ふくわらい

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.45
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本棚登録 : 3097
レビュー : 457
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022509987

作品紹介・あらすじ

紀行作家の父から、マルキ・ド・サドをもじって名づけられた鳴木戸定。
書籍編集者の定は、ブサイクで身なりに無関心、感情を表さずに人付き合いも機械的にこなす。
一方で、彼女は、旅先でワニに食べられて死んだ父親の死肉を食べた女として、世間に名を知られていた。
ふくわらいが唯一の趣味である彼女は、猪木になりきれなかったロートルプロレスラーのエッセイを担当することになってから、人との距離を少しずつ縮めていく・・・。

感想・レビュー・書評

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  • 顔、身体、心、経験、口から出る言葉、口に出さない言葉。
    すべてひっくるめて自分なのだ!
    と作品の中で叫び続けている西加奈子さん。

    つい数日前に読んだ『きりこについて』の中では、猫と会話するきりこが
    冷たい井戸水に触れて「Water!」と言葉を得たヘレン・ケラーのごとく
    雷に打たれたような直感と拙い言葉で「まるごとの自分」を叫んでいたけれど、
    この『ふくわらい』では、主人公の定の職業が編集者ということもあって
    その思いは、整った美しい文脈で、言葉を尽くして語られます。

    母の胎内に感情というものをすべて置き忘れてきたような子どもだった定。
    そんな定が、初めて福笑いで創り上げた珍妙な顔を見て笑い転げて以来、
    彼女にとって顔は、目、鼻、口、眉毛というぺらぺらのパーツの集合体となり、
    自由に組み合わせて遊べる、唯一無二のおもちゃになる。

    紀行作家だった父にくっついて辺境の地を転々とした少女時代に
    ある部族のしきたりに乗っ取って、亡くなった女性の肉を口に含んだことを
    父が嬉々として作品に綴ったため、7歳にして奇異な目で見られ始める定。
    世間との間に透明で硬い壁ができても一向に気にせず、奇矯な行動を取っても
    パーツの組み合わせに恋している彼女が、誰かが言葉を積み上げて文章にする、
    そのことに深い興味を抱き、編集者として高い能力を発揮するのがおもしろい。

    福笑いでパーツの集合体としての「顔」に拘り続けてきた定が
    目の見えない武智次郎に、「見えなくても定さんは美人だ」と断言され、
    敬遠していた同僚の小暮しずくが屋上で獣のように泣き叫ぶ傍らに寄り添い、
    怖いのにリングに立ち、体があればいいと思いながら、社会と繋がっていたくて
    思いを言葉にして綴らずにいられないプロレスラー守口の姿を目の当たりにして、
    おにぎりやカルピスと一緒に、消化しきれなかった自分を吐き出すシーンが圧巻です。

    関わりを持ったひとたちを興味深く見つめ、自ら関わろうとするにつれ、
    定が他人の顔のパーツを自由に操って遊ぶのをがまんし始めるのが微笑ましく、
    彼女を慈しみ育ててくれた乳母の頼子が、生まれて初めてできた友だちとして
    小暮しずくを連れて現れた定を見て泣きじゃくる場面には涙が止まらず

    「顔」に拘り続ける定の顔がどうしても想像できないまま辿り着いたラストシーン。
    日曜の新宿通りを、光を浴び、生れたままの姿で、武智次郎と手をつないで歩く定は
    まさに今、新しく世界に生まれ落ちたのだと知り
    幸せに満ち、生き生きと笑っている顔が最後の最後に鮮やかに浮かび上がって
    やっぱり凄いな、西加奈子さん!と唸らせられる1冊でした。

    • まろんさん
      「容れもの」と「こころ」に拘ってきた西さんが、その集大成として
      書かずにはいられなかった作品なのかな、と思いました。

      でもでも、同じテーマ...
      「容れもの」と「こころ」に拘ってきた西さんが、その集大成として
      書かずにはいられなかった作品なのかな、と思いました。

      でもでも、同じテーマなら、素敵な猫、ラムセス2世の視点で描かれる
      『きりこについて』のほうが、私としてはオススメです(*^_^*)

      『きいろいゾウ』は、宮崎あおいちゃんもイメージぴったりだし、
      ご本人もやりたくてたまらなかった役みたいだし、ほんとに楽しみですね♪
      2012/12/16
    • jyunko6822さん
      遅ればせながら読了いたしました。
      この本にはグロい、臭いなどとレビューもあったりしたので、???でしたが、
      私も涙が溢れてきました。
      レビュ...
      遅ればせながら読了いたしました。
      この本にはグロい、臭いなどとレビューもあったりしたので、???でしたが、
      私も涙が溢れてきました。
      レビューに拍手\(^o^)/
      2013/01/13
    • まろんさん
      jyunkoさん☆

      たくさんの人が行き交う中、人目も気にせず武智くんと手をつないで
      定が晴れやかに新宿通りを歩いていくラストシーン、
      涙が...
      jyunkoさん☆

      たくさんの人が行き交う中、人目も気にせず武智くんと手をつないで
      定が晴れやかに新宿通りを歩いていくラストシーン、
      涙が止まりませんよね。
      jyunkoさんも同じように感じてくださって、とてもうれしいです♪
      あとのコメントは、jyunkoさんの素敵なレビューのほうに書かせていただきますね(*'-')フフ♪
      2013/01/13
  • 久しぶりに直木賞作品でも読んでみようと思ったのですが、上下2冊の厚さに怯み、割と薄めの同著者の本書にしてみました。(笑)

    奇想天外でエログロで、しかしどこかひょうきんでとぼけていて、精神と肉体のシリアスなせめぎ合いを主題にしているにも関わらず、全体を覆うユーモアに満ちた文体が不思議な感覚を引き起こす物語です。自分は面白くて終始にやにやしながら読みました。(笑)そういえば小川洋子さんのとぼけ調子でどこか切ない物語を読んでいるような趣もあったかな。
    鳴木戸定の生い立ちから始まって、周囲のうさんくさくていわくありげな人物像の設定には大いに魅せられます。(笑)特にプロレスラーの守口廃尊は意表がつき過ぎる存在感の大きさでしたが、その守口が大事にしていた「言葉」と人生を賭けた衝動は、父・鳴木戸栄蔵とも、小説家・水森康人・ヨシ夫妻とも共通した本書を通底するキーワードであり、そうした魂のこもった立ち居振る舞いが読者を引きつけるのだとも思います。
    この作品における「言葉」の選択の強さは面白いことこの上がないのですが、言葉の力によって映像が一層鮮明になるというか、その色彩や匂いや空気が伝わってくるかのような感覚が素晴らしいです。印象に残るシーンは多いのですが、特に面白くて何度も読み返したのは、武智次郎と小暮しずくと定の、「やりたい」問答だったかな。(笑)
    「ふくわらい」とは、物質も言葉も全てガラガラポンして、自分だけのものとして世界を構築し直せるのだという象徴だったのでしょうかね?その時に味わえる幸福感に自分も浸ってみたいと思わせるような物語でした。

  •  ます、装丁の絵の不気味さに惹かれました。帯には「マルキ・ド・サド」とか「趣味は暗闇でのひとり遊び」とか、おどろおどろしいことが書かれてあって、
    「これは、変態が主人公の小説だな。主人公は男で、その彼が犯罪すれすれの危ないことする話だな!!」
    と思って、ドキドキしながら手に取りましたが。


     主人公は、女子でした。しかも、ものすごく丁寧な物言いをする書籍編集者。彼女が、可愛らしいんです。
     たしかに、変な趣味を持っていたり、人肉を食べたことがあったりするなど、変わったところはあるにはありますが、彼女が人を敬愛する心や文章が生まれる瞬間を愛おしく思う感覚は、共感しきりでした。

     「先っちょだけ」という表現が好きです。
     今の自分は、自分のなかのすべての先っちょで、生きている間にそのすべてが大きくなっていく。
     「先っちょだけ」という表現は、浅いようでいて、その人の「すべて」を捉える表現だったんだなあ、と読み終えて思い至りました。

     ほかにも、守口廃尊の言葉はたくさんたくさん、心に残りました。彼は、訳の分からんことばっかりいうのに、心に残る。なぜか、心に深いところに刺さって、残る。涙がこみ上げてくる。
     なぜだ。彼の言葉が、好きだ。

     私も、定と次郎が歩くさまを見て、少しでも先へ進ませてあげたいと願う大衆になりたいと思いました。

    • rk25147さん
      はじめまして。
      「先っちょだけ」。深い表現ですよね。
      先っちょのその奥にある広がりを感じさせるって凄いです。
      守口廃尊も不思議な魅力を持った...
      はじめまして。
      「先っちょだけ」。深い表現ですよね。
      先っちょのその奥にある広がりを感じさせるって凄いです。
      守口廃尊も不思議な魅力を持ったキャラクターですねー。
      2013/05/27
    • HNGSKさん
      rk25147さん。こんにちは。
      先っちょにいるのが今の私で、そこから振り返ってみると、信じられないくらい広い空間が広がっているのかもしれな...
      rk25147さん。こんにちは。
      先っちょにいるのが今の私で、そこから振り返ってみると、信じられないくらい広い空間が広がっているのかもしれないですね。
       長く生きていきたいですね。私たち。そして、たくさんの作品に出会って、こうして読んだ作品を語り合いたいです。そうして、繋がって行きたいです。
      2013/05/27
  • この本の感想を表現する、いい言葉が見つからない。
    ただ、凄い本を読んだなと思う。

    ワクワクしたりドキドキしたり、そういったものは少ないのだけど、皆が心を裸にして真っ直ぐであり、読むことをやめさせない、力強い話だった。

    目や鼻や口や耳が、それぞれの顔でそれぞれの場所に納まることによって、その人らしさとなる。
    同じように文字も、ただのそこにあればただの文字なのだけれど、誰かが言葉を、文章を組み合わせて作ることによって、その人らしさとなる。

    あたりまえのことなのだけれど、その単純で純粋なことが心に響いた。

    • HNGSKさん
      初めまして。ayakoと申します。
      私もrkさん同様、すごい本を読んだな、と感じました。
      初めまして。ayakoと申します。
      私もrkさん同様、すごい本を読んだな、と感じました。
      2013/05/16
    • HNGSKさん
      こんにちは。先っちょの表現を、気に入ってくださってありがとうございます。
      先っちょにいるのが今の私で、そこから振り返ってみると、信じられない...
      こんにちは。先っちょの表現を、気に入ってくださってありがとうございます。
      先っちょにいるのが今の私で、そこから振り返ってみると、信じられないくらい広い空間が広がっているのかもしれないですね。
       長く生きていきたいですね。私たち。そして、たくさんの作品に出会って、こうして読んだ作品を語り合いたいです。そうして、繋がって行きたいです。
      2013/05/27
  • とても良かった!
    力強くて、ユニーク。
    特異なシーンがあるので、子どもにはススメないけど。
    最高傑作なんじゃないかなあ…

    鳴木戸定は、紀行作家の父親にマルキ・ド・サドをもじって名付けられた。
    定はほとんど感情を表さない子どもだったが、母の買ってくれた福笑いに新鮮な感動を覚え、夢中になる。
    母にもばあやの悦子にも可愛がられたが、母は5歳の時に亡くなってしまう。
    父は旅行先に定を連れて歩き、葬送で死者を口に含む部族の習わしに参加。そのことを本にしたため、定は学校で気味悪がられることになってしまった。

    編集者になった定は、25歳。誰にでも丁寧な話し方をするが、人となれ合うことを知らない、変わった女性になっていた。
    今でも福笑いのことを考え、目の前の人の顔のパーツを動かしてみる癖が抜けない。
    作家との打ち合わせの様子など、ありそうなシーンにもどことなく面白みが漂い、読み飛ばせない濃厚さです。
    悪役プロレスラーの守口廃尊の連載を本にする相談をする間も、顔を見つめ続ける定。
    この男の歪んだ顔は、定にとっては興味がつきないものだった。

    水森康人という高名な作家には、ヨシという献身的な妻がいた。
    後に、思わぬ事件が起きるが、その対応をやり遂げた定は、編集部で認められるようになる。

    新宿駅で白い杖を振り回している男に出会い、声をかける。
    武智次郎といって、見るからにイタリア人の顔だが、ハーフで日本育ち。
    一目惚れしたと言って何かと連絡をしてくるようになり、定は戸惑う。

    同僚の小暮しずくは、美人過ぎる編集者としてテレビに出たこともあるほど。
    定より一つ下で、最初は互いになじめなかったが、ふとしたきっかけで親しくなり、定の初めての友達となる。
    次郎のことも相談するようになった。

    もともとユニークな女の子が異常ともいえる経験を経て、どこか固まったままだった。
    小さな事がきっかけとなって動きだし、いつの間にか世界がすっかり変わっていく。
    ぴかぴかの魂と、何を隠すこともないぴかぴかの身体に光を浴びて。
    心があたたまり、勇気が出ます。
    2012年8月発行。

  • なんだこりゃあ、すげえ…。

    独特の不思議な話だけど、どっぷりこの世界にはまった。
    偏見や常識とかに最初から全く囚われてなくて、真摯に真正面から受け入れる定に惹きつけられ、もう心を鷲掴みされた。

    守口の独白にも泣いた。
    超えられない差を感じながらそれでも好きだから続けてる。凡人の哀しさが伝わる。

    守口が言うように定はあっち(天才)側の人間だと思うが、その彼女が編集者という裏方に徹した仕事をしているところが面白い。その理由を彼女が語る場面もいい。

    武智の正直なところが気持ちいい。目が見えないからこそ定のよさがダイレクトにわかるんだな。

    最後の行動はジョンとヨーコみたいだ。

  • 出版社の編集部で働く鳴木戸定は、
    幼少の頃より“ふくわらい”に魅了され、
    人相を自由に再配置する能力に長けている。

    “失敗したふくわらい顔”の守口廃尊(プロレスラー)の担当者となり、
    連載コラムの書籍化を交渉していくのだが・・・。

    顔を構成する眉、目、鼻、口。
    文章を構成するそれぞれの文字。

    どちらもそれぞれでは意味を成さないが、
    つながり合うことにより深い趣きを醸しだす。

    乳母の悦子宅をたずねるエピソードは感動涙。

    感動涙ってなんだ?
    あれ、感動涙であってる?
    「ゲシュタルト崩壊ですね」

    優しさと愛情に満ち溢れた作品。

  • 始めは変な話だなぁと思った。
    だんだん止まれなくなった。
    ついには「すげぇな」と唸った。
    この凄さは上手く言えない。
    それもきっと「先っちょ」しか分かってないからだろう。
    読み終えてもずぅっと頭に残って、あれこれ考えさせられる本だ。そしてそれが、なんだかとても気持ちいい。

  • すごい!
    もうその一言だけだ。
    表紙に惹かれて、幼い定のふくわらいへの執着に圧倒されて、どんどん引き込まれてしまった。
    映像として想像することを躊躇う描写もいくつかあったけれど、目が離せない。
    物語は読み始めた時には全く予想もしなかった結末にたどり着いた。
    でも、私はあんまり驚いていない。
    とても嬉しいなと思っている。

    みんながみんな、愛おしいなと思える。
    綺麗とか正しいとかじゃない。
    もっともっと純粋な視線で、世界に恋をする幸福を見せてもらる、そんな物語。

  • 生きること、人とは違った捉え方をしている主人公 定 ですが、
    どんな人より生きていることを大事にする人なのだと気付きました。

    編集担当者として、作家に向かう定は時に滑稽なほどですが、
    彼女はいつも真摯でまっすぐで素直です。
    女性としては無垢で不器用で世間知らずで純粋です。

    ラストシーンには、なぜか
    涙が出てとまりませんでした。

    • まろんさん
      女性として、人間として、とても純粋でかわいらしい部分を持っているのに
      特殊な育ち方をしたために、それを表現する方法を知らず
      父親の著作のせい...
      女性として、人間として、とても純粋でかわいらしい部分を持っているのに
      特殊な育ち方をしたために、それを表現する方法を知らず
      父親の著作のせいで変人のレッテルを張られていた定が
      人との関わりの中でカクンカクンとぎこちなく変わっていくのが
      とても愛おしく感じられる本でした。
      レビューの最後の2行を読んで、jyunkoさんと一緒に本を覗き込んで
      感動の涙をぽたぽた落としているような気持ちになって
      勝手にうれしくなってしまいました(*^_^*)
      2013/01/13
  • 10年くらい前に「さくら」を読んで以来、好きな作品に出会えていなかった西加奈子さん。
    この本は好きすぎます!

    かなりシュールで奇異でそしてマジメな主人公にプラスしてグロテスクな描写多数な本ですが、ニヤッとさせられたり切なくなったり涙が出そうになったり・・。
    好みが分かれる本だろうなぁ~。
    私にとっては久々に夢中で読んだ本でした。
    定としずくちゃんが友達になれて良かった♡

    結構変わった小説をよく書く方だと思っていましたが、生まれはイランなのだそうです。そして、私と同じ大学出身であることを知りました(^^)。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「かなりシュールで奇異で」
      文庫化待ちで未読。私は割と西加奈子は好きです。。。変だからかな?
      「かなりシュールで奇異で」
      文庫化待ちで未読。私は割と西加奈子は好きです。。。変だからかな?
      2013/08/01
  • 点から線へ。そして面に。世の中のものはあらゆる組み合わせから成立している。

    爪。指。甲。掌。それらは全て一つの存在だけれども、組み合わせると「手」というものになる。
    「泣き虫な人」もそれが一つの存在。その存在の中ではそれが全て。
    「怒りっぽい人」」も同じ。それらが組み合わされることで一人の「その人」が存在する。
    組み合わせる存在が増えれば、その人の「全て」が増えていく。私達はそうやって人と関わっていくのだと思う。

    あるべきものがあるべき場所にないと人は違和感を持つ。でもそれでいいじゃないか。違う場所にあっても、その「あるべきもの」はちゃんと存在するのだから。

    目がすこしはなれた場所にあっても、それは「目」なのだし、ちゃんと「顔」の一部となっている。優しさが奥に隠れていても、ちゃんと「優しさ」として存在するし、その人の一部となっている。

    ひとつ一つが「全て」で、その「全て」が組み合わさって面としての「全て」がある。
    それはきっと自分を見つめるときにも必要な感覚のような気がします。

    世界が、また少し面白く感じられる作品だと思います。

  • 西加奈子の作品はタイ料理だ。酸っぱい、甘い、辛い、苦い、それらが個別に識別出来てしかも全体性を持って味わえる。うん。

    人の常識ってなんでしょうね。
    小さい頃に人肉を食べた女というレッテルを貼られた彼女は、もうそこから常識を気にすることはなくなった。
    常識=人の目ですね。

    この人肉を食べるという行為にも、小さい頃に行った未開の地の風習で、亡き人を自分の中に取り込んで一緒に生きるという素晴らしい教義があったんですけどね。

    誰しも人が聞いたらおかしいんじゃないの?っていうことにも自分の理屈で行くと道理に適っていることはあると私は思います。

  • 鳴木戸定。
    個性的だけどとても魅力的。
    その人の眉、目、鼻、口で初めて
    その人が構成されている。
    文字ひとつひとつ、
    その人が紡ぎだすことで
    その人の思いを構成していく。
    ふくわらいのように。

    話している事は真面目で
    本人たちも真剣なんだけど
    どこかコミカルというかユーモラス。
    テンポの良さのせいかな…
    けっこう生臭い話でも
    抵抗なく読める不思議。
    面白かった。

  •  読み初めて「なんでこれを読むのを後回しにしていたんだろう?」と後悔した。
     本に書かれているあらすじからは想像もできない展開(いや、まちがってはいないんだよ)。主人公の定とまわりのみなさんが、あまりにもむき出しでほほえましい。
     面白かった。久しぶりに読み終えたくないと思った。

  • 「小説トリッパー」に掲載したものの単行本化。
    西加奈子ワールドですよ。

    紀行作家の娘鳴木戸定は、幼い時福笑いに熱中し、他人の顔のパーツを動かして見ることができる。

    出版社で編集者をしている定の周りにいるのは、目が見えなくなっても定の理解者の乳母悦子、エッセイも書く奇怪な顔のプロレスラー守口 、小説が書けなくなった夫の代わりに夫夫の死後も代筆を続けた水森ヨシ。

    リストカットした守口の家に行き、定が自分を語る。
    「私は、言葉をつらねて文章が出来る瞬間に立ち会いたい。それと同じように、目や鼻や口や眉毛が、どこみどうやって配置されて顔が出来るのか、その瞬間に立ち会いたいんです。

  • うわっ、苦手な分野の話やなぁ と思いながら読み始めたけど、癖になる美味しさだった!
    変な父の変な娘が幼い時に唯一はまった遊び「ふくわらい」が彼女の生活の柱になっている。
    今や編集者の仕事をしている彼女、いまだに顔のパーツ 目 鼻 口 眉 を自在に操ることが生きる術になっている。一度も泣いたことがなく、汗もかいたことがないし、全身にタトゥを入れている。
    そんな彼女にとっての ふくわらい が、関わる人たちによって 福笑い に変わった!汗もかき、泣くことができ、笑うこともできるように!
    人名に遊び、句読点の多さに凝り、ユーモアを散りばめて読み手を逃さない。やはり大した力量です♪

  • 引き込まれるように読んでしまいました。
    とても不思議な世界観。
    わからない部分がほとんどで、
    でも感覚的にわかるような気もして。
    綺麗な文章が言葉を言葉たらしめるのか?
    私を私たらしめるものはなにか?
    言葉とはなんなのか?
    読み終わったあと、ぼーってしてしまうくらい
    圧倒されるお話でした。
    それぞれのキャラクター、
    みんな意味わかんないし、破廉恥だし、
    変な人たちばかりだけど
    それぞれに自分という存在にもがき、
    だからこそ自分という軸を持っている。
    そんな気がしました。
    このお話を綺麗な文章でまとめることは、
    きっとできないんだろうな。
    気になる人は読むしかない。
    感覚的に、自分の芯へ、心へ、
    伝わってくるものがあるんじゃないだろうか。
    意味わかんないけど、クセになりそう。

  • 定の感覚がおもしろかった。
    西さんの小説は主人公の特殊な部分が少し世間に寄せられていくものが多いなぁ、、それがはまる理由なのかもしれない。。
    先っちょだけっていうのもよかった。
    相手を知りたがったり、自分を知ってもらいたかったりするけど、目の前にいる人そのものが今のすべてで、その先っちょ以外なにものでもないんだと改めて気付かされた。その先っちょを少しでも長く一緒に過ごしていきたいと思える人に出会うってすごいことなんだと感心してしまった。

  • 世界に恋する1冊。

    調べてみると、河合隼雄物語賞の記念すべき第1回目のを受賞されているらしい。

    受賞理由は、
    ユニークで圧倒的な言葉の力によって、「物語」でしか成しえない世界を表現した。
    「ふくわらい」のパーツがすべて集まったとしても、なお語り切れない何かが
    立ち上がってくる作品である。

    納得の受賞。
    共感だとかそういったものを超越して、物語でしかなし得ない世界。その世界によって主人公はゆっくりと覚醒していく。その過程はきっと誰しもが経験している事。
    個性的すぎる登場人物達。でも皆が皆なんだか愛おしく感じてしまう。そして誰もがすごいパワーで迫ってくる。

    ー怒っていません。目が見える人は、言葉を交わすことを難しいと感じるときが、あるから。

    ー今は先っちょがすべてで、でもいつか、そのすべてがもっと大きくなればいい

    ーでもおいらは、猪木さんになりたい。なりたかった。

    ー分かるんだ。あんたは、まっすぐだから。全部、真っ正面から、見て、それから、全部、受け止めるから

    2012年8月30日 朝日新聞出版社 装画:西加奈子 装幀:鈴木成一デザイン室

  • とっても不思議な女性のお話。
    有名な紀行作家を父に持ち、小さい頃旅先で、人の肉を食べた経験を持つ定。人の顔を見ると福笑いのように目鼻口眉を動かさずにはいられない定。
    編集者になった定と色々問題ありの作家さんたちとの関わりも面白いけれど、それよりこの定本人の生い立ちが読むのがキツいぐらいグロテスクで強烈で、ストーリーのポイントが少しどっちつかずの感じが。
    この、純粋すぎる(端からみるとかなりの変わり者)キャラクターは、『リアルシンデレラ』の泉とすごく似てる。

  • 最後そこかい!って思ったけど、なんか主人公の救われてる感がちょっと幸せ。

  • なにがなんだかわからないけれど面白い。
    ぐいぐい引っ張られる。
    最後までわけわからないけれど。
    レビューもかけないくらい。

    定とテーの会話が素敵。
    定と小暮しずくの会話も素敵。
    定と守口廃尊の会話も素敵。
    定と武智次郎の会話も素敵。

    いいなぁ。

  • 最後のストリーキングは何だったのだろう。
    いままでまとっていた殻を破ったということ?
    変な女に変な奴が寄って来て、仲良くなって、ただ、常識的な小暮しずくと仲良くなって、普通に恋をして、めでたしめでたしかと思ったら、なぜ?けは常識的で、白けてしまった。
    マルキドサドは読んで見たくなった。

  • 父の旅に付いて回り幼少を過ごした鳴木戸定は、紀行作家として著名な父の影響をうけ、世間には言いふらすことのできない過去を持ちながらも、現在は文芸誌の編集者として淡々と仕事をこなしていた。幼少期に母がくれた「ふくわらい」は、定に人の顔をパーツにして空想のなかでもてあそぶことを教え、いまなお孤独に世間におかれる彼女の安らぎとなっていたが、ある作家の「顔」に出会ったことで定の中に変化が訪れる。

    ☆☆☆
    ただのえぐい話とかではなく、生きることを真面目に問う話だった。定がきちんと自分を選んで生きていくことを始めたのをみて涙が出た。読めば読むほど彼女は魅力的だった。

  • ※食事をしながら読まないことをおすすめします。

    「ふくわらい」という紙の上の平坦なところから、
    じょじょに感情が立体的になり、
    自分を包んでいた壁を取り払い、
    他人と心を通わせ、他人を愛し、
    唯一固有の「私」の姿を獲得していく・・・

    そんな定の進化の物語。

    それまでは言葉を紡ぐ人のサポート役であったり、
    傍観者だった定が、人に観られる側に変わる、
    生命力がほとばしるラストシーンに、心を打たれた。

  • なんかいいなこの話。あざとさもあるけど愛すべき人物ばかり。読み始めは不気味だった定が後半は愛しくて読み終わるのが勿体無いのに止められなかった。力強いよ。

  • なんのリサーチもせずに図書館に行ったので何を借りるか散々悩んで、顔馴染みの司書さんにオススメ本を尋ねて借りた一冊。
    この作家さんは、司書さんに薦められなかったら、おそらく一生手に取らなかったんじゃないかと思う。
    司書さん曰く、「変な作品だから好き嫌いが分かれると思う」ってことだったけど、確かに、変な作品だった。

    お正月遊びの“ふくわらい”が大好きで、何かに憑かれたようにふくわらい遊びばかりしていた女の子が、その感性のまま大人になり編集者の仕事に就いて、奇人変人な作家や同僚などと関わっていくうちに、少しだけ自分の殻を破るという、ざっくり言うとそういう物語。
    写実的というよりは抽象画っぽい作品で、寓話的。
    だけどファンタジーではない。
    嫌いじゃない。
    展開が気になって、わりと一気に読んだ。
    でも、すごくワクワクするかと言うと、そんなことはない。
    もう一冊くらいはこの作家さんの作品を読んでみようという気になった。

  • 不思議な話で、こんな人が身近にいたら、お近づきにはなれないかもと思いつつ、なぜかするすると読んでいった話。
    あたたかな読後感。

    西加奈子さんは初めて読みました。
    『カバー装画 西加奈子』と書いてあるのですが、西さん、絵も描かれるのですか?西さんの絵も好きです。

  • プラタナスが恥ずかしそうに揺れるさま…って言葉 好きです。

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著者プロフィール

西加奈子(にし かなこ)
1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。2020年初夏、『さくら』が映画化決定。プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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