降霊会の夜

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 499
レビュー : 100
  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022509505

作品紹介・あらすじ

罪がない、とおっしゃるのですか-死者と生者が語り合う禁忌に魅入られた男が見たものとは…。至高の恋愛小説であり、第一級の戦争文学であり、極めつきの現代怪異譚。

感想・レビュー・書評

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  • 人は知らず知らずに傷つけ傷ついて、大人になっていきます。臆病だったり、面倒だったり、ほんしんを素直にあらわせなくて思いもよらぬ方向に人生が曲がってしまうことも多々あります。その時のあいまいな態度が今の自分に繋がっていると思うと、もっと考えるべきだったとか、意地をはらずに優しくしてあげればよかったとか後悔しきりです。でもそんなことは過ぎてみないとわからないものです。でも、今更と思わず、あの時のことを謝りたいとか、お礼をいいたいとか思って、そんな機会があったら、迷わず口にだしてみたいと思いました。やり直しはできないけれど、今できることはやったほうがいいにきまっています。

  • 人助けのお礼にと、即席の降霊会に招かれた主人公。これまでの人生の悔悟として思い出したのは、戦後間もない小学生時代の友人「清」と、学生闘争真っ只中に出会った恋人「百合子」。2つのエピソードが描かれています。

    戦後日本とか、学生闘争は、浅田作品にも度々でてくる舞台設定。テイストも『沙高樓綺譚』や『霧笛荘夜話』のような感じで少しマンネリかな、と思って読み始めましたが、なんのなんの。
    その時代の背景がしっかり描写されているので、その時代を生きていない自分でも、容易にシーンがイメージできるし、なぜそのような悲劇が生まれるのか、読者それぞれの答えを考えさせてくれるところはさすがでした。

    それにしても梓とジョーンズさん達は、一体なんだったのか。ものすごく気になる。

  • なんかメトロとかぶったなあ。戦争の悪い時代から急速に復興した時代×不思議な力でのありえない出会い というmix感が。最後にもうひとひねり、不思議が待ってたしね。でもなんか、どこかで見たような。。というかんじが拭えないまま本を閉じた、そんな読後感。山野井清と小田桐百合子。それぞれ、主人公である「ゆうちゃん」に悔悟(←このコトバあまり使われないのにキーワードとして出てきたのがなんか一番印象に残ったかも)の念を残していたふたつの思い出を、霊の口寄せで振り返り、滞って固まりかけた思いを解くというような内容。私ならだれを呼ぶかなあ。もういちど話してみたいひとはいくらもいるけど、でも、やっぱ怖いかな。まあなんにせよ浅田さんらしい1冊。家族、恋愛、社会、霊魂、いろんな角度の切り口がとれるから、夏の読書感想文なんかも、書きやすい1冊かも。

  • 雷に怯える女性を助けた主人公の男性は彼女にお礼をしたいと言われる。
    「会いたい人はいませんか。生きていても亡くなっていてもかまいません。ジョーンズ夫人が必ず会わせてくれます」
    「ご恩返しをほかに思いつきません」

    怪しい話だと思いつつも主人公は降霊会なるものに参加する。
    そして、現れた霊とは・・・全く思いがけない人物だった。
    小学生の頃、転校してきて一時は仲よくしていた少年。
    怪しげな商売をする父親とヨイトマケの母親に育てられた貧しい少年は交通事故で亡くなっていた。
    その少年の周辺の人物、そして少年自身が現れ、思いのたけを語る。
    そして、主人公は少年の死に自分が少なからず関わっていた事を知る。

    さらに別の降霊会ではまたも思いもよらない人物が現れる。
    それは彼が大学生の頃、友人としてつきあっていた女性、そして彼女に片思いをしていた友人。
    しかし、本当に彼が会いたいと思う人物は現れない-。

    会いたいと思う人には会えず、記憶の片隅に忘れ去っていた人物ばかりが現れる。
    忘れさられる者。
    時代の波に乗れずに置き去りにされる者。
    両者ともとても悲しい。
    貧しい少年の境遇とその心情がとても切なかった。
    主人公を密かに想い続けた女性の心情も切ない。
    さらに、両者ともすっかり忘れられていたというのが悲しい。

    だけど、誰かのことをすっかり忘れていた主人公も誰かの記憶からスッポリ抜け落ちていた。
    高度成長期の日本が目まぐるしく変わっていった時代。
    人は忙しい日常に色んな事を忘れながら生きていく。
    そして自分も忘れられていく-。
    そんな当たり前のことを改めて思い起こさせる幻想的な話だった。

  • キヨが不憫だな

  • 先に読んだ家族には不評でしたがその先入観があったためか『思っていたよりも面白い』と感じました。

    戦後間もない頃の少年時代、一線を引いて付き合った貧しい同級生キヨの死にまつわる霊達の語りが前半。
    学生運動盛んな頃の大学生時代、目的も無くだらだらと生きる主人公と正反対の勤労学生の彼女を巡る主人公の友人達の霊が語る後半。

    主人公の『自分には関係無い』と逃げる姿勢がどちらも色濃く、読んでいて苛々と度々しましたが死者の心の内の遣る瀬無さや切なさがそれで際立っていました。
    「さよなら」が言えず、聞くことも出来なかったがために彷徨う真澄の霊は読んでいて哀しかったです。

    最後の展開は別荘地に棲む死者がこの薄情な生者に伝えることが出来ずに苦しむ仲間を救うために二日掛かりの一芝居を打った、と言うことでしょうか。

  • すばらしい作品だった。

    主人公の幼き時代に訳ありの友達をもち、一線をひいて付き合った。老いたのち、霊となった友人と再会する。なんともいえない切なさがたまらない。恨みはなく、さわやかに別れた。

    また、主人公は、19歳のころに愛した清純な女性を、その時、振ってしまったことを、長年後悔してきた。一方、自分を愛していた女性には気づかずにいた。自殺してしまった好いてくれていた女性が霊となって現れ、一言さよならを言ってほしかったと激白した。しかし主人公は最後まで言わなかった。心の葛藤、人間模様の描き方が絶妙であり、読ませる。

  • 物語をきちんと紡ぐ浅田次郎氏のワザです。いろいろ考えさせられた。過去の思い出、解くカギがあります。「さよなら」ということ。
    でも、ワザだけではどうも・・・。

  • 浅田次郎の世界である。
    前半と後半の2本立てであるが、主人公は同一。
    三つ子の魂、百までではないが、主人公の決められない性格は治らない。ラストは少し怖い。

    冒頭の新古今集の歌がきいている。

    「来しかたを さながら夢になしつれば 覚むるうつつの なきぞ悲しき」
    過去と現実は連続しているはずなのに切り離して、「昔は・・・」と片付けようとする。過ぎ去った時をすべて夢とし、別物にしてしまったため、夢から醒めて帰る現実が無いことが悲しい。

  • 2018_06_15-067

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プロフィール

浅田 次郎(あさだ じろう)
1951年、東京都出身。
1995年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、1997年『鉄道員』で直木三十五賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、2006年『お腹召しませ』で中央公論文芸賞と司馬遼太郎賞、2008年『中原の虹』で吉川英治文学賞を、2010年『終わらざる夏』で毎日出版文化賞、2016年『帰郷』で第43回大佛次郎賞それぞれ受賞。2015年には紫綬褒章も授与されている。
2018年現在、日本ペンクラブ会長、直木賞、柴田錬三郎賞、山本周五郎賞の選考委員を務める。

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