ブランケット・キャッツ

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022503978

感想・レビュー・書評

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  • 生まれた時からずっと一緒に過ごしてきた毛布が
    2泊3日でレンタルされるブランケット・キャッツにどうしても必要なように

    精神的には猫たちよりたぶんずっと弱い私たち人間にも
    どうしても手放せない記憶や、望みや、帰りつきたい居場所がある。

    かなり前から気になっていた本なのに
    ビデオやDVDのように料金を払って気軽に貸し出される猫、という設定に
    割り切れないものを感じて、なかなか手が出せなかったのだけれど

    たった3日間であっても猫と過ごしたい、と借りていく人たちのほとんどが
    自分の身勝手さをちゃんとわきまえながら、ブランケット・キャッツに縋ってでも
    埋めてほしい淋しさや不安を抱えている人々として描かれていることにほっとした。

    貸し出される猫たちも、ただただお行儀がよくて愛想のいい可愛らしい猫ではなくて
    急に野性的になってネズミを掴まえてきたり、不当な扱いには爪を出して反撃したり
    ベテラン猫ともなると、人間を冷静に観察し、相手の気分に応じたサービスを心がけたり、
    と、猫としての矜持をしっかり保って生きていて

    特に、7篇のうちの1篇『旅に出たブランケット・キャット』が
    アメリカン・ショートヘアのタビーの目線で
    旅人に寄り添い、彼らを守るワーキング・キャットとしての使命に目覚める物語として
    描かれているあたりに重松さんの猫への敬意が感じられ、救われる。

    表紙の真ん中にすっくと立って、静かにこちらを見つめる猫が印象的な
    高野文子さんの装画が物語っているように
    ほのぼのと猫たちに癒されるお話ではなくて、
    ブランケット・キャッツの曇りのない瞳に映された自分を顧みて
    レンタルした人々がほんとうに必要なものに気付かされる、7つの物語。

  • 年末年始に向け、猫関連の本を借りてきた第二弾。
    今まで一度も猫を飼ったことないし、飼う勇気もないのに猫を飼う事にはなんとなく憧れがある。この話は、そんな私のような人間にもぴったりな二泊三日だけ借りる事ができるレンタル猫の話。
    様々な状況で寂しさや虚しさを抱いている、そんな心の隙間を埋めてくれるブランケット・キャット。本当に短い間でも、ペットというか生き物には力があるなぁと思う。嬉しいとき、悲しいとき、切ないとき、楽しいとき、そばにいてくれる小さな存在が大きな力をくれる。この話のように、少しのきっかけが欲しかったり、ほんのちょっと後押しが欲しい時、生き物の力に頼るのは案外有りかもしれない。
    世の中にレンタルペットというのが本当にあるかは分からないが、賛否両論はありそうだが私はあってもおかしくないような気がした。

  • 七つのお話に登場する人物には、レンタル猫が寄り添い、支えてくれる内容だと思いました。
    猫を飼っている一人として、より一層大事に一
    日一日猫たちと過ごしたいと思いました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「レンタル猫が寄り添い」
      レンタル猫?ニャンコを貸し出しする商売が実際にあるのでしょうか?興味津々や。。。
      「レンタル猫が寄り添い」
      レンタル猫?ニャンコを貸し出しする商売が実際にあるのでしょうか?興味津々や。。。
      2012/09/12
    • しをん。さん
      すごいですね!レンタル猫って。
      私も、レンタル猫なら、借りたいなあ・・・などと(●^o^●)
      すごいですね!レンタル猫って。
      私も、レンタル猫なら、借りたいなあ・・・などと(●^o^●)
      2012/10/22
  • 重松さんのお話って、最後には心をホワッとさせてくれる。

    「旅に出たブランケット・キャット」は猫の気持ちも書かれていて1番好き。

    猫って本当に人の心を癒してくれますよね。
    なんでだろう?不思議な生き物。

    もっともっと沢山の話ができそう。

  • 短編集ですが、それぞれの物語に はっきりとしたテーマがあります。
    いじめ、介護、死 等を取り上げています。
    決してハッピーエンドで終わるわけではないのですが、読み終えるとそれに立ち向かう元気が出る作品集です。
    特に最後の2編は胸が熱くなる作品でした。
    重松氏の思いが詰まった一冊になっています。
    これも大事にずっとそばに置いておきたい一冊です。
    ちょっと元気がなくなったときに読み返したいと思います。
    お勧めです~。

  • ねこ好きなので手に取りました。
    ほんわかした話の7つの短編集かと思いきや、意外に重い話でした。

    子供を授かることができない夫婦、会社のお金を横領した末期ガンのバツ3女性、痴呆症のおばあちゃんを施設に入れる家族、リストラされマイホームを手放さなくてはならない家族、それぞれの主人公が抱える暗い現実と向き合う姿がとても痛ましく伝わります。
    ブランケットキャットなるレンタルねこを通じて気がつかされる大切なこと、見いだされるささやかな希望に心が熱くなります。。
    ちょっとだけ、しらけてしまう部分もありましたが物語の最後はすがすがしい気持ちになれます。
     『身代わりのブランケットキャット』が秀逸です。

  • 2泊3日、猫をレンタルできるお店のお話。
    本当に飼う前にお試しで、とかいっしょに旅行に出かけたり、おうちで思い出を作ったり、レンタルの理由はさまざま。

    店長さんが気になる存在だったので、エピソードがあるとよかったのになぁと思った。

    ペットショップにいる動物たちみんな幸せに過ごせるといいなぁっていつもいつも思う。

  • 人ってさ、ほんとに弱くて情けなくてどうしようもない。私たち人類は、世界中の猫たちに、今は亡き猫たちに、感謝してもしきれない。
    返事なんて返ってこないのに。勝手に感情の色をつけているだけなのに。都合のいいように物語をつけているだけなのに。でもその小さなぬくもりが、最後の砦だったりするのだ。そんな弱くて情けなくてどうしようもないわたしたち人間を、猫はどんな目で見つめているんだろう。ありがとうブランケット・キャッツ。わたしたちの安心毛布。不思議な生きものだ、猫は。好き勝手なわたしたちを、許してなんて言えないけれど、君たちが人類を見捨てない限り、わたしも弱くて情けなくてどうしようもない人間なりに頑張ってみようと思う。この恩は、生きてる間に返しきれないんだろうな。そんな人間の自分勝手な考えに見向きもせず、飄々と生きてくれるんだろうな。

  • 七篇収録されており、ほとんどの話が微かな希望を期待させる形で締め括られているが、それが曖昧すぎて、かえってモヤモヤしてしまう。猫の借り手たちも考え方が不器用というより自己中な気がして(最終話の隆平とか)共感できない。それと、重松さんは猫を飼ったことがないんじゃないかと読んでてすごく思った。

  • 自分的には当たり外れのある作家ですが、図書館でなんとなく見つけて借りてきました。
    結論は当たりの方(^-^)/二泊三日で色んな家にレンタルされる猫たち。そんなの実際にいるわけないだろ!と思いながら短編集を読み始めましたが、尻上がりに良くなっていって、最後の方の二篇はちょっとウルッと来ました。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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