平成猿蟹合戦図

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022508928

作品紹介・あらすじ

新宿で起きた轢き逃げ事件。平凡な暮らしを踏みにじった者たちへの復讐が、すべての始まりだった。長崎から上京した子連れのホステス、事件現場を目撃するバーテン、冴えないホスト、政治家の秘書を志す女、世界的なチェロ奏者、韓国クラブのママ、無実の罪をかぶる元教員の娘、秋田県大館に一人住む老婆…心優しき八人の主人公が、少しの勇気と信じる力で、この国の未来を変える"戦い"に挑んでゆく。希望の見えない現在に一条の光をあてる傑作長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり吉田修一のキャラクターを描く力、凄すぎる。一人一人を大好きになってしまう。
    ただ、前半はサブキャラだったのに、終盤は純平が急に単独で主人公に昇格したような違和感が拭えない。
    あれ?湊は?美月は?夕子は?皆、純平応援団に降格してしまっている。それなら、もう少し前半も純平を魅力的に描いて欲しかったなぁ…。
    ただ、湊一族が不幸だけで終わらなかったのが良かった。

  • おもしろかった!
    さすが!
    いろんな人との繋がりとか力関係とか思惑とか…
    絡み合って 読む手を止めたくなかった!

  • 読み始めから長崎の五島列島で乳飲み子をかかえて
    福岡にいって連絡が取れなくなった旦那を心配する女の子が
    出て来て、この旦那はきっと二人を捨てて逃げちゃったんじゃ
    ないのかなって暗い物語なのかと心配して読み始めた。

    ところが女の子美月が福岡、東京、歌舞伎町と旦那を探して
    移動して、その後数々の出会いがあり、物語の視点も
    美月、美月に声をかけてくれた純平、世界的チェリストの湊、
    湊の秘書の夕子さん、湊の祖母、などなどころころと
    かわり、場面展開も見事で、あっという間に読んでしまった。

    最初のひき逃げ事件からひいた方も目撃して脅迫したほうも
    破滅に向かっていくのかしらと心配して読んでいたのも
    杞憂で、両方の当事者が絡まりあい、最後には選挙戦で勝負って
    いう読んでない人にはなんなのかわからない展開で面白かった。
    純平が横道世之介にかぶる人柄でひょうひょうとしてて憎めなくて
    この人ならよい人生を歩むんだろうっていう確信みたいなものも
    あり安心して読み進められた。

    最後の殺し屋とか殺傷事件とかはちょっと劇的にするためにわざと
    投入した余計なスパイスのような気がしないでもないけど
    ドラマ的小説としては読者が次はどうなるのかって興味をもって
    どんどんページをめくるのが目的だろうからその目的は達せられた
    小説だったと思う。読みかえしはしないけど、楽しい読書だった。

  • さすが、実力のある作者だけあって、様々な登場人物達の視線から物語が絡み合いながら展開するという構造。で、その話を引っぱる主だった登場人物がなんと8人(美月、朋生、純平、友香、湊、美姫、夕子、サワ、っだったよね?)
    それぞれが色々な思い、出会い、出来事を経ながら不思議と繫がり、終盤にすんごい事をやってしまいます。読んでる方もビックリ。「この話を、まさかそうしちゃうなんて。思ってもみなかったわ!」と強く感じました。

    最終的には読者のヨミ通りに落ち着いて、出来すぎな感はあるのですが、その出来すぎ感から見え隠れするのが、よくある筆者の自己陶酔や読者への媚では無く、この物語で「スカッと」して貰う事のみを狙ってるという気がして、二重三重に上手いなぁと思いました。なるほどね、猿蟹合戦図。

  • さすが吉田修一.一騎に読ませる.でも後半は少し詰め込み過ぎ感はあるかな?もっと平凡で日常をを描き,その中からきらりと光る物を描き出すのが吉田修一の魅力だと思う.横道世之介やパレード何かに比べると自分の中では少し落ちるかな.

  • 夜中の三時まで一気に読んでしまった。ありえん展開がまた面白い。相変わらず吉田修一の描写展開力には脱帽ですわ!

  • 登場人物で混乱した。
    その割に話の印象は、序盤の方が強くて
    後半ほとんど覚えてない。

  • 人を騙せる人間は自分なりの理屈をもってして自分のことを正しいと思える人、騙される側は自分が本当に正しいのかと疑える人。
    自分のことを疑える人間を簡単に捨ててしまういまの世の中。

    根本的な疑問で、なぜ人は仇を討つとか復讐とかに執着するのだろう

  • 読んでいくうちに気持ちが盛り上がっていく感覚が心地よかった。
    (盛り上がり始めるまでは、一冊がはてしなく厚く感じた)

    登場人物が多い!と思ったもののいつのまにかしっかり区分けがついていたのは、
    やはりおもしろかった証拠だろう。
    いったいどうやって収拾つけるのだ、と思いながらページをめくり続けた。
    タイトルからどんな話なのか想像しにくかった部分と
    してみたところでまるで見えてこない不透明さは
    読了後の満足感が埋めてくれる。

    一年後なにが起こっているのか、本当にわからない。
    現実にもそういうことはあり、その感じがとてもリアルに伝わる。

    嘘はやっぱりだめだよ、と思いつつも
    ついてしまった経緯は心が痛む。

    おばあちゃんからの話で終わるとは、ありそうだけどまったく予想できなかった。

    方言の部分が読みにくかった。これが躓かずに読めるとおもしろさは
    増したと思う。

  • タイトルに惹かれて手に取った本。
    吉田修一さんの本は2冊目。

    小説のラスト、瑛太くんはお猿さんと蟹さんの出てくる話のスカッとするところが好きだとサワさんに言う。
    サワさんは、「……スカッどする話さは毒っこ入ってらど」と答える。
    この小説はこの会話の通りの物語だと思う。

    物語の最初、歌舞伎町の路地で座り込む美月は騙された女性にしか思えず、ディズニーランドのことなんて考えてる場合じゃないよとハラハラした。
    朋生と純平は早々に痛い目を見るとしか思えず、こちらはこちらでハラハラした。
    この物語の主だった登場人物はどこかのんびりしていて、人が良くて、なんか心配になるタイプが多い。
    夕子さん、美姫ママ、高坂さんのなんと頼もしいことか。彼らがいなければ今頃何人かは東京湾に沈んでいたのかも‥。

    そんな風にハラハラしながらも、ある時は可愛い瑛太くんに癒やされ、ある時は美姫ママと高坂さんのプロポーズシーンにときめき、あれよあれよという間に大団円。
    あぁ…、良かった。皆さんお幸せに。
    めでたし、めでたし。

    猿蟹合戦ほどスカッとはしなかったけれど、ほっとするラストだった。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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