七夜物語(上)

  • 朝日新聞出版
3.73
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感想 : 175
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022509598

作品紹介・あらすじ

小学校四年生のさよは、母さんと二人暮らし。ある日、図書館で出会った『七夜物語』というふしぎな本にみちびかれ、同級生の仄田くんと夜の世界へ迷いこんでゆく。大ねずみのグリクレル、甘い眠り、若かりし父母、ミエル…七つの夜をくぐりぬける二人の冒険の行く先は。

感想・レビュー・書評

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  • 「明日晴れますように」を手にして「七夜物語」の続編と知り、ではこちらからと図書館へ。

    児童文学かと思うほどのファンタジー。
    七夜物語という不思議な本を読んだ子ども達が不思議な夜の世界に行っては戻る。
    子ども達が夜の世界に行くとなぜだかやたら眠くなるという章があるけれど、私自身もこの本を開くとやたら眠くなる魔法にかかってしまい、数時間で読めると思っていたのに一週間もかかってしまった。つまらないわけではないのに、なんとも不思議な魔法だ。

    普段から児童文学が好きでよく読む方だけれど、時代設定が自分の子ども時代で共感することが多いせいか、川上弘美さんの子どもの気持ちを描く描写は秀悦だと思う。
    大人になると忘れてしまうような子ども時代の感覚を思い出させてくれた。
    これまた主人公達と同じ年頃の我が子の気持ちにも想いを馳せる。
    一方で、今どきの子どもとはちょっと違う時代背景のあの頃の自分の辛さなんかも蘇ってくる。

    エンデの本にも素敵な挿し絵が散りばめられていて、想像力を膨らませるのを助けてくれるけれど、この本の酒井駒子さんの挿し絵もとても美しい。
    さよや仄田くんの不安そうな表情なんかが、自分の子どもの頃の不穏な気持ちを思い出させてくれる。酒井駒子さんもまた子どもの上手く言えない気持ちやフワフワした感覚を表現するのが上手いなぁと思う。

    七夜物語だから下巻ではあと3回夜の世界に行くのかな…
    夜の世界を経験するたびに子ども達が少しずつ大人になっていく心の変化をもう少し覗いてみたい。
    また睡魔に襲われそうだけれど…

  • すごく引き込まれて、一気に読んだ。
    タイトルの『七夜物語』は、作中で主人公の「さよ」が図書館で出会う本のタイトルでもある。
    それは読んでも読んでも、本を閉じると内容を忘れてしまう不思議な本。
    ちょっとしたきっかけでクラスメイトの頼りない仄田(ほのだ)くんと忍び込んだ近所の高校の特別教室が不思議な『七夜物語』の世界につながり、さよと仄田くんの夜の世界への旅が始まる。

    夕暮れに留まりおいしそうな料理を作る大ネズミのグリクレル。
    夜を呼びよせる正体のわからないミエル。
    さよと仄田くんを飲み込もうとする濃いはちみつ色の謎のかたまり。
    現実のさよを取り巻く家庭環境や、仄田くんのちょっと歪なものの見方・諦め方……ふたりの心の揺れが、たどり着く夜の世界を形作ったり、夜の世界が現実に影響したり。

    下巻の展開がどうなるのか、いますごくどきどきしている。

    • 九月猫さん
      まっき~♪ちゃん、こんにちは☆

      この本、わたしも前から気になっていて、やっと読めたのよー(*´▽`*)

      うん、これはファンタジー...
      まっき~♪ちゃん、こんにちは☆

      この本、わたしも前から気になっていて、やっと読めたのよー(*´▽`*)

      うん、これはファンタジーだよ。新聞連載では珍しいよね。
      まっき~♪ちゃん、ファンタジーは好きだよね?

      主人公のさよちゃんたちは小学校4年生。
      旅の相棒の仄田くんは、のび太くんが性格曲がったみたいな子なんだけど、
      そこが逆に成長を期待しちゃう感じ(笑)
      現実の世界と「七夜」の世界とのリンクが、幻想的で怖かったり、
      切ないところもあったり・・・
      ファンタジーといっても、ふんわりした感じではなくて少しダークな色味かな。
      酒井駒子さんの表紙の色味が本当にぴったりしてるよ~。
      中にも小さい挿絵がいっぱいあるので、酒井さん好きなら、そこもおススメポイント☆
      2014/06/02
  • 空気の音のたくさん混じった仄田くんのくちぶえと、きれいに響くさよのくちぶえ。二つのかすかな音は、夜の闇の中に、心ぼそく流れていった

  • 休み時間のおはじきや給食のカレーシチューなどレトロ感が楽しい。本の世界に引き込まれるわくドキ感が、上巻だけだと期待ほどではなかったか。続きを読んだらいいのかな。

  • 朝日新聞連載中、続きを早く読みたくて
    恋人からの手紙を待つ少女のように(あくまでも脳内イメージ)
    郵便受けの前で、新聞を待ってました。

    閉じた瞬間に、読んだ内容をすべて忘れてしまう本。
    本が大好きで、もの静かだけれど、芯のつよい少女さよ。
    過保護なおばあちゃんに育てられた、自尊心の強い少年、仄田くん。
    ふたりが知らず知らずのうちに足を踏み入れる、「夜の世界」。
    怠け者には手厳しいけど、頼りになる大ねずみ、グリクレル。
    動き出す、手提げ袋や、ちびエンピツ。

    こどもは、目を輝かせてワクワクドキドキと
    大人は、ちょっぴりの苦さと切なさと懐かしさを抱えながら
    大切に味わいたい、素敵な本です。

    • まろんさん
      毎朝待っていたかのように書いてしまった私を赦してください~(ノ_・。)
      。。。家族が始発の電車に乗るために、4時とかに起きなくちゃいけなかっ...
      毎朝待っていたかのように書いてしまった私を赦してください~(ノ_・。)
      。。。家族が始発の電車に乗るために、4時とかに起きなくちゃいけなかったときだけです(笑)

      書評のために4紙って、すごいなあ♪
      nyancomaruさんの本への愛の深さを感じます。

      そうそう、単行本は、せっかくの酒井駒子さんの挿絵がものすごく小さいのですが
      新聞連載時は、縦6㎝×横8㎝の挿絵だったので
      お話ごと長細~く切り取ってスクラップしてました。

      スクラップ帳面に一枚ずつ貼り付ける作業中、
      追いかけっこする猫たちに紅茶がたっぷり入ったポットを倒されて
      その宝物が修復不可能な姿になった時には、泣きました。。。
      2012/08/03
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「縦6㎝×横8㎝の挿絵」
      そのままのサイズだったら、まぁまぁなのに。どーして小さくしてしまったのでしょうね?

      「紅茶がたっぷり入ったポット...
      「縦6㎝×横8㎝の挿絵」
      そのままのサイズだったら、まぁまぁなのに。どーして小さくしてしまったのでしょうね?

      「紅茶がたっぷり入ったポットを倒されて」
      猫ちゃん達は火傷しませんでした?
      しかし、宝物は残念でしたね。。。
      2012/08/03
    • まろんさん
      挿絵の数が膨大だったからなのでしょうか。
      それでも、物語の世界観にぴったりの挿絵なのに、勿体ないことです。

      ポットを蹴り倒したあと、猫たち...
      挿絵の数が膨大だったからなのでしょうか。
      それでも、物語の世界観にぴったりの挿絵なのに、勿体ないことです。

      ポットを蹴り倒したあと、猫たちは小憎らしいほど軽やかに
      テーブルの近くの出窓に飛び移ったので、火傷することはありませんでした(笑)
      わが家のやんちゃ猫たちを心配していただいて、ありがとうございます♪
      2012/08/05
  • 『七夜物語』に誘われて、夜の世界にすべりこんだ子供達の不思議な冒険の物語。

    小学4年生のさよは、ある日図書館で一冊の古びた本『七夜物語』を見つける。
    それ以来、本好きのクラスメート・仄田くんと共に次々に不思議な出来事を体験する。
    物語にも出て来た大ねずみに出会ったり、何度も同じ出来事を繰り返したり、若い頃の両親に出会ったり…この魔法のような夜の世界は二人が夜見る夢の世界なのだろうか?
    不思議な冒険を続ける内に少しずつ成長する二人は、最終的にどうなってしまうのか?
    お楽しみの下巻へ続く。

    それにしても酒井駒子さんの挿し絵が素敵すぎる。
    川上さんの世界観にぴったりで、出来れば挿し絵のサイズをもっと大きくしてほしい。

  • 小学校4年生のさよが、同級生の仄田くんと一緒に不思議世界をめぐる、というお話。さよには、父母が離婚した後の寂寞感や様々な疑問がある。仄田くんは、祖母の過干渉やクラスでのいじめにより、周囲との壁を作っている。

    二人は、不思議な夜の世界を一つ一つ体験するごとに心も体も成長していく。彼らの苦境は、大人の知恵や力では解決できるものではない。結局は子ども自身で乗り越えていかなければならない壁なのだ、ということを教えられた気がした。子育て経験者から見ると大人の無力さのようなものを感じてしまう。子どもが読んだら、彼らの冒険を頼もしく思うだろうか。

    「七夜物語」と題する本が彼らの成長のきっかけとなっているところが興味深い。

  • 子どもの成長譚なのか。できれば頭でっかちな今ではなく、心が柔らかい時に出会いたかったなあなどと思いながら読み始めた。けれども、読み進むうちにどんどん気にならなくなった、という話は下巻で。

  • グリクレルが好き。

    ちびえんぴつも好き。
    ウバはようわからん。

  • 川上弘美さんだー!
    児童書だ!?
    酒井駒子さんだー!?
    中見たらさらに駒子さんの絵が大量で…
    (新聞連載だったのですね、すてきだー!)
    お話もぐいぐい。
    川上さんの文章はもぐもぐできるのでとても好きです。
    もろもろの事情がありますね。
    もろもろ。
    昔の子は今よりももっと居心地がわるかっただろうなって
    今の子も、あっ。て思うこといっぱいあるだろうな、って
    いろいろ考えながら、
    大事に読みます。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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