空也上人がいた

  • 朝日新聞出版 (2011年4月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784022508508

みんなの感想まとめ

介護をテーマにしたこの物語は、草介、重光さん、吉崎さんの3人の登場人物を通じて、彼らの人間関係や内面の葛藤を描き出します。特に、吉崎さんの罪の意識の告白は心に残る場面で、派手さはないものの、優しさが感...

感想・レビュー・書評

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  • 空也上人がいた

    老人介護を仕事としている若者と何かと彼の世話をやく中年のケアマネージャ、そして風変わりなケアーされる老人。その三人の関係性の中で、老い、恋、死が語られます。
    空也上人は、無常な世の中を生きていく上での救いのイメージとして描かれています。
    介護人をすぐ首にしてしまいながらも、何故を全く話さない老人。そんな老人のケアーを特殊老人ホームの仕事に切れてやめてしまった青年が担当することになります。次々に繰り出される老人の奇妙な頼みに当惑し、怒りつつもケアマネージャの助言によってなんとかケアーを続けるのですが、その三人の関係性が年の離れた恋に起因していることがだんだん明らかになっていきます。うすうす感じていた気持ちに気づかされていく二人とそれを楽しみながら導く老人。そして、老人のあっけない死。
    この小説はある意味山田氏の遺書なのかもしれないなあなどと感じながら、人とはなんとやっかいなものだろうと思いつつ、まあ、それが人だろうなんて生意気なことを思ったりもした竹蔵でした。
    ちょっとしんどくて辛気くさい物語ではありますが、そろそろとすり足で近づいてくる老いを考えさせられる本でもありました。

    竹蔵

  • 私は実は、空也上人のことは聞いたことがなかった。でも、この話はなかなか面白かった。吉崎老人の強烈な個性に引きつけられた。

    ただ、最後の展開にはがっかりした。あのまま何も起こらずに終わって欲しかった。

  • 老人介護とか自殺とかかなり重い内容で話が展開していくにもかかわらず、かなり読みやすい。軽く読みすぎてしまってはいけないような気にさえなるくらい。あまり感情移入せずに読み終えて、最後にじっくり考えてもらいたいという筆者の意図があるのかもしれない。

    誰にも言えない過去ほど大袈裟なものではなくても悩みを誰かに言えたらかなり救われると思う。だけど理解してもらえることはたぶんないと思うし、自分が欲しい言葉が返ってくる確率は非常に低いと思う。私はこの本を読んで、自分をあまり責めない自分勝手な生き方をもっとしてもいいような気がした。少し救われた。

  • 主な登場人物は3人だけ。吉崎さんがずっと抱えている罪の意識を告白する場面が良かった。派手じゃないけど優しい物語。いい小説だった。

  • 介護ヘルパーの青年と40代のケアマネ、そして介護される老人。
    役割を超えた関係のようで、やはりその枠内の付き合いのようで。
    生と性←実践はなくとも。は切り離せないものなのだな、と。
    そして空也上人の存在が刺さる。性善説、というか、人には誰しも人に言えないちょっとした悪事やミスやあるだろうから、きっと読む人皆に刺さるのではないかと思った。

    一番良かったのは老眼に優しいフォントサイズだったこと!

  • 27歳のヘルパー(男)と、彼に淡い恋心を抱く46歳のケアマネ(女)と、そのケアマネに複雑な欲望を抱える81歳老人(男)の不思議な関係。なぜか気が合うというか、とても良い関係。通常仲良くなる理由って、RPGのパーティのように、自分にない魅力とか得意ななこととか憧れとかがあること多いと思うんだけど、この物語では自分の弱さみたいなところがちょっとずつ滲み出て、それを共有することで関係性が維持されてる。このつながりの糸は一見弱そうで、本書の途中でもその糸が切れ、関係性が破壊される。でも、別のつながり方をして、それはとても強いものとなる。こういうことってあるんだなあととても共感する。空也上人の存在がぴったりマッチしていて、図鑑で見たあの像、みてみたくなった。

  •  昭和9年生まれの山田太一さん、今年83ですね。「君を見上げて」「丘の上の向日葵」、ドキドキしながら読んでた頃を思い出します。「空也上人がいた」、2011.4発行です。吉崎征次郎81歳、個人的介護をする27歳の介護士中津草介、ケア・マネージャー重光雅美46歳の物語。読みやすく、そして読み応えのある作品でした。
     一気に読了。山田太一「空也上人がいた」、2011.4発行。登場人物は3人。ホームヘルパー2級の介護士・中津草介27歳、ケアマネージャー・重光雅美46歳、吉崎征次郎81歳。読み応えがあり、かつ味わい深かったです。

  • 中津草介27才。
    重松雅美46才。
    吉崎征次郎81才。
    三毛猫、年齢性別不詳 。
    空也上人。

    それだけ・・・



    「もう願いごとも
    いくらも果たせない齢になり
    あと一つだけ
    小説を書いておきたかった。」

    2011年 山田太一さんの作品。


    中津草介27才。
    特別養護老人ホーム(特養)で勤務していたが、ある事件がきっかけで退職。現在は吉崎征次郎の介護中。

    重松雅美46才。
    ケア・マネージャー。独身。

    吉崎征次郎81才。
    独り住まいだが、ある程度の生活力はあるが今は草介に介護をしてもらっている。

    三毛猫、年齢性別不詳 。
    ところどころで出没。

    ......................................................

    この青年、女性、老人。
    これまでの生き方、価値観
    3人とも異なっている。
    3人とも秘密がある。
    3人とも心に傷をもつ。

    それでも
    この3人は日々真剣に生きてきた。
    そして生きている。
    それぞれを思いやりながら。


    例えば青年(草介)・・・
    特養でヘルパーをしていた時に
    認知症の女性を乗せた
    車椅子から
    老女を転げ出してしまう。

    “はずみ”で。

    誰も責める人はいなかった。
    「よくあることだから」と。

    しかし
    草介は特養を退職し
    ケアマネの重光さんの紹介で
    現在の吉崎さんの介護につく。

    ある日吉崎さんから
    京都に行くよう依頼を受け
    六道の辻を通り
    西光寺(六波羅密寺)で
    木造の空也上人と出逢った。

    空也上人――――――――――――
    死屍累々の鳥辺山を
    歩き続けた。

    善人悪人なく
    誰もが持つ生きている悲しさ
    死んでしまう事の平等さを
    汚れた草履で
    疲れても
    小さな声でも
    少し顎をあげながら
    それでも
    歩き続けた。――――――――――――

    楽しみや悲しみや悔しさを
    お互いに共有しながら
    生きていく。

    約2ヶ月
    3人での時間が終わる時
    空也上人と出逢う意味を知った。

    吉崎さんの持ち続けた自責の念
    重光さんの虚勢の強さ
    草介の自分との葛藤

    そんな3人であっても
    ともに歩いてくれるのが
    空也上人。

    ......................................................

    さすが山田太一さん。

    私のような普通な人間でも
    「よくあること」でも
    人によって
    それぞれ
    どうしようもない
    大きな悲しみや傷
    弱さや欲を抱えている。

    それでも
    誰にでも
    空也上人と出逢う事が出来るんだ!

    生きる希望と勇気を与えてくれる。

    この本も大切にしよう。

    あと
    三毛猫は六道の辻かしら…

  • 「ただ空也上人に会わせたいと思った。なにもかも承知で、しかし、ただ黙って、同じようにへこたれて歩いてくれる人に会わせたいと思った。」

  • 訥々とした会話なのにゆるやかな流れを感じる話の進め方が穏やかで物悲しくて何とも言えない読了感でした。

    介護施設で老人を死なせてしまった罪悪感を持つ主人公の青年、一回り以上年上の女性ケアマネ、主人公を個人的に雇う老人の三人の微妙な心の揺れ方が軽くも無く重くも無い、淡々とした文章で書かれていました。

  • 私は遺書というものを書いた事もないし読んだ事もないが、この老人の遺書は自分もこういう風に自殺したいと思わせるぐらい素晴らしいというか、切ないんだけど仕方ないというか、こうやって人生を全うし決着付けたいというか、自殺できるウチに自殺しておくってひとつの生き方というか、自殺は悪い事ではないんじゃないのか?と思わせるほど危険でもある。
    この老人は81歳で命を絶つが、このぐらいの年齢になるとある種の覚悟はできるのかもしれない。が、確か鈴木大拙だったと思うが、「人間長生きをしないと分からない事がある」というような事を言っており、自分には90歳や100歳でしかわからない事を知りたいという欲もある。(でもその前にボケちゃったらわからないしな・・・)
    81歳が46歳に、46歳が27歳に恋をする。無理だと分かっているが心のどこかで諦められない。吉崎は重光の苦しみが分かるし、また草介の苦しみもわかるからこそ、2人の苦しみをなんとかする事で自分も救われたかったのではないだろうか。吉崎のやり方は不器用だが、重光や草介を励ましたいという気持ちには心打たれる。27歳を一人称にして書くやり方も上手い。
    とにかく山田ワールド全開で、台詞でどんどん話が進んでいくのは流石脚本家。具体的な情景や配役まで思い浮かべながら読み進められる。
    人や自分を裁くのではなく、また赦すのでもなく、ただ一緒にへこたれて歩いてくれる。そんな力が空也上人にはあるのだろう。是非実物を拝見したい。

    ちなみに私のイメージした配役は
    吉崎=山崎勉
    重光=宮崎美子
    草介=妻夫木聡

  • ヘルパーと老人とケアマネと、
    介護の現場で風変わりな恋がはじまる。
    ぬぐいきれない痛みを抱える人々と一緒に歩く空也上人とは?
    都会の隅で起きた、重くて爽やかな出来事。

    道尾さんきっかけで読了。
    短いながらもハッとさせられる文章が多いのは本業が脚本家だからだろうか。会話が抜群に上手い。
    物語は、主人公の介護ヘルパーの青年と一癖のある老人とのやり取りを中心に、なんとも言えない寂しさを描いている。
    老人は青年になにを感じ、何を伝えたかったのか。
    それを何度も読んでみて理解できるようになれたら、と思う。

  • 介護士の男の人が主人公。なんともいえない雰囲気のある話。許されているのかなという気持ちになる。
    2013/1/29

  • 山田太一の最新作。

    特別養護老人ホームでの仕事を辞め、無職になった主人公草介のもとへ、元同僚であった重光が訪れるところから話ははじまる。

    知り合いの老人の介護を個人で引き受けて欲しいという。
    依頼人は吉崎征太郎という老人。

    物語は、27歳の草介、46歳の女性重光、そして81歳の吉崎という三人を中心に展開される。

    山田太一の作品の多くは、社会的弱者に光をあてることで、その人達が持つ闇を浮かび上がらせ、世の中の歪みを顕在化させるというもの。
    特に秀逸なのが、登場人物同士の会話だ。
    何気ない言葉の掛け合いの中で生じる、ある種のズレ。
    それは徐々に亀裂を大きくし、やがてそこから心の闇が溢れ出て来るという手法。
    小説にしろテレビドラマにしろ、このあたりに山田太一の真骨頂がある気がする。

    この作品も、山田太一の本領が遺憾なく発揮されている。

    こういう作品を読むと、やっぱり山田太一は嫌いになれないなぁと改めて思う。

    言語化されにくい人間同士の距離を表現した物語性。
    そして読み手を刺すような台詞の応酬。
    それでいて読了後にはホッとさせてくれるあたり、正直巧いと思いました。

    最近著者がシナリオを書いたテレビドラマを拝見するに、往年のパワーが無くなっているような印象があったのですが、この小説においては、懐かしい山田節を感じる事ができました。

    今後も頑張って欲しいと思います。

  • 久々に山田太一を読んだ。
    やっぱり、映像が浮かんでくるその構成力と、淡々とした冷めた語り口が、独特の世界感を生み出している。
    いつのまにか山田太一の指揮で踊っているような。

    空也像は好きで六波羅蜜寺まで見に行ったけど、下からは見たことがない。
    でもその眼力はすごかった。さすが運慶の4男康勝作。鎌倉中期作のこの像は、慶派に代表される、くりぬいた部分に水晶を嵌め込む「玉眼」という手法が使われている。どこまでも見通す目は確かに平伏してしまうような凄みがある。空也の修行でやせ細った身体、少し乱れた法衣、その口から魂の叫ぶのように出てくる六仏。
    恐らく山田太一はこの像を見てこれだけの話のプロットがまざまざと浮かんだのではなかろうか。それだけの像なのである。

    ラストは「目の前のセックス」がそうきたか、という感じはあった。まるでダンスのような、儀式のような。敢えてそのものの描写は避けて。
    正直すごく意外ではなくて、山田太一ならこうくるだろう、と想像は出来る。その辺は、「飛ぶ夢をしばらく見ない」などの小説より弱い気がする。

    しかしやはりその流れる音楽のような進行と余韻を感じさせる文体は好きだ。
    一貫して見えるのは、枯れた色。
    吉崎老人だけではない。若い草介も、ケアマネの女性も。
    いや、むしろ吉崎老人のほうが色をもっているのかもしれない。

    以前ラジオドラマで大滝秀治さんが吉崎老人役をやったそうだ。
    見かけではもっと俗物的な老人がいいような気がする。

  • どうなんでしょう、全然いいと思わなかったけど。文章、これでいいんですか。この作者では、『君を見上げて』という、身長の高い女性と低い男性の恋を描いた本を読んだが、しみじみとした味わいのラブストーリーだったという記憶があるんだけど……

  •  会話の表現がうまいのは、脚本家が本業だから当然。それと最近、『キルトの家』を見たからか、老人は山崎努、ケアマネージャーは松坂慶子がイメージぴったりでおもしろかった。27歳のヘルパーは、どんな役者がいいのだろうと考える面白味もあった。小説にしたのは、話の内容が過激なものがあるからなのか。老人もケアの人々もまだまだ自由な行動が可能なのではないかと思わせる展開も見えます。

  • 介護士の若者が抱えてしまった誰にも言えない心の重さを思いやる老人の話。
    空也上人の目が光るシーンが衝撃的。
    人間のしでかす罪と、魂の救済がテーマ。
    考えさせられた。

  • H24/1/2

  • 何だか最後のおじいちゃんにショック・・・
    そこがなければ良かったのになぁ~
    一瞬で読み終わります

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著者プロフィール

1934年、東京生まれ。大学卒業後、松竹入社、助監督を務める。独立後、数々のTVドラマ脚本を執筆。作品に「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎たち」他。88年、小説『異人たちとの夏』で山本周五郎賞を受賞。

「2019年 『絶望書店』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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