女中譚

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.18
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本棚登録 : 296
感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・本 (169ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022506276

作品紹介・あらすじ

昭和初期を舞台にした、仰天"女中小説"連作。

感想・レビュー・書評

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  • 意欲作だが、隔靴掻痒。
    中島京子さんはインテリだと思うし、彼女の教養はここでもフル回転されている。また筆力があるので、読ませるように書けている。
    それがいけないのだ。教養が先に立ってしまっている。何かが足りない。昭和の初期から女中や女給、踊り子と、女の底辺を舐めて生きてきた主人公のすみを、どこまでも突き詰めて描ききることができていないのだ。ラストもありきたりだ。トリビュートものなので限界があるのか、作品全体に品が良過ぎて、中途半端に終っている。それは中島京子さんの育ちのよさの反映ともいうべきものだろう。
    同じ題材を岩井志麻子氏に書かせたらどうだろうと思った。たぶん主人公は生き生きと動きだし、読むものの気持ちをわしづかみにして、吐き気を催すほどに、この嫌な女、すみの血肉あふれるほんとうの姿を描きだせるだろう。
    たぶん、中島さんはこの作品でそう挑戦したはずだ。でも、足りない。中島さんは他の作品を読んでいてもわかるが、底辺の人間を書かせると、どうしても靴の上から痒いところを掻いているようになる。
    作家には書きたくても書ききれないものがある。それは悪いことではない。個性というものがあるからだ。そのことに気づいたとき、作家はぐっと伸びる。中島さんは「さよなら、コタツ」に出てくるような育ちも品もそこそこいい女性の日常なんかを書かせるとグッとうまいのだから。
    中島さんの直木賞受賞作も女中の話という。きっと作者はそのあたりを解決できているのではないか。図書館に予約しているが、まだ順番がこない。どんな変化を遂げているのか、早く読んでみたい。

  • R4/12/24

  • 大正の末期生まれの貧しい女、すみ。
    その女性の逞しくも、生き抜くことにかけては、明暗併せ持ち何者も排除しない生き方。
    特に教養があるわけではない、誉められた生き方もしていない。
    だが一貫して自分の人生は誰にも渡さず生きてきた。
    最後に秋葉原のメイドカフェに勤める女の子、りほっちに語る形でその物語を語るお話。
    中島京子はこの時代のアンニュイな雰囲気をうまく仕立てる。

  • [private]昭和初期の林芙美子、吉屋信子、永井荷風による女中小説があの『FUTON』の気鋭作家によって現代に甦る。失業男とカフェメイドの悪だくみ、麹町の洋館で独逸帰りのお嬢様につかえる女中、麻布の変人文士先生をお世話しながら舞踏練習所に通った踊り子……。レトロでリアルな時代風俗を背景に、うらぶれた老婆が女中奉公のウラオモテを懐かしく物語る連作小説集。[/private]

  • 小さいおうちと比べるとちょっとビターな感じの女中話。多分元ネタを知ってる方が面白いと思う。でも妙に引きつけられてぐいぐい呼んでしまう話…

  • 相手のことを考えなければならない仕事はあたしには務まりそうにないね。
    この中なら文士さんのお宅ならなんとか行けそうか。ってほぼ用事がない、夜に出歩けそうってところがなんとかなりそうと思うだけだが。いやー、やはり他人の生活に介入するのはちょっとね〜。

  • 解説を読んで、底本?元本?の存在に気付きました。底本を読んでからの方が自分にはよかったかも。
    過去の混沌と現在の日本の混沌の融合なのかな?読んでいてかなり暗い気持ちに。悲しい。

  • 人の一生には歴史が詰まってるというけど、まさにそれを感じた。
    ただ、一つ一つのエピソードをもうちょっと掘り下げてほしかったというか……。

  • 秋葉原に住むおばあちゃん、スミさんが、昭和初期の女中やカフェーの女給をしていた時代を昔語りするという話。

    小さいおうちのタキさんよりは少し年上、かなりハスっぱな女性だった様子のスミさん。
    3つのお話も色っぽいものばかりですが、面白かったです。
    こんな話を聞かせてくれるおばあちゃんが近くにいたら楽しそう。

    最後のシーンは、秋葉原の事件と繋がるようで、驚かされました。

    オマージュとなる3作品は知りませんが、さらりと楽しく読了しました。

  • スミという名の女中
    おばあちゃんと呼ばれるほど年を重ね当時のことを語る
    昭和初期が舞台、あやしげな雰囲気で異次元の世界のような感覚で読みました

  • う~~~~ん、
    どうも乗り切れませんでした

  • 多分再読。昭和初期にメイド・女給として働いていたおばあさんの語りの形をとっている連作集。
     設定も語り口も昔風で、展開も昔風なので、現代小説とは少し違って思わぬ方向に進むなー、と思っていたら、林芙美子・吉屋信子・永井荷風を現代風にアレンジしたのだった。それが上手く連作にされていて面白かった。

  • 昭和の始めの頃の話。
    すれっからしのすみさんだけど嫌いじゃない。

  • 3人の作家の短編をトリビュートした作品。
    味わいあり。

  • 小さいお家とはちがって、もっとしたたかな女中さんの昔語り。
    かわいらしい女中さんを想像していたので、最初の話から驚く。でも、女中さんや女給さんはこのくらい、したたかだったろうと思うし、現在でもこの位の女性はいるだろうと思う。
    道ゆくお婆さんがもしかして、という気持ちにさせられる。
    軽く読める小説だった。

  • 老婆が語る昭和10年前後の思い出話、という体裁をとった小説。3つのエピソード。ライトに読める。

  • 女中「すみこ」さんの話、3編。「ちいさいおうち」のように明るい女中とは異なり、女中という職業を通して、昭和初期に生きた人々のしたたかさや力強さがうまく表現されていたと思う。最後は少しかなしい。私がよみとれていない部分もあるのかもしれないが、もう少し救いがあってもいい気がする。

  •  明治後期~大正~昭和初期はやはり作者の得意分野ですな。
     同じ「女中」とはいえ「小さいおうち」の綺麗さとは正反対。醜悪で狡猾な「人間」を描いていた。
     地理を知らないからなんともなんですが、秋葉原であった事の意味はなんだろう?メイドやダンスを繋げる為だけ?
     あのショッキングな事件をある程度の時を経ずほぼタイムリーに作中で使える作者の驚くべきセンスには目玉飛びそうになった。

  • 小さいおうちのイメージで読み始めたので最初ギャップに戸惑った。作品としては小さいおうちの方が断然好きだけれど、中島さんという作家の幅広さに驚かされた一作でした。

  • 「女中譚」中島京子
    昭和ノスタルジー。江戸鼠。

    三編からなる連作短編集。
    林芙美子「女中の手紙」吉屋信子「たまの話」永井荷風「女中の話」を本歌として、
    2000年代秋葉原で暮らすスミばあさんの昔語りの形で綴られる哀しくも美しい女中譚。
    ちょっとばかりクサいななんて思うところもありますが、読み心地悪くない一冊。

    封建風情の開けきらない昭和の東京で、生き辛いながらもしたたかに渡り歩いてきた女の生き様が物語り。
    時代が人を作るのか、人が時代を作るのか。はてさて。(3)

  • 露悪的、という言葉が浮かんできた。白粉の匂いと汗の臭いの混じったにおいを感じた。

  • 昭和初期にメイドとして他家に勤めていた老女の回想譚。
    林芙美子、吉屋信子、永井荷風へのオマージュ風な三話でした。

    強かと言うか蓮っ葉と言うか…と言った感じの若い女が気に掛けたろくでもない男の話、奉公先の日独ハーフの娘の話、奉公先の老作家の話でしたが最初の話と最後の話が繋がって綺麗に収まっていました。
    しかし、主人公の灰汁が強く、感覚的に分からない感情の動きがあったりで読後感は今一つで消化不良気味でした。

  • 『小さいおうち』みたいなお話なのかと思ったら全然違った。どちらかというと苦手な話。女性は逞しいな、というのが率直な感想だけど見ていて気持ちのいいもんじゃあない。
    それにしても中島さんの小説は自分の中で当たり外れが激しいな。

  • メイド喫茶にかよう老女が語る、かつて「女中」だったころの自分がであった出来事。それは男と女、主人と下僕、一筋縄ではいかないえにしの物語だった。
    とつとつと語られる口調、文体そのものはとても淡白なものなのに、ふいに色気、官能の空気が匂いたち、おもてにはできない秘め事をそっとささやかれているようなときがありました。全体ではなく、ときにふぅっとそうなるので、よけいになんだかインパクトがあります。ヒモの話にしかり、女王様の話にしかり。そして時代が時代だけに、さらりと生死が語られていて、その結果に、ふと現実に戻らされるのでした。

  • トリビュートされてる作品を知ってたら、もっと面白く読めたんだろうな。

  • 90歳を過ぎたお婆さんが、昭和初期 戦前の東京で様々な仕事をしながらたくましく生きていた自分の若かりし頃を回想するというかたちで書かれた連作短編、3編。
    カフェの女給として働いていた頃に知り合った、女性を食い物にして生きる男と、食い物にされる女の話。
    女中として働いた医者の家の、日独ハーフの娘の話。
    変わり者の作家の家で女中として働いた頃の話。
    3編とも、それぞれ、林芙美子・吉屋信子・永井荷風の小説のオマージュとして書かれたようだが、残念ながら私はベースとなる小説を読んでいない(と思う)。
    内容的に「小さいおうち」と被るが、どちらも甘さやユーモアがなく、毒気が強いと感じる。古き佳き時代を懐かしむという感じではない。貧しい時代にたくましく生き抜く庶民の生命力を感じるが、何故か、私個人の感想として、読後少し殺伐とした気分になる小説だった。

  • 昭和初期のセピア色の情景を想像させられます。
    激動の時代を生き抜いた女性の、強かさ、哀しさ。
    林芙美子 吉屋信子 永井荷風 のトリビュート作品。
    恥かしながら、三者の作品は未読ですが、読み進めるうちに、以前テレビで観たことのある、舞台『放浪記』が思い出されました。
    冒頭のメイドカフェや、すみさんの部屋の様子に変わらぬ女心を垣間見られ、可愛くも切なくなりました。

  • 2012 4/20

  • 林芙美子「女中の手紙」が「ヒモの手紙」、吉屋信子「たまの話」が「すみの話」、永井荷風「女中の話」が「文士のはなし」と、それぞれをモチーフにした話が3編。サラッと2~3時間で寝転んで読んだ。そういう読み方が、ま、ふさわしいと思う。
    女中さんなんて絶えて久しいので、どういうものなのかわからないんだけど、この本を本気にすればいろいろ怪しい話にも通じてそう……って、そうか! 女中さんってまさしく「家政婦は見た」の昔版だ! だからこそ、通俗小説の登場人物としても人気だったんだろうな。それぞれのオリジナルも読んでみたいもんだ。
    ところで、各編の冒頭と末尾にストリーテラーの現在のすみさんが出てくる必要あるんだろうか。「タイタニック」然り、何か興冷めしてしまうんだけど。

  • なるほど。
    秋葉原の片隅でひっそりと生きる老婆「すみ」が女中であり、女給であった頃の話。

    現代の風俗を象徴する地のど真ん中で昭和初期の風俗を語ってるんだからもうちょっとエロくてもいいようなものだけれども、まったくエロくない。わざとなのだろうか?

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著者プロフィール

1964 年東京都杉並生まれ。小説家、エッセイスト。出版社勤務、フリーライターを経て、2003 年『FUTON』でデビュー。2010 年『小さいおうち』で第143 回直木三十五賞受賞。同作品は山田洋次監督により映画化。『かたづの!』で第3 回河合隼雄物語賞・第4 回歴史時代作家クラブ作品賞・第28 回柴田錬三郎賞を、『長いお別れ』で第10 回中央公論文芸賞・第5 回日本医療小説大賞を、『夢見る帝国図書館』で第30 回紫式部文学賞を受賞。

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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