f植物園の巣穴

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.57
  • (96)
  • (200)
  • (216)
  • (49)
  • (10)
本棚登録 : 1405
レビュー : 258
  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022505880

作品紹介・あらすじ

植物園の園丁は、椋の木の巣穴に落ちた。前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主、烏帽子を被った鯉、幼きころ漢籍を習った儒者、アイルランドの治水神…。動植物や地理を豊かにえがき、埋もれた記憶を掘り起こす会心の異界譚。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • まるでうたた寝の夢、の一冊。
    穴、うろが見せてくれる不思議な世界。うたた寝でなければいざなわれないような、そんな夢の世界。

    犬、ナマズ、鯉…自然界の生きとし生けるものを丹念に掬い上げ 光をあてる…梨木さんが描く静かでゆっくり流れるこの世界、この時間がやっぱり好きだ。

    乳歯がもたらす心の奥底と向き合う時間、そして緩やかな覚醒がもたらす二人の時間。摩訶不思議でクスッと笑えて、じんわり沁みて涙して…全てが収まるところに収まった感覚にほっこり。
    良き夢の中に迷い込んだような心地良さと共に読了。

    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      梨木さん一時期大好きでどんどん読んだなぁ。
      この話も読んでるよ!
      懐かしい。
      最初はこの不思議な世界に...
      こんばんは(^-^)/

      梨木さん一時期大好きでどんどん読んだなぁ。
      この話も読んでるよ!
      懐かしい。
      最初はこの不思議な世界に戸惑ったけど、どんどん馴染んでいった気がするよ。
      梨木さんの中でもさらに独特な不思議さだった覚えがある。
      乳歯のとこはとても心に残っているよ。
      ジーンとくるね。
      続編が出るんだっけ?違ったかな?
      2019/05/08
    • くるたんさん
      けいたん♪こんばんは(o^^o)

      うん、あっちで共読確認したよ♪共読うれしい!
      そうそう、私も最初はちょっと退屈、波に乗れなかったんだけど...
      けいたん♪こんばんは(o^^o)

      うん、あっちで共読確認したよ♪共読うれしい!
      そうそう、私も最初はちょっと退屈、波に乗れなかったんだけど、坊が出てきて、正体が、わかった時には涙だった〜
      後半めっちゃ良かったよね♪
      奥様生きてたんだ♡って安心もした♪

      そう、椿宿…だっけ?新刊。
      これで準備運動バッチリだよん♪

      梨木作品はまだまだ未読がいっぱい。
      家守シリーズと「海うそ」がお気に入りかな♪
      2019/05/08
  • 最近のミイラ研究で明らかになったのは、古代エジプトの歴代ファラオの死因(この場合は病死)の中で当時の病死で一番多いのが「虫歯」や「歯周病」がもとになって引き起こされる「敗血症」であったという。それほどまでに歯は重要な器官らしい。

    歯痛に悩む植物園の園丁、佐田はある日巣穴に落ちてしまう。そこは異界への入り口だった・・・。人と動物が楽しく語りあい、植物が繁茂し、過去と現在が入り交じった世界で、佐田はゆっくり記憶を掘り起こしてゆく。

    歯科医の「家内」である犬、ナマズ神主、愛嬌のあるカエル小僧、漢籍を教える儒者、そしてアイルランドの治水神と大気都比売神……。

    妊娠4ヶ月で儚くなってしまった妻の千代や、ねえやの千代の思い出、子供に戻ってしまった身体で辿る記憶の旅。

    混乱と戸惑い。どこまでが現実でどこからがそうでないのか、境目が分からなくなる。川上弘美さんの作品にもこの雰囲気、あるなぁ。

    最後、オシリス神のように復活を遂げる千代。佐田も再生されたのかもしれぬ。

  • 先日読んだ『椿宿の辺りに』の前段の物語ということで再読。
    久しぶりに読んだのだが、前回同様、どうにも入り込めなかった。
    『家守奇譚』は大好きな作品なのだが、似たような話のこちらはなんだろう、主人公に魅力がないのか、物語のあまりのとりとめなさによほど懸命に付いていこうとしないとあっという間に置いてきぼりになってしまう。

    〈f植物園〉の園丁として働く佐田豊彦の、植物園にある大きな木のウロに落ちてからの何とも不思議な旅の物語。
    現在と過去、現実とファンタジー、現実の空間と異空間、この場所とあの場所、様々な相対する場所が行き来する。

    とにかくフワフワしながら必死で物語に食い下がろうと読み進めていくが、終盤近くまで辛かった。
    ところが中盤で登場したカエル小僧の正体が分かってからは、そういうことだったのかとようやく理解。
    幼いころふといなくなってしまった大好きだったねえやの千代、妊娠4ヶ月に亡くなってしまった妻の千代。二人の真相も同時にわかる。

    読み終えてみればホッとするような、一方で切なくなるような。
    豊彦の置き土産が『椿宿の辺りに』で子孫が悩むことになるとは。

  • 前半のあの独特な雰囲気にはまれなくて。
    だいたいイメージしてその作品に入り込むのだけど、まったくイメージできなかった。
    難しい言葉が多かったので、私の読解力が足りなかったのだろう。
    ところが、坊が出てきた後半部分からは、すごくのめり込んで、1日で読み切ってしまった。
    坊の正体とかあまり深く考えていなくて、わかった時にはただ素直に感動した。
    そして坊に名前を付けてあげたところでは、坊の嬉しそうな顔が浮かんで少しウルッときて。
    お別れする時には切なくて…。とにかく不思議な本だった。

  • 最初から不思議な話だった。現実なのか幻なのか分からないような世界。そのまま話はどんどん進み、過去に立ち返り忘れていた事を思い出したり、大事な物を見つけていく。
    ずっと、掴み所のない話だと思いながら読んでいたが、読み終わった時に「あぁ、良い話だった」と心から思えた。

  • 古風な言い回しの文体は嫌いではないしむしろ好きなのだけど、夢と現が奇妙に交錯する展開が何故か非常に眠く感じられてなかなか読み進めることができなかった。でも、坊の正体が分かった途端なんだかすごく切なくも温かい気持ちに。なかなか良いお話しだったなぁ、と^^ できればジ○リあたりの映像作品として見てみたいですね。

  • しくしくとした歯の痛みに耐えかねて、ついに歯医者を訪れたその時から、植物園に園丁として勤める「私」の世界はどんどんと位相がずれていくようである。歯科医の「家内」や下宿屋の家主はどうも犬や鶏に見えるようであるし、時間と季節が噛み合わぬ。まるで、自分の歯にぽっかりと空いたうろの中に、自分自身が落ち込んでしまったようだ・・・
    『家守奇譚』など明治時代の紳士たちを主人公にした著者お得意の作品群に連なる物語。よくもこんな遠い時代の男性の内側に入り込んだような文章が自然に出てくるものだと感心する。まるでアリスの穴に落ち込んだ夏目漱石の冒険譚でも読むように、ユーモラスで奇妙だが心地のよい世界だ。精いっぱい威厳をたもとうとしながら、なすすべもなく奇妙なできごとに翻弄されてしまう主人公が情けなくも滑稽。だが亡き妻についての回想からすると、妻の心を思いやろうとしない独善的な冷たさをもった人物でもあるようだ。落下を続ける「私」は時間をさかのぼり、羊水の川で生まれなおして、自意識の底に押し込めてきた「千代」たちとの関係を生き直すことになる。
    儒学教育を通じて女性蔑視を叩きこまれ、洋装のように近代的合理主義をまとった明治の男である主人公は、大切な存在であるはずの女たちを切り捨てることによって、自分自身が生まれてきた世界とのつながりを失って、心にぽっかりとしたうろを抱え込んでしまっていたのだろう。『僕たちはどう生きるか』執筆の過程を通じて性暴力とマスキュリニティの問題について考えざるを得なかったであろう梨木さんが、明治以来無理を重ねてきた男たちに生き直しを優しく促している、そんなふうに見える物語だ。

  • とてもよい作品だった。植物園で働く主人公、佐田豊彦は、不思議な旅に出ることになる。理屈で説明できないことの連続に、最初は腹を立てることもあった豊彦だが、この一連の不思議な出来事が自分にとってどのような意味を持つかを理解してからは、少しずつ変わっていく。

    美しい自然の描写と、現実とファンタジーの上手い融合が梨木作品らしい。ストーリーの内容も、雰囲気も、とても気に入った一冊です。

  • 途中までは、ふわふわぼんやり摩訶不思議な夢の中の世界を当てもなく彷徨う気分で、「こんな歯医者ヤダな」「この主人公は他人に興味がない自己中なんだな」くらいの印象でしたが、終盤になるにつれて焦点が定まり全体像が解った途端のゾクゾク感とやるせない悲しみに襲われ、すごいもの読んだなぁと呆然。。。
    最後まで読みきることが肝心です。素晴らしいです。

  • 2014.7/6 不思議な不思議なズブズブと掴み損ねてぬかるんで...な物語。途中眠気に誘われて、諦めようかと閉じかけたもののその都度鞭打って進み、最後の数ページはひと息に。なるほどな物語。梨木作品、『裏庭』以来の苦行。

全258件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

梨木 香歩(なしき かほ)
1959年、鹿児島県生まれの小説家、児童文学作家、絵本作家。
『西の魔女が死んだ』で日本児童文学者協会新人賞を受賞。映画化もされたこの受賞作が最も著名な代表作となる。
ほかに新美南吉児童文学賞、小学館文学賞を、『裏庭』で児童文学ファンタジー大賞、『渡りの足跡』で読売文学賞随筆・紀行部門をそれぞれ受賞。
受賞作以外の代表作として、『家守綺譚』、『沼地のある森を抜けて』、『ぐるりのこと』などがある。

梨木香歩の作品

f植物園の巣穴を本棚に登録しているひと

ツイートする