
    悪い、自分を自覚はしているが。
    だけどきっと、後悔はしていない。
    なら、彼らだって悪い、人になるのだろう。

    だけどやっぱり圧倒的に、寂しいんだよ、彼らは。

    “寂しさというのは、自分の話を誰かに聞いてもらいたいと切望する気持ちなのかもしれないと祐一は思う。これまでは誰かに伝えたい自分の話などなかったのだ。でも、今の自分にはそれがあった。伝える誰かに出会いたかった。”

    祖父母は祖父母なりに祐一を愛していたと思うのだ。
    けれど老いてきた二人は祐一に甘えた。
    祐一は優し過ぎる。相手の気持ちを慮って行動する祐一の想いは、誰にも伝わらない。

    “祐一って、本当に昔からそういうところがあるんですよ。起承転結の起と結しかないっていうか、承と転は自分勝手に考えるだけで、その考えたことを相手に告げもせん。自分の中では筋道が通っとるのかもしれんけど、相手には伝わらんですよ。”

    佳乃も光代も親に大事に育てられて大人になったと思うのだけど、どうしてか心のどこかがうつろなんだよなあ。
    自分のことも、周囲の人のこともきっと好きではなくて、好きではない部分がどんどん空洞化していくような。

    佳乃の父は言う。
    “今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎったい。大切な人がおらん人間は、何でもできると思い込む。自分には失うもんがなかっち、それで自分が強うなった気になっとる。失うものもなければ、欲しいものもない。だけんやろ、自分を余裕のある人間っち思い込んで、失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を、馬鹿にした目で眺めとる。そうじゃなかとよ。本当はそれじゃ駄目とよ」”

    いつどこで、家族の愛情が届かなくなってしまったのか。

    最後の彼の行動は、彼の優しさなのか、本人の言う通り計算なのか。
    私は優しさだと思ったけど。

    “一人の人間がこの世からおらんようになるってことは、ピラミッドの頂点の石がなくなるんじゃなくて、底辺の石が一個無くなることなんやなぁって。”
    そう思える彼が、計算で逃げたとは思えない。
    いつか彼女に伝わるといいと思う。

    彼らの父がとった行動、祖母の見せた勇気。
    届いただろうか。遅すぎたのか。
    命だけは、取り返しがつかない。

  • 妻夫木聡、深津絵里の出演映画だったかな、程度の記憶があるだけでしたが、最近吉田修一の本を読むようになり、手にした悪人。

    読んで先ず驚いたのが脊振に三瀬に荒江の交差点、普段何気なく目にしている風景が舞台なのには読んでいて不思議な感じでした。

    そして読み進めると、人とのつながりを、人の中にある悲しみ、そして人を好きになると言う事、悪人・・・。

    皆、きっとどこかで悪人ですよね。

    人恋しくなりました。

  • 映画はまだ見れず先に原作をば。
    アッチ系のあんな方面の世界には実際ありうる話なんだろうなと・・・だから自分はソッチ系に行かないよう、いや、子供らをソッチ系には行かせないようにせねばと・・・
    出てくるみんなが悪人であり、被害者であり、もう嫌です。
    本当にありがとうございました。

  • 映画のほうはみていないけれど、予想外の展開の連続でなかなか読みがいがある。プロットは何となく海外の映画作品のような流れを感じた。
    心理描写が抜群にうまいなと思う。さりげない言葉が心情をうまく表していいるようで印象が深い。特に、最後の二行は秀逸だと感じた。

  • 読み終わって最初、祐一と光代のラストが切なく胸に刺さったのだけれど(多分、妻夫木君とふかっちゃんの顔を思い浮かべながら読んでいたせいもある。でも映画未見)、その後じわじわと、人間の業、凡庸さ、汚さ、みたいなのに対する嫌悪感と愛おしさが湧いてきた。2人の逃避行も急に陳腐なものに思えたりして。悪人を辞書で引くと「心のよくない人。悪事を働く人。悪漢。」とあった。結局悪人って誰のことだったのだろう。人を殺した人?人を陥れた人?人を愛しているようで実は自分だけが可愛い人?人を傷つけて平気な人?悪友をつけあがらせておいて怖気づいて善人ヅラしてしまった人?結局、人間誰もが心の中に悪人を飼っていて、それは否定されるものではなく、だからこそ善人でもいられるというか、なんというか…と思考のらせん階段を上ったり下りたりしている最中。凡人が言葉にできないことを言葉にする作家ってすごい。初吉田作品でした。

  • 誰でも悪人に成り得る。少しの気持ちのズレやタイミングで、誰もが予想しなかった本人でさえ気付かない結果が生まれてしまう事がある様な気がしました。心の強い人になりたいな。正義をふりかざす人にはならない様に。
    色々考えてしまいました。
    映画になって長い間読むか迷っていたけど読んで良かった。映画もみて見たくなりました。2013.6.1

  • 久しぶりで男性作家の小説にのめり込んで読んだ。こういう小説が読みたかった!という気持ち。事件に巻き込まれてしまった市井の人々の、様々な気持ちを細かく追っていく。タイトルの『悪人』とは誰なのか問いかける。良作。

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