平成猿蟹合戦図

  • 朝日新聞出版 (2011年9月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (504ページ) / ISBN・EAN: 9784022508928

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりの吉田修一。
    やっぱりこの人の本は登場人物のキャラクターに引き込まれていく。ありえないように思えてもありえそうに思わせてしまう登場人物のキャラクターが憎めない。

  • やっぱり吉田修一のキャラクターを描く力、凄すぎる。一人一人を大好きになってしまう。
    ただ、前半はサブキャラだったのに、終盤は純平が急に単独で主人公に昇格したような違和感が拭えない。
    あれ?湊は?美月は?夕子は?皆、純平応援団に降格してしまっている。それなら、もう少し前半も純平を魅力的に描いて欲しかったなぁ…。
    ただ、湊一族が不幸だけで終わらなかったのが良かった。

  • おもしろかった!
    さすが!
    いろんな人との繋がりとか力関係とか思惑とか…
    絡み合って 読む手を止めたくなかった!

  • 読み始めから長崎の五島列島で乳飲み子をかかえて
    福岡にいって連絡が取れなくなった旦那を心配する女の子が
    出て来て、この旦那はきっと二人を捨てて逃げちゃったんじゃ
    ないのかなって暗い物語なのかと心配して読み始めた。

    ところが女の子美月が福岡、東京、歌舞伎町と旦那を探して
    移動して、その後数々の出会いがあり、物語の視点も
    美月、美月に声をかけてくれた純平、世界的チェリストの湊、
    湊の秘書の夕子さん、湊の祖母、などなどころころと
    かわり、場面展開も見事で、あっという間に読んでしまった。

    最初のひき逃げ事件からひいた方も目撃して脅迫したほうも
    破滅に向かっていくのかしらと心配して読んでいたのも
    杞憂で、両方の当事者が絡まりあい、最後には選挙戦で勝負って
    いう読んでない人にはなんなのかわからない展開で面白かった。
    純平が横道世之介にかぶる人柄でひょうひょうとしてて憎めなくて
    この人ならよい人生を歩むんだろうっていう確信みたいなものも
    あり安心して読み進められた。

    最後の殺し屋とか殺傷事件とかはちょっと劇的にするためにわざと
    投入した余計なスパイスのような気がしないでもないけど
    ドラマ的小説としては読者が次はどうなるのかって興味をもって
    どんどんページをめくるのが目的だろうからその目的は達せられた
    小説だったと思う。読みかえしはしないけど、楽しい読書だった。

  • さすが、実力のある作者だけあって、様々な登場人物達の視線から物語が絡み合いながら展開するという構造。で、その話を引っぱる主だった登場人物がなんと8人(美月、朋生、純平、友香、湊、美姫、夕子、サワ、っだったよね?)
    それぞれが色々な思い、出会い、出来事を経ながら不思議と繫がり、終盤にすんごい事をやってしまいます。読んでる方もビックリ。「この話を、まさかそうしちゃうなんて。思ってもみなかったわ!」と強く感じました。

    最終的には読者のヨミ通りに落ち着いて、出来すぎな感はあるのですが、その出来すぎ感から見え隠れするのが、よくある筆者の自己陶酔や読者への媚では無く、この物語で「スカッと」して貰う事のみを狙ってるという気がして、二重三重に上手いなぁと思いました。なるほどね、猿蟹合戦図。

  • 平成猿蟹合戦図

    私が吉田修一氏の小説が好きなのは、登場人物のが勝手に物語を紡ぎ出すのを感じるから。
    登場人物のプロファイルと初期配置さえしっかりしてあれば、後は各キャラクタが動き回りつながることによって物語ができあがる。そういった自然発生的な物語なので、作家の作為があまり感じられず(全くないと小説にはならないけど・・・)すんなりと胸に落ちてくる気がします。
    今回は、歌舞伎町でふらふらと暮らしているお調子者だけど情が深い若者が、いろいろなまわりの人とつながることによって、衆議院議員を目指すというお話。サイドストーリーとしては、離島から出て来た若い親子やヤクザとママ、有名なチェリストとそのマネージャなどが出て来ます。
    90才を超す、チェリストの曾祖母の「すかっとする物語には毒がある」という言葉が印象的です。それから「人には信じ切れる人と信じ切れない人がいて、信じ切れる人は社会で勝者になる。誰も負けた人のことは信じない」というニュアンスの言葉も気になりました。
    500ページの大作ですが、読書好きの方は是非。

    竹蔵

  • さすが吉田修一.一騎に読ませる.でも後半は少し詰め込み過ぎ感はあるかな?もっと平凡で日常をを描き,その中からきらりと光る物を描き出すのが吉田修一の魅力だと思う.横道世之介やパレード何かに比べると自分の中では少し落ちるかな.

  • 夜中の三時まで一気に読んでしまった。ありえん展開がまた面白い。相変わらず吉田修一の描写展開力には脱帽ですわ!

  • 登場人物で混乱した。
    その割に話の印象は、序盤の方が強くて
    後半ほとんど覚えてない。

  • 人を騙せる人間は自分なりの理屈をもってして自分のことを正しいと思える人、騙される側は自分が本当に正しいのかと疑える人。
    自分のことを疑える人間を簡単に捨ててしまういまの世の中。

    根本的な疑問で、なぜ人は仇を討つとか復讐とかに執着するのだろう

  • 読んでいくうちに気持ちが盛り上がっていく感覚が心地よかった。
    (盛り上がり始めるまでは、一冊がはてしなく厚く感じた)

    登場人物が多い!と思ったもののいつのまにかしっかり区分けがついていたのは、
    やはりおもしろかった証拠だろう。
    いったいどうやって収拾つけるのだ、と思いながらページをめくり続けた。
    タイトルからどんな話なのか想像しにくかった部分と
    してみたところでまるで見えてこない不透明さは
    読了後の満足感が埋めてくれる。

    一年後なにが起こっているのか、本当にわからない。
    現実にもそういうことはあり、その感じがとてもリアルに伝わる。

    嘘はやっぱりだめだよ、と思いつつも
    ついてしまった経緯は心が痛む。

    おばあちゃんからの話で終わるとは、ありそうだけどまったく予想できなかった。

    方言の部分が読みにくかった。これが躓かずに読めるとおもしろさは
    増したと思う。

  • タイトルに惹かれて手に取った本。
    吉田修一さんの本は2冊目。

    小説のラスト、瑛太くんはお猿さんと蟹さんの出てくる話のスカッとするところが好きだとサワさんに言う。
    サワさんは、「……スカッどする話さは毒っこ入ってらど」と答える。
    この小説はこの会話の通りの物語だと思う。

    物語の最初、歌舞伎町の路地で座り込む美月は騙された女性にしか思えず、ディズニーランドのことなんて考えてる場合じゃないよとハラハラした。
    朋生と純平は早々に痛い目を見るとしか思えず、こちらはこちらでハラハラした。
    この物語の主だった登場人物はどこかのんびりしていて、人が良くて、なんか心配になるタイプが多い。
    夕子さん、美姫ママ、高坂さんのなんと頼もしいことか。彼らがいなければ今頃何人かは東京湾に沈んでいたのかも‥。

    そんな風にハラハラしながらも、ある時は可愛い瑛太くんに癒やされ、ある時は美姫ママと高坂さんのプロポーズシーンにときめき、あれよあれよという間に大団円。
    あぁ…、良かった。皆さんお幸せに。
    めでたし、めでたし。

    猿蟹合戦ほどスカッとはしなかったけれど、ほっとするラストだった。

  • ──この世に神様は存在する
    本当に心優しい人たちを、けして神様は見捨てない。

    私も『正直者が馬鹿を見る世界』であって欲しくはないと願う人間の一人だから。

    「平成猿蟹合戦図」というタイトルではあったが、なるべく先入観を持たないために、前知識も仕入れず、他の方のブクログのレビューも一切読まず、まっさらな気持ちでこの本に取り掛かった。

    冒頭から前半の途中あたりまでは、少しかったるい感じの話の流れ。
    島から幼子を連れて長崎、そして東京まで来ても夫の朋生に会えない美月の様子は、夫に裏切られ、転落していくようなストーリーになるのかと思った。
    ところがどっこい、その美月にあっけらかんと優しく接する純平のキャラ設定がそういう話ではないことを気付かせる。
    そして読み進むに連れ、歌舞伎町の単なるバーテンだった純平という人間がどんどん魅力的な人間に描かれていく。
    それでも、物語自体は淡々とした雰囲気のままだ。
    轢き逃げ事故を起こし、その加害者が違う人間だったという事実に遭遇し、ヤクザが絡んだりしてきても、取り立ててサスペンス的な切迫感はなく、のんびりと田舎の田園風景を眺めているようなストーリー。
    俄然話が面白くなるのは、美月が水商売を始め、人気が出て、さてこれからどんな展開に? という辺りからだろうか。
    その後はとんとん拍子というか、物語世界は思いがけない奥行きを見せ、最後には国を動かす政治家に登り詰める話にまでなるのだから、なかなか面白い。
    吉田修一の面目躍如といった展開。
    文中、良いアクセントになるのが90歳を超えたサワおばあちゃんの秋田弁での話、というか、語り口。
    この語り口が最後まで続き、心温まる優しい気持ちでこの話を見事に締めくくる。
    『横道世之助』と『悪人』を足して二で割ったような世界。
    いや、それに連作短編集『日曜日たち』も足して三で割った世界と言うべきか。
    様々なキャラクターの人物が適度に配置され、それぞれの役割をこなしていく群像劇としては見事。
    また、ところどころで短編の名手吉田修一ならではの、さりげなく心に残るような光った文章も見え隠れする。
    そして最後は見事に子蟹達が親の敵を討ち、ずる賢い猿をやっつける。
    ちょっと爽快で、それこそスカッとする結末でした。
    因果応報。めでたしめでたし。

    これを読んで、あらためて最新作「太陽は動かない」を考えると、あれはあまりにも畑違いのジャンルに挑戦し過ぎて無理があったのじゃないか、と思ってしまう。
    サスペンス仕立てのスパイ小説など、吉田修一じゃなくても、そちらの専門作家がいるのだから彼らに任せておけば良いのだ。
    あの分野は、無理に吉田修一が入って、書いてみる世界ではないと思う。
    吉田修一殿、貴方の魅力を存分に発揮できる得意な分野で小説を書き続けていってください。

  • たくさん登場人物が出てきて、群像劇になっていく。
    最新作の吉田修一作品、こんな感じなんですね。

    あれこれ巻き込まれ、あちこちで起きたことがつながっていくストーリーが面白い。どんどん読む気がわいてくる。
    歌舞伎町のバーテン、ホスト、韓国バーのママ、チェロ奏者、マネジメント事務所、赤ちゃん連れの若い女性、等々。読むにつれこの人たちが頑張ったり変わったりするのだから楽しい。
    思っても見ない方向に進む話はとても面白かった。

    浜本純平、いいやつだ〜、明るいのがいい!
    初めのうち「純平、考え直せ」と最近読んだ「真夜中のマーチ」のせいで奥田英朗をどうしても連想してしまい困った。
    一気に物語に引き込まれたい気持ちの妨げになってる気がして。
    いや、この群像劇「横道世之介」のゆるい流れの線ではないか。
    苦悩や理不尽さを掘り下げるのとはちょっと違う。
    輪郭がはっきりし過ぎない、くどくないこの感じに慣れてくると安心して読める。

    ファンとしてこの作品で、やっぱり吉田修一さんいいなと思ったこと。
    描写がこと細かではないのに、それぞれの人、場所の空気感がとてもよく伝わってくる。
    例えば、サワの家の様子やサワの人柄。
    美姫のマンションの様子、瑛太をあやす様子。
    友香が颯太に誘われて行った海での一日。
    作り込んでない、いかにも!がないところが良いんです。

    今回それぞれの心のうちが、その人物の方言で書かれていた。
    長崎、秋田、大阪、東京。いい感じであった。

    何より好きなのは、人を大切にしているのが感じられるところ。
    そんな職業、とか、そんな田舎、とか、そんな年寄り、とかないです。
    さりげなく優しくて好きだ。

  • 面白かったです!(*^_^*)

    なんかフワフワと頼りない歌舞伎町のホスト・朋生(田舎に妻と赤ちゃんと置いて、フラフラしてんじゃないよ!)と、
    お調子者の、韓国パブのバーテンダー・純平が、成り行きで轢き逃げ犯を恐喝し始めたら・・・??

    私は、日々、地道に平穏な幸せを求める人々の話が好きなので、(つまり、ダメンズがダメなんです)
    朋生を探しに九州から出てきた妻・美月の描写から始まるこのお話、もしかしてリタイヤかな・・とも思ったんだけど。
    不穏なエピソードが次々に出てくるというのに、なんでだろ、大丈夫、この人たちは幸せになれる! と思わせられる匂いがして、ドキドキしながらも最後まで一気読みしてしまいました。

    始めは、登場人物たちもバラバラと出てくる群像劇っぽさで、まぁ、それはいいとしても、なんか、中心点が定まらなくて落ち着かなかったんだよね。でも、段々に、巧みな伏線と共に話が一つの方向に向かい始め、こう来るかぁ~~~!(*^_^*) という、気持ちのいい「やられた感」がありました。
    タイトルの意味も最後まで読んで、ちょいと俯瞰してみて初めてわかったし。

    「悪人」のような、深く深く人間を描いた話はもちろん傑作だと思うけど、こんな、一見、軽いタッチで、平成の閉塞感にあえぐ私たちの話として、ちゃんと読ませてしまう吉田さん、やっぱり好きだなぁ、と思います。

    これ、映画にしたら面白いと思う。
    朋生は、イケメンなら結構誰でもやれると思うけど、純平の役はやりたい役者さん、多いんじゃないかなぁ。


    思いっきりネタばれです。





    そっか、お調子者の性格って政治家に向くんですね。(*^_^*) 恐喝までするような阿呆な奴なのに、なんか憎めない男の子だなぁ、と思ってたら、こんな使い道があったか!という意外性と痛快さ。
    しかも、最後の最後まで、純平は純平のまま。人格的に大きく成長した、という流れにならないのがよかったなぁ。(頼りない若者が人に頼られるようになった、という一文はあったけど。)
    朋生も朋生のままで、ホストの経験を活かしながら、ちゃんと純平の選挙戦アシストをするんだもの、もう、笑っちゃう。

    普通、小説には、
    「嘘をついたら必ず後でバレて痛い目を見る」
    「悪いことをした人には、いくら動機があってもその報いが来る」
    というお約束があるはずなので、嘘をついているほうに肩入れしてしまっていたから読者としては、そこがとても怖かったのだけど、(美月がシングルマザーと偽ってタレントになったこととか、轢き逃げ犯が実の兄を身代わりにしたこと、しかも、事故ではなく確信犯だったことなど)
    なんか、上手い具合に収束したり、報いは来たけど致命傷ではなかったり、とセオリーをはずしているところも嬉しかったです。(*^_^*)

  • 吉田作品にハズレ無し!
    とはいえ終盤はテレビ同様やっつけ仕事的な駆け足だった。

  • 殺されなくてよかった~~
    ちょっとお間抜け?・・・と思ってたら
    いい話になりました

  • サクセスストーリ何でしょうか。
    園さんがあまりにも優秀なんでしょうか。

  • 4.0 登場人物が多く、読み始めの頃は苦労しましたが後半は楽しめました。

  • 展開も物語もよく練られていて、すごく面白い。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

吉田修一の作品

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