f植物園の巣穴

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.55
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  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022505880

作品紹介・あらすじ

植物園の園丁は、椋の木の巣穴に落ちた。前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主、烏帽子を被った鯉、幼きころ漢籍を習った儒者、アイルランドの治水神…。動植物や地理を豊かにえがき、埋もれた記憶を掘り起こす会心の異界譚。

感想・レビュー・書評

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  • 全体が「家盛奇譚」のような感覚を受けた。それが1冊となるで、途中、意味がわからなくなってきた。
    「椿宿の辺りに」が、本作の続編で、この作品の最後の2章の意味をもっと正確に知りたくて読んだのだが、そもそも、主人公・佐田豊彦が勤務しているf植物園の椋の木のムロに落ちた。落ちた記憶はなく、物語は歯痛の話から始まり大家の頭が雌鶏であった。そして、向かった歯医者の家内は前世が犬であったということで、時に犬に戻る。洋食屋のスターレストランに勤める年配の女給の名前は御園尾千代といい、オオバコのことをげえろっぱという。この葉で死んだカエルを包むと生き返ると言う。恩師から譲り受けたウェリントン・ブーツがいつのまにか女物の草履となっていたり、草履の代わりに大家から借りた男物の靴が持ち主のところに連れて行ったりと、烏帽子を被った鯉やらナマズの神主がでてくる。

    挙げ句の果てには、幽体分離!ただ、この幽体分離の一説に『ほう』と、面白い表現がある。「その呑気に横たわっている自分の体の傍で、誰かが湿した綿を用いて口元を潤そうと看護に当たってくれている。その女人をよく確かめようとするが、何しろ体がないものだから眼球もない。目を凝らす場合いつも習慣化されていた力の入れ処がなく、焦点の当て方も茫漠として、天井の片隅で焦るばかりだ。」たしかに!よく映画や漫画でみる幽体離脱は体がコピーされたかのように描写されているが、実際には、魂の分離なのだから、実態がないのだ。こんな些細なことに反応してしまう。と、関心しながらも、いつか意味が通じるかもしれないと、意味が全くわからない文章をまるで修行をしているかのごとく(例えば、数学で全く理解不能な問題に出会って、どうにかこうにか解こうとしているかのように)、『幼少期の思い出を夢の中で繋げようとしているのか』と、いう程度でしか理解できなかった。
    読めば読むほどわからなくなり、途中、中だるみをしてしまう。

    「椿宿の辺りに」のキーワードがいったいこの話の中のどこにあるのかと、探るように読んでいたのが、いけなかったのかますますわからなくなり、無にして読み直す。

    何も考えずに読むと、それなりに意味があり面白く、巣穴の世界での奇妙な体験は豊彦にとっての大切な人、大切なものとの交わりである。亡くなってしまった人たちと、巣穴で交わることで、記憶からはじき飛ばされた記憶を正確な記憶として豊彦の心に刻み直す。

    特にカエル小僧が出てきてから、豊彦が幼かった時の忘れていた経験や誤った記憶を正しい記憶として訂正していく。また、カエル小僧の登場も、歯科院で治療していることも、前世が犬の歯科医の家内、雌鶏の頭も全て豊彦の忘れていた記憶に繋がるものであり、記憶を取り戻すために意味があったのだ。ドッペルゲンガーの「ナスベキハイエノチスイ」。そして、為すべきは家の治水。ここに「椿宿の」のキーワードがあった。
    巣穴から戻ってこれたのは、亡き息子・道彦の導きだ。カエル小僧・坊が、豊彦の失っていた記憶を元に戻し、人柄までも変えたのだ。

    が、しかし…道彦がこの時、千代に会うために治水の問題は私の任でないと言うところで「椿宿」を考え「ああ、終わった」と思ってしまった…^ ^

  • 『家守綺譚』『沼地のある森を抜けて』の著者が動植物や地理を豊かにえがき、埋もれた記憶を掘り起こす長編小説。
    月下香の匂ひ漂ふ一夜。植物園の園丁がある日、巣穴に落ちると、そこは異界だった。前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主、愛嬌のあるカエル小僧、漢籍を教える儒者、そしてアイルランドの治水神と大気都比売神……。人と動物が楽しく語りあい、植物が繁茂し、過去と現在が入り交じった世界で、私はゆっくり記憶を掘り起こしてゆく。自然とその奥にある命を、典雅でユーモアをたたえた文章にのせてえがく、怪しくものびやかな21世紀の異界譚。
    「朝日新聞出版」内容紹介より

    なんとも不思議な世界観.

  • まるでうたた寝の夢、の一冊。
    穴、うろが見せてくれる不思議な世界。うたた寝でなければいざなわれないような、そんな夢の世界。

    犬、ナマズ、鯉…自然界の生きとし生けるものを丹念に掬い上げ 光をあてる…梨木さんが描く静かでゆっくり流れるこの世界、この時間がやっぱり好きだ。

    乳歯がもたらす心の奥底と向き合う時間、そして緩やかな覚醒がもたらす二人の時間。摩訶不思議でクスッと笑えて、じんわり沁みて涙して…全てが収まるところに収まった感覚にほっこり。
    良き夢の中に迷い込んだような心地良さと共に読了。

    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      梨木さん一時期大好きでどんどん読んだなぁ。
      この話も読んでるよ!
      懐かしい。
      最初はこの不思議な世界に...
      こんばんは(^-^)/

      梨木さん一時期大好きでどんどん読んだなぁ。
      この話も読んでるよ!
      懐かしい。
      最初はこの不思議な世界に戸惑ったけど、どんどん馴染んでいった気がするよ。
      梨木さんの中でもさらに独特な不思議さだった覚えがある。
      乳歯のとこはとても心に残っているよ。
      ジーンとくるね。
      続編が出るんだっけ?違ったかな?
      2019/05/08
    • くるたんさん
      けいたん♪こんばんは(o^^o)

      うん、あっちで共読確認したよ♪共読うれしい!
      そうそう、私も最初はちょっと退屈、波に乗れなかったんだけど...
      けいたん♪こんばんは(o^^o)

      うん、あっちで共読確認したよ♪共読うれしい!
      そうそう、私も最初はちょっと退屈、波に乗れなかったんだけど、坊が出てきて、正体が、わかった時には涙だった〜
      後半めっちゃ良かったよね♪
      奥様生きてたんだ♡って安心もした♪

      そう、椿宿…だっけ?新刊。
      これで準備運動バッチリだよん♪

      梨木作品はまだまだ未読がいっぱい。
      家守シリーズと「海うそ」がお気に入りかな♪
      2019/05/08
  • 最近のミイラ研究で明らかになったのは、古代エジプトの歴代ファラオの死因(この場合は病死)の中で当時の病死で一番多いのが「虫歯」や「歯周病」がもとになって引き起こされる「敗血症」であったという。それほどまでに歯は重要な器官らしい。

    歯痛に悩む植物園の園丁、佐田はある日巣穴に落ちてしまう。そこは異界への入り口だった・・・。人と動物が楽しく語りあい、植物が繁茂し、過去と現在が入り交じった世界で、佐田はゆっくり記憶を掘り起こしてゆく。

    歯科医の「家内」である犬、ナマズ神主、愛嬌のあるカエル小僧、漢籍を教える儒者、そしてアイルランドの治水神と大気都比売神……。

    妊娠4ヶ月で儚くなってしまった妻の千代や、ねえやの千代の思い出、子供に戻ってしまった身体で辿る記憶の旅。

    混乱と戸惑い。どこまでが現実でどこからがそうでないのか、境目が分からなくなる。川上弘美さんの作品にもこの雰囲気、あるなぁ。

    最後、オシリス神のように復活を遂げる千代。佐田も再生されたのかもしれぬ。


  • 植物園の園丁氏は、赴任したf郷で放置していた虫歯の痛みに耐えかね、f郷歯科を訪れる。そこで歯科医の妻の姿が犬に見え…

    先に『椿宿の辺りに』を読んでしまったので、遅ればせですが。
    まるで他人の夢の中を手探りで進むような感触でした。読み終えてすぐだからか、頭の中にあるその感触を、うまく言葉にすることができません。つまり、そういう小説なんでしょう。夏目漱石の『夢十夜』か、あるいは村上春樹の『海辺のカフカ』を読んだ時の感じに似ているような…
    とにかく、涼しくなったら小石川植物園に行こう‼︎と強く思っています。

  • すみません、ちょっと苦手でした。
    8割方読んのですが、諦めました。
    イメージとしては、クジラアタマの王様、夜は短し歩けよ乙女 のイメージに近いと思いました。ちょっとドタバタですね。

  • 先日読んだ『椿宿の辺りに』の前段の物語ということで再読。
    久しぶりに読んだのだが、前回同様、どうにも入り込めなかった。
    『家守奇譚』は大好きな作品なのだが、似たような話のこちらはなんだろう、主人公に魅力がないのか、物語のあまりのとりとめなさによほど懸命に付いていこうとしないとあっという間に置いてきぼりになってしまう。

    〈f植物園〉の園丁として働く佐田豊彦の、植物園にある大きな木のウロに落ちてからの何とも不思議な旅の物語。
    現在と過去、現実とファンタジー、現実の空間と異空間、この場所とあの場所、様々な相対する場所が行き来する。

    とにかくフワフワしながら必死で物語に食い下がろうと読み進めていくが、終盤近くまで辛かった。
    ところが中盤で登場したカエル小僧の正体が分かってからは、そういうことだったのかとようやく理解。
    幼いころふといなくなってしまった大好きだったねえやの千代、妊娠4ヶ月に亡くなってしまった妻の千代。二人の真相も同時にわかる。

    読み終えてみればホッとするような、一方で切なくなるような。
    豊彦の置き土産が『椿宿の辺りに』で子孫が悩むことになるとは。

  • 植物園に勤める実直そうな主人公。歯が痛くなり、病院へ。そこから、なんとなく時空が歪むような不思議な感覚、出来事が続く…。文体から、大正〜昭和初期っぽいイメージが喚起され、レトロな雰囲気と摩訶不思議な出来事が絶妙に合っている。なんか時系列がぐるぐるするなあ、と思ってたら、最後の方で納得できるエピソードが来て、なるほど!となります。
    夢って、変な出来事が多くても、何故か自分の中では少し理由がわかることがある。思い当たる節があるというか。翻って現実は、見たまま真実を理解してると思ってるけど、実はかなり自分の中で都合のいい解釈をされてる事がある。そういう狭間で何かを落としてしまった主人公が、夢の力を借りて、ゆっくり再生する物語なんだな、と感じました。
    それにしても、この物語は描かれる光景が美しくて、映像化したものも見たくなります。子供たち、読書感想画で描かないかしら。

  • 久々の梨木ワールド。
    どこに連れて行かれるのか想像もつかないけど、最後には、あぁ、よかったと思えるから不思議。

  • 古風な言い回しの文体は嫌いではないしむしろ好きなのだけど、夢と現が奇妙に交錯する展開が何故か非常に眠く感じられてなかなか読み進めることができなかった。でも、坊の正体が分かった途端なんだかすごく切なくも温かい気持ちに。なかなか良いお話しだったなぁ、と^^ できればジ○リあたりの映像作品として見てみたいですね。

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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