あいさつは一仕事

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 51
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022507853

作品紹介・あらすじ

結婚披露宴でのスピーチ、定年の会でのねぎらいの言葉、弔辞、親兄弟が亡くなったときの挨拶…会場をシーンとさせ、爆笑させる名人芸50の見本帖。

感想・レビュー・書評

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  • 新潟BF

  • 準備は大事。

  • あいさつには努力が必要やねんなぁ,下手だからで終わってたらあかんねんなぁ,という感想。

  • おなじみ丸谷さんの挨拶集。

    めったにないことだけれど、それなりに社会人をやっていると、人前での挨拶やスピーチから逃げ切れないことがある。
    こんな風に、計算されつくしているのに、すっきりサラリと挨拶できたらかっこいいのにな・・・。

  • 近年の丸谷才一の仕事は、ドキュメンタリーとしての一面を兼ね備えているものが多い。今年で85歳になる偉大な批評家(彼は小説家としてより批評家として偉大である)がどのように衰弱そして死と戦ってきたか、決して勝てない相手に、人はどこまで対抗できるか、読者は目撃することになる。

    もっとも、作者はそういう風にほめられてもあまりうれしくないかもしれない。丸谷才一は大の私小説嫌いとして有名で(本人は、個別にほめているものもある、と言っているけど)あまり積極的に自分の家族のことを話題にしてこなかったからだ。
    彼はなによりも読者をくつろがせ、上機嫌にさせることを心を砕いた。自分の苦悩、身内のいざこざなどは二の次、三の次だったのである。そういう意味ではエンターテイナー、いや、もっとはっきり、藝人だったといってよいだろう。

    しかし隠されたものほど見たくなるのが人情。皮肉なことに、そういう姿勢を貫いたからこそ、たまに家庭の事情に少しふれただけで、普通の作家以上に驚いてしまうのである。

    このあいさつシリーズは、丸谷才一の多岐に渡る文筆活動の中でも、とりわけ私生活の露出が多い分野なのである。もちろん露出といっても「ちかごろ甥の娘が結婚しましてね」程度の世間話なのだけれど。

    その前にあいさつシリーズについて説明を。
    丸谷才一は、結婚式とか葬式とか文学賞の授賞式とかのスピーチをする際、あらかじめ原稿を書き、読み上げるようにしている。その原稿をまとめ、さらに舞台背景を説明する前書きを加えたのが
    『挨拶はむづかしい』('85)
    『挨拶はたいへんだ』('04)
    『あいさつは一仕事』('10)
    の三冊である。
    そんなものを本にして、面白いのか? と疑問に思う声もあるかもしれない。確かにつまらない挨拶ならば読みたくなどないが、丸谷才一は聴衆をなるべく退屈させまいとして原稿を書いてくる。自然、読み応えのある挨拶が出来るという次第になる。

    それでも「こんなもの」をまともな文章の仲間に加えるなんて「どうかしている」と公言する斉藤美奈子のような批評家もいるが(『文壇アイドル論』立花隆の章)、読者はこの三冊を読んで、「どうかしている」のはどちらか、よく判断してほしい。

    さて、やっと本題に入れる。
    前作『挨拶はたいへんだ』刊行時、丸谷才一はすでに八十近かった。その次の本なのだから、どうしても三冊目は老いを感じさせるものになってしまう。特に弔辞(並びに偲ぶ会の挨拶)の多さには、こちらまで気分が重くなる。
    大野晋、井上ひさし、川本恵子、平井正穂、エドワード・G・サイデンステッカー、高橋康也、そして義兄と姉。(姉がいることは知っていたが、母親が違うということは今度の挨拶の前書きで初めて知った)
    また、文壇政治からも段々と手を引いてゆく様子も活写される。(院政に移っただけだ、と意地悪を言う人もいるだろうが)
    2005年、八十歳になると自分が創設した毎日書評賞以外の選考委員をすべて辞める。
    2006年、文化功労者に選ばれるが「多分これがお祝ひをしていただく最後になるだらうと思つた」と述べる。(お祝いの席で中村勘三郎が「樹影譚」を朗読したという。聴きたかった!)
    そして2010年、胆管癌がみつかって入院し、毎日書評賞の選考委員も辞める。毎日新聞社特別顧問も書評欄の顧問も辞める。
    これは丸谷才一の今までの権勢を表すものでもあるのだが、こう次々と辞めてゆくのを読むとこちらまでつらくなる。しかし、今年連載を休んだ原因が胆管癌だったとは! 脊柱管狭窄症と食道癌にかかったこともあるという。

    それでも丸谷才一は、己の胸の内など二の次三の次なのである。旧制高校時代から六十年以上にわたる友人だった美術評論家、中山公男を偲ぶときですら「しかしわたしが彼について語る以上、個人的な思ひ出なんかぢやなく、現代日本の文明において中山公男の占める位置と意味について述べるのが本筋でせう。それをやりたい」と言ってのける人なのである。
    この強さ、頑固さ。私の好きなところだ。

    2010年11月21日記

  • 丸谷才一がいろいろな機会にスピーチしたそのスピーチ集。これで3冊目。日本語の美しさを感じ、また知性と教養に裏打ちされた上品でウイットに飛んだ内容。言語の豊富さとスピーチの対象となる人物の人となりをちゃんと表現している。やはり丸谷才一はすごい!

  • 恥ずかしながら、丸谷さんのことをまったく知らずに本書を読みました。
    内容は披露宴はお葬式での挨拶内容を本人の解説を加えて、まとめたもの。

    「あれ(披露宴での挨拶)をうまくやるコツは、第一に、原稿を書くことです。~中略~その下準備に当たっては新郎新婦の写真(なるべくなら二人一緒の普段着のもの)を手に入れて、よし、この若い二人にがんばらうと自分を励ましてください。この気持ちが大事ですよ。」

    若い二人のため、小説・社会談義を交わした同友のため、いろいろな挨拶がまとめられていますが、どれも(特に最後の挨拶は)かっこいいんです。丸谷さんの才色・知見をふまえて、そのうえで対象も方々は本当にすばらしい人々でした。

    私もみなさんに少しでも近づけるような生き方をしたい。かっこいい挨拶をしたい・・・と思いつつも、まずは自分の身の回りからビシッといかなければいけませんね。

  • 挨拶の名手として、挨拶の原稿を集めた本が3冊も出るとなると、新しく挨拶する時のプレッシャーは大変だろうな・・・。
    新郎新婦をよく知らず、新郎なり新婦なりの親とのつながりで担ぎ出されるスピーチ(それも主賓だったりして)を、文章を残すって、いや、本当に、筆で食って行くのは大変です。

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著者プロフィール

1925-2012。作家・英文学者。山形県生まれ。東京大学英文科卒。「年の残り」で芥川賞、『たった一人の反乱』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。他『後鳥羽院』『輝く日の宮』、ジョイス『ユリシーズ』共訳など。

「2016年 『松尾芭蕉 おくのほそ道/与謝蕪村/小林一茶/とくとく歌仙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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