和子の部屋 小説家のための人生相談

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022508706

作品紹介・あらすじ

角田光代、江國香織、川上未映子、金原ひとみ、朝吹真理子、綿矢りさ、加藤千恵、島本理生、川上弘美、桐野夏生…小説家にまつわる秘め事を、ぜんぶ明かしてしまいます。

感想・レビュー・書評

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  • 阿部和重が「和子」と女性名を名乗り、錚々たるメンバー(角田光代、川上弘美、江國香織、金原ひとみ、桐野夏生…)の女性作家達を相手に人生相談、という好企画。対談内容は恋愛ネタから創作技法論まで多岐に渡っており、理路整然としていながらも時にユーモラスな阿部氏の語りが冴えわたっている。金原さんの言葉を借りれば「司会、進行、捌き、どれも圧巻の一言」。その場にいたわけではないけれど、対談シーンの臨場感は伝わります。阿部氏が自身の瞬発力を鍛えるため、対談直前に相談内容を読むって試みは…ガチだな、すごい!けっこうドキドキしたけど読む側も面白かったです。
    創作論、小説論は、興味深い話題もあったもののちょっと難しい部分もあり。どちらかというと下世話な話題の方に食いついてしまいました(笑)なので一番面白く読めたのは、加藤千恵さん&島本理生さんとのトリプル対談でのコイバナ。赤裸々な語りにハラハラしちゃったけど、作家達のプライベートが垣間見えて嬉しかったな。皆さん仲が良くて楽しそうだなと思いました。

    これまた下世話ではありますが。対談時には阿部氏も含め何人かのゲスト作家達はバツイチだったようなのですよね。今ではその何人かは再婚。そして、ゲスト作家の一員でもあった川上未映子さんと阿部氏は現在夫婦。この対談時はまだ夫婦ではなかったんだよね~。今では母になられた川上さんを思うと…子を持つことに対しあれこれ心配していた当時の彼女が初々しく感じられましたわ。

  • 女性作家の人生相談に「和子」が答える形式の対談集。創作論としてもものすごく面白かった!角田光代、綿矢りさなど普段愛読している作家はもちろん、読んだことのない桐野夏生さんの回も人生論として興味深く(近頃ビビッと来ないと言う桐野さんの感覚わかる気した)、川上弘美さんの編集者に対するモヤモヤも、ふむふむと読む。何よりまだ阿部さんと交際前の川上未映子が最新作『夏物語』のテーマにダイレクトに通じる会話を繰り広げていることに驚く。のちに阿部さんが川上さんの子どもの父となるとは…!!「扶養ジャンキー」ってパワーワードだな。悩みに真面目に耳を傾け、瞬時に的確でクレバーな助言をくれ、なおかつしゃべっていて楽しい「和子」のような友人、是非欲しいものです。(ラインナップの中にひとり、以前から苦手だった作家がまじってるんだけども、やっぱり対談読んでも苦手だった笑。中篇を途中まで読んでやめただけでこうゆうこと言うのフェアじゃないけども)

  • 作家の阿部和重さんが、女性作家達(錚々たるメンバー!)の人生相談に答えるという対談集です。

    さて、内容ですが、アベちゃんってすごい。
    すごく頭がいいし、何でも分かりやすく論理的に説明できる能力が素晴らしいです。
    そしてとても真摯に答える姿勢も素晴らしい!

    ものすごく観念的な小説の話から、普通の恋バナまで色々な相談があるのですが、どれも大変真摯に答えられています。

    作家というのは、とにかく日常の全てが仕事と繋がっているのだなと思いました。そして言葉選びの的確さにはウットリします。すごく抽象的な話題でも、すごく分かりやすく話されていて、とっても興味深く読みました。
    こんな風に考えて、作品を作っているのだなぁとか、恋愛中もそんな事考えちゃうんだ?とか。

    どの方の相談も面白いのですが、特に印象に残ったのは江國香織さんでした。

  • 和子の即興でも崩れない精密さを垣間見る 「和子の部屋 小説家のための人生相談」

    阿部和重氏のシンセミアが大好きな私。
    グランド・フィナーレまでの著作は大体読みました。

    が、それ以降の作品はあまり手を取っていなかったのです。
    しかし気になる作家では居続けておりました。

    この本は、そんな阿部さんが「和子」として、小説家の悩みに
    対して即興で回答を出していくという対談集です。

    女性作家の中で気になるのはもちろん「川上未映子」さん。
    のちに、結婚する相手なんですよね。
    芥川賞作家同士の結婚は初めてだったのかな、2組目かな。

    それでお子さんもいるとなると、その子の文筆の能力というものに
    今から期待をしてしまうわけなんですが、
    この対談は川上さんには夫がいるので
    まだ付き合ってはいないのかな、
    でもいい感じなのかなと勘繰りながら読みました。

    そんな下世話な話をさておくと、作家の方というのは本当に
    書くことが好きで、辛くて、嫌になっちゃいながらも書くことを
    やめられない人たちなんだなというのがひしひしと伝わってきました。

    言葉に対しての執着心、対象を言語化することに、ここまで
    意識的なのだな、ということを、周りの風景の描写の変換を見るだけで
    感じてしまいました。

    そんな女性作家に対しては、阿部さんはちょっと違うのかな。
    映画的というか、自身でもおっしゃるようにコンセプト命、
    構成を組んで組んで組んで、それを言葉に変換していくという
    感じがするので、物事に対して距離感がある。
    俯瞰して見渡せるので、女性作家へのずばっとした回答が、
    しかも即興でできるのだなと納得しました。

    シンセミアとか本当に映画的なんだけど、実写映画化しないなぁ。
    「映像化できないと思っていたこの作品が、いよいよ映画化!」
    みたいなことにいずれはなると思ってるのですが。まだ先ですかね。

  • 2009~10年頃の雑誌対談。阿部が「和子」として、女性作家10人から人生相談を受けるというものだが、特に阿部がいわゆる女性言葉を使ったりするわけではない。

    なかでもその後2011年に阿部と再婚することになる川上未映子の回がどうも妙な感じで、「お前ら絶対やってるだろ」感がものすごい。こんな文字起こしの対談からも伝わってくるのだろうか。

  • 角田光代「幸福と小説は両立するの?」
    江國香織「言葉しか信じられません」
    川上未映子「怖くて仕方ないのです」
    金原ひとみ「毎日プレッシャーで吐きそうです」
    綿矢りさ「片思いが実らない女です」
    まで読んで、これは本当ただただ小説家が小説家として悩み相談してるだけ?と思い投げ出した。
    それと、阿部和重の回答をみて、女性の悩みって男性には根本的に理解できないんじゃないかって。
    相談者はそうですねえって言ってるけど、私としては阿部和重が偉そうに言ってることって的外れ。

  • このところ立て続けに読んだ金原ひとみさんの
    名前をこの本の中に見て読んでみた。
    金原さんってどんなひとなのか、と。
    (作家であること、作品を書くことにとても真摯な方のようだった。)
    9名の女性作家ばかりのラインナップのうち、角田、川上、綿矢、
    加藤&島本の面々は「女子」一般のよくある恋愛相談で、タイトルの「小説家のための…」ではなかった。しょうもなかった。
    一方、江國、金原、川上のお三方からは作家としての毅然とした姿が
    窺えて、立派だなぁと感服した。特に川上さんの「谷崎や漱石のような先人に対する敬意」という言葉。崇高で謙虚だと思う。
    和子と称する阿部和重さんの言葉が所々でたいへん面白かった!

  • 阿部和重が好きなので読んでみた。タイトルからして砕けた内容を想像していたが、あらあら非常に真面目な対談集で小説家がディープな悩みを真剣に相談していてビックリ。阿部和重が瞬発力を鍛えたいと語っているようにその場で初めて質問状に目をとおすスタイルでライブ感を楽しめ、また瞬時に質問を理解し具体的なアドバイスを話せる阿部和重の発想力にしびれた。

  • こんな相談行ってみたい。
    小説家のための人生相談。
    相談相手が豪華すぎる。
    心象描写が抜群の角田光代。
    日本語がきれいな江國香織。
    闇の中での希望を描く川上未映子。
    アイデンティティを覆す金原ひとみ。
    短い言葉で心を描く加藤千恵。
    不安定な関係性を描ききる島本理生。
    好きな作家が勢ぞろい。
    そして、それをまとめる阿部和重。
    何てたまらない一冊。

  • 阿部和重が大好きなのはもちろん、対談相手も大好きな作家ばかりずらりなので、興奮。ものすごく興味深く、それぞれの作家が、どうしてあのような作品を発表するのかがすごくよく分かった気がする。とりわけ、江國香織の作品でしばし感じられる印象の原因が垣間見れたのは有益だったなぁ。なるほど! だから、なのね! と。
    みんな独自の考え方をきちんと持っていて、それをきちんと言葉にできることがすばらしく、私も自分のことばでこういう話を誰かととことんしてみたいと強く思う。
    みんなそれぞれ共感できたけど、特別強くそれを感じたのは角田光代と桐野夏生。答えがないからこそ、小説を書き続けられることはステキだな。

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著者プロフィール

1968年生まれ。1994年「アメリカの夜」で群像新人賞を受賞しデビュー。1997年の『インディビジュアル・プロジェクション』で注目を集める。2004年、大作『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞、第58回毎日出版文化賞、2005年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞受賞。『シンセミア』を始めとした「神町」を舞台とする諸作品には設定上の繋がりや仕掛けがあり、「神町サーガ」を形成する構想となっている。その他の著書に『ニッポニアニッポン』『プラスティック・ソウル』『ミステリアスセッティング』『ABC 阿部和重初期作品集』など。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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