クラウドクラスターを愛する方法

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.17
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本棚登録 : 736
レビュー : 153
  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022510198

感想・レビュー・書評

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  • 浮気を繰り返す父と、そんな父をかばう同居の伯母から逃げ出し、家を出た母。
    そんな母と十数年ぶりに再会するも、なんだかしっくりこない関係、
    恋人とは結婚の話が出ながらも前進できずに喧嘩してしまい、
    強い気持ちでなったはずのイラストレーターの仕事は全くぱっとせず…。

    「なんでこんなにうまくいかないんだろう」
    ぐるぐると回る鬱屈した気持ちを抱える主人公サトコの気持ちが重く沈んでいて、
    読んでいて決して楽しい本ではなかった。

    切りたくても簡単には切れない親子の縁。
    他人なら我慢できて、他人なら受容できて、他人なら許せるかもしれない。
    もしくは、他人なら、関係を断ち切ることに、そんな躊躇はしないのに。
    親子って難しい。家族って難しい。

    克子おばちゃんの言葉で、重苦しくのしかかっていた雲を押しのけて、
    少しだけ明るい光がさしたようで、それがほんの救いだった。

  • 前作の「晴天の迷いクジラ」は衝撃的だったデビュー作を気負い過ぎていたのかどことなく中途半端な感が否めなかった。
    それに対し今回の作品はいい感じに肩の力が抜けていてすっと主人公の紗登子の気持ちに寄り添うことができた。

    家族との関係に問題を抱えている人間は少なくない。それをなんとか自分の中で折り合いをつけて生きていくんだと思う。
    窪作品はどんな苦悩におかれていても決して人生を諦めさせない。前を向いて歩くこと、希望を持つこと、生きること、そんな作者のメッセージが心地よい。

    次回はどんな作品になるのだろう。待ちきれない思いだ。

  • 「クラウドクラスターを愛する方法」で書かれていた将来への不安が、そのまんま今の自分に当てはまっていたのでいたく共感した。
    この先年齢を重ねていっても、自分はまっとうな家庭を持った一人前の大人にはなれないのではないか…そもそもこの生活から抜け出せるのか…という葛藤、自己嫌悪。
    窪さんの作品は人生選択を迫られる際の描写にリアリティがあって好きです。
    一方で「ふがいない〜」はじめ他の作品を数作読んでいたために、どうしても他のインパクトのある作品と比較してしまい、この二作品のパンチのなさとしっくりおさまらない展開の歯がゆさを感じてしまった。
    「クラウドクラスター〜」では場面がちょくちょく飛んでいること、「キャッチアンドリリース」では視点がちょくちょくと変わっていることに違和感があり、話の筋を理解するのに悩むことがあったのも難だった。

  • 窪さんの本を読むと、こんな思いを抱えて生きているのは自分だけじゃないって思えて、また前が向ける。

  • ・クラウドクラスターを愛する方法
    クラウドクラスターというのは積乱雲の塊のこと。
    恐らく気分屋で、予期せぬ爆発をする母親のことを差しているんだろうと思って読んでいたけど、もしかしたら主人公、ひいては読んでいる私たちの心に秘めてあるものかもしれない。そして一見穏やかに見える母の妹が抱えた想いの事かもしれない。
    自分と弟を置いて離婚した母のことを許しきれない主人公。イラストレーターをしているが、仕事がうまく行っているとは言えない。
    主人公の家は昔から冷え冷えとしていた。今現在は生活に困り、同棲相手のおかげで暮らしていけているというのもあり、ひたすら「安心して帰れる場所」を求めている。
    母を愛しきれなくても、帰る場所はあるか。もがく主人公の気持ちが切々と描いてあった。

    ・キャッチアンドリリース
    思春期の少年少女が代わる代わる語り手になる。
    母子家庭で育つ少年は、たまに面会する父親の、少し残酷な仕打ちに驚くが何とも言えない。
    父子家庭で育つ少女は、二次性徴に心が付いていかない。まだ子供のつもりなのに、自分の身体をねらった痴漢に逢ってしまう。痴漢から逃げながらも求めたのは、家族の温もりだった。

  • これまで読んだ『ふがいない僕は空を見た』『よるのふくらみ』に比べると、強烈さが足りない。

    でも、それもが良かった。
    この人が本当に表現したいのは、単純に恋愛とかエロとか衝撃的なストーリーではないはずだから。
    女性のためのR18文学賞受賞という経歴に縛られることなく、作品を作ってほしいし、読者側もフラットな気持ちで彼女の文学に触れるべきなのかもしれない。

    窪氏の作品が最も輝くのは、人間の多面性を表現するときだと思う。
    若いとき歳をとったとき、家族といるとき仕事をしているとき、恋人といるとき一人でいるとき・・・
    きっと人には状況によって別人のような表情や性格がある。

    本作品でクラウドクラスターのようだと比喩された主人公の母はその最たるもので、それを本人の視点ではなく、娘からの感覚で語られる。それがまたおもしろい。
    主人公は母のことが好きではない。でも、昔の母とは明らかに違う部分があることに戸惑う。

    今後の作品にも期待したくなった。

  • もやもやする。装丁が綺麗な色遣いで手に取ったけど、アラサーの主人公と母親の微妙な距離感や同棲している恋人のこと、全体的に薄曇りの印象。

  • さすがに二冊続けては重かった。。。
    子供が親に愛されない話って
    つらすぎて、読んでて苦しい。。

    • Rタさん
      この作家さんのテーマは一貫してますね
      家族とその影響です
      確かに続けて読むと重いかも…
      一作目と晴天の迷いクジラは自分的に
      かなりよかったけ...
      この作家さんのテーマは一貫してますね
      家族とその影響です
      確かに続けて読むと重いかも…
      一作目と晴天の迷いクジラは自分的に
      かなりよかったけど、
      この作品はもうひとつだったような気もします
      2013/06/28
    • christyさん
      >「晴天の迷いクジラ」はとても気に入りました。
      これからも読んでみたい作家さんに会えてうれしいです。
      >「晴天の迷いクジラ」はとても気に入りました。
      これからも読んでみたい作家さんに会えてうれしいです。
      2013/07/01
  • 夫婦の破綻、それにより子供が持て余す鬱屈とした感情を描いた2編。これまで読んできた窪作品でよく描かれているテーマだなと思った。どの主人公も、表面上は平静を装っていてもどこか心が渇いていて、一方で何とか自立しなければと力みすぎている印象がある。そのどうにもならなさにやるせなさを感じたり。
    表題作のヒロインもまさにそうで、親の離婚後十数年を経てから交流を持つようになった母親、及びその再婚相手とは何となくかみ合わないし、同棲中の彼とも気持がすれ違い気味。イラストレーターの仕事はどん詰まり。行き場のない感情が澱のように沈んでいき、彼女の生真面目さや不器用さが痛々しくさえ感じる。過去と訣別し、何とか仕事を軌道に乗せようともがく彼女に共感するだけに…色々とじれったくて。
    遂には母親に感情を爆発させてしまうが、重苦しかった状況が転じるきっかけが、母の妹・克子おばとの対話である。タイトルにもなっている「クラウドクラスター」(積乱雲)が何を意味するのか…これまで知らなかったことが明らかになることで、ネガティブにしか捉えられなかったことに対しても、見方がかわっていく。克子の家にあったサンキャッチャー(太陽の光を小さな虹のように運びこむ光のアクセサリー)も、小道具として効果的に使われ、曇天ぽかった展開に、まさに光が差し込むように感じられた。(サンキャッチャーが欲しくなりました。)
    独身で、ハイカラな克子おばのサバサバしたキャラクターがとてもいい。詳しくは語られないが、それまでの人生、紆余曲折色々あったんだろうなと窺える。だからこそ姪にもつかず離れず、彼女の負担にならないような形で優しく導けるのかな。薪割りさせて、もやもやする感情をうまく昇華させたりね。ヒロイン含めた登場人物達が幸せに歩んでいけますようにと、心の隅で願ってしまう。(この作品に限らず、窪作品の登場人物って、応援したくなってしまうのだ。それほどに皆、誠実に生きているから。)
    同時収録の「キャッチアンドリリース」も、やはり夫婦関係にひびが入った二組の家庭が、同じマンションの小学生の息子・娘の視点から描かれる。思春期にさしかかった年齢の不安定さ、それぞれの親の行き詰った感情。父と息子の釣りのシーンは賛否両論かもしれないが…何というか、父の行いを簡単に白黒とはジャッジできないと思った。うまく消化しきれないけど、色々考えさせられる作品だった。
    窪作品は、コンプしたいなぁ。毎度読了後のずっしり感がハンパなくってレビューの言葉を紡ぐのに苦労するのだけど、読んでよかったと必ず思えるのだ。

  • 様々な形の家族のはなし。どんなに合わなくても、分かり合えなくても、家族というものからは逃れられなくて、それが救いとなることもあれば枷にしかならないときもある。今まで2作に比べると淡々とした印象を受けるが、傷を負っている者に対する優しさやエールみたいなものは健在。次作もとても楽しみ。

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プロフィール

窪美澄(くぼ・みすみ)
1965年東京都稲城市生まれ。カリタス女子高等学校卒業。短大中退後、広告制作会社勤務を経て、出産後フリーランスの編集ライターとして働く。2009年「ミクマリ」で第8回R-18文学賞大賞を受賞し小説家デビュー。
2011年、受賞作収録の『ふがいない僕は空を見た』(新潮社)で第24回山本周五郎賞受賞、第8回本屋大賞第2位。同作はタナダユキ監督により映画化され、第37回トロント国際映画祭に出品。2012年、『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞受賞。2018年『じっと手を見る』で直木賞初のノミネート。

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