大津波と原発

  • 朝日新聞出版
3.65
  • (17)
  • (41)
  • (30)
  • (9)
  • (1)
本棚登録 : 311
レビュー : 52
  • Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022508744

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 思考に言語を与えてくれた。

  • 原発=一神教だと論破しているのが、なんだかスカッとしていてよかった。
    唯一絶対の神とどう応接していくかという思想的難題に心と体の芯から挑んだことのない日本。
    西欧がこの難題に彼らなりの解答をやっと見出したあたりで、
    「追いつけ追い越せ」を合言葉に横から列に割り込んだ日本。
    順位だけは好成績を保ち、パッと見ちゃんとしているように見せかけてきた。
    その中でごまかしてきた、あいまいにしてきた部分のツケがまわってきたのか。
    読後に、勝手にそんなことを考えた。

  • 原発というテクノロジーの捉え方について、非常に有益な視点が得られた。
    やはり内田樹と中沢新一はすごい。宗教の視点が重要であることも再確認。

  • エビデンスのないものを信じようとしない態度、を内田樹は常に批判しているが自分もそうした態度をとる人間だ。

    エビデンスのないものを感じ取る力、を持っているのならそれは素晴らしいことだと思うが、力がない人がそれに従うのは困難だ。

    みんな自分の判断力を駆使して必死に生きているわけで、自分にとって納得感のない言説を信じてリスクをとることはできない。

    逆にエビデンスのないものを信じろ、という主張は精神論に転がり込む危険も持っていると思う。



    寧ろ大事なことは、何を信じるかではなく、違うものを信じている人間とどうやって共存するかだと思う。

    そこで必要なものは異なる意見を尊重する態度、他人の意見に聞き耳を持つ態度、異なる意見を調整するためのメカニズム、意思決定プロセスなど、である。

    そもそも思想の自由はそういった点を重視して過去の歴史を基に作られていると思うし、この国が採用しているルール、=憲法はそういった思想の基に作られている。我々は神々の争いから解放されなくてはならない。



    1点気になるのは、思想の自由競争という考えで、それ自体は問題ないと思うが、あくまで上記のようなそれを成り立たせるインフラがあって初めて通用する考えではないかということだ。

    つまり、常に自分の意見が変わりうるという態度、自分と異なる意見を排除することを目的とした意見は認められない、という意識、が思想の自由の前提として必要だと思う。

    ちょうど、自由市場がそれを成り立たせるインフラ(ルール違反者は制裁されるための仕組みとそうした期待)を前提に成り立つように。



    リベラリズムとはそういうことだと思う。

  • 『大津波と原発』日本論として秀逸。構造的に見落とされる何かが引き起こした災害であり、今後同じ過ちを犯さない為に必要な思想は何か語られている。
    エネルギー革命の第七次に当たる原子力の特異性は生態圏の外にあるエネルギー源とするところにあり、水力・火力とは同列に扱えないものである。原子力は一神教の神様のように恐ろしいものであったのに、それに対する接し方が出来なかったことに原因の一つを求め、日本という集団は多神教的に接することしかできなかったと反省?する。
    一通り読んだが、文字がしっかり捉まえられず、苦労した。普段考えたり生活したりするのとは視野が随分違い、読みこなせなかった。

  • ラジオで聴いたんだけど、買ってしまったよ。
    11/05/19。

  • Fukushimaの問題を同時代的にみるのでなく、文明史とか人類史的に考える視座を与える一冊。

  • 震災以降ずっと、こういう本の登場を待っていた。

    原発事故は、「原子力発電所の事故」にはちがいない。けれども、事故は事故でも、この事故の解決はただ技術の問題でなんとかなるものではない、震災以後そういう予感がずっと続いている。だからこそ、物理や経済ではなく、哲学や宗教学といった方面からの真摯な発言を聞きたかったのだ。そしてこの一冊は、まさに原発の扱いから東北の復興ヴィジョンに至るまで、現在進行形でぼくらが直面しているさまざまな問題についてきわめて示唆に富んだ提言とともに論じられている。

    たとえば、地球の生態圏の外側から持ち出してきたものである原子核の中に操作を加えることで成立する原子力発電を「第七次エネルギー」としたうえで、これまでのエネルギーとまったく別次元のものであると定義する。そして、生態圏の中に存在しないという理由から原子力を「一神教的な神」に類するものだとし、思想的な理解を疎かにしたまま技術だけでコントロールしようとしてきたことにそもそもの問題があったと指摘する。

    さらにそこから、東北の復興、エネルギー問題、首都機能の分散、新しい農業の提案などをふまえた中沢新一による「緑の党のようなもの」の提唱にまでつながってゆく……。

    大胆でありながら、きわめて腑に落ちる発言が散りばめられた、想像力を刺激される一冊。

全52件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

うちだ・たつる 1950年東京生まれ。武道家(合気道7段)。道場兼能舞台兼私塾「凱風館」館長。神戸女学院大学名誉教授。翻訳家。専門はフランス現代思想史。東京大学文学部卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。ブログ『内田樹の研究室』。



「2019年 『そのうちなんとかなるだろう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

内田樹の作品

ツイートする