課長になったらクビにはならない 日本型雇用におけるキャリア成功の秘訣

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022507457

感想・レビュー・書評

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  • 本書のキーコンセプトのひとつが、「企業内特殊熟練」だ。
    企業内特殊熟練とは、特定の企業内においてだけ通用する、人間関係や過去の出来事といった特殊な事柄に関する熟練、とでも定義すればよいだろうか。
    「企業内」という通り、他社には通用しない類の熟練であるから、転職の際には役立たない。

    企業の課長になるには、企業内特殊熟練が求められる。なぜなら、一般に、
    1.課長は部下の顔や個性を知らなければ勤まらない。
    2.課長は社の意思決定の仕組み・作法を知らなければならない。
    3.課長の仕事は、社内にコネクションを持たないと成り立たない。
    これが「課長の壁」と言われるもので、
    いったん課長になるとクビにはなりにくい根拠でもあるようだ。

  • 日本型人事制度を知り尽くした著者の現実解がありためになります。
    おいらもクビにはならないかな?
    だといいが。。。

  • 2016/06/20

  • 雇用のカリスマによる痛快キャリア論。

  • サラリーマンに勇気を与えてくれる。
    表紙は俗っぽい感じなのでハウツー本に近い本かなと思いながら読んでびっくり。データをもとに論理的にキャリア論を論じておられる。
    結局自分に向いている仕事をするより、この会社よさげ~で入って嫌になっても頑張って辞めないでいたらそこそこのキャリアを積めて、よっぽど使えないやつじゃなきゃ首にならないのね。
    課長ってよく「できない課長」とあだ名されている人がいるけど、社内熟練度(コネ・社風を熟知・部下の顔・個性を知る)があるから大事にされる。転職組には無理(35歳未満なら行けるらしいけど)で、転職組は自分の得意な部分を伸ばそうとするからそれ(営業なら営業もしくはもっと細かいセクションたとえば液晶パネルだけとか)しかしないからその部署がなくなったらいらない人になる=出世しない。むしろ一つの技能だけする人はこれからは契約社員(非正規雇用)になりかねないってことね。
    反対に今必要としない技能(英会話とか簿記とか)を身につけたからと言ってキャリアアップにはつながらない。なぜか?それを生かそうとするあまり仕事の選択肢が狭まるということだ。まるで大卒が大卒並みの給料を求めるあまりマッチングミスが起こるのとおんなじ。

    会社に入社したらよほど社風が合わない限り石にかじりついて頑張る。そして一つ一つ経験を積んでいくのがよい。
    会社はできる社員を探すんじゃなく一から丁寧に指導していく。
    結局昔ながらの働き方がよいと「リクルート」がいっちゃうのね・・・

    さて、看護教育システム「ラダー」にどう活かそうか。

  • なんとなくですが日本の労働環境は厳しく、就職難であり、勤務している人にとっても、いつリストラされるかわからない環境へと変化してしまったと思っています。この本を書いた海老原氏の本はかつて読んだことがありますが、それまでの先入観について、私は実際のデータをもって覆されたという記憶があります。

    この本は、主に日本企業に勤めている人達に対して書かれたものかもしれませんが、日本型雇用におけるキャリア成功の秘訣について書かれていて興味深く読みました。

    特に私は40歳を過ぎてから転職をしましたが、この本によれば、日本企業で35歳以上になって課長クラスになっているのであれば、転職をせずにそのまま務めたほうが良いというのが結論のようです。

    私の勤務していたのは外資系企業なのですが、日本系の企業では今でも35歳を過ぎて転職して、そこで活躍するのは難しいようですね。この本が出版されたのは昨年の5月ですが、この本を私が転職をするかどうか迷っているときに出版されていなくて良かったと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・日本は昔から20代の若手社会人が高い確率で転職をする社会であるが、35歳以降では少なくなり、30代中盤から定年まではひとつの会社で過ごす人が全体の6割以上であり多い、年代別転職率はこの20年間あまり変わらない(p12)

    ・イギリスを除く欧州主要国では40歳頃、米英も45歳kらいで転職は下火になり、終の棲家に落ち着くのが世界的傾向である(p17)

    ・多くのジョブローテーションが、主業務に対して、副業務を短期間という組み合わせになる(p20)

    ・外から来た人は、今の会社とは実務内容が著しく異なるので、行き場のない人材となっていくので、ジョブホッパーになりやすい(p22)

    ・課長が転職できない理由として、1)部下の顔や個性を知る必要がある、2)意思決定の仕組みや作法を知る必要がある、3)社内のコネが必要、である(p28)

    ・40歳で課長になった場合は、今の会社に居続ければ良い、条件として、1)よほど危なくない、2)よほど悪い査定でない、である(p41)

    ・正社員のリストラは、組織衛生(若手からの不満解消)にあり、その対象はせいぜい1割程度であり、大多数の人は残れる(p48)

    ・日本はどの部署でも異動できるが、それは給料が仕事でなく、人の能力で決まる仕組みだから(p64)

    ・1022万人の年収200万円未満層が本当にワーキングプワーといえないのは、他に世帯収入がある人達である可能性が高いから(p104)

    ・転職の世界では、資格や専門知識よりも、経験が生きる、逆に言えば、職務経験のない資格や語学は評価されにくい(p118)

    ・実務経験をしたうえで、会社のルールをわかりはじめた時に、学校でも通って専門知識をつけると、会社に活かすことができる(p122)

    ・各種スクールで知識やスキルのみを積んだ人達は、実務では通用しない(p123)

    ・キャリアアップのために自己啓発を行うのであれば、今の仕事で精進するのが最も良い(p124)

    ・成果主義でもそれ以前の制度でも、査定の中身は殆ど変わらない、それはもとから業績や成果が多分に含まれ、今でも「能力」「態度」「行動」などのサブ指標が勘案され、私情を挟みながら決定される、最大に変わったことは月給が下に動くこともあること(p132)

    ・給与というのは、業績が悪くても古査定の85%程度は支給される、アメリカも日本もかなり近い給与体系である(p135)

    ・オレはこの仕事に適性がないと言う前に、まずは自分の持てる別の力で適性をカバーできないか考えてみるべき(p154)

    ・リーダシップを獲得するには、1)経験から物事を学ぶ姿勢ができていること、2)経験に飛び込んでいく勇気があること、である(p178)

    ・総合職により社内再チャレンジができる会社の基準としては、従業員数が150人が目安(p183)

    ・30歳を過ぎているあなたは、目の前の階段をゆっくりと上がっていくだけで良い、むやみに横道にそれるのは百害あって一利なし、とくに日本では(p184)

    ・日本型雇用の正社員は、全員が幹部候補、これがあまりにも異常であり、世界でこんな仕組みは異端である(p187)

    2011/2/6作成

  • 一言で言えば保守本流の書。

    ・欧米は実力主義で年功序列などない
    ・欧米は転職が当たり前
    ・これからは日本も欧米型の雇用形態を目指すべき

    と言ったここ4~50年ほどずっと語られ続けているくだらないマスコミの論調により僕らが刷り込まれた幻想をことごとく突き崩す、素敵な本。

    勿論、著者の思いだけではなく統計データを含めた実証研究を数々引用していて信頼に足る。 「組織衛生」って言葉、初めて知った。

    タイトルは少しばかりキャッチーだけれども、毎年制度を変える人事部に不信感を持つ社員or管理職に成り立て社員or管理職が見えてきた社員or社会人になったばかりの新人君にお薦めしたい。

    著者はヒットしたマンガ「エンゼルバンク」主人公のモデルでもある、リクルートの海老原 嗣生。

    http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%BC%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%AF-%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%83%B3%E6%A1%9C%E5%A4%96%E4%BC%9D%EF%BC%881%EF%BC%89-%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0KC-%E4%B8%89%E7%94%B0-%E7%B4%80%E6%88%BF/dp/406372661

  • 就職について、データをもとに書いてくれてるのは珍しい。大会社とか大学とかあまり縁がないものにとって、色んなことを教えてくれたので感謝。日本の雇用制度の利点を考えていて、それからはずれている人も多いんだけど、はずれている人からこの本の内容を考察してみるのも、意外と役に立ちます。マスコミがよく使っている能力主義だとか、意味もちゃんと分かっていなかったから、知識とかデータを分析するのは、やはり欠かせないんだと実感。

  • いや、タイトルの通りで、その通りだよ! 課長にすらなれない人は…。

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著者プロフィール

雇用ジャーナリスト、経済産業研究所コア研究員、人材・経営誌『HRmics』編集長、ニッチモ代表取締役、リクルートキャリア社フェロー(特別研究員)。
1964年、東京生まれ、大手メーカーを経て、リクルート人材センター(リクルートエージェント→リクルートキャリアに社名変更)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計などに携わる。その後、リクルートワークス研究所にて「Works」編集長に。2008年、人事コンサルティング会社「ニッチモ」を立ち上げる。『エンゼルバンク─ドラゴン桜外伝』(「モーニング」連載)の主人公、海老沢康生のモデル。
主な著書に、『「AIで仕事がなくなる」論のウソ』(イースト・プレス)、『雇用の常識「本当に見えるウソ」』(ちくま文庫)、『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(小学館文庫)、『仕事をしたつもり』(星海社新書)、『女子のキャリア』(ちくまプリマー新書)、『無理・無意味から職場を救うマネジメントの基礎理論』『経済ってこうなってるんだ教室』(ともにプレジデント社)など。

「2018年 『名著17冊の著者との往復書簡で読み解く 人事の成り立ち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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