- Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022509604
作品紹介・あらすじ
いま夜が明ける。二人で過ごしたかけがえのない時間は-。深い幸福感と、かすかなせつなさに包まれる会心の長編ファンタジー。
感想・レビュー・書評
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下巻に入り、少し流れが変わったように思われ、すぐに五つ目の夜に気持が戻れず。
宇宙が出てきたりパラレルワールド的であったりで、「あれ?」と思っていると、ふしぎな生き物たちが登場して、だんだんと七夜の世界に戻っていった。
いろんなことを考えさせられる五つ目の夜。
考えても答えが出ないのは、ふたりが子どもだからではなく、たぶん生きているものたちみんな答えなど出ない。大事なものはみんな違う。優先順位もみんな違う。
楽しい六つ目の夜。さくらんぼのクラフティの夜。
たくさんの七夜の住人達と、たらふく食べて、たらふく歌う。メロディは「命の歌」。
そして、最後の七つ目の夜がやってくる。
太古からの住人マンタ・レイの大きな背中に乗って、さよと仄田くんがたどり着いたのは海の底。
ふたりが出会う最大の難関は、光と影に別れた自分たち。光は眩しく影は暗く、いやな笑いを発しながら手加減のない攻撃が繰り返される。流れ出すたくさんの血と、たくさんの痛み。
光と影を消し去るものは、もっと強くて大きな光。
もっと強い大きな光によって、影は消え、光は飲み込まれ、そしてひとつに。
一番小さなものを大切にした彼らの夜の世界の冒険は、失敗だけど成功で、成功だけど失敗。
夜を過ごしていく毎に成長していくふたりが愛しくなり、どこかの図書館の片隅にある「七夜物語」という本が愛しくなる。
もしかして忘れてしまっているだけで、あなたにも私にも七つの夜の旅があったのかも、しれない。
そして今もきっと、どこかで誰かの七つの夜の旅が始まっている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ファンタジーが苦手である。非現実の世界は、なかなかその光景が思い浮かばない。素晴らしい挿絵の助けを借りて何とか進むことができた。
この巻ではパラレルワールドや異世界の生物や物体が登場する。いずれも2人の成長に欠かせないアイテムといえそうだが、正直のところ、上巻で十分ではないか、と思うのだ。
しかし最後の最後で、これまでの長い物語が主人公の思い出であることが分かる。物語、想像の世界によって人が救われる…そんなメッセージが込められているように感じた。 -
さよと仄田くんのコンビも息が合ってきた。
不思議で少し怖くて、わくわくして。
込められたメッセージがあるところは朝日新聞掲載ゆえかもしれないが、全体的には川上さんらしい作品。 -
川上弘美さんが書いた「児童書」・・・のくくりなんだけど、これをしっかり最後まで読める小学生って実際はごく一握りな気がする・・・。
話はちゃんと子どもの冒険物語で、出てくるキャラクターたちもかなり独創的で面白いんだけど、テーマの深さは大人が読んだほうがよりグッと来るかと。
昭和50年代くらいの時代背景も今大人になってる私たちにぴったり合ってて懐かしいです。
「はてしない物語」や「モモ」のような王道ファンタジーも踏襲しつつ、でも主人公たちはまぎれもなく日本の普通の小学生。
臆病で、内気で、人見知りで、まだまだ未熟。
でもその2人がすこーしずつ成長していって、他者との距離を学んでいって、世界のありさまを自分たちなりにとらえようとするのが頼もしい。
親の離婚、というテーマが児童書の中にしっかり組み込まれてるのは、松谷みよ子さんの「モモちゃんとアカネちゃん」シリーズと同じだなあ。
「モモちゃんとアカネちゃん」読んだ当時は、まだ離婚とかが身近じゃなくて、完全に理解できないにも関わらずそのビターな感じだけは伝わってきて、こどもながら何だかせつなかった。
これも両親の離婚っていうのが、主人公の成長に大きく関わってくる要素になってる。
そんで、「ゲド戦記」は影とのたたかいだけど、これは光と影とのたたかい。
光と影とが混じって混沌としているのが世界であり、すべてを理解しようとするのではなくて、ありのままを受け入れることこそが答え、というテーマにたどり着きます。
結末も、輝かしい勝利、栄光の凱旋、というのではなくて、どちらかというとギリギリ負けではないかもしれない、くらいの微妙な感じ。
世界を救えなかったのかもしれないけれど、2人は少しだけ成長して帰って行きます。
帰ったのは元の世界ではなく、元の世界と少しだけずれた世界。
そのラストのとらえきれないもやもやした感じも独特で、川上さんの世界観がよくあらわれてます。
一番最後にはちゃんと大人になったみんなが描かれていて安心しました。
しかしなんつってもこれ、ホント酒井駒子さんの絵の力がすごいです。
あえてぼかして書いてると思われる川上さんの文章だけでは、たとえばウバの姿とかがうまく想像しきれないんです。
それを酒井さんの挿し絵がちょっとだけ後押ししてくれる。
いい挿し絵って、「想像する余地をのこしておいてくれる」挿し絵だと思うんで、この酒井さんの挿し絵の匙加減は本当に絶妙。
こういう全部を描ききらない絵こそ、最高の挿し絵です。
いやー大好き。
スプーンに顔がついてたりするのは、ウォルター・クレインのマザーグース絵本にそっくりで、隠れパロディなのかしらと思ったりしてるんですがどうなんだろう・・・。 -
4年生。こんなにもいろんなことを体験してきたんだ、私もきっと。夜の世界にいけなかったけど。
行ったかもしれないけれど忘れてしまったのかも。
そんなことも思わせてくれるファンタジーでした。-
2012/08/06
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はじめまして。フォローしていただいてありがとうございます!まろんです。
『七夜物語』、朝日新聞に連載中、毎日新聞を開くのが本当に楽しみでし...はじめまして。フォローしていただいてありがとうございます!まろんです。
『七夜物語』、朝日新聞に連載中、毎日新聞を開くのが本当に楽しみでした。
七夜にわたる冒険のあと、さよも仄田くんもあの世界を忘れてしまうのが切なかったけれど
jyunkoさんがおっしゃる通り、私たちも
幼いころ夢中になって読み耽って、魂ごと連れて行かれた世界での体験を
実は忘れているだけなのだとしたら
うれしいような、かなしいような。
すばらしい読書量と心にまっすぐ響くjyunkoさんのレビュー、
これからも楽しみにしていますので、どうぞよろしくお願いします(*^_^*)2012/09/05
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これはこの先、何年も何十年も読み続けられるファンタジー小説だ!間違いなく。
子供が10歳という年を超えるときに、一度足を踏み入れる不思議な世界。たいていは気付かないまま通り過ぎるその世界に真っ向から飛び込んだのがこのお話の主人公さよちゃんとと仄田くん、二人の冒険はまさに「大人へ向かう心の旅」。
敵なのか味方なのかよくわからない影や異形のものたちと繰り広げる戦いのなかで二人が心と対話し、お互いを助けながら自分が進むべき道を選び取っていく、その過程にドキドキが止まらない。
『かいじゅうたちのいるところ』+『モモ』+『もりのなか』+『ハリーポッター』
ファンタジーの新たなる定番が現れた!-
2012/08/07
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読み始めは大人目線だったが、いつしかさよや仄田くん、時には同じ子どもとして、戸惑ったり、励ましたりしながら夜の冒険を楽しんでいた。これ程までにこのお話が気にかかるのは、すっかり忘れてしまっているだけで私もグリクレルと出会ったことがあるからかも知れないなどと思いながら。
物語の力を強く感じさせる作品だった。-
はなむぐりんさん、こんにちは♪私たちは間違いなくかつてグリクレルと出会ってると思います。そうじゃなきゃこの懐かしさは説明がつかない・・・はなむぐりんさん、こんにちは♪私たちは間違いなくかつてグリクレルと出会ってると思います。そうじゃなきゃこの懐かしさは説明がつかない・・・2024/07/28
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コルベットさん、コメントありがとうございます。
そう言っていただけて、とても嬉しいです。確かに懐かしく思うほどにしっくりくるお話しでした。コルベットさん、コメントありがとうございます。
そう言っていただけて、とても嬉しいです。確かに懐かしく思うほどにしっくりくるお話しでした。2024/07/29
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さよと仄田くんの冒険の完結巻。
上巻よりも夜の世界の冒険は厳しさを増していく。
迷って、傷ついて、それでも最後まで自分の心に正直だった2人はすごいと思う。
2人のことがとても好きだ。
でも本当はもっと夜の世界のことを知りたかった。
どこかの夜の世界にはもっと違う結末があったのかな…なんて、考えても仕方のないことをついつい考えてしまう。
さよと仄田くん以外の夜の世界の冒険のことも知りたいなとか。
「わからなくて、いいのよ。そういうものなの」という言葉が耳に痛い。
しばらくはぼんやり空想してしまいそう。-
七つの夜を一緒に戦い抜いて成長したさよと仄田くんが
物語を閉じたらもう、そのことを覚えていなくて
大人になって再会しても、ふんわりとした好印...七つの夜を一緒に戦い抜いて成長したさよと仄田くんが
物語を閉じたらもう、そのことを覚えていなくて
大人になって再会しても、ふんわりとした好印象しか抱けなくなっているところが切なくて
読み終えても、いつまでも余韻の残る作品でした(*^_^*)
2012/08/03 -
覚えていられないというのは、かなり厳しい制約ですよね‥。
でも、大人になったさよの中に七夜物語がちゃんと残っていたのはとても嬉しかったです...覚えていられないというのは、かなり厳しい制約ですよね‥。
でも、大人になったさよの中に七夜物語がちゃんと残っていたのはとても嬉しかったです。2012/08/03
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