八番筋カウンシル

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.34
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  • (6)
本棚登録 : 350
レビュー : 85
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022505293

作品紹介・あらすじ

小説の新人賞受賞を機に会社を辞めたタケヤス。実家に戻り、家業を継ごうと考えはじめるヨシズミ。地元の会社に就職するも家族との折り合いが悪く、家を買って独立したいと考えるホカリ。幼なじみの3人が30歳を目前に、過去からの様々な思いをかかえて再会する。久しぶりに歩く地元の八番筋商店街は中学生の頃と全く変わらないが、近郊に建設される巨大モールにまつわる噂が浮上したことで、地元カウンシル(青年団)の面々がにわかに活気づく。そんな中、かつて商店街で起こった不穏な出来事で街を追われたカジオと15年ぶりに再会し…。生まれ育った場所を出た者と残った者、それぞれの人生の岐路を見つめなおす終わらない物語。

感想・レビュー・書評

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  • 以前、津村さん自身が失業中に実家(祖父)の店の在庫処理のために商売をしていた、と対談で読んだことがある。その頃の経験が盛り込まれているであろう、シビアな商店街もの。
    普通、さびれた商店街に若者が戻り商売をする、というと昔ながらの商店主たちとのハートフルな触れ合いものや熱血感動ものになりそうなのに、それぞれの大人の嫌な思惑が入り乱れ、当の主人公たちも冷静で現実的。事件があり、一応の解決があったり、生き別れの親子の再会があったり、エピソード的にはドラマチック要素があるのに、どうも温度が低くて現実的なのはさすが津村さん。一筋縄ではいかない読み応えのある作品だった。
    それにしても、津村さんの描くアラサーの人達は厳しい境遇なのに、みんな堅実で真面目だなあ、と思う。
    ふらふらといい加減に生きる人への憧れや苛立ちがどこかにあるのかもしれないけれど、そうはできない堅実さが滲み出ている。仕事を続け、生きていくのは辛いし大変だけど、真面目に生きるって悪くないな、と思う。

  • 自分が中学生だった時、どんな子供だっただろう。
    子供だと言われ、自分に決定権は与えられず
    高校受験で人生のすべてが決まってしまうのだ、と思っていた。
    八番筋カウンシルも、そんな無力な子供時代を送ったタケヤスが主人公の話だ。
    八番筋カウンシルといわれるさびれかけた古い商店街は、妬みも嫉みもあるしがらみたっぶり、人間関係の濃い場所である。タケヤスはそんなところで育ち、そして無職になり戻ってきた。
    無力な子供は、理不尽な大人の暴力を黙って耐えるしかなく、大事な友人であるカジオが母親の職業のために街から弾き出された時も、見ているしか出来なかった。

    大人になったタケヤスは、無力な自分から脱却しようと足掻く。濃い人間関係に絡めとられまいとする。
    子供時代は何もできなかった自分から、カジオに関わり父親に関わり、成長しようとする。
    その姿が非常に眩しい。
    この小説は、作者から成長しようとする者に対してのエールだと思う。

  • 津村さんの作品は、どこが面白いのかと訊かれても、はっきり答えにくい。でも、はっきり言えるのは、面白いということだ。会社員や働く人を描くことが多い伊井直行さんの作品もそうだが、気付くと読み耽っている。

    3人の元同級生たちが自宅兼店舗がある商店街で日々暮らしている。30歳に近づきつつある3人の生き方は3者3様で、それなりに考え方はよじれている。そのよじれ方をどう思うかで、本作に対する感想は異なるだろう。自分はばっちりだった。でも、どうしてなのか分からないから★★★★。

    • mayuotukaさん
      どこが面白いのかはっきり答えにくいって、コメントとってもいいなって思います。私もばっちりでした!!
      どこが面白いのかはっきり答えにくいって、コメントとってもいいなって思います。私もばっちりでした!!
      2014/03/18
  • 何気ない日常を書くのがうまいな~と思い図書館から借りてくる。今回のは、特に思うところがあるわけでもなく、
    商店街など狭い地域でそれぞれが商売という共通項があって生活していたら、こんな関係になるのかな?
    足並みそろえてとか、みんなと一緒とか、団結とかってのはあたしには無理だわ。

  • 津村さんも、本質がぶれない人だなと思う。

    誰かを罵ることは簡単で、馬鹿にすることも実は簡単だ。
    でも、大人の汚さ、無神経さを嫌というほど味わった主人公たちは
    そういうことをしない。それは、その人にも、一皮剥けば
    「やんごとなき事情」がびっしりと詰まっていると感じているからだと思う。

    津村さんの描く主人公はそういう姿勢を貫いているから、
    だから読んでしまう。理由はそればかりではないけど。

  • とりあえずリアル。「マンガみたいな」とか「ドラマみたいな」、「小説の中では」そういうのの逆。全部リアルな日常。主人公のタケヤスに感情移入ができる。ああ、わかる、そうだよねー実際、と思う。人間のリアルさがあまりに普通に描かれすぎて、淡々としているため、自分自身の日常に感じてうんざりしてきて途中で読むのをやめたくなるほど。けどなぜか最後まで読んでしまう。読んだ後には、自分の何気なくてとるにたらない日常も、まあこんなもんかーがんばるかなーと思える。最後の最後に描かれるちょっとした明るさがいいなあと思う。

  • 近くにショッピングモールが誘致されようとしている商店街で、青年会=通称カウンシルが夜な夜な身のない話し合いをつづける。なんとなしに参加する出戻り無職の主人公は、ゆるゆるとしたその廃れつつもそれなりの活気を持っている町で過ごすうちに、自分の過去と向かい、自身と向き合っていく。そのゆるやかな日々を現在と過去の二面から、ゆっくりと、とつとつと綴っていく。中盤まではそのとらえどころのない茫漠とした描きかたに、はがゆいような眠たげな印象を持っていたのだけれど、やがて終盤にかけて、過去があたらしいかたちを伴って現在のまえに舞い戻ってくることによって、未来へとつなげていく流れに、ある程度のカタルシス、大人が大人として一歩を踏み出す瞬間があることを知らされる。あたりまえの日常のなかにある、人々の意思の強さと弱さを感じ取った、そんな作品でした。

  • とにかく好きな作家さん。理解できないし、理解されない。つらく、苦しく、抗し難い理不尽ばかりの社会でもがく、偏屈に見えるけど実は素直な登場人物が愛おしい。
    地域社会のじめっとした閉塞感と、小学校・中学校時代の子供の人間関係の残酷さがよく似ているという感覚は、誰にも既視感があるのではないか。とはいえ、育まれた町や子供時代の人間関係は切っても切れないものであるし、懐かしさや、自分のルーツとしての大切さも感じなくはない。実に厄介なものである。
    30歳になっても思い出せば目を背け、悔しさや恥ずかしさで叫びたくなるような、子供時代の苦い思い出の一つや二つ、あってもおかしくないのだけれど、年を取った自分には新しい視点、異なる解釈を持つ力が備わっていて、それがまさに「成長」と呼ばれるものなのかもしれない。気分はずっと学生のままであったとしても。
    ラストはなかなか爽やかで、大人になってよかったー、と思える結末。若さが褒めそやされる日本文化(特に女子は)の中で、もっともっと、年を取るってことは結構いいぞ、子供より大人は楽しくて幸せだぞ、と胸はって言える自分でありたいです。はい。

  • このひとの小説を読むと、毎回「読ませてくれる」なあと思う(まだ2つしか読み終わっていないけれど)別に作風が明るいとかおもしろいとかそういうわけでもないし、むしろ小説の世界から漂ってくる雰囲気は陰欝としたものなんだけど、なぜか惹かれてしまう。そして読み終わったときに脱力する。いやなんかすごく疲れたんだけど、でも受け入れることのできる疲れなんだよなあ、なんて。
    この小説の中に出てくるタケヤス、ホカリ、ヨシズミはこの八番筋というところで小さいころから暮らしてきた。彼らが大人となるまで、この場所はなんらかの影響を彼らに与えてきた。外界からシャットダウンされてしまっているような、ちょっと閉塞感が漂うこの場所で、彼らはなにかしらに折り合いをつけて生活していかなければならないことを知っていったのかもしれない。明日はあるけど、希望はないような、なんというか窒息しかけているような、そんな感覚。これもこのひとの小説を読むたびに思うなあ。
    なんだかんだめんどくさくて、しょうもなくて、大人ってこんなもんなんだろうけど、それでも生きているわけで。子供もそれに付き合わなければならないのがあまりにもつらい。あのころすごくむかついていたことも、いまならなんとなくわかってしまうんだろうなあ。年をとるって。

    (246P)

  • 津村さんの本は「ポトスライムの船」を読んで以来、結構はまっています。

    舞台はとある商店街。シャッターでしまっている店もちらほら見える中、昔からの個人のお店がなんとか頑張っているところです。人間関係がかなり密でもあります。主人公たちはそんな商店街の人たちと少し距離を置きつつそこで生活している20代前半の男女。無職の男の子2人と会社勤めの女の子1人。主人公たちの共通点は母子家庭という点です。そういう状況を背景に商店街のあるおじいさんがなくなり主人公たちと商店街の人たちとの関わりが深くなっていき・・・。

    物語は唐突に始まります。なので状況把握にまず時間がかかります。それがクリアできたらすぐに物語に入って行けるかというと、私はちょっと難しかったです。それでも最後まで読めたのは母子家庭を背負った社会的に見れば不幸である主人公たちがどうやって社会の中で生きていくのか、という点に興味があったからです。

    津村さんの本は社会の普通よりちょっと下のほうで頑張っている人たちを描いた作品が多いですね。また働くということも常に主題になっている気がします。そして結末は劇的でなくても少し元気が出るという気分にさせられます。

    色々な人たちがなんとか生きているよ、問題を抱えているのはあなただけじゃないよと言われている気がしました。私にとってこの人の本は生活するための精神的安定剤のようなものになりつつあります。今回も癒されました。

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著者プロフィール

津村 記久子(つむら きくこ)
1978年、大阪府大阪市生まれ。大阪府立今宮高等学校、大谷大学文学部国際文化学科卒業。
2005年「マンイーター」(改題『君は永遠にそいつらより若い』)で太宰治賞を受賞し、小説家デビュー。2008年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、2009年『ポトスライムの舟』で芥川龍之介賞、2011年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、2013年「給水塔と亀」で川端康成賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2017年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞、同年『アレグリアとは仕事はできない』で第13回酒飲み書店員大賞受賞をそれぞれ受賞。
近刊に、『ディス・イズ・ザ・デイ』がある。

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