布のちから 江戸から現在へ

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022508126

作品紹介・あらすじ

アジア文化の中で、手作りの布は、どのように作られ、流通し、愛されてきたのか?歌麿が春画で描いた腰巻きや下帯、新撰組の衣装、バリの儀礼用絣グリンシン、日本の着物の生命樹の柄…江戸学者が自在に論じる快著。カラー口絵8頁。

感想・レビュー・書評

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  • 歴史を振り返ると、布は単に身につける実用的なものでなく、祈祷や埋葬といった、精神世界で重要な意味を持つアイテムだという事が分かった。

  • 近代の大量生産を批判し、布の本来の役目とは何かを論じた前半部分がなかなか面白かった。以下、特に印象に残った内容。
    ●布はメディア
     ガンジーの運動に見える布は、思想と生き方そのものであり、またそれを広く伝えるメディアとして機能した
    ●産業革命によって「手」が殺された
     ベンガル(現バングラデシュ)は薄手の最高級織物「モスリン」の生産地であったが、イギリスの東インド会社が紡績工場を建築し、今や世界最貧国の一部に。。
    ●ベルニーニ
     とにかくひだの表現と表情が美しすぎる
    ●こぎん(津軽の農村刺繍)がかわいい!

  • 江戸

  • この表紙を眺めているだけでも幸せな気持ちになれるのは、私だけではないでしょう。

    続きはこちら⇒http://wanowa.jugem.jp/?eid=1092#sequel

  • 布を言葉にする営み

    着物 大自然をまとっている

    メディアとしての布
    ガンディーの紡いだ糸・織られた布は作品、表現でなくメッセージだ

    189 ブータン 呉
    256 ブータン 花織

  • 布に関する本でありながら
    人間との関わりを中心にした研究は少ないだろう
    歴史を動かしてきた物質経済と物流の中での
    布の役割は文化におさまれず
    文明に政治や戦争に関与し計り知れないものがある

    この本ではマハトマ・ガンディーを例にして
    メディアとしての布を語り
    手仕事が人間が集うことへの大きな媒体となる一方で
    工業化がもたらす人間関係の破壊と盲目性を語り
    最後に時代の流れに翻弄されながらも引き継がれた
    ニホンの織物紀行で締めくくっている

    布の保護性・皮膚感・透視性・装飾性・代弁性・閉鎖性・
    神秘性・媒体性などの機能を通して人間そのものを描いている

  • 近世文化・アジア比較文化専門の著者による、布の意味するものや布を織ることについての考察。

    著者は、江戸学が専門だが、布にも長く興味を持ち、造詣が深い。

    本書の内容は書き下ろしというよりも、これまでに断片的に書かれてきたものをまとめたもののようだ。
    最初の「メディアとしての布」の章は、タイトルから窺い知れるように、素人にも読みやすいとは言えないが、読み進むにつれ、興味深く、また具体的な事例が増えて読みやすくなる。
    体系化されているとは言えないが、「布」というものが持つ世界の奥深さを感じさせるに十分なものとなっている。
    本書中で照会されている、堀切辰一という人の『襤褸達の遍歴』という、布切れの実物が添付されている25万円の本、というのもすごい。

    個人的には、「結ぶ、解く」の項がおもしろかった。『万葉集』には紐を歌った歌が数多くあるのだという。紐が象徴するエロスの考察も興味深い。
    帯のお太鼓が近世に生まれたものだというのも、「ああ、そうなんだ」という感じ。あんな大変なもの、誰もが毎日結ぶのはちょっと骨だよな(^^;)。

    写真もそれなりの数が収録されているのだが、欲を言えばもう少し多くの写真を見たかった。ケルトの「組紐人間」とか、どういうものなんだろう・・・?

  •  ガンディーに出会う前のインドの織工たちは、上等な布地はすべて、外国製の錦糸で織っていた。なぜなら細い糸を紡いでいなかったから――。

     このことを知った著者は驚いたという。江戸時代に庶民の間で人気だった粋な縞がらの「唐桟(とうざん)」は、もともとインドの布を模倣したもので、高い技術に支えられていたが、それでも本場にはとうてい敵わなかったのだ。十八世紀後半までのインドは世界一細い錦糸を紡ぎ、大量に輸出していた。しかし産業革命と植民地支配によって、職人たちは自立を奪われる。ガンディーは自ら糸紡ぎを実践し、一枚の手織り木綿を体に巻きつけて非暴力の思想を示した。布はこのとき、共同体の中でのメディアの役割を果たす。

     インドネシアのように布に神々が織り込まれる地域があれば、日本や韓国のように布に自然を描く地域がある。著者は制作現場を訪ねる一方で、伝統に憧れる富裕層の購買欲の問題も指摘する。

    (週刊朝日 2011/2/11)

  • 「布」の奥深さを再認識させてもらえる。
    人間にとって 織る とは
    人間にとって 包む とは
    人間にとって 巻く とは
    人間にとって 結ぶ とは
    人間にとって 解く とは

    じっくり 考えさせてもらえる
    スローリーディング に
    ぴったりの 本 です

  • これはいい!!

    布を中心に、歴史から現代にかけてのモノのもつ力を問う。
    とても深い研究の上に成り立っていることが良くわかる。

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著者プロフィール

1952 年神奈川県横浜市生まれ。江戸文化研究者、エッセイスト、法政大学第19 代総長、同大名誉教授。2005 年紫綬褒章受章。『江戸の想像力』( 筑摩書房) で芸術選奨文部大臣新人賞受賞、『江戸百夢 近世図像学の楽しみ』( 筑摩書房) で芸術選奨文部科学大臣賞、サントリー学芸賞を受賞。近著に『遊郭と日本人』(講談社)、
『江戸問答』( 岩波書店・松岡正剛との対談) など

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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