- 朝日新聞出版 (2013年5月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (344ページ) / ISBN・EAN: 9784022507860
みんなの感想まとめ
人間の怠け心を受け入れ、癒しをもたらす物語が展開されます。主人公の小和田は、道に迷ったり怠けたりすることに対して肯定的な視点を持ち、読者に思いやりの重要性を伝えてくれます。物語は、京都の祇園祭宵山の日...
感想・レビュー・書評
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「僕は人間である前に怠け者です」
この一言にやられました。
ぐわぁ…そうくるかぁ。
なんかすごくカッコイイ気がするのは単なる気のせいなのか。
温泉に入って「あぁ~」と声を出してしまう瞬間のような、渇いたのどに水(やら何やら)を流し込む瞬間のような(く~ってやつですね)、そんな物語。
荒んだ心を宥め、癒し、肩に入った力を抜いてくれます。
道に迷って何が悪い!
怠け者で何が悪い!
「我々に必要なのは思いやりの心である。」
そうです。
その通り。
この混沌とした世界で、いかにして生きるか。
なんていうと大げさかもしれないけど、私はこの物語のノリで生きていきたい。
そう思ってしまいました。
それにしても、新聞連載時とはかなり違う話になっているようで、それが気になって気になって…。
これはこれとして、連載時の方も出版してください。 -
相変わらずの森見登美彦ワールドを堪能できる一冊だった。京都の地名を聞くだけで誇大なイメージを抱くようになったのは他ならぬ森見登美彦作品の影響だと思う。森見登美彦の文章って素人が下手に真似してみようと思っても空滑りするだろうなと。こんなにユーモアたっぷりで、でも下品さを全く感じないのはさすがだなと思わせられる。
この作品を読んでいて、他の作家でもそうだけど、私は日常のなんてことない描写を面白おかしく表現できる人が好きなんだとふと気づいた。
以下、文中で思わずクスリとした表現を引用。
「小和田君は某化学工業企業の研究員である。大学院を卒業して勤めだしてから、まだ二年目である。彼が働いている新素材研究所は、近鉄京都線の向島駅から西に広がる田園地帯にある。研究所の器から外を見ると、世界はあたかも田んぼと工場と京滋バイパスだけでできているように見えだ。遠くにはAEONが見えたが、まるで魔術師の住塔のように霞んでおり、はたしてその地には本当にAEONがあるのか、誰にも確信が持てなかった。研究員たちの間では、まだ実験的に裏付けが取れていない希望的観測のことを指して「まるでAEONのような」という表現が使われていたほどである。」
ただ遠くにイオンが見える、という表現なのにクスッと笑えてしまう。こういう表現のユーモアが私は好きなんだな、と思い知らされた。 -
この本を出版するにあたり、森見氏のサイン会が梅田で開催される事となった。私はそれを非常に楽しみにしていたのだが、私の勘違いで、気付いた時には整理券は定員に達しており、サイン会に参加できなかった。悔しいので(単なる逆恨み)本は買うまい!と思っていたのだが、発売当日書店でこの本を見た途端、持ってレジに向かってしまったのだった。それほどにこの本のカチッと四角い装丁が気に入った。表紙の質感も好きだし、カバーを取った中表紙も可愛い。この本にサインしてもらいたかった…。
さて内容は祇園祭宵山の日に、世間を揺るがすぽんぽこ仮面(善人)を追いかける追走冒険劇。
森見作品らしく、万華鏡のように次から次へと溢れ出てくる不思議な世界。宵山の一日にぎゅっと濃縮された森見ワールドを堪能した。京都の地理はなんとなく頭に入っているものの、Google Map片手に読むのも面白かった。
購入してから読み終わるまで時間がかかったのは、内なる怠け者のささやき故でした。私も主人公の小和田くんに負けず劣らず怠け者だ。 -
いやぁ〜
久方振りにワクワクが止まらない
森見ワールドにズッポリハマったなぁ〜(^O^)
(村上春樹の初期の短編にある牧歌的雰囲気と「夜は短し歩けよ乙女」のあの冒険の匂い、そして「有頂天家族」や「宵山万華鏡」とのリンクもあります)
鳴り響く祇園囃子に包まれ、
さぁこれから何をしようかと心弾む
休日の朝のワクワク感。
そんな身悶える感じが
読んでる間中続くのですよ(嬉)
↑何のこっちゃ
旧制高校のマントに身を包み
狸の仮面を被った正義の怪人、
ぽんぽこ仮面。
ぽんぽこ仮面に
跡を継げと言われるものの、
狸みたいに怠け者でいることに幸せを感じる
主人公の小和田君(こわだ)。
鼻血が出るほど充実した休日を過ごすことに血道を上げる
恩田先輩と恋人の桃木さん。
ぽんぽこ仮面の正体を追う
私立探偵の浦本と
その助手で「週末探偵」の女子大生、玉川さん。
某巨大組織のドンである
謎のアルパカ男。
そしてスキンヘッドの後藤所長。
宵山で賑わう京都の町を舞台に
思惑入り乱れる
キュートな変人たち(笑)。
(フジモトマサル氏による挿絵もまたステキ過ぎる!)
個人的には
金魚模様の手拭いと狸の絵が描かれたがま口と
ヴァイオリンケースに入った達磨を操る(笑)
週末探偵の玉川さんにハート持っていかれたなぁ〜。
万能のお祈り言葉「なむなむ」、
怪しい酒「テングブラン」(偽電気ブランの別名です!)など
森見作品を好きな人なら
ニヤリとできる小ネタもたっぷり。
イノダコーヒ(「タレーラン…」にも出てましたね)、四条通りの大丸百貨店、鴨川沿いの納涼床、河原町OPA、信楽焼きの狸が目印の八兵衛明神、北白川ラジウム温泉、老舗レトロ喫茶スマート珈琲店など
実在する京都の名所も
ファンなら軒並み巡りたくなること必至です。
誰もがのんびりした自分だけの休日を手に入れるために戦っている。
小冒険を笑う者は
小冒険に泣くのだ。
休日の朝のピクニックに似た怠け者の冒険譚を
右手には焼き鳥の串、
左手には生ビールをお供に
(もしくは熱い珈琲にタマゴサンドウィッチ)
小和田君に負けじと
思う存分ぐーたらな妄想特急
暴走させちゃいましょーっ♪
いざ、冒険に向かって飛べ〜! -
ユーモラスな森見ワールド☆
とぼけているけど、破天荒な面白さです。
正義の味方「ぽんぽこ仮面」に跡継ぎと見込まれたのは怠け者の小和田君。
なぜか、ぽんぽこ仮面を追う人たちが現れて‥?
宵山の土曜日に、京都の町で巻き起こる大騒動を描きます。
勤め人の小和田君は、家ではひたすら寝ていたい人。
ぽんぽこ仮面に跡継ぎになるよういわれますが、断り続けています。
ぽんぽこ仮面とは、かわいい狸の手作りのお面をかぶり、旧制高校のマントをはおって、小さな親切をして歩いている謎の人物。
怠け者の小和田君はいっこうに興味がわきません。
家ではゴロゴロ寝ているか、「将来お嫁さんを貰ったらしたいことリスト」を作るのが楽しみというのが、笑えます。
週末に探偵の助手をしている玉川さんという女の子が、ぽんぽこ仮面を追っています。
かなりグウタラな浦本探偵が、ぽんぽこ仮面の正体を突き止めるよう依頼されていたのです。
何者が何の目的で‥?
恩田先輩と彼女の桃木さんは、土日を充実したものにするよう、いつもスケジュールぎっしりに計画しています。
小和田君の先輩なので、毎週声をかけてくるけど、小和田君が応じるのは3週に一度ぐらい。
この対照的なカップルの行動と、方向音痴な玉川さんが絡むことで、事態はどんどん動いていき、さらに、他の作品に出てきた京都の秘密のようなことが絡んできて‥?
ぽんぽこ仮面の正体と、追っていた人たちの意図は‥?
学生の集団も出てきて、初期の作品を思い出したり。
事件の渦中に小和田君が本領発揮して眠り込んじゃうのが、おかしい。
新聞に連載された作品を全面改稿したとのこと。
じつは連載を読んだはずなのだが、思い出せない‥
元のストーリーを知りたくなったけど、まあ作者が忘れてほしいんでしょうね。
意外と集大成的な、まとまった話に変わっているような。
森見作品を読むならば「夜は短し歩けよ乙女」「有頂天家族」「宵山万華鏡」がオススメで、この3作を読んだ後のほうが、この作品はわかりやすいです。「太陽の塔」も関連ないこともないかな。
全然読んでないと、SF並みに独自なイメージの奔流って印象になるかも? 大冒険じゃなくて小冒険、と作者が言ってる通りなんですけども(笑)
あ、「ペンギン・ハイウェイ」もいいんだけど、こちらは別系統の話です☆ -
登場人物達も物語もとてもふわふわしているのに後半凄い勢いでその世界に引きずり込まれる感じはさすがでした。「僕は人間である前に怠け者です」そんな台詞を堂々と吐く主人公。「役に立とうなんて思い上がりさ」と言う怠け者探偵。なんだか名言に聞こえてしまう!森見先生は聖地巡礼の仕掛け人のような方だな。
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土曜日を全力で楽しみ尽くす社会人と全力で怠けたい社会人のドタバタ話。神様も出てきてはちゃめちゃで面白かったです。映像化したら良さそうだけど、内容が濃すぎるので連ドラ出ないと収まらなそうですね。
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京都を騒がす謎の怪人・ぽんぽこ仮面。
ボロボロの旧制高校のマントをまとい、かわいらしい狸のお面を付け、困っている人々に手を差し伸べる正義の怪人です。
そんなぽんぽこ仮面の後継者になぜか選ばれてしまったのが、本書の主人公で目が覚めるほどの怠け者・小和田くん。
舞台は京都・宵山の日。
長い長い土曜日の幕開けでございます…。
いやぁ、待ちわびておりました、登美彦氏!
『宵山万華鏡』で幻想的で魅惑的、何が起きても不思議ではない宵山を描かれていましたが、それと通じる物語でした。
『宵山~』のほうはやや不気味さを感じましたが、こちらは好奇心を刺激される冒険譚です。
宵山の日は世界の境界線がゆるゆるほどけ、見知ったはずの町は姿を変える。
誘われるがままに、導かれるままに、ただただ転がる方向に転がっていくのが怠け者の冒険スタイル。
小冒険を嗤う者は小冒険に泣く。
世の怠け者諸君、小和田くんと一緒になすがままに転がろうではありませんか!-
けーこさん、コメントありがとうございます!
自分の中の怠け者心が刺激されますよ~。
ぜひ楽しんでください(^^)けーこさん、コメントありがとうございます!
自分の中の怠け者心が刺激されますよ~。
ぜひ楽しんでください(^^)2013/06/08
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生粋の怠け者達の話である。
宵山という祭りにて起こる騒動に巻き込まれる。ぽんぽこ仮面の奮闘ぶりが愛らしくもありました。
土曜日メインで語られていて、いかにも怠け者だなと感じました。 -
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☆ 1つぅ!
まづわ、とてもおかしな事が作者自身の手で巻末の「あとがき」に書かれている。要約すると、朝日新聞連載時のこの作品は壮大なる失敗作だったので、時間を掛けてのっけから書きなおしたという意味のこと。
結論から先に言うと、書き直しても再度失敗作である。どうしようもない。
物語の舞台設定に、ありし日の名作『有頂天家族』の雰囲気を感じ取ったわたしは、読前に過大なる期待を持ってしまっていた。すまぬ。その期待は木っ端微塵に打ち砕かれた。あまり内容には触れたくないのだけれど、電気ブランの代わりに登場するのがテングブラン。何じゃそれ?ワロタ。今も実在する電気ブランへの対抗馬としては全くの愚作である。
そして森見くんは現在不調である。みなさん、しばらくは暖かくいや冷やかに見ていて遣りましょう。でも本人自らがこのまま消えて行くならそりゃ勝手にせい!ってことで。
なんだっけ、人事を尽くさづに天命を待つ! そういうオフザケな執筆態度で本当に良いと思っていそうなところが森見くんには有る。おまけに作品のなかで「お嫁さん欲しい」って何度もなんども言うな!
一から修行して出直して来なさいね。待ってるよ。あいや、次の時までもし覚えていればね。-
あれあれ、モリミーはそんなことになっているんですか。体調を損なわれて全面休養されていたと聞きましたが。
「暖かくいや冷やかに」ってところが...あれあれ、モリミーはそんなことになっているんですか。体調を損なわれて全面休養されていたと聞きましたが。
「暖かくいや冷やかに」ってところが素敵です。言えそうで言えません。2013/09/02 -
あ、お返事書くのをちょっと怠けるとすぐに溜まってしまって・・・まいっかww。
ピッポさん、おけいさん、どうもコメントありがとう。
最近は昔全...あ、お返事書くのをちょっと怠けるとすぐに溜まってしまって・・・まいっかww。
ピッポさん、おけいさん、どうもコメントありがとう。
最近は昔全部読んでしまった池井戸さんがバカ売れしてるのに読む本が無くて話題につていかれへん! とかわ困ったもんだ。2013/09/03
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「聖なる怠け者の冒険」(森見登美彦)を読んだ。 森見登美彦作品読むのはまだ三冊目だね。
読んでいて楽しいのって大切なことだよ。
これを読むと京都に住んでみたくなる。 (今は帰省中だが)大学生の息子は京都で一人暮らしをしているわけで、なんか羨ましいぞ。
(聖ならぬ)怠け者の私としては登場人物全てに賛辞を捧げたい。 -
森見ン、お帰り~~!
待ってたよぉ~~。(#^.^#)
人間である前に怠け者です、と言い切る主人公・小和田くんとぽんぽこ仮面、週末探偵の玉川さん、アルパカそっくりの“五代目”など、あはは・・・もう何がなんだか、京都・宵山のお祭りに呑み込まれていくようなぐるぐるの眩暈感をたっぷり楽しんで読むことができました。
これまでの作品中、『有頂天家族』や『宵山万華鏡』はもちろんのこと、『夜は短し歩けよ乙女』や『四畳半…』のあれこれが、何とも贅沢に差し込まれていて、ファンにはたまらないゴージャスなミックスジュース。(#^.^#)
とても大物に見えた“五代目”が土曜倶楽部(なんか凄い怪しさ面々の描写が面白くてくらくら。(#^.^#))のメンバーで、でも、その上には日曜倶楽部というものがあり、その上に月曜倶楽部、火曜倶楽部、と続き、金曜倶楽部で上がりかと思ったら、別の土曜倶楽部がある、なんて、このエンドレス感が森見ンだよね~~~。(#^.^#)
朝日新聞連載時も楽しみに読んでいたんだけど、正直、途中から筋を追うのが大変になってきて、途中からはグダグダに…。(汗)
だから、今、まるっきり新しい長編として書き直しました、と言われると、おぉ、なるほど!と納得した次第。
森見ン、体調は大丈夫ですか。
聖なる怠け者、として、まだまだ私たち読者を楽しませてほしいです! -
森見登美彦ワールド炸裂!
読後絶対京都行きたくなるし、京都の地理を知りながら読むともっと面白いんだろうなって思うよ。
前半の主人公の怠け者っぷりと
後半のドタバタ事態が広がりまくって混沌としていき収束していくあたり、夜は短し歩けよ乙女の映画の作画で見たくなったな〜! -
これでもかってくらい、ザ・森見ワールド。
愛嬌のある文体や、個性的な登場人物たちも、かわいくてちょっと不気味な異界の雰囲気も。
しかし森見さんの京都舞台の本を読んで思うのは、これって京都を全然知らない人が読んだらどんな感じなのかしら、ってこと。
位置関係とか、その場の雰囲気とかの説明は全然ないので、「寺町通り」とか「北白川」とかはたまた「向島」とかの地名が出てきたとき、その場所と距離感がはっきりイメージできるのと、さっぱりわからんのではまた味わい方が違う気がするのだよなあ。
自分は京都に住んだことがあるので、地名だけで景色が浮かんでこの舞台セットをどっぷり楽しめるクチなのですが、そうでない人には登場人物たちが今どこを歩いているのかがよくわからんのではないだろうか、と老婆心ながら軽く心配になりました。
とくに今回はかなり詳細に通りの名前などが出てくるので、地図あったほうがいいんじゃあ・・・と思うくらいで。
まあそれを抜きにしても充分に楽しいお話なのですが、ここまでがっちり分かちがたく土地と結びついている小説も珍しいのではないかしら。
一切の説明を加えないのがある意味作者の勇気でもあるのかもしれんのですが。
ほかの森見作品でも見覚えのある面々も登場します。
腐れ大学生たちもちょこっと出てきて、「閨房調査団」とかもなつかしい。
登場人物たちの台詞まわしとかが独特で、みんながみんなキュートでたまらん。
怠け者、大いに結構! -
おひさしぶりの森見氏でしたが、森見ワールド全開でした。
読中、ああ...このバカバカしい感じ、やっぱりすき!と、何度思ったことか。
「僕は人間である前に怠け者です。」
主人公で、ぽんぽこ仮面の二代目候補である小和田くん。
方向音痴の週末探偵、玉川さん。それから謎の怪人ぽんぽこ仮面。
小和田君の上司であり、週末のスケジュールがぎっちぎちな恩田先輩と、恩田先輩の恋人、桃木さん。
今作も登場人物がとても魅力的。
物語自体はなんとも形容しがたい内容でしたが、森見氏らしい構成で、あれよあれよとのめり込ませる筆力。なんだか変な術でもかけられたかのよう。次第に訳がわからなくなり、なんの話だこれ?と迷子になるのも森見ワールドならでは。
スマート珈琲や京都タワー浴場、糺の森など、おなじみの名所が出てきたり、
マトリョーシカのような狸の蝦蟇口や、テングブラン、とても臭いお香などのアイテムもオモチロイ。
あ~。また京都行きたくなっちゃったなあ。 -
相変わらず、こちらの想像力を試される描写。夏が来ると森見登美彦が読みたくなるし、森見登美彦を読むと京都に行きたくなる。そんな仕組み
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京都に現れた謎の怪人、ぽんぽこ仮面。
『八兵衛明神の使い。万人に親切な怪人。愛すべき狸野郎。」(p.16)
困っている道ゆく人達を手当たり次第に助けて回る善なる存在がぽんぽこ仮面である。
怪人的物語、或いはDark knight 的物語にはVillainの存在がつきものである。
バットマンのジョーカー然り、アンパンのバイキンマン然り。
しかし、ぽんぽこ仮面の敵役はわかりにくい。
これといったVillainは特段いない。
もちろん、謎の組織「テングブラン流通機構」やその走狗「大日本沈殿党」、「閨房調査団青年部」或いはそれらを司る「土曜倶楽部」云々、種々累々の秘密結社とぽんぽこ仮面は対決することになる。
しかし、ぽんぽこ仮面の真のヴィランは「怠けたい」という気持ちだったのではないか。
「怠けたい」はこの高度資本主義社会に到達した日本では、抑圧されるべき悪い感情である。
少なくとも、苦労は買ってでもするべしという価値観は健在であり、たとえ休日であっても、土曜日であっても、その土曜日を『無限に拡張』しようと試みる事が善しとされている。
ぽんぽこ仮面も等しくこの価値観に支配されているようだ。
『「眠るのではない。少しばかり目を閉じて、α波を出すけれども気にするな。眠るのではない」』
そして、真の主人公?である小和田くんは「怠ける」事が生きがいのぐうたら青年である。
彼は夢の中でバカンスへ赴き、夢の中で退屈な夢を見る男である。
物語後半、ぽんぽこ仮面は窮地に陥る。
その窮地を助けるのはこれまで敵視していた「怠け」である事はもはやお決まりなのかもしれない。
しかし、兎角現代は極端である。
24時間働き続け、徹底的な効率化かつ合理化、ダウンサイジングで市場価値が高まる社会構造「一億総活躍」が大号令である一方で、『まだ東京で消耗してるの?』的なる「働き方改革」も同時並行的に追求されている。
どちらかが善でどちらかが悪という構造よりもむしろ、一方にとって一方が悪であるという交流不可能な一方通行両極端な社会となってしまった。
しかし、ぽんぽこ仮面も等しく怠けたい心があり、同時に誰かの役にたちたいという心が共存しているように、我々だって、ほどよく頑張り、ほどよく怠ける心が共存していて然るべきである。
『「わかってますよ。アンビバレントであることは承知してます。でも、これは仕事ですから。」』(p.68)
ぽんぽこ仮面の物語を通じてこんな事を考えてしまっているようではまだ怠けが足りないのかもしれない。
小和田くんを見習って「将来お嫁さんをもったら実現したい事リスト」を作ることとしよう。
著者プロフィール
森見登美彦の作品
