身体のいいなり

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 441
感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022508195

作品紹介・あらすじ

腰痛、アトピー性皮膚炎、ナゾの微熱、冷え性、むくみ…著者がずっと付きあってきた「病気といえない病気」の数々。ところが、癒治療の副作用を和らげるために始めたヨガがきっかけで、すっかり体質が変化し、嗜好まで変わってしまった。不思議に仕事も舞い込むようになり、いまさらながら化粧の楽しさに目覚めてしまう。そして乳腺全摘出を決断。乳房再建手術の過程で日頃考えたこともなかった自分の「女性性」に向き合わざるを得なくなり-。ベストセラー『世界屠畜紀行』の著者が、オンナのカラダとココロの不条理を綴った新境地エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 幼稚園児のころから体調不良だった作者が、乳癌をきっかけにヨガで健康になったり女性性を振り返ったり、の健康エッセイ。とにかくヨガは効くらしく、対人スキルのない医者にかかるとしんどいらしい、というのがすごく伝わってきた。

    理屈で行動するところとか夫に頼らないところとか、「もてない系」のにおいがする...と思っていたら、能町みね子が友人として登場してきた。やっぱりねー。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「「もてない系」のにおいがする」
      一度だけ、話を聞きに行きましたが、面白い方でしたよ(ボソボソ話されるので判り難かった)。。。
      「「もてない系」のにおいがする」
      一度だけ、話を聞きに行きましたが、面白い方でしたよ(ボソボソ話されるので判り難かった)。。。
      2012/10/03
    • なつめさん
      ボソボソ話されるとはイメージどおりです。『世界屠畜紀行』はテンション高いですけれど
      ボソボソ話されるとはイメージどおりです。『世界屠畜紀行』はテンション高いですけれど
      2012/10/04
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「『世界屠畜紀行』はテンション高い」
      この本が文庫になって、しかも続編も進行しているらしい。今まで閉ざされていた面に切り込むにはテンション上...
      「『世界屠畜紀行』はテンション高い」
      この本が文庫になって、しかも続編も進行しているらしい。今まで閉ざされていた面に切り込むにはテンション上がらざるを得なかったのかも。。。

      拘ってますが、今はモテない事無いんじゃないかな?(根拠は有りません)
      2012/10/09
  • 見極めるということがつくづく好きな人なんだな、と思う。それでいて見つめることのできないものもあることを(それを精神的な弱さであると認識しつつ)ちゃんと認めることもできる人である。そこまでとことん極められる(例えば屠畜の現場)のであれば、そんなこと(自分の傷口)位何でもないんじゃないか、と思いがちなことから、目をそらしてしまうのだと正直に告白する。その告白によって、感受性の小さなひだが鞣されてしまわずにいるとも言える。怖いものは怖いのだ、と。そこにホレる。

    頭では分かっているつもりでも、脳もやはり身体の一部であることは否定しようもなく、気付くと理性的に考えているつもりでも身体が訴える感覚に捉えられてしまっていることはよくある。例えば「女性」と一括りにしてはいけない、と解ってはいても、こういう本を読んでいると、女性とは、とつい考えている自分を見つける。それは同じ人としてではなく、むしろ理解不能な生き物として突き放して観ようとする視点だ。いやいやそんな風に捉えてはだめなんだと倫理としては解っているけれど、身体の一部である脳は身体のセンサーが流してくる信号に正直に反応してしまう。その乖離。

    内澤旬子の捉える世界はどこまで行っても女性の側から見た世界だ。ニュートラルな知識を代表する言葉を介在させつつ、その語りたいところに男性が知り得る観念はないような気がする。内澤旬子と自分をつなぐ唯一のものは、頭と身体の乖離、という考え方だ。病気を通して身体が訴えてくるものと頭が理解しよう(したい)とするものが一致しないことの苦労をこれでもかと書き連ねる。矛盾の芽があちらこちらで花を咲かせようとする。

    しかしその言葉に自分の身体が拒絶反応を起こさないのは、そして矛盾の花が仰々しく咲き誇らないのは、頭と身体の関係についてどちらの側の声にもじっくりと耳を傾けている内澤旬子の姿があるからだ。例えばそれを解り易く置き換えてみると、今熱っぽい身体は自分に早く横になってぐったりしていろと訴えてくるが、頭の方は何で身体はそういうのだろうと考えている。風邪か、昨日食べたものが悪かったか。そこを見極めようと頭は熱っぽい身体に鞭を振るう。その両方の訴えを内澤旬子は掬い上げる。

    しかしこの本のタイトルにもある通り、最後は身体のいいなりなのである。だれしも身体がもう動きませんと訴えてきたらどうすることもできない。意志は身体の言い分の正しさをきちんと検証することなどできないのだ。騙されているかも知れないとしても、最後は身体の横暴に従うしかないのである。

    さあ、もうここらにして横になろう。身体に全てを委ねよう。

  • 2022/09/22

  • 身体
    病気

  • 単純なので私もヨガを始めたくなった。このとしになるとあちこち痛いし。

  • 内澤旬子さん「身体のいいなり」、2010.12発行、43歳の時の作品です。闘病記やエッセイではなく哲学書のような気がします。2005年、38歳で乳癌に罹患した後、いかに生きるかの覚悟のようなものが伝わってきます。ご本人の持病の歴史をイントロに、入院・検査・手術、副作用のすごさ、乳腺全摘出・乳房再建に至るまで。途中ヨガの話もあります。この方の腹の括り方は、たくましいというのは勿論ですが、なぜか小気味よい感じがします。この後、本を捨て、夫を捨て、東京を捨てて小豆島に行かれます。

  • 作者のことは知らなかったけれど装丁画とタイトルで興味を持って図書室から借りてきました。人づきあいが苦手でアトピー持ちで、配偶者は居るけれど完全独立採算性をとっていて、会社勤めが性に合わずイラストと製本と海外ルポのフリーランスをしている著者。乳癌にかかり何度も手術をしながらも、すぐ死ぬ訳じゃないから仕事もしないと~、と悲観も楽観もせずに淡々と事実を受け止めて弱々しいのか強いのかわからない独特の感じで生きていく様を綴ったエッセイ。前書きからして面白かったです。

  • 時々考える。
    もし、自分が癌にかかったら、とか、もし自分に収入がなくなるとしたら、とか、パートナーが死んでしまったら、などなど。あれこれ状況を考えたり、備えたり、覚悟したりして生活してみても、自分の心の動きなんて、実際にそうなってみないとわからない、ということはよくわかっている。
    この本を読んで、細かな状況と、状況によって心の変化が次々と起こってくることがよくわかる。
    こうなったらこんな気持ちになった、とか、こう状況が変わったらこんな悩みが出てきた、とか。
    やっぱり、将来を心配するより、何より今の状況をじっくり観察していくしか、生きる道はないのかな、と実感した。
    行き当たりばったりで生きていくしかないのかな。

  • アトピー、冷え性、腰痛、遺産過多、など病気といえない不調の塊だった著者が40手前にして乳がんが見つかり、ヨガなどをしているうちになんか前より健康になって元気になってしまった、という自叙伝。
    闘病記というには本人がごまかさなすぎて感動を煽らない。というかそもそもそういった趣旨のものを毛嫌いしている。
    常につきまとう金銭の問題、癌患者どうしのやりとり、ここまで遠いと思ってた自信の女性性と向き合うところなど、生生しくて、正直で甘え下手な人だなあという印象。
    自分だったらどうするだろうか。
    当事者はなってみないとわからないものだなあ。
    癌だからといってすぐ死ぬわけではない、働けないとお金が稼げない、生活できない、という末期がんとは別の、でも本当の怖さ。

  • ガンになって初めて「身体が求めることをやった」。
    それが、ヨガ。ヨガを通して、アトピーやO脚、腰痛、冷え性、不眠などが改善され、生理がくるようになり、元気になったというのだ。

    癌という致死性の病気になったにも関わらず、最初の文章はかなりあっけらかんとしている。そこになんだか爆笑してしまった。

    しかし、自分自身の4回の手術(全摘出、乳房再建等)を通して、癌病棟の空気感や人間関係、妊娠中の家族と癌家族の温度差、自分の身体が変化していくことや生活への不安やストレス、友人の死、などを通して、ただ「あっけらかん」としているだけではない文章が繰り広げられていく。

    全然、被害者ぶっていない。
    どうして私が・・・という雰囲気がない。
    自分に与えられた境遇となるべくさらりと向き合う姿がかっこよくて、ぐいぐい読んでしまった。

    「これから書くアトピーや癌も、痛みや痒みやだるさが消えてしまうと、苦しかった記憶もどんどん忘れて表から消えてしまうのだから、身体というものはおもしろい。けれどもどこかで覚えてはいる。すこしでも痛くなれば直ちに思い出し、ひどくしないようにと速攻で対応するだろう。」

    これに深く共感である。

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著者プロフィール

ルポライター・イラストレーター

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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