週末は家族

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 220
レビュー : 59
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022509253

作品紹介・あらすじ

シェイクスピアに心酔する小劇団主宰者の大輔と、その連れ合いで他人に愛を感じることができない無性愛者の瑞穂は、母親の育児放棄によって児童養護施設で暮らす演劇少女ひなたの週末里親になって、特殊な人材派遣業に起用することになるが-ワケあり3人が紡ぐ新しい"家族"の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 作者である桂さんの本は毎回「なるほど」って思わされます。
    きっとテーマを決めて、そのテーマを表すのに最も適した設定・環境を用意し、肉付けしていくっていう書き方なんだと思います。
    だから、きっとテーマがぶれないんでしょうね。

    今回は「世間の思い込みに囚われるな」っていうテーマでした。
    主人公は、打算的に友人関係から夫婦になった二人と、そこに週末だけ子供として家族になる女の子。
    こうやって書くと、ドロドロしてそうな話ですが、内容はカラっと爽やかです。

    普通とは違う主人公たちは3人とも、世間と外れていることに悩んだり、ストレスを感じています。
    でも、そんなことで苦しむ必要はないんだ!っていうのがこの本の結論。
    人生楽しんだもの勝ちっていうのは、頭では分かっていてもなかなか難しいですよね。
    勉強になりました。

  • シェイクスピアに心酔する劇団主催者、大輔とその妻で男性を愛する事が出来ない無性愛者の瑞穂は週末だけ児童養護施設から、ひなたという少女を預かり疑似家族になる。
    その目的は大輔が副業でしている人材派遣業-誰かの家族になり、演じるという仕事のため。
    ひなたの演技をたまたま目にした大輔がその子役としてひなたに白羽の矢をあてた。

    利害により結びつく三人。
    大輔は世間的な肩書きと結婚する事により得られる利便性のため、瑞穂と結婚した。
    瑞穂もその事は承知済みで、二人の間に男女の愛はないが、友情はある。
    そして、二人がひなたを子役として利用するのと同じように、ひなたの方も週末だけでも自分の自由になる時間や場を得る事ができる。
    そんな関係性の三人がそれを飛び越えて、徐々にお互いを人間として認め、心通わせていく。

    子供は親といるのが一番幸せ。
    結婚には愛が必要。
    そんな世間の固定概念を打ち破った話。
    人はそれぞれ違う。
    だから幸せの形もそれぞれだし、世間一般の幸せや概念にとらわれるとむしろ不幸になる事もあるんだって・・・そんなのを皮肉にも利害で結びついた三人が見せてくれる。

    最初、中盤くらいまで、大輔という男性があまりに能天気で無神経なので見ていてイライラきました。
    子供っぽいし、思い込みが激しいし、口癖ひとつとってもイラっとくる。
    でも、そんな男性も物語の後半では自分の思い込みに気づき、変わっていこうとします。
    その間、心の葛藤に苦しんでいる様を見て、人って心に葛藤をかかえて苦しんでいる時って、自分でも成長をしようとしている、今までと変わろうとしている、正に最中なのかもしれないなと思いました。
    そんな男性の成長していく途中の様子を見て、後半には憎めないヤツだと思えてきました。

    設定としては変わってますが、特に変わった事件や衝撃的な事がある訳でなく、淡々としたストーリーでした。
    そんな静かなストーリーの中に自然に自分の言いたい事を見せているというのがすごいと思います。
    初めて読んだ作家サンですが、これからこの人の本を読んでみたいと思いました。

  • 言葉を尽くす。
    思っているだけじゃ何も伝わらない。大事な事も些細な事も。

    周りの"思い込み"で何かしら話をされて「違うのに」と思った事があるから、形は違えど分かるなーと思う所もあって。
    読み終わったとき、私も"思い込み"に囚われずに、自分なりを大切にしていこうと改めて思いました。

  • この本で言う「思い込み」って「普通~」っていうことだと思うけど、この「普通」っていうのがなかなか曲者だ。

    普通は自分にとってであってそれぞれ違うもの。

    最近はそこを描いた本も多く、これもそういう一冊。

    児童擁護施設で暮らし十歳ながらかなり精神的に自立しているひなた、シェイクスピアに心酔する大輔、無性愛者で心配性の瑞穂。
    大輔と瑞穂がひなたの週末里親になったことから、演劇や特殊な人材派遣業を通じてお互いが少しずつ変わっていく。

    主人公はひなたなのかもしれないが、私には大輔、瑞穂(二人のキャラの設定がいい)が変わっていく様もなんだか良かったのだ。

    なにも大人ばかりが子供を育てるわけじゃない。
    大人も子供に育てられる。
    お互いに影響しあっているところがいいなぁ。

    もちろんこれで問題が解決するわけではないのだが、なんだか希望がもてる、なんとか乗り越えて進んでいけるのではないか、と思わせてくれるところがいい。

    そして、やっぱりシェイクスピアってすごいんじゃない、と思った一冊でした。

  • 例によってとっつきの悪い始まりで、何度も帯を読みなおしてしまった。

    「ワケあり夫婦と母親に捨てられた少女が紡ぐ新しい”家族”の物語」

    これだとけっこうウエットな内容なんじゃないかと思ったのだが、いきなりひなたのキャラクターに面食らった。
    「母親に捨てられた少女」という言葉から思い浮かぶかわいそうな感じが全然しない。
    さらには、「ワケあり夫婦」のワケがかなり意表をついた。
    無性愛者ときたか。たしか近藤史恵さんの「モップの魔女」シリーズの長編にそういう人が出てきたんじゃなかったか。
    どうして瑞穂が無性愛者という設定なのか最初はわからなかったが、最後まで読むと納得できる。
    まさに彼女はそういうタイプじゃなくてはならなかったのだ。
    瑞穂は大変な心配性であるが、その心配は常に本質をそれて枝葉末節に拘泥する。そして自分の心配に振り回されてパニックに陥るのだが、このあたり他人事ではなかった。私も瑞穂と同じような心配の仕方をする。そしてたいがいパニックになる。
    どうしてだろうと思っていたのだが、彼女を見ていて気がついたことがある。
    人間、本当のことをちゃんと伝えたり自覚したりしていないと、どうしてもそこにごまかしが発生する。そして本質をごまかしているのが常になってしまい、その上そのことから目をそらす癖がついてしまうので、他のことに対しても、枝葉末節ばかりが気になってしまうのだ。

    自分が他人の思い込みに辟易されているにもかかわらず、瑞穂はひなたとの週末里親契約について後ろめたく思う。それは「家族とはこうあるべき」という思い込みに囚われているからなのだが、そのことに気づくシーンがいい。高校時代の友人との会話で、瑞穂はそのことを教えられるのだ。

    「思い込み」はそこらじゅうにある。なぜそんなものがあるのかといえば、便利だからだ。
    一定の型にはめて、これはこういうもの、と決めつけてしまえば、いちいち個別対応しなくてもすむし、他人の問題に足を突っ込まなくてもすむ。
    大人と子供が一緒に入ればそれは親子なのだし、親と離れて暮らしている子供は親のそばにいたいと思っているものだ。年頃になれば結婚するものだし、結婚したら子供をつくるものだ。
    そういうことにしておけば、具体的に考えなくてもすむから、世間はそうしているのである。他人との適当な付き合いのための社交辞令だって、思い込みの上に成立しているのだし。

    でも、その思い込みから外れてしまった人間は、ひどく生きにくい思いをする。
    40すぎてもシェイクスピア三昧の大輔くんも、無性愛者で恋愛感情を持てない瑞穂も、母親を見捨てたひなたも、みな世間の思い込みから外れている。
    ひなたは子供な分、よりいっそう思い込みに悩まされてしまう。

    ひなたは「母親に捨てられた少女」ではあるけれども、ある時期から「母親を捨てた少女」になる。子供だから、幼いから、何もわからないということはないのだと思う。5年生くらいになったらかなりのことが感覚としてわかってしまうものだし。

    私も、世間にたくさんある「思い込み」や自分の中にある「思い込み」にずいぶん振り回されてきた。
    そのことで苛立ったり、落ち込んだりもした。今でも世間の思い込みには腹立たしい思いをすることがよくある。
    そういうものに決然と立ち向かうひなたは、かっこいいなと思った。
    ぐちゃぐちゃになっても、がんばって思ってることをちゃんと言えた瑞穂は素敵だ。
    そして、大輔も、大きな抵抗を乗り越えて変わっていった。現実にはなかなかこんなふうに変われる男性はいないと思うけど、こういう姿が見られるのが小説のいいところだ。

    桂望実さんの作品は、スタートダッシュがないんだけど、途中からの疾走感がすごい。いつも中盤あたりからページをめくる手を止められなくなる。そして読後感が爽やかで、充実感がある。

  • シェイクスピアに心酔している小劇団を主宰している大輔、瑞穂夫婦は演技の上手い孤児院の子供を「子役」として起用するため、「週末里親」になる。瑞穂たちはわけありの夫婦で……。大輔はこどもっぽくて無神経っぽいけど、かんじんなところはしっかりとしていて、好感が持てました。そしてまあ「子役」は……私のちょー好みなので、すんげー楽しかった〜。のめりこんで読んでたよ、と同僚に言われてしまいました。(^^;瑞穂は度を越した心配性なのですが、愛する気持ちは人一倍。シリーズ化してほしい……。

  • 親子だから良い関係とういわけでもなく、だから、一緒にいるのが正解というわけじゃない。一緒にいないほうが幸せということもあるのだろう。
    それぞれが自分にあった関係を維持できればいいんだよなぁ。相手も自分と似たような考えの持ち主でないと難しいだろうけど。

  • 最初の方に「無性愛者」という記載があって そういう関連のお話かと思っていたが 、「家族」という世間の「思い込み」ということにテーマをおいているものだった

    最初は(子供って扱いにくい」と思っていた瑞穂がだんだんひなたとの付き合い方を構築して行く感じ、無理に(家族」になる必要は無いと感じられる気持ちか芽生えてうまくいく感じが読んでいてとてもいい

    大輔との関係も なんともよく、微笑ましい

    ひなたちゃん、かっこいい。

  • 利害の一致した3人だけど、無理に家族になるのではなくてチームというところに安らぎを感じた。私たちはついつい型にはめて安心しがちだけれども、物事にはいろんな形があると再認識。

  • +++
    シェイクスピアに心酔する小劇団主宰者の大輔と、その連れ合いで他人に愛を感じることができない無性愛者の瑞穂は、母親の育児放棄によって児童養護施設で暮らす演劇少女ひなたの週末里親になって、特殊な人材派遣業に起用することになるが―ワケあり3人が紡ぐ新しい“家族”の物語。
    +++

    世間に通りやすいようにと便宜的に籍を入れている大輔と瑞穂の夫婦の在りようも、児童養護施設で暮らす11歳のひなたも、週末里親というシステムでかりそめの家族になることも、代理家族派遣業という大輔たちの副業も、すべてが一般的とは言えない要素から成り立つ物語である。それでいて、それぞれの心情や懊悩が見事に描き出されていて、やり切れなくもなる。ひなたを週末だけ預かることにしたそもそもの動機は、ひなたの演技力故だったが、しばらく一緒に過ごすうちに、少しずつ双方の思いに変化が生じ、あたたかいものが通い合うようになる様子にほっとさせられる。みんなが嘘つきで、そしてこれ以上なく正直な一冊である。

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著者プロフィール

作家

「2016年 『手の中の天秤』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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