シフォン・リボン・シフォン

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  • 朝日新聞出版 (2012年6月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (232ページ) / ISBN・EAN: 9784022509796

感想・レビュー・書評

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  • 好きを集めた素敵なランジェリーショップと、重い現実の話が対照的で、それが印象に残っています。それにより、夢のようなふわふわした話ではなく、地に足ついた話となっています。
    ランジェリーショップは、なんとなく敷居が高い感じがして、あまり行ったことがありません。ただ、好きなものを身につけることで、自分を大切にしているように思える感覚はよくわかります。ランジェリーを自分のために楽しむのもありだなと思いました。男性にもこの感覚ってあるのかな。。

  • シフォン、リボン、レース、オーガンジー、フリル。。。
    この歳になっても、そんなふわふわして綺麗なものが大好きだ。

    キラキラのアイシャドウに、ほっぺたの真ん中にまんまるのチークをぽわんとのっけて
    娘の参観日に出かけることはできないし、
    リボン結びのひらひらワンピースで会社に出勤することもできないように
    メイクや衣裳はどうしてもTPOに左右されるけれど、
    誰に見せるわけでもないランジェリーでなら
    いつでも思いっきり、夢のように美しい世界に浸ることができる。

    第一話、両親に劣等感という棘を全身に植え込まれ、家に縛り付けられていた佐菜子が
    初めて繊細で美しい下着を身に着けることで、しがらみからふっと解放され
    「きれいな下着を身に着けると、自分がとても大切に扱われているような気がするの」
    とつぶやくシーンに、涙が溢れた。

    私は、亡くなった母とは特に仲が悪かったわけではないけれど、
    好きなファッションや、映画や漫画に関してはまるっきり理解が得られなかったので
    外国の童話に出てくるお姫様に憧れていた幼い日、
    ワカメちゃんを上回るベリーショートの髪に、茶系のかっちりしたスーツで
    ピアノの発表会に出され、こっそり泣いたことを思い出したりして。

    人に美しさを誇示するためでもなく、男性の心を惑わすためでもなく、
    自分の心と身体を大切に扱ってあげるために丁寧に作られたランジェリーが
    思いがすれ違って隙間だらけなのに離れられない
    母と娘、父と息子の間に送り込む風がやわらかく、清々しい。

    教員一家に生まれ、「よりによって下着屋なんて!」と母に詰られながら
    美しく繊細なランジェリーへの憧れを貫いて店を軌道に乗せ
    同じように親との確執に悩むお客の心に寄り添う、オーナーのかなえが素敵で

    きれいなものが大好きな女の子たち!
    今日もお気に入りの美しいランジェリーで
    密やかに、うっとりと、自分にリボンをかけましょう♪ と囁きたくなります。

    • ひなきさん
      こんばんは(^^)突然のフォローでしたのに、お返しフォローありがとうございます。

      この本のレビューでまろんさんのことを知り、ほかのレビ...
      こんばんは(^^)突然のフォローでしたのに、お返しフォローありがとうございます。

      この本のレビューでまろんさんのことを知り、ほかのレビューも読ませていただいたんですが、素敵なレビューがたくさんありこの本おもしろそう、あの本おもしろそう!と、気になる本がたくさん増えました(*^^*)
      そのうちまろんさんの本棚と同じような羅列で本が並ぶかもしれませんが、その際はご容赦くださいませ。笑

      これからよろしくお願いします(*^▽^*)
      2012/12/18
    • まろんさん
      ひなきさん、こちらこそありがとうございます♪

      ブクログのおかげでお知り合いになれた方たちと
      本棚の中身が重なっていくのは、とてもうれしいこ...
      ひなきさん、こちらこそありがとうございます♪

      ブクログのおかげでお知り合いになれた方たちと
      本棚の中身が重なっていくのは、とてもうれしいことですよね。
      私もひなきさんの本棚を本当に楽しみにしていますので
      おすすめの本をいっぱい教えてください(*'-')フフ♪
      2012/12/19
  • 中学生の頃、家に届くPJのカタログを眺めるのが好きだった。大きな胸も、小さな胸も、花のように繊細なレースやフリルで彩られ、裸でいるよりよほど可愛らしく神秘的に見えた。

    気に入ったデザインのものには印をつけ、サイズ展開を確認しながらページをめくった。

    およそ実用的でないガーターベルトやビスチェ、ベビードールにも憧れた。

    大人になってみると、地味なヌードカラーや装飾の少ないものの方が服に響かず活用頻度が高いことに気づき、一目惚れ買いすることは減ったものの、美しいデザインのものを身につけると気分が高揚する。

    閉鎖的な田舎の町のさびれた商店街に突然現れたインポートランジェリーショップ。
    親から「みっともない」と否定され続けた豊かな胸も、可愛らしいものに憧れる乙女脳の男性の胸も、乳がんを摘出し大きな傷跡が残る胸も、優しく包み込む下着たち。

    仕事柄、乳がんの摘出手術後の乳房再建論文なども目にすることがあるが、最近の再建技術の向上には目覚ましいものがあると感じる。カバーしてくれる専用パッドやブラジャーを身に付ければ尚更人には気づかれにくいだろう。

    大胸・小胸等の悩みはもちろん、心と体、両方のケアまでもしてくれるランジェリー。新たな自分を発見できるランジェリー。

    人には見せないものだけど、だからこそ、お洒落をする意義。たまには色っぽい、可愛い物も身に付けないとな。

  • 薄ピンクの壁紙の、可愛くて綺麗なものがたくさん並ぶランジェリー屋さん

    自分を大切にすることの重要性、美しいものだけを見ては生きられない現実の厳しさなど、内容は思ったよりも軽いものではなかった

    ただ、やっぱり、シフォンやチュール、レースといった華やかなランジェリーショップの様子は読んでいてワクワクすることができた

  • 寂れた商店街に新しくオープンしたランジェリーショップ『シフォン・リボン・シフォン』。心の拠り所を求めて人々は集まる。綺麗な物、可愛い物に囲まれると高揚する気持ちが心を元気にしてくれる。ランジェリーに限らず、自分を元気にしてくれる存在って大きいな。
    4話からなる小説だが、今流行りの?毒親が登場して、特に一話目など可哀想で可哀想で(T_T)でも、どの話も素敵なランジェリーとの出会いが人を前向きにしてくれ、明日に向かって一歩踏み出す姿がとても清々しかった。

  • 小さな田舎町の商店街にオープンしたランジェリーショップ「シフォン・リボン・シフォン」
    そのお店の扉を開いた人々と店主の物語…

    近藤史恵さんの作品はミステリーばかり読んできたので、新鮮…

    両親に抑圧され自分のしたいこともできずに母親の介護をする佐菜子
    ○思う部分に的確にことばで針を刺し、佐菜子が痛みを感じるようにして、思うままに操った
    ○いつだって親との縁なんて切れるんですよ。そう思えば、絶縁は最後の手段に取っておけますからね
    ○きれいな下着を身に着けると、自分がとても大切に扱われているような気がするの

    息子が新しくできたランジェリーショップに出入りするのを知った父親
    ○なぜ、自分には見えなかったのだろうか。きっと考えれば考えるほど、打ちのめされることになる
    ○自分には、この店に「この街から出て行け」という権利はない
    ○頑固オヤジは頑固オヤジとして死んでいくしかない。変わることが難しいことは、自分がいちばんよく知っている

    お金は無くなったのに、昔のお嬢様時代を忘れられない老女
    ○あなたは幸せね。こんなきれいなものにいつも囲まれているんだから
    ○ただ大切にされること。彼女はそれに飢えてきたのだと思う
    ○お客様を自分のいちばん大切な人だと思うの。それが、決して安くないものを売る人間の忘れてはならない気持ちだと思っている

    そしてランジェリーショップ「シフォン・リボン・シフォン」店主、かなえ…
    ○人は縁がなければ生きていけないし、身内というのは一番最初で最後の縁なのだと思う
    ○身内を切り捨てるのには、それなりの痛みや覚悟が必要なのだ。しかも、痛みは一瞬ではない。切り捨てた傷はいつまでもじくじくと膿み続ける

    親子関係、家族、病気、介護…
    自分の心に突き刺す針
    針を抜くこともできる
    でも抜くことをせず、自分の心にリボンをかける!バランスをとる
    美しい下着の力を借りて…

  • 田舎町の小さな商店街にできたランジェリー・ショップをめぐる話。
    淡々と描かれる軽くはない現実に押しつぶされそうなとき、綺麗なランジェリーを選ぶことが、ふと次への一歩を促す。
    4話の連作を収録。

    第1話
    川巻町の商店街は、半ばシャッター通りになりつつある。
    32歳の佐菜子は行きつけの書店がなくなることを知って、がっかり。
    骨折して以来動けなくなった母の介護をする身で、仕事は近くのスーパーのパート。
    仕事帰りに寄れる店は貴重だったのだ。
    新しく出来た店はいささか場違いなランジェリーショップで、その名も<シフォン・リボン・シフォン> 品がよく美しい展示に、佐菜子は目を奪われる。
    胸が大きいことを少女の頃から恥ずかしく思い、合わないブラに胸を押し込めてきたのだったが‥
    両親の心無い言葉に傷つけられるが、それが以前から自分に刺さった棘だったことにやっと気づく。
    背筋を伸ばして、自分を大事にし始める佐菜子。

    第2話
    商店街で米穀店をやっている60前の均。
    悪気はないが、いささか了見が狭い。
    一人息子の篤紀が結婚しないことだけが気がかりだった。
    ランジェリーショップに息子が出入りしていることに気づき、年上の女性である店主と関係があるのかと疑うが、実は‥
    頑固親父が漏らした一言が救いに。
    均が見る奇妙な夢が、息子の性向にどこかで気づいていたのかもと思わせます。

    第3話
    ランジェリーショップを経営する水橋かなえ。
    東京でファッションビルに店を出して成功していたが、母の介護のために戻ってきたのだ。
    教員一家に育ち、最初に出版社に勤めただけでも驚かれたが、店を出すときには「なぜ下着屋なの」と母には詰られた経緯がある。
    かなえは37で乳がんになり、がむしゃらに無理をし過ぎたと反省はしたのだが。今は、乳がんの女性のための品を用意することにも力を入れていた。
    好きなことを仕事にする幸福と熱意があれば、親の干渉などはね返せる?

    第4話
    身綺麗で裕福そうな高齢の女性がかなえの店を訪れ、取り寄せの注文をしてはキャンセルしてしまうことが続く。
    商店街ではすでに知られた存在で、若い頃までは大金持ちだったらしく、いまだにその感覚が忘れられない様子。
    その家の嫁が、実はかなえの同級生とわかったり。姑には認知症も出てきたらしい‥

    キーワードは「自分を大切にすること」
    わかり合えるとはいえないまでも、縁を切るほどのこともなく傍にいるのが家族。
    きついことを言う親の側には、捨てられる恐怖心や寂しさがあった。
    中年になり、老いた親の世話をする立場での実感がこもる結末に、じんわり。

    綺麗なもの、可愛いものが大好きな私。
    ランジェリーやハンカチやスカーフなどの引き出しはとてもカラフル☆開けて見るだけでも楽しいのです。
    そして高校の頃までは合わない下着を着けていて、専門店に行ったら店員さんが張り切ったという経験も。

    個人的に琴線に触れる要素が多いので、なんともいえず心惹かれましたが、苦みが強すぎて共感できるとまで言いがたい面も。
    ここまでひどいこと言われてないだけ幸せってことかしら~それはもちろん家によって違うだろうけど。
    親と同居して介護する立場なので、いや~~シビアな現実、掛け値なしの大変さは十分、わかるんだけど!
    でも、こういう面ばかりではないのでは‥?という気持ちが一抹、残ります。

  • 近藤史恵さんの書く優しい人間ドラマ。大きな事件もなければ、悪もない、普通の人々の日々。心の中にある小さな棘から逃げたり向き合ったり。その緩やかな変化を、丁寧な心情描写で描いていく短編4編。

    全ての話が田舎のさびれた商店街に開店したランジェリーショップにまつわる話。病気だったり、介護だったり、人に頼ることができない深い出来事が日々の普通の生活の中にある。それでも、ほんの少しの光が見えていれば何とか頑張れそうな気がする。

    そんな後味の本でした。


    近藤史恵さんの心理描写は、さりげないけれど、心にすっと入ってきて気持ちよく読めるのが好き。

  • 高級ランジェリーショップの店主とお客さんたちのお話。山あり谷あり、現実的な悩みごともしっかり書かれている。2012年の本、前半は女性蔑視の登場人物の発言や思考を読むのがしんどかった。10年以上たった今では同じ問題を描いたらだいぶ違う感じになるかも。

  • 昔、たっかい補正下着を買ったことがある。友だちの間でちょっとはやって(というか、簡単に言うと軽めのマルチ)周りで何人か買ってたんだけど、そのうちの一人が、そこの下着を使うようになってから、性格までちょっと明るくなった感じで、すごい影響だなと思ったんだった。
    多分、自分の身体にあった下着をつけて(下着自体はいいものだった)、スタイルがよく見えるようになり、姿勢もよくなって、それが自信につながった、ということだったんだろうけれど、下着にお金をかけるというのは(相手がいることもあるし、誰かに見せるためというのもあるけれども)結構「自分にお金をかける」ことに直結していて、そこから得られるものって、大きいよな、ということを思い出した。

    この小説が、輸入品の高級ランジェリーを扱いながら、家族や介護、そして地方の閉塞感をテーマにしていくのは、そこに「自分をどう大事にするか」が密接にかかわってくるからなのかもしれない。
    自分を大事にするって、ただ自分を甘やかせばいいだけじゃなくて、自分と向き合って本当にやりたいことを考えたりとか、これはできないって認めないといけなかったりとか、言い訳してないで努力しないといけなかったりとか、しんどいことも意外と多い。でもその先にしか幸せは得られないんだよ、というメッセージだよなと。

    妊娠出産、さらにはコロナでリモートワークメインになり、下着もラクなものばっかり着るようになってしまった自分をちょっとだけ反省。

  • かわいいブラ買いに行きたくなった。ガチガチに締め付けないのにきれいに見せてくれるブラってつけてみたい。

  • 「シフォン・リボン・シフォン」
    なんて素敵な響きだろう。かわいいものが大好き、少女趣味なところがある私はシフォンも好きだしレースも好きだしリボンも大好きなのである。
    ふわふわきらきらしているものが大好きなのだ…!アイドルの衣装、ドレスブティックのウィンドウ、そしてランジェリー。
    そういう夢みたいな繊細なものが大好きなのだ。
    だからタイトルにひかれて、さらに今個人的にきてる近藤史恵さんの本だったから読んでみた。
    ランジェリー集めは私も好きだ。けっこう持っているほうだと思う。普段使いするものとは別の総レースになっているものだったりビジューがついているものだったり、自分がときめくから買うし身につける。誰かのためではない。
    そんな隠れた装い、人から見えない部分での装いが自分自身を励ましてくれることもある。
    ランジェリーを買うときは自分がこれを着てどういう気分になれるか、なりたいかを考える。人に見せるものでもないから誰かの目を気にする必要もない。だからこそとことん自分と向き合える場所がランジェリーショップだ。
    デパートや商業ビルだとテナントの一角がショップになっていることはほとんどだろうが、本作の「シフォン・リボン・シフォン」みたく独立型の店舗となっている場合、その店舗に入った瞬間からは自分とランジェリーだけの時間になる。
    そういう外から見た自分と向き合わなくていい時間があるだけで、心にクッションを纏うことができる。そして心にクッションを纏うからこそ、向き合える現実もあるのだ。

  • 題名と表紙から受けるイメージとは異なる内容で、「毒親が出てくる」ということを書いてくださったレビューのお陰で俄然興味がわいて読んでみた。

    私の親が毒親(であり、きょうだいにも問題がある)なのだが、普通のまともな家庭で育った人にはどうしても理解してもらえないことだし、他人様に聞かせる話題でもない。

    しかし、たぶん私は自分が死ぬまで悶々として引きずっていくのだろう。
    唯一自分自身のカウンセリングのようなものであり、ストレス発散にもなるのが、「毒親」について書かれている本を読むことになってしまっている。

    小説であっても、「ああこの作家さんは『毒親(またはパーソナリティ障害)』についてよくわかっていらっしゃるな」と思うだけで、救われる。

  • さびれた商店街に花ひらいたランジェリーショップ、そこに出入りする人々の人生模様。

    最初の話の両親が最低。でもその束縛から逃れようとする佐菜子にエールを送りたい。
    ちょっと高めのお気に入り下着、買うときの高揚感・着用したときの高揚感を思い出しました。

  • シャッター商店街にできた場違いなランジェリー・ショップ。
    この店に立ち寄った人たちが、一歩前へ踏み出すきっかけをつかむ。
    そして女性店主も。

    近藤さんの心理描写はとても好き。
    サクリファイスを読んだときの衝撃を思い出します。

    これは家族の物語ですね。
    特に、母親と、知らずにその母親に呪縛されてきた娘のストーリーは読みごたえありました。
    母と娘という関係だからこそ遠慮もなく罪悪感もなく容赦ない。
    そして、母と娘は別々の人間なんだという割り切りがしにくい。

    その結果起こる不幸な連鎖。

    小説の中ではふわりと新しい風が吹いたけど、日本にはこうした呪縛から逃れられない家族がいくつもあるのかもしれないな…なんて考えさせられました。

  • 本屋だった店舗のあとにできたのはカラフルな下着屋さんだった。
    一話と二話は下着屋さんの外の人の話。
    三話・四話は、下着屋さんの話。

    それぞれ、心に刺さっている刺の話。
    誰もが、心にいくつかの刺を刺し、知ってか、知らずか、その刺と共に生きる。
    けれども、その刺は気がついて、自分で抜き、その傷を癒すこともできる。
    特に親から刺された刺は、深く長くとどまっていることが多いが、それも、自分の気持ち次第で、抜き、癒すことができる。
    そして、その時期は遅すぎるということはない。
    自分らしく生きていくためにも、自分に刺さった刺に早く気づき、抜いて、癒していきたいものだ。、

  • 『きれいな下着を身に着けると、自分がとても大切に扱われているような気がする。あなたがあなた自身を大事に扱っているのだから』
    近藤さんの本は好きです。
    かなえさんの下着に対する思いが自分と重なります。
    自己満足だけじゃない、気持ちを底上げしてくれるもの。
    きれいな下着が大好き。

  • この本を読んだことがあるような気がする。なんとなく覚えているような気がするのに、はっきりと読んだことある!と言い切れないのはなぜだろう。
    そしてこの作家さんの描く世界が、派手なパフォーマンスが少なくて心地いい。
    分かりやすくハッピーエンドも好きだけど、出来すぎレースの物語は続けて摂るとしんどくなってくるから。
    こういう現実にありそうな、流れている空気も変化もゆったりとした写実的な世界観に触れると、息が整う感じがする。

    自分と親との関係があまり良くないことには大人になってから気付いて、それが一般的には毒親と呼ばれる部類に入るのだと認めたのは最近だった。
    心理学の記事や講座や本などを通していろんな情報に触れて、ようやく感情的になるだけではない、客観的に親子関係というものを見られるようになったと思っていた。
    でも、頭でっかちになって知識だけ詰め込んで心の仕組みを知ったところで満足していたことに気づいた。
    かなえさんの「大人になれば、親も子もお互いに分かってもらう義理はない」という台詞。
    そして実の母親の介護はするが、幼い頃に刺された棘は許していないところ。
    はっきりと親子の確執が無くなったわけでもなく、かといってバチバチにバトルを繰り広げているわけでもなく、緩やかに受け入れていくスタイル。その姿勢にほうっと息が漏れた。
    他の登場人物も。
    男性に生まれて女性下着に興味がある人と、その父親。母親。特に年代もあるんだろうけど、このお父さんが昭和あるあるで、私の父も似たようなもので、既視感がすさまじかった。
    あまりにもリアルなので読んでいて腹を立てたくらい。それでも、親子には変わりないし、変えられない。お父さんの方も自分は変わらないんだということを恥じることもなく、息子のことをすんなり受け入れることができないことに対して、真っ直ぐ向き合っていたように思う。
    急に変化して、息子のことを受け入れようと努力し出すのはやりすぎだから、このくらいの反応がとても現実的に感じる。

    下着と、性。特に最初のお話の女の子と立場は近い。(親の介護とかはしてないけど)
    胸が大きいのは生まれ持ったものだし、パッと見て分かりやすい特徴でもある。異性との関連も深い部位で、からかわれたり、コンプレックスに思うことは多い。
    物理的に重さもあるから、肩こりなんかも酷いし、でも同性にそれを伝えると嫌味と捉えられることも多いから愚痴を言うことも控えめになる。
    ましてや自分の身体のことを親から否定的な言葉で棘を刺されるだなんて、じんわりとその人を殺しているようなもの。佐菜子さんがそれに気づいて、自分の意志を第一に優先するようになって嬉しい。
    私はそれで親のことを憎んだけれど、佐菜子さんはするっと流した。その時のかなえさんの台詞がとても好き。

    親と子は分かり合えなくても親子だし、人と人は必ずしも分かり合えなくていいんだ。
    分かってもらおうと躍起になる必要もなければ、分からないからと避けることもしなくていい。
    自分の好きなこと、好きだと思ったその気持ちはそのまま感じて持っておけばいい。
    親から、他人から否定的なことを言われたとしても、好きだと感じたその気持ちまでも否定することは自分にしかできないのだから。

    読後感が、ほんの少しの湿り気を帯びたさわやかな初夏の風のように感じた。

    それと、国産大手メーカーのブラがパッドとワイヤーでガチガチに固めてくるのは本当に共感しかない。
    サイズが合っているものを試着しても、苦しくて着けていると気持ち悪くなってくる。冗談じゃなく吐き気もしてくる。
    最近はワイヤーなしのものも出てきたけど、それでも自分に合うサイズが無い。やっぱり在庫としてあるのはボリュームゾーンのもののみ。あってもMとかLとか大雑把な括り。
    だからH&Mでこのお話に出てきたような「やわらかな布でそっと乳房を包んでいるだけ」のブラを見つけた時、内心でそっと狂喜した。滅多にこんなブラには出会えないから何着でも買いたかった。でも、残念なことにサイズが無くって2着しか買えなかった。色の選択肢も無かった。もっとこういうタイプのブラが増えて、田舎でも手に入りやすくなればいいのに。

    追記。
    第一話の「情報だけは平等だ」の一文。
    私も田舎生まれだから、佐菜子と似たような楽しみを味わっていた。現実世界では狭苦しい空気を感じていても、本の中では全く違う世界が味わえる。
    イギリスのアフタヌーンティーだとか、フランスのお洒落な街並みだとか、インドやタイなどの熱気あふれる空気感だったりとか、実在しないファンタジーの世界だってある。
    現実が辛い代わりに、本の世界をオアシスとして逃げ場にしていた。
    だから確かに「情報だけは平等」と言えるんだが、さわやか書店の時子さんも言っていたように、田舎の書店だと入ってくる本の種類、冊数にも限りがある。日販などの卸を通しているものはそこの都合で入荷できる本、つまり情報が限られてしまう。
    だから確かに情報だけは平等なんだけれど、平等じゃない。
    都会の方が優先的に広い情報が広まっていて、田舎は入ってきてる情報がそもそも絞られている状態になっている。
    田舎にずっと住んでいるとそのことにすら気付けないまま一生を終えていく。それが幸か不幸かは個々人によるけれども。
    だから「情報だけは平等だ」の一文にはとても共感する半面、そうじゃないところもあるんだよなあと思った。

  • 新年の初読書。
    ランジェリーショップは、入るには勇気がいるけど、それでテンションが上がる気持ちはよくわかる。母との関係の悩み、介護の悩み、自らの病と、たくさんの苦難があるけれど、書き振りが軽快でさらさらと進んでいく感じだった。

  • けっこう前の小説ですね。だからかな、娘を支配したり女性を見下す親が出て来てムカムカしました。
    ランジェリーショップ「シフォン・リボン・シフォン」を経営するかなえの母親もそう。病気になった娘にひどい言葉浴びせてます。
    そっちの怒りが大きくて、素敵なランジェリーの描写があまり入ってこなかったのが残念でした。
    でも自分に合う下着を付けて、それが自信になるのっていいなあって思います。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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