大津波と原発

  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 311
レビュー : 52
  • Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022508744

作品紹介・あらすじ

未曾有の震災後に浮かび上がる、唯一神のごとき「原発」。原子力という生態圏外のエネルギーの憤怒に、われわれはどう対峙し、無惨に切断された歴史を転換させていくべきなのか。白日のもとに晒された危機の本質と来るべき社会のモデルを語り尽くす。

感想・レビュー・書評

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  • 本質をついてる。でも学者の限界も感じる。

  •  東日本大震災から3週間後の4月5日に、ユーストリーム配信の番組「ラジオデイズ」のために行われた鼎談をまとめたもの。
     120ページ足らずの薄い本で、小冊子に近い。ボリューム面での物足りなさはあるのだが、内容は刺激的である。

     顔ぶれを見ればわかるとおり、本書の眼目は大震災をめぐる時事的解説にはない。むしろ、その深層にある思想的意味について考えてみよう、という試みなのだ。

     3人のうち、最も示唆に富む発言をくり返しているのが中沢氏で、本書の主役という感じ。
     言いかえれば、東日本大震災の思想的意味とは、人類史的スケールで、しかも宗教的側面からも測られるべきものだということだろう。ゆえに、宗教学者・人類学者・思想家である中沢氏の言葉が、いまこそ生彩を放つのだ。

     本書の圧巻は、「原子力と『神』」というチャプター。
     そこで中沢氏は、原子力という人類にとっての「第七次エネルギー革命」が、「生態圏の完全に外にあるエネルギー源を取りだそうとした」ものであり、「地球生態圏の中に生きていた生き物の体の変成したもの」である石油・石炭などとは次元の異なる意味をもっていたと指摘する。
     「原子力は一神教的技術」であり、日本の多神教文化にはもともとそぐわないものだったのだ、と……(そんなふうに断片的に紹介しても、未読の人には意味不明だろうが)。

     この鼎談をベースに、中沢氏に東日本大震災の思想的意味を深く掘り下げた大著をものしてもらいたい。

  • 70年しか経っていない。
    私達が最初に手に入れたテクノロジーである「火」でさえ未だに完璧にはコントロール出来ずにいる。
    にもかかわらず、70年の歴史しかないテクノロジーを完全にコントロール出来る筈など決してない。

  • 花泉図書館。

    科学の進歩を否定しているわけではない。ただ、人間がコントロールできる限界を知れ、と。人知の及ばないものをしっかりと恐れる気持ちを忘れるな、「驕るな、日本人」ってこと。

    生態圏エネルギー
    生態圏以外からのエネルギー⇒原子核


    「原子力」=「神」説。
    誰一人責任を取れない技術。ずっともやもやしていたものが、ハッキリとしてきた感じ。

    一神教的思考と神仏習合。
    聖域を崇める、畏れる。

    「原発を止めると経済が滞る、それでもいいのか?」というフォーマット的原発推進者の意見。
    【人の命の話をしているのに、そこに金を持ち出すな】
    まさにコレ。イデオロギーの硬直化は教育(というかある意味での洗脳)の果たしてきた役割も大きいよね。

    結局4年前の反省も何もなく、原発再稼働しちゃいましたね。外交・経済・内政などなど様々なファクターが複雑に絡まった「原子力ムラ」はなかなか解すことはできないのかもしれないけれど「誰かがやらなきゃ」なんだよね。

  • 根本から、わからないと、難しい・・・

  • 原発問題を語る。

  • 二年経つて、この本の中身のように、首都機能を移しても良いのでは無いかと思うのです。

  • 原発を通して見えた国の問題を、思想論から捉えるというもの。
    思想を簡単に考えれば、日本人のモノの考え方、発想の仕方というところだろうか。
    具体的にどう展開するかの実践を、どの方向に持っていくか。

  • 東日本大震災以降、いろいろな文筆家、思想家がいろいろな本をだしているどれ一つとして読むに価しない本はない。
    これも宗教学者の中沢新一とフランス思想研究科の内田樹ともうひとりはよくしらない平川さんの鼎談である。平川さんは聞き役なので中沢新一と内田樹の考え方がよくでていると思った。
    原子力発電は一神教という考え方は面白いが、そこに本質があるというのはちょっと無理があると思った。でもそれはもの毎のとらえ方としては十分ありうるし、参考になる。一神教とだとん喝破しても現実社会の動きに反映されないのだ。政治家が、東電がそれで立居振舞を変えるとは思えない。
     思想家という人たちは それで世の中を変えようとしているのだろうか。中沢新一が緑の党を立ち上げるといっていたが、本当に立ち上げるものは政治活動をしないとなっている。
    そうなのだ。大江健三郎も立候補しないし、中沢新一も立候補しないみな泥沼に足をつっこまないのだ。あくまで高踏派ということなんだろうか。

    理想論を振りかざし財政赤字を招いた美濃部知事もいらないが、産業界からの声に屈する政治家もいらない。やはりビジョンを示しつつ一歩を踏み出すことのなんてむずかしいことか。

    ちょっと脱線したが、まぁ 面白い本です。鼎談をテープおこしにしようという気持ちは大いにわかる。

  • 東電の対応とか、マスコミの報道とか、私の中にもやもやとわだかまっていた疑問が氷解していく思いでした。原発の賛否を論ずる前に読むべし!
    「一刻も早く出版することを優先しました」的な祖父江慎さんの思い切った装丁がまたステキ。手を抜いているってことじゃあ、ありません。そこまで計算されているのかな?ってことです。

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著者プロフィール

うちだ・たつる 1950年東京生まれ。武道家(合気道7段)。道場兼能舞台兼私塾「凱風館」館長。神戸女学院大学名誉教授。翻訳家。専門はフランス現代思想史。東京大学文学部卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。ブログ『内田樹の研究室』。



「2019年 『そのうちなんとかなるだろう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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