袖のボタン

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  • 朝日新聞社
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本棚登録 : 27
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022503145

感想・レビュー・書評

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  • 朝青龍のズル休み問題、かなり泥沼化してきましたね。
    今回の責任は、もちろん本人にある。
    ただ、教える側が、相撲の複雑な性格をうまく伝えきれていない、
    ということも、少しは(少しは、ね)あるような気がします。

    じゃあどうすればいいのか?
    かるた遊びをすれはいい、と丸谷才一さんは言います。
    突拍子もないように聞こえるけど、これがそうでもない。
    力士の醜名は和歌から取られているものが多いんですが、
    こうした名づけ方は「土地への祝福」や「太古まで遡るよう豊饒信仰」にもとづく、という説があります。あります、っていってもこれは丸谷・山崎対談からの受け売りですけど。
    つまり百人一首を通じて日本文化の重層性がしらずしらずのうちに身につくのではないか、というのが丸谷さんの考え。
    『新々百人一首』の著者ならではの意見ですね。

    丸谷さんの新刊『袖のボタン』はこうした独創に満ちたコラム集です。連載当初からむさぼり読んでいましたが、こうして通読してみると丸谷さんの理性、遊びごころ、そして趣味のよさに打たれます。
    ああ、大好きだ~。 

    さて、この本が藤子不二雄とどう関係があるのかというと、赤塚不二夫さんについての章があるんです。少し前に『赤塚不二夫のことを書いたのだ!』という本が出ましたよね。あれの感想です。
    丸谷さんはふだんほとんどマンガを読まないんですが、『赤塚不二夫1000ページ』は書架にある。監修が和田誠さんだから。(『犬だつて散歩する』には赤塚タッチのイラストが一枚あります。御一読を!)

    ……赤塚さんのことを思うと、胸が痛くなります。
    思えば、『まんが道』の面々でマンガ家として大成し、なおかつゆったりした老後を送っているのは、A先生ひとりだけなんですよね。

    手塚先生、石森章太郎さん、そしてF先生は、働いて働いて働いて、六十ちょっとで亡くなってしまった。赤塚さんはあんなだし、つのだじろうさんはあっちの世界にいっちゃってるし……。
    A先生は貴重な例外なんです。

    A先生はね、あまりマンガに執着していないんです。
    そして無理をしない。
    ゴルフ打ったり、友達と飲んだり、
    散歩したり映画みたり、楽しそうに人生送っていてね、
    ずっとこのままでいてほしい、と思うんです。
    あんなに無邪気で、のどかで、無垢な人………。大切にしたい。
    ずっとずっと、大切にしたい。


    2007年8月22日記

  • 大胆で明晰な考察があふれる一冊。
    こちらの教養レベルが試されているよう。
    読み進むにつれて、自分の背丈がどんどん小さくなって、世界がどんどん大きくなっていくような感覚になった。

    もっとたくさんの本を読んで、もっとたくさんの考え方に触れて、そうすればきっとまた違った読み方ができる。
    私なんて、まだまだ。世界は広い、深い、大きい。面白い。

  • 朝日新聞に2004年4月から2007年3月まで月一回連載されていたエッセイをまとめたものである。1925年生まれの著者の多分野に渡る見識が伺え、またその批判精神が光っている。旧仮名遣いで書かれている文章にも趣がある。
    『歌会始に恋歌を』では、「和歌は日本文学の中心であり、さらにその中心は天皇の恋歌であったが、明治政府が天皇を国軍の大元帥とした折に、軟弱なイメージを嫌って天皇が恋歌を詠むことを禁じた為に、現在の歌会始にも恋歌はあまり読まれない。これは近代最初で最大の文学的弾圧である」と批判し、『天に二日あり』では、北朝を廃した歴史の欺瞞を正し、南北両朝の並立を認めようと訴えている。『谷川俊太郎の詠物詩』では『ほん』という詩を紹介し、江戸漢詩の転換期に流行した詠物詩が、格調高い詩を好とする風潮への反動であったことを述べ、『政治と言葉』では現代日本の政治家の貧困な言語能力を憂いている。『日本美とバーコード』では流通の都合で書物にもつけられているバーコードを「便利かもしれないが著しく美観を損ない、醜く凶悪な感じで厭らしく見える」と貶している。本書の裏表紙を見てみると、なるほど本書にバーコードはついていない。

  • 読んでいると自分が高尚な人間になったように錯覚できて好きです。読んでいる束の間だけの、教養人気分。
    せっかく読むならよい錯覚をさせてもらえる本が一番。読み終えて、下世話な自由人に戻るのもまた一興です。

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著者プロフィール

1925-2012。作家・英文学者。山形県生まれ。東京大学英文科卒。「年の残り」で芥川賞、『たった一人の反乱』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。他『後鳥羽院』『輝く日の宮』、ジョイス『ユリシーズ』共訳など。

「2016年 『松尾芭蕉 おくのほそ道/与謝蕪村/小林一茶/とくとく歌仙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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