語前語後

著者 :
  • 朝日新聞出版
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レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022505132

作品紹介・あらすじ

見た。聞いた。考えた。世界を駆ける画家がつづる253の見聞記。数学者・森毅との"幻の対談"を巻末に収録。菊池寛賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 見た。聞いた。考えた。世界を駆ける画家がつづる253の見聞記。数学者・森毅との“幻の対談”を巻末に収録。菊池寛賞受賞。

  • 短いセンテンスで綴られるエッセイ。
    数学の話はよく分からない部分もあったけど、日常の些細なことや人づてに聞いた話、時事問題への意見など、話題豊富で面白かったです。

  • 京都の善行堂で購入。
    お固い印象なのかと思っていたけれど、良いリズムで時折笑ってしまった。
    巻末の数学者との対談が特に良い。

  • 面白かった カイワレおいしそう。

  • 安野さん自由過ぎる。ツイッターを本にしました、みたいな脈絡のなさ。と思ったら実際、数学系の雑誌のコラム?連載がベースのようだ。

  • 「描くことによって見えてくる」「描くことで分かってくる」 安野さんと森さんの対談が魅力的。大切なことを諭された様。「対談 数学大明神」も読んでみたい 。

  • 小学校に上がる前から安野光雅の絵には馴染んできた。それこそ卵からかえった雛が初めて見たものを親と思い込んでしまうように、安野光雅の絵はこども心に沁み込んでしまっていて、今でも手放しで魅せられてしまう。だからという訳でもないけれど、絵本以外を通して知ることになった安野光雅の人となりからは安心感を感じ取る。そして、個人的な思い出がその後からついてくる。小学校最後の学期を担任してくれた図工のT先生の思い出である。

    5年生から引き続き担任をしてくれたS先生が2学期の途中で突然他界されてしまった。S先生はやさしくて思いやりのある先生で、本当に生徒みんなに慕われていた。その後を急遽引き継いでくださったのがT先生である。先生は授業中、よく黒板にチョークで絵をさらさらと書いて、わかり易く説明してくれた。自分たちが卒業してしばらくすると二科展に入賞されて教職を辞された。もう身過ぎ世過ぎを気にしなくともいい歳にもなられていたのだろう。その先生の印象と、テレビに映る安野光雅の姿はどことなく似ているなあ、とかねてより思っていたのである。

    安野光雅の絵は、それこそ子供向けの絵本からその後の旅の絵本に至るまで、幾度となく目にしてきたけれど、その文章には余りに接したことが無かった。せいぜい「算私語録」を読んだ位で、それとてももっぱら数学的興味の方面から(つまりはかつては自分の母校でも教えていたという森毅に釣られて)手にした本であったのだ。だから、安野光雅のエッセイは今回読むのがほぼ初めてである。結果として、T先生と重なる印象は更に強くなったのだ。

    安野光雅が戦争にとられていたことや、津和野の出身であることは、何となく知ってはいたけれど、小学校の先生をしていたことは今回初めて知った。でも、それは全く意外ではなかった。むしろ安野先生みたいな先生は、T先生の立っていた場所にぴたりとはまるだろうとすら想像していた。

    T先生にも5年生の時から図工の先生として接していたのだが、もしあの最後の学期がなかったら、自分は安野光雅を見てもT先生を思い出したりするようにならなかっただろうと思う。図工の先生としての先生は、どちらかといえばおっとりとして、生徒が作り出すものに目を細めているような先生だった。担任となったT先生は、もちろん、そういう温かみのある態度は変わらなかったけれど、図工以外の授業では、時に自分たちを厳しく叱ったりもした。理科の授業は他のクラスの先生が受け持ってくれたけれど(そこは安野先生とは違うけれど)、国語や社会の授業では、教科書に書いてあることばかりでなく、自分の意見のようなものもやんわりと口にするような面もあった。

    戦争の話が授業で出てくれば、黒板にチョークでさらさらと兵隊さんの絵を描いて「これがゲートルというものですよ」といって、如何にそれをすばやく巻かなければならなかったかというような話をしてくれた(先生もまた戦争を体験した人だった)。中でも印象に残っているのは国語の授業で先生がしてくれた朗読である。ぽつぽつと語られる話の面白さ、そして最後に待っていた急展開(後にそれが芥川の「魔術」であることを知り、先生の感性の豊かさに改めて感銘を受けたのだった)。すっかり魅了され、それが今の自分の本好きを決定づけたとさえ思う。

    そして、この「語前語後」を読んで、やっぱり、T先生のことを思い出したのである。この本の中の安野光雅は世の中の腑に落ちないことを色々と指摘して、自分はこう思うのに、と感慨を抱く。言っていることは厳しいが、その口調は決して辛辣に響かない。まるでやさしく諭す教育者のようである。その口調はやはりT先生の姿を彷彿とさせるのだ。そして安野光雅の立っている位置の潔さに、改めて清々しさを感じ取ってしまうのである。

    T先生は、卒業式間近の自分たちを最後に広い河原に散歩に連れて出してくれた。無邪気に走り回る子供たちを尻目に、一人高い土手の上で先生はじっと厳しい顔をして立っていた。何故か自分はその姿を遠くからカメラにおさめたのだった。今は手元には無い一葉の写真に写ったT先生の、その身を切るような寒風の中に立つ姿のイメージは、やはり安野光雅の潔さとどこかでつながっていることを、このエッセイの中で発見したのだった。

  • 著者との世代GAPからか、理解が難しかった。

  • 非常に優れた253のコラム。気張ったところが無く自然体で、常識的でありながら鋭い視点にドキッとさせられる。最後に掲載された数学者森毅との対談もまた素晴らしい。1980年の対談で一冊の本になった残りの部分だということだが、次々と展開するテーマのどれも珠玉で考えさせられる。モノの見方・考え方が根本的に変わってしまうような一冊だ。「君は大丈夫か」

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著者プロフィール

安野 光雅(あんの みつまさ)
1926年、島根県津和野町に生まれる。BIB金のリンゴ賞(チェコスロバキア)、国際アンデルセン賞、講談社出版文化賞、菊池寛賞などを受賞。1988年紫綬褒章を受章し、2012年文化功労者に選ばれる。
主な著作に『ふしぎなえ』「『旅の絵本』シリーズ(全8巻)」(福音館書店)、『本を読む』(山川出版社)、『小さな家のローラ』(朝日出版社)などがある。いまなお『旅の絵本Ⅸ』、『いずれの日にか国に帰らん』など新刊を続々刊行。ほかにも多くの書籍の装丁を手がける。
2001年、津和野町に「安野光雅美術館」、2017年、京丹後市の和久傳の森に「森の中の家 安野光雅館」が開館。

安野光雅の作品

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