出会い系のシングルマザーたち―欲望と貧困のはざまで

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  • 朝日新聞出版
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レビュー : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022506931

感想・レビュー・書評

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  • イケダハヤト氏の上半期お勧め本だったか、見かけたので読んでみた。「本書をあらゆる子どもをもつ母親に読んでほしいと思う。」と著者は書いているが、むしろ読むべきは父親であり、まだ子どものいない夫ではないかと思う。父親たる私から見ても、こんな現実は読んでいて絵空事かと思うくらい悲惨だ。でも悲惨だからこそ現実を知らないといけない。綺麗事かもしれないが、まずはそこから始めるしかないのだと思う。

  • シングルマザーたちが「収入」を得るためというよりは「寂しさ」を紛らわすために出会い系を使う。

    また、彼女たちは世間で上手く立ち振る舞うことができないタイプであり、社会の中でも孤立しがち。

    「体売るくらいなら手当もらえばいいじゃん」という人が大半の世の中であり、私もこの本を読む以前はそう思っていたが、彼女たちにそのような要領は備わっていない。

    それでも必死に子育てをする彼女たちは、精神の病を抱えていようと、本当に強い女性だと思う。

  • 子どもとの生活のため、そして行き場のない寂しさから出会い系サイトで売春するシングルマザーたちを追ったルポルタージュです。筆者の描く世界は恐らくどこかで繋がっている…。読みながらそんな印象を持ちました。

    おそらく、著者の書いているルポルタージュはそれぞれが独立しているようで、どこかでつながっているような気がしてなりません。ここでは出会い系サイトを利用して春を売るシングルマザーたちを取材したルポルタージュです。

    例によって内容のほうは本当に重く、衝撃的なものでした。ここに出てくる女性たちは皆、押しなべて寄る辺なき女性たちで、ただ、子どもを手放さないために、体を売るその生々しい証言を炙り出していて、本当に読んでいて気が重くなりました。

    国からの福祉や援助も受けずに、子どもを持っているというからほとんどの職場から忌避され、普通に生活出来るだけの仕事にすらつく事が出来ずに、目を覆いたくなるような最悪な状況下にいながらでも『子供と一緒にいたい』その愛情を唯一のよすがとして、それを実現するには出会い系サイトを通じて売春するしかないという現実…。

    そういうことがつづられていて、福祉から零れ落ちてしまう人々の生々しい『声』が記録されていて、本当に、まぁ…読んでほしいことはほしいのですが…。苦々しい読後感を残したことはここに記しておきます。もしかすると、自分の身の回りにもそういう女性はいるのかもしれませんが、ちょっと目には『見えない』事ですので、『ありうることだろうな…』ということで、自身の裡に留めておきたいことだと考えております。

  • →朝日文庫「最貧困シングルマザー」

  • 最貧困女子と内容的にはかぶっている部分もあったかな
    やっぱり面白い
    けど、最貧困女子読んでたらわざわざ読む必要はないかも

    宮台真司のことを読んでて思った
    宮台真司は鈴木大介の著作の次の段階の文章な気がする
    鈴木大介はいわゆるフィールドワークの部分の著作
    そこに自分の感情が強く入っているのが印象的
    対して宮台真司はフィールドワークを終えて
    そこで得たことを体系的にまとめたうえで述べている
    そんな気がした。

  •  少し前に読んだルポ『家のない少女たち』がとてもよかった、鈴木大介の新著(※後注/本書は文庫版では『最貧困シングルマザー』に改題されている)。

     本書もやはりルポで、『週刊朝日』に寄せた記事がベースになっているそうだ。
     同じアサヒでも『アサヒ芸能』にこんなタイトルの記事が載ったら、「いまや出会い系サイトではシングルマザーが入れ食い!」みたいな内容になるわけだが(笑)、本書はごくまじめなルポで、煽情的な部分はまったくない。

     著者が「出会い系のシングルマザーたち」を取材しようと思ったきっかけは、前著の取材過程で次のような事実に気づいたことだという。

    《(家出)少女らが「売春のツール」として使用する出会い系サイトに、「少女らの母親世代」(30代から40代前半)の女性が非常にたくさんアクセスしているということ。そしてこうした出会い系サイトのハードユーザーである買春男たちからは、その年代の利用者の多くが子どもを抱えたシングルマザーだと聞き及んでいたのだ。》

     売春で食いつなぐ「家のない少女たち」と、その母親世代である「出会い系サイトのシングルマザーたち」は、貧困という同じ根でつながっている。そのことに気づいた著者は、こんどはシングルマザーたちの取材を始める。つまり本書は、前著『家のない少女たち』と対になっているのだ。

     著者は自ら出会い系サイトにアクセスし、約20人の「売春するシングルマザーたち」を探し当て、取材を重ねていく。その結果浮かび上がるのは、ある意味で日本の貧困問題の中心にある「母子家庭の貧困」の哀しい実態だ。
     たとえば、「取材対象者のほぼすべてが、『精神科への通院』をしていた」という。そして、そのうちの1人は自殺未遂をくり返している。

     母子家庭で生活が苦しいからといって、なぜ出会い系売春に走るのか? その前にまともな仕事につけばいい。生活保護を受ければいい。そもそも、元夫からの養育費はないのか?  また、売春するにしても、風俗店に勤めたほうがまだしも安全ではないか?
     ……と、我々は思ってしまうわけだが、本書を読めば、出会い系に走るしかなかったその背景事情がよくわかる。

     たとえば、取材対象者になんとか生活保護を受けさせたいと、著者がさまざまな尽力をするくだりがある。しかし、どの取材対象者にも拒絶され、けっきょく著者は誰一人「救う」ことができない(例外として、生活保護を受けながら出会い系で売春している女性が1人だけ登場する)。
     田舎町に残る根深い生保受給者差別、役所から受けた屈辱的対応など、拒絶の理由はさまざまだが、生活保護がシングルマザーたちのセーフティーネットとして機能していない実態に、驚かされる。

     だが、著者のスタンスは、売春するシングルマザーたちを哀れな犠牲者として見下ろし、「政治が悪い!」と叫んで事足れりとするような単純なものではない。むしろ、取材過程でそのような紋切り型の図式化を突き崩され、著者が戸惑う姿こそが本書の見どころとなっている。

     たとえば、最初に出会い系で売春したきっかけについて問うと、取材対象者の約2割が「だって寂しかったから」と答えたという。

    《僕はおおいに混乱した。
     生きるか死ぬかの経済的困窮のなかで、身を売るという手段を選ぶならば「やむをえず」という言葉があてはまる。だが「寂しかったから」売春するシングルマザーというのは、僕の理解を超えていた。
    (中略)
     30歳も超えようという大人の女が、しかも子をもつ母親が、「寂しいから売春した」といって、そこに同情の余地があるはずがない。はずがない、と思っていた僕が、実は浅はかだった。
     僕は知らなかったのだ。「やむを得ず」売春相手に会ってしまうほどの、圧倒的な寂しさがあることを。そんな想定外の寂しさを生み出す、離婚、シングルマザーという、特殊な環境と心理を。》

     また、生活保護との関係についても、次のような意表をつく記述がある。

    《「生活保護を受給できない」わけについては、もうひとつ意外な理由を強く主張するシングルマザーが数名いた。「婚活にさし障りがある」というのだ。
    (中略)
     「いまは男の人も、相手に経済条件を求めてくるんです。結婚本気組なら本気組ほど、女の側の収入にこだわる。完全な専業主婦っていうのは、求めていないんですね。所得100万とかって言うと、1歩引かれる。シングルマザーと言えば、さらに5歩ぐらい引かれる。生活保護受けてるなんて言ったら、10歩引いてアウトなんです」》

     「売春するシングルマザー」と「婚活」……意外な組み合わせに思えるが、「この苦しさから抜け出す手段って、再婚以外にあるのかな?」とつぶやく彼女たちの「婚活」を、誰が嗤えるだろう。
     
     このくだりに象徴されるように、著者のスタンスは興味本位でもなければ、売春するシングルマザーたちを「無垢な被害者」としてのみ描き出すようなありきたりな社会派目線でもない。著者は虚心坦懐にシングルマザーたちの心に分け入り、練達の心理学者を思わせる筆致で、彼女たちが抱える社会病理をあぶり出していく。
     印象に残った一節を、2つ引用する。

    《小西さんは待ち合わせした相手と街を歩きホテルに向かうとき、手をつなぐのだという。手をつなぐことで彼女のなかで、その出会いは売春から希望に昇華するのだ。もしかしたら、その手をにぎり返してくれる男がいるかもしれない。同じその手から、セックスの代償としてはあまりにも少ない金をもらい、それで子どもを育てるとしても、小西さんには希望がほしい。どこまでも男女という関係性のなかでしか生きられない哀しさが、彼女らをいっそう孤独のなかに追いやる。
     これを、彼女らの「男性依存的性格」とするのは、あまりにも簡単だ。だが、そう類型化した時点で、彼女らは救済の対象ではなくなってしまう。違う、これは社会病理だ。生育してきた環境も、陥った困窮状態も、救いを求める相手の的外れっぷりも含めて、これは社会病理であると認識すべきだ。これが僕のたどり着いた結論だった。》

    《出会い系サイトは簡便に寂しさをまぎらわすツールかもしれないが、それは根本的な寂しさの払拭をもたらしてはくれない。たしかに金銭の介在する出会いならばこそ、本格的に傷つけられることはない。傷つけられたときには「売春という仕事なのだから仕方ない」と自分を誤魔化すことができる。だがそこで得られる安心もまた、その場限りのものでしかない。いわば彼女たちは、恋愛依存体質なのに本気恋愛恐怖症という状況。そんな疲弊した精神には、出会い系はちょうどいい「中途半端さ」を備えているのだろうが……。》

  • ただただ絶望的な気分になってしまう。
    母親の知的問題、精神的問題が大きく関与していることが確かなんだろうけど。それをどう拾い上げて、セーフティーネットに載せるか?良い考えが自分も思いつかない。

  • 2010年刊行。孤独死が高齢者における社会との希薄な関係の象徴だとすれば、出会い系シングルマザーは、女性におけるそれだ。本書からはこう読み取れる。養育費不払いの現実(強制させる制度不備と失業・所在不明が多さ)、生活保護費不正受給に関する著者の問題意識は同感。が、本書はそれに止まらない。女性の中で関係を構築しづらい女、子供が他者との関係性の最後の砦であること、貧困・虐待の世代間連鎖、シングルマザー(特に生活保護受給者で非都市圏)への差別、セックスワーカーへの世間の批判的目線など痛い現実をレポートする。
    確かに、著者が「マイノリティ」と言うように、本書で描かれる女性が多数派だとはそのままでは言えまい。しかし、そこにある現実ですよ、と声を大にして言いたい。離婚や失業が引き金になる可能性がある以上、潜在的には多数の人が関係しているのだ。ひいては、著者の目線、つまり、「本書にある現実は、貧困・虐待家庭における子供の福利に反している」という問題意識につながっていく。この著者の目線は広く共有されるべきではないか。

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  • 彼女たちの価値観「差別されないこと」を理解しないと適切な対応はできないのでは

    別の本と併せ読みした、その一冊目。

    読みたいと思っていた若年層の貧困に迫る話。

    著者の鈴木大介さん(ギタリストではない)が直接会って、メールして、取材を進めていきます。

    この本は次に紹介する本よりも、生々しいというか、もう一段階ダークサイドの、辛い世界。

    第2章である「売春婦にもなれず」で書かれた事実が、重く、辛い。

    ここで描かれている貧困は、

    「精神も、環境も、体力も知力も、なにもかもを喪失した、言語を絶するような「持たざる者」。」

    貧困から抜け出すメンタリティを養う環境が与えられず(それはその親も持たざる者だった可能性が高いから)、知力が無く、知的好奇心が無いと、自分の「思い」だけで物事を判断することとなり、その経験からくる頑なさが現状を打破することを拒む。

    そういった彼女たちの特徴が、誉田さんという存在によって浮き彫りになる。

    「民生のオバサン」とうまく付き合い、水商売をする女性たちと支え合い世の荒波を乗り越えている女性。

    そんな誉田さんの話を別の女性にすると

    「実はなにしてもあんまり差別されないタイプの人」

    と評される。

    「女には女社会のなかで、叩かれるタイプとそうでないタイプがあって、私を含めて出会い系サイトで鈴木さんの言う『隠れ破綻』をする女っていうのは、本能的に自分が叩かれやすいタイプだって知ってるんだよね。」

    と付け加えます。

    わかります。私はこれ幸いにも、「叩かれないタイプ」ですね。でも私がやっていたことを、叩かれるタイプの人がやった場合、その言い方、振舞い方によって叩かれ、いじめられる可能性がごく高いと思います。

    なぜそうなるのか?

    自分のことから考えてみると、その理由はこの本の中に出てくる「自己肯定感」の差なのか、と思いました。私も総数で考えると低い部類ではあると思うのですが、「これ!」という部分的なもので、これは自分凄いだろ、と思えることがあった。

    それを自分であっためて、磨いて行ける環境があった。また、好奇心を持ち、貧しいながらも浮かんだアイデアを行動に移せる環境があった。
    貧乏だけど、貧乏な中で自分がお金を得て、経済活動をしていく術を考え、調べ、実行し反省して繰り返すことが出来た。

    それが「持たざる者」にはできない。なにもかもを喪失しているから。その世界にない要素だから。

    彼女たちの価値観は「差別されない」こと。それを避けるのが第一義です。それを避けるために、合理的な判断ができないこともしばしば。このメカニズムを把握しないと、適切な対応はできないんじゃないかなあ。

    彼女たち、そして次世代の彼女たちになり得る子供たちに必要なのは本質的には金ではなく、自己肯定感を持ち、知的好奇心を持てる環境なのではないか、と思いますがそれを解決していくのは金銭的な問題よりよっぽど難しい。

    適切な対応、と書いたけど適切な対応とはどういうものなのか?その答えはとても1冊読んだだけでは出てくるものではない。

    なので、このテーマに関する著作を読み、理解を深めるところから始めたいと思う。

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著者プロフィール

犯罪の若年加害者取材を軸に「犯罪現場の貧困問題」をルポし続ける取材記者。地下取材13年。著書に『家のない少年たち』(太田出版)、『家のない少女たち』『振り込め犯罪結社』『援デリの少女たち』(宝島社)、『出会い系のシングルマザーたち』(朝日新聞出版社)など。

「2018年 『ギャングース 振り込め詐欺の手口、すべて教えます編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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