犬を殺すのは誰か ペット流通の闇

著者 : 太田匡彦
  • 朝日新聞出版 (2010年9月17日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022507914

犬を殺すのは誰か ペット流通の闇の感想・レビュー・書評

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  • アエラ編集者が明かすペット業界の暗部。

    日本国内での飼い犬の数が1232万匹(2009年ペットフード協会推定値)、それに対して2008年に殺処分された犬は84,045匹。 殺処分の多さに疑問を持った著者がペット業界の調査に立ち上がった。

    多くの犬が殺処分される背景として、著者は「ペット業者」「飼い主」「行政」の問題を挙げている。

    一番問題なのがペット業者(ブリーダー、ペットオークション業者、小売業者)。
    営利企業である以上、利益を追い求めるのは当然のことであるが、商品は命ある生体。 完全に商品と割り切り、モノの様に生体を扱うのは由々しき問題である。 鮮度が落ちた商品(生後半年経ってしまった子犬等)は独自で処分したり行政に引き取らせたりするのがまかり通っている。 生まれすぎた子犬を間引くことによって高価で販売しようとするブリーダーも居るという。
    そして、著者が一番問題視しているのが、ペットのオークションという仕組みである。 オークションという形態をとるが故に、売れる犬と売れない犬が歴然とし、売れない犬は必然的に闇に葬られる。 オークションを経由する流通では、その途中で1万匹以上がこつ然と姿を消すという。

    二番目として指摘しているのが無責任な飼い主。 引越しで飼えなくなったり、犬の無駄吠え、噛み癖を理由に保健所に連れてくる飼い主が多々いるという。 ただ、その裏には安易にペットを買わせるペットショップが少なからず介在しているのも見逃せない。 犬の3~12週齢は社会化期と呼ばれ、子犬にコミュニケーション能力が芽生えて、周囲から様々な事を吸収していく時期。 その大事な時期を経験しないと情緒不安定な犬になったりするという。 動物は幼ければ幼いほど高く売れるので悪質なペットショップはこれを無視して販売する傾向がある。 結果として懐かない犬を排出し、飼い主によって手放されることとなる。

    三番目としては行政。 ルーチンワークとして動物の殺処分を受けているため、これが前述のペット業者の格好の処理場所となっている。 殺処分数を減らすという努力がなされていなかったり、動物の痛みや恐怖を少しでも軽減させる殺処分方法を真剣に考える自治体はまだまだ少ないという。 この様な行政の体制が悪質ペット業者の温床となっている。 結局はペット業者を儲けさせるために、我々が税金を払っていると思うと行政の怠慢に思えてくる。

    この問題を改善するには個人(飼い主)の意識UPと法整備しか無い。
    現在の日本は緊急で解決すべき問題が多く、動物愛護の優先順位は客観的に見て高くないし、実際高くできないと思う。 ただ、そうは言っても国による法律の改正は地道に進めていって欲しいと願う。

  • 2013年55冊目。

    飼われた犬のうち、100匹に1匹は自治体に持ち込まれ(捨てられ)、年間で持ち込まれた約11万6000匹のうち、約8万4000匹が殺処分されている(2008年度)。
    そんな日本の捨て犬・殺処分を巡る各界の問題や取り組みを、犬の流通・小売り業界を「蛇口」、捨て犬の引き受けを行う自治体を「受け皿」として、構造的に捉えた本。
    この社会問題の全体像が把握できる、とても優れた1冊だと感じる。

    ■8週齢以下の犬を家族から離して流通させることで、成犬時の問題行動を引き起こす可能性が上がり、捨て犬に繋がる。
    ■小売業者が飼い主に飼い始める前に検討すべき事項をきちんと説明する義務は動物愛護法第8条に明記されているが、衝動買いを狙う深夜販売やネット販売への規制はまだまだ。
    ■生体販売業におけるコスト削減は、すなわち動物への粗雑な扱いとなる。
    ■日本独自のオークションという仕組みが、参入障壁も低く、悪質なブリーダーの温床となっている。
    ■ドイツでは民間の動物愛護施設が「犬を探す際最初に行く場所」と認識され、年間25万人を呼び込むまでになっている(引き取り率は98%)

    問題を構造的に捉えて、法律でできること、民間事業でできること、ボランティアでできること、一人ひとりができることを連携しながら実践していくことが大切だと感じる。

  • 広範囲に取材はされているようだが、それぞれの取り扱いは思ったよりも浅めで、内容的なヴォリュームもそれほどではない。
    が、動物好きならずともおそらくは誰もがなんとなく嗅ぎとってはいるであろう、しかしなかなか直視しようとはしないペット流通を巡る闇の世界に明確に切り込んでいる。
    売ったら仕舞い、と言わんばかりのペットショップのあり方。
    本書で扱われている犬・猫ばかりではなく、アリゲーターガーがどこそこの川で見つかっただとか、在来種を駆逐しつつ蔓延る強力な外来生物たちが増殖した原因の一角にも、そうしたショップの姿勢が介在していることは明らかだ。
    他にも、パピーミルやオークションといった、生体を売り物にする上では構造的に不可分な問題がつきまとうシステムが根強く残っていることも、この本は記述している。
    店頭で売れ残った犬・猫や、無責任な飼い主たちが飼養を放棄した犬・猫が、まるで廃車をスクラップにするかのごとく、オートマティックに殺処分されている現状が間違いなくこの国にはある。
    それも税金を使って。
    売る側の良識の低さ、買う側の無思慮ぶり、そして商行為を規定する行政の立ち遅れ。
    これらを鑑みるに、日本のペット業界はまだまだ恐ろしく未成熟であると断定せざるを得ない。

  • 日本全国で推定1230万頭ほどの犬が飼われているが、一方で、年間11万6千頭もの犬が自治体に引き渡され、うち8万4千頭が処分されているという。
    本書は雑誌AERAに掲載された記事を元に大幅に加筆・修正したもの。

    丹念にまとめられた巻末の自治体へのアンケートから、誠実な印象のある本である。
    ただ、少々、結論ありきな感じがする。「かわいさ」を武器にしつけが十分でない幼犬を売り、勢いで購入した無責任な飼い主が飼いきれなくなって処分に走る。業者はまた、売れ残った犬を自治体に持ち込み、処分させる。『犬を殺すのは誰か』とタイトルは質問調だが、著者の中で答えは「もうけ重視の悪徳業者と十分な手立てを講じていない行政」であると結論が出ているのではないか。
    そうした図式は確かにあるのだろう。しかし、業者への取材や衝動買いする飼い主への取材が十分であるようには思えず、それはあるのかもしれないけど、また別の図式もあったりしないのかなぁ・・・?という感が個人的にはぬぐえなかった。

    殺処分ゼロに向けて努力している自治体の紹介やペット先進国ドイツのシェルター紹介などもあった。ドイツの事例を一足飛びに真似することは出来なくても、知ることで得られるものもあるだろう。

    8万という数字は大きい。個人の手には負えないレベルだろう。動物愛護法改訂の動きもあるようだが、いい方向に進むことを願いたい。

    *でも、「8万」は大きいけれど、飼われている犬全体の「0.7%」と思うと、大半の犬がモラルを持って飼われている、という見方も出来るのかもしれない。

    *自分で犬を飼うときに、「保健所から」というのは少し考えたけれど、犬を飼うのは初めてだったこともあり、二の足を踏んでしまった。情報公開が進んでいるわけでもなく、敷居が高い感じがしたのもある。

    *巻末の表によると、純血種の中では柴が飛び抜けて処分数が多く、(うちの犬も柴なので)胸が痛む。

    *日本の動物愛護行政の歴史ってどうなっているのだろう。ちょっと追ってみたい気もする。

  • ペットショップの犬はどうして常に変わっているのか、愛護センターが必要なのは市民ではなくペットショップかも?センターが無くなる日が1日でも早く来て欲しい。人間の身勝手さが憎い。

  • どうして日本では年間30万匹もの犬猫が処分されるのか、ペット産業についてよく調べられていてわかりやすい。非常に参考になった。
    可哀想と同情を誘う書き方でなく、冷静に現状を見つめているとこりが良い。

  • 犬猫を飼いたい人は店で買うのではなく、殺処分される犬や猫を引き取るように!
    世の中には一定数のバカがいるのは仕方ないが、そのなかであとのことを考えずに犬猫を買うバカもいる。ペットショップは命ではなくエサや消耗品だけ売るようになればいい。
    自分も拾った猫用のエサなどを買っているけど、それだけでもけっこうな金額になるはずだ。

  • 2016年8月30日に開催されたビブリオバトルinいこまで発表された本です。テーマは「ペット」。

  • 早いうちに親兄弟と別離させられかわいい時期をすぎたからと捨てられる。命の売買。

  • アエラで連載されていた犬の殺処分について、まとめた一冊。
    本は、部屋にガスを入れて殺処分される痛ましい様子から始まるが、これらは決して目を背けてはいけない事なのだと思う。
    本で取り上げられているのは犬の話だが、にゃんこ達の環境もほぼ同じようなものだろうと考えられる。
    殺処分される家族(愛猫・愛犬)の姿なんて想像すらしたくない…。
    制度の改正で事態を改善できるのであれば、愛護法の改正については注視していかないと、と思った。

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