昭和の戦争―保阪正康対論集

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  • 朝日新聞社
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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022502742

作品紹介・あらすじ

日本はなぜ戦い、なぜ敗れたのか?対米戦争は不可避だったのか?最も優れた戦時指導者は誰か?特攻に反対したただ一人の指揮官とは?第一級の論客たちが、「昭和の戦争」の真実に迫る。

感想・レビュー・書評

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  •  本書は昭和史の権威であるジャーナリスト・ノンフィクション作家である保阪正康氏と12人の作家・歴史家・学者等との「昭和の戦争」についての対談集であるが、さすがにそれぞれに論議に深みがある点があり、おもしろいと思った。
     同じく歴史についての著作も多い半藤一利氏との対談での、対米戦争への分岐点「ポイント・オブ・ノーリターンは1940年9月の日独伊三国同盟であった」との評価は深いものがあると感じた。当時の日本の権力中枢グループのパワーバランスとそれぞれの主張を展開する二人の論議は、当時の日本の権力システムが正常に機能せずに袋小路に陥っている状況を浮かび上がらせている。
     作家角田房子氏との対談で、角田氏は作家の大佛次郎氏の言葉を紹介している。「日本人はバカばかり揃っていたわけではないのに、時に不思議なほどのバカをやる。それは常に日本人の中に強く存在するもの『付和雷同』に支配されるからだ」。この言葉を読んで、今でも日本人はまったく変わっていないのではないのかと思った。
     この昭和の戦争についての対談を読んで、なんとおろかな戦争をおこなったことかと痛感するものであるし、また現在の日本において、いまだにこの戦争についての国民の共通認識がもたれていないことを残念に思うものである。「おろかな戦争」へと進んだ理由も、「共通認識の欠落」の理由や結果も日本人の国民性に原因があるのではないかとも思うが、本書は、それらのことを考えさせてくれる良書であると評価したい。

  • 対談本。

    対談なので、聞いているようにサクサク読めて、わかりやすい。
    保阪さんのスタンスは、変わらないように思うが、対談相手によって引き出されてくるものが違っているので、そういうところが対談の面白いところ。
    対談相手の論点なども、色々で面白く読めました。

  • 対談の内容は、これまで読んできた著者の著作の考え方と変わら(特に目新しいものは)ないのだが、対談者によって、対談の場の雰囲気が違うことが伝わって来て面白かった。

  •  8月は、なんといっても、原爆投下、陛下による玉音放送等のため、戦争にまつわる報道が多い。さらに、暑い暑いお盆をはさむこともあり、いきおい、国民の関心もそちらに行く。

     先般、部屋の整理。何年か前に購入した本が出てくる。

     「昭和の戦争ー保阪正康対論集」
     久しぶりに、ちまちまと読み出す。いくつかの対談をまとめたものでもあり、その対談ごとに読めるのもいい。

     保阪正康という作家は、どちらかといえば、左系(あまり好きな言葉ではないが・・・)ではあるが、取材力、資料の分析力、及びそれらに基づいて近現代史をわかりやすく説明する能力には大変優れている。

     私は、時々、引っかかるところがありながらも、保阪の著作をいくつも読んでいる。

     保阪との対談ではおなじみの半藤一利、福田和也等々との対談集。

     強く印象に残ったところを二つだけ記す。

     先の大戦で一兵士として戦った伊藤桂一氏との対談。伊藤氏は、まさに、下っ端のいつ死んでもおかしくない現場の兵士として従軍した。

     伊藤氏は、戦後、作家として名を成し、直木賞も受賞。戦記物をいくつも残している。

     「こっちで中国軍と戦争していても、50メートル離れたところでは農民が平気で畑を耕して、「あ、あの連中やっとるな」というふうな顔をしていることもしばしばでした」

     「国民党と共産党軍の敵対意識は、日本軍に対する意識よりははるかに強いんですね。(中略)日本軍の前で国民党軍と共産党軍が戦闘を始めることもありました。そうすると日本軍は入っていかないで、黙って見ているわけです」

     その他の箇所を読んでいても、一口に中国軍といっても、さまざまな地域での軍閥というものがあって、そのもっとも規模の大きいのが国民党軍と共産党軍ということがわかる。

     してみると、いつの間にか、ポツダム宣言において中国も名を連ねるようになったのは国民党軍であるが、さらに、いつの間にか、それが共産党軍に変わったということは、つまりは・・・、軍閥割拠の内戦に勝ち残ったのが共産党軍に過ぎないということがよくわかる。

     当時の日本軍は、中国共産党つまり中華人民共和国と戦争をしたのではなく(実際、共産党軍との激しい戦闘はほとんどないという)、国民党軍を中心とした軍閥の一部と戦争をしていたのであり、その軍閥は軍閥で絶えず内戦をしていた・・・。

     そして、日本敗戦後65年経った今でも、その中国共産党軍である中華人民共和国から日本の”侵略性”なるものを口撃されている。あんたらに言われたくないという思いもあろうが、なかなかそれも難しそうな。

     いわゆる、日中戦争なるものは、日本という国家にとっては、なんともやるせない泥沼であった。

     伊藤氏の対談の最後のほうで述べた言葉が象徴的だ。

     「私たちの経験を含め、今次大戦のことは保阪さんや、若い世代の方々に研究・検証してもらって、国民の財産として残していっていただきたいですね」

     次に続く。

     「一国の歴史の中においては、我々のように苦労を担当する世代もあるわけです。だから、僕はこれでいいんだ、と思っています。仲間にも、これでいいんだよ、と呼びかけたいです」

     当事者の言葉であるだけに、なんとも切ないが、歴史をこれだけ俯瞰してみる姿勢も必要なのであろう。

     私たちがしっかり勉強していかないと。

     もう一つは、こんど整理する。今日はここまで。

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著者プロフィール

1939(昭和14)年北海道生まれ。現代史研究家、ノンフィクション作家。同志社大学文学部卒。1972年『死なう団事件』で作家デビュー。2004年個人誌『昭和史講座』の刊行により菊池寛賞受賞。2017年『ナショナリズムの昭和』で和辻哲郎文化賞を受賞。近現代史の実証的研究をつづけ、これまで約4000人から証言を得ている。『陸軍省軍務局と日米開戦』『あの戦争は何だったのか』『昭和史の大河を往く』シリーズなど著書多数。

「2018年 『昭和の怪物 七つの謎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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