シフォン・リボン・シフォン

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.60
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本棚登録 : 948
感想 : 187
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022509796

作品紹介・あらすじ

さびれた商店街に花ひらいたランジェリーショップ、そこに出入りする人々の人生模様。レースやリボン、小さな花柄の下着が、行き詰まった人間関係をなぜかほどいていく。地方都市に生きる人々の屈託と希望をえがく、摩訶不思議小説集。

感想・レビュー・書評

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  • シフォン、リボン、レース、オーガンジー、フリル。。。
    この歳になっても、そんなふわふわして綺麗なものが大好きだ。

    キラキラのアイシャドウに、ほっぺたの真ん中にまんまるのチークをぽわんとのっけて
    娘の参観日に出かけることはできないし、
    リボン結びのひらひらワンピースで会社に出勤することもできないように
    メイクや衣裳はどうしてもTPOに左右されるけれど、
    誰に見せるわけでもないランジェリーでなら
    いつでも思いっきり、夢のように美しい世界に浸ることができる。

    第一話、両親に劣等感という棘を全身に植え込まれ、家に縛り付けられていた佐菜子が
    初めて繊細で美しい下着を身に着けることで、しがらみからふっと解放され
    「きれいな下着を身に着けると、自分がとても大切に扱われているような気がするの」
    とつぶやくシーンに、涙が溢れた。

    私は、亡くなった母とは特に仲が悪かったわけではないけれど、
    好きなファッションや、映画や漫画に関してはまるっきり理解が得られなかったので
    外国の童話に出てくるお姫様に憧れていた幼い日、
    ワカメちゃんを上回るベリーショートの髪に、茶系のかっちりしたスーツで
    ピアノの発表会に出され、こっそり泣いたことを思い出したりして。

    人に美しさを誇示するためでもなく、男性の心を惑わすためでもなく、
    自分の心と身体を大切に扱ってあげるために丁寧に作られたランジェリーが
    思いがすれ違って隙間だらけなのに離れられない
    母と娘、父と息子の間に送り込む風がやわらかく、清々しい。

    教員一家に生まれ、「よりによって下着屋なんて!」と母に詰られながら
    美しく繊細なランジェリーへの憧れを貫いて店を軌道に乗せ
    同じように親との確執に悩むお客の心に寄り添う、オーナーのかなえが素敵で

    きれいなものが大好きな女の子たち!
    今日もお気に入りの美しいランジェリーで
    密やかに、うっとりと、自分にリボンをかけましょう♪ と囁きたくなります。

    • ひなきさん
      こんばんは(^^)突然のフォローでしたのに、お返しフォローありがとうございます。

      この本のレビューでまろんさんのことを知り、ほかのレビ...
      こんばんは(^^)突然のフォローでしたのに、お返しフォローありがとうございます。

      この本のレビューでまろんさんのことを知り、ほかのレビューも読ませていただいたんですが、素敵なレビューがたくさんありこの本おもしろそう、あの本おもしろそう!と、気になる本がたくさん増えました(*^^*)
      そのうちまろんさんの本棚と同じような羅列で本が並ぶかもしれませんが、その際はご容赦くださいませ。笑

      これからよろしくお願いします(*^▽^*)
      2012/12/18
    • まろんさん
      ひなきさん、こちらこそありがとうございます♪

      ブクログのおかげでお知り合いになれた方たちと
      本棚の中身が重なっていくのは、とてもうれしいこ...
      ひなきさん、こちらこそありがとうございます♪

      ブクログのおかげでお知り合いになれた方たちと
      本棚の中身が重なっていくのは、とてもうれしいことですよね。
      私もひなきさんの本棚を本当に楽しみにしていますので
      おすすめの本をいっぱい教えてください(*'-')フフ♪
      2012/12/19
  • 中学生の頃、家に届くPJのカタログを眺めるのが好きだった。大きな胸も、小さな胸も、花のように繊細なレースやフリルで彩られ、裸でいるよりよほど可愛らしく神秘的に見えた。

    気に入ったデザインのものには印をつけ、サイズ展開を確認しながらページをめくった。

    およそ実用的でないガーターベルトやビスチェ、ベビードールにも憧れた。

    大人になってみると、地味なヌードカラーや装飾の少ないものの方が服に響かず活用頻度が高いことに気づき、一目惚れ買いすることは減ったものの、美しいデザインのものを身につけると気分が高揚する。

    閉鎖的な田舎の町のさびれた商店街に突然現れたインポートランジェリーショップ。
    親から「みっともない」と否定され続けた豊かな胸も、可愛らしいものに憧れる乙女脳の男性の胸も、乳がんを摘出し大きな傷跡が残る胸も、優しく包み込む下着たち。

    仕事柄、乳がんの摘出手術後の乳房再建論文なども目にすることがあるが、最近の再建技術の向上には目覚ましいものがあると感じる。カバーしてくれる専用パッドやブラジャーを身に付ければ尚更人には気づかれにくいだろう。

    大胸・小胸等の悩みはもちろん、心と体、両方のケアまでもしてくれるランジェリー。新たな自分を発見できるランジェリー。

    人には見せないものだけど、だからこそ、お洒落をする意義。たまには色っぽい、可愛い物も身に付けないとな。

  • 寂れた商店街に新しくオープンしたランジェリーショップ『シフォン・リボン・シフォン』。心の拠り所を求めて人々は集まる。綺麗な物、可愛い物に囲まれると高揚する気持ちが心を元気にしてくれる。ランジェリーに限らず、自分を元気にしてくれる存在って大きいな。
    4話からなる小説だが、今流行りの?毒親が登場して、特に一話目など可哀想で可哀想で(T_T)でも、どの話も素敵なランジェリーとの出会いが人を前向きにしてくれ、明日に向かって一歩踏み出す姿がとても清々しかった。

  • 田舎町の小さな商店街にできたランジェリー・ショップをめぐる話。
    淡々と描かれる軽くはない現実に押しつぶされそうなとき、綺麗なランジェリーを選ぶことが、ふと次への一歩を促す。
    4話の連作を収録。

    第1話
    川巻町の商店街は、半ばシャッター通りになりつつある。
    32歳の佐菜子は行きつけの書店がなくなることを知って、がっかり。
    骨折して以来動けなくなった母の介護をする身で、仕事は近くのスーパーのパート。
    仕事帰りに寄れる店は貴重だったのだ。
    新しく出来た店はいささか場違いなランジェリーショップで、その名も<シフォン・リボン・シフォン> 品がよく美しい展示に、佐菜子は目を奪われる。
    胸が大きいことを少女の頃から恥ずかしく思い、合わないブラに胸を押し込めてきたのだったが‥
    両親の心無い言葉に傷つけられるが、それが以前から自分に刺さった棘だったことにやっと気づく。
    背筋を伸ばして、自分を大事にし始める佐菜子。

    第2話
    商店街で米穀店をやっている60前の均。
    悪気はないが、いささか了見が狭い。
    一人息子の篤紀が結婚しないことだけが気がかりだった。
    ランジェリーショップに息子が出入りしていることに気づき、年上の女性である店主と関係があるのかと疑うが、実は‥
    頑固親父が漏らした一言が救いに。
    均が見る奇妙な夢が、息子の性向にどこかで気づいていたのかもと思わせます。

    第3話
    ランジェリーショップを経営する水橋かなえ。
    東京でファッションビルに店を出して成功していたが、母の介護のために戻ってきたのだ。
    教員一家に育ち、最初に出版社に勤めただけでも驚かれたが、店を出すときには「なぜ下着屋なの」と母には詰られた経緯がある。
    かなえは37で乳がんになり、がむしゃらに無理をし過ぎたと反省はしたのだが。今は、乳がんの女性のための品を用意することにも力を入れていた。
    好きなことを仕事にする幸福と熱意があれば、親の干渉などはね返せる?

    第4話
    身綺麗で裕福そうな高齢の女性がかなえの店を訪れ、取り寄せの注文をしてはキャンセルしてしまうことが続く。
    商店街ではすでに知られた存在で、若い頃までは大金持ちだったらしく、いまだにその感覚が忘れられない様子。
    その家の嫁が、実はかなえの同級生とわかったり。姑には認知症も出てきたらしい‥

    キーワードは「自分を大切にすること」
    わかり合えるとはいえないまでも、縁を切るほどのこともなく傍にいるのが家族。
    きついことを言う親の側には、捨てられる恐怖心や寂しさがあった。
    中年になり、老いた親の世話をする立場での実感がこもる結末に、じんわり。

    綺麗なもの、可愛いものが大好きな私。
    ランジェリーやハンカチやスカーフなどの引き出しはとてもカラフル☆開けて見るだけでも楽しいのです。
    そして高校の頃までは合わない下着を着けていて、専門店に行ったら店員さんが張り切ったという経験も。

    個人的に琴線に触れる要素が多いので、なんともいえず心惹かれましたが、苦みが強すぎて共感できるとまで言いがたい面も。
    ここまでひどいこと言われてないだけ幸せってことかしら~それはもちろん家によって違うだろうけど。
    親と同居して介護する立場なので、いや~~シビアな現実、掛け値なしの大変さは十分、わかるんだけど!
    でも、こういう面ばかりではないのでは‥?という気持ちが一抹、残ります。

  • 近藤史恵さんの書く優しい人間ドラマ。大きな事件もなければ、悪もない、普通の人々の日々。心の中にある小さな棘から逃げたり向き合ったり。その緩やかな変化を、丁寧な心情描写で描いていく短編4編。

    全ての話が田舎のさびれた商店街に開店したランジェリーショップにまつわる話。病気だったり、介護だったり、人に頼ることができない深い出来事が日々の普通の生活の中にある。それでも、ほんの少しの光が見えていれば何とか頑張れそうな気がする。

    そんな後味の本でした。


    近藤史恵さんの心理描写は、さりげないけれど、心にすっと入ってきて気持ちよく読めるのが好き。

  • かわいいブラ買いに行きたくなった。ガチガチに締め付けないのにきれいに見せてくれるブラってつけてみたい。

  • 「シフォン・リボン・シフォン」
    なんて素敵な響きだろう。かわいいものが大好き、少女趣味なところがある私はシフォンも好きだしレースも好きだしリボンも大好きなのである。
    ふわふわきらきらしているものが大好きなのだ…!アイドルの衣装、ドレスブティックのウィンドウ、そしてランジェリー。
    そういう夢みたいな繊細なものが大好きなのだ。
    だからタイトルにひかれて、さらに今個人的にきてる近藤史恵さんの本だったから読んでみた。
    ランジェリー集めは私も好きだ。けっこう持っているほうだと思う。普段使いするものとは別の総レースになっているものだったりビジューがついているものだったり、自分がときめくから買うし身につける。誰かのためではない。
    そんな隠れた装い、人から見えない部分での装いが自分自身を励ましてくれることもある。
    ランジェリーを買うときは自分がこれを着てどういう気分になれるか、なりたいかを考える。人に見せるものでもないから誰かの目を気にする必要もない。だからこそとことん自分と向き合える場所がランジェリーショップだ。
    デパートや商業ビルだとテナントの一角がショップになっていることはほとんどだろうが、本作の「シフォン・リボン・シフォン」みたく独立型の店舗となっている場合、その店舗に入った瞬間からは自分とランジェリーだけの時間になる。
    そういう外から見た自分と向き合わなくていい時間があるだけで、心にクッションを纏うことができる。そして心にクッションを纏うからこそ、向き合える現実もあるのだ。

  • 高級ランジェリーショップの店主とお客さんたちのお話。山あり谷あり、現実的な悩みごともしっかり書かれている。2012年の本、前半は女性蔑視の登場人物の発言や思考を読むのがしんどかった。10年以上たった今では同じ問題を描いたらだいぶ違う感じになるかも。

  • さびれた商店街に花ひらいたランジェリーショップ、そこに出入りする人々の人生模様。

    最初の話の両親が最低。でもその束縛から逃れようとする佐菜子にエールを送りたい。
    ちょっと高めのお気に入り下着、買うときの高揚感・着用したときの高揚感を思い出しました。

  • シャッター商店街にできた場違いなランジェリー・ショップ。
    この店に立ち寄った人たちが、一歩前へ踏み出すきっかけをつかむ。
    そして女性店主も。

    近藤さんの心理描写はとても好き。
    サクリファイスを読んだときの衝撃を思い出します。

    これは家族の物語ですね。
    特に、母親と、知らずにその母親に呪縛されてきた娘のストーリーは読みごたえありました。
    母と娘という関係だからこそ遠慮もなく罪悪感もなく容赦ない。
    そして、母と娘は別々の人間なんだという割り切りがしにくい。

    その結果起こる不幸な連鎖。

    小説の中ではふわりと新しい風が吹いたけど、日本にはこうした呪縛から逃れられない家族がいくつもあるのかもしれないな…なんて考えさせられました。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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