ことり

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022510228

感想・レビュー・書評

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  • メジロの鳴き声が聴きたくなる。あと美味しいチョコレートが食べたくなる。

  • いしいしんじ『ぶらんこ乗り』を思わせるようなモチーフ。人に分かる言葉が話せない兄。でも、ポーポー語を話す事ができて、弟には理解できる。
    弟は兄の言葉も鳥の言葉も理解できて、色んなものを遺漏なく整える事ができる。
    「ことり」に含まれる二重の意味が分かり始めてから、其れ迄薄々感じていた、でも無視しようと思っていた薄気味悪さがぞぞっと吹き上げて来る感じ。このおじさんもお兄さんも、実際いたら遠巻きにするだろう。この小さい世界を愛する害のない人々なのに、きっと新しい幼稚園の園長さんみたいな態度をとるだろう。自分はこういう人を気持ち悪いと感じてしまうだろう。
    小川洋子のこの作品は自分の醜さを写す鏡のようで、受け入れにくかった。

  • 一般社会とかけ離れ小鳥のさえずりに耳を澄ます静かな生活をする兄弟の物語でした。
    詳細なレポは、こたろうさんとまーちさんがすでに書かれていますので、私はサラリと流すことにします。
    決して手抜きではありません。念のため・・・ (^_^;)

    主人公の兄は11歳の時に自分で作り出した「ポーポー語」という言葉しか話さなくなります。その言葉を理解できたのは、主人公だけでした。心配した両親も相次いで亡くなり、その後は、ポーポー語を話して自宅に引きこもる27歳の兄と、近所のゲストハウスの管理人として働きながら生活を支える22歳の主人公との、小鳥のさえずりとラジオの音だけを聴く静かな生活が始まりました。

    普通の生活ができないであろう兄とその面倒をみながら静かに暮らす弟。
    世間の目はちょっと変わった兄弟としか見てくれませんが、小鳥のさえずりに囲まれた生活をし続ける二人にとっては、別に大したことではなかったのです。
    大好きな小鳥に囲まれていれば、二人とも、特に兄は幸せだったのです。

    このような無欲な静かな生活ぶりは私には考えられませんが、
    「ことり」を愛すという優しい気持ちがひしひしと伝わって来ます。
    普通の人には
    彼らの人生が理解できないのだろうと思うと、切なくなりました。

  • 図書館。

    ずっと読みたかった本がちょうど返却されてきてラッキー。

    小川洋子の小説だーという感じ。静謐で生々しくて
    容赦なくて優しい。

  • ある日突然、自分で創った独自の言語(ポーポー語)でしか話さなくなった兄。何故か兄が話していることが解る弟は、両親亡き後、兄を守ってひっそり生きている。世間とは殆ど関わりを持たない2人の、規則正しく、穏やかな日々に、ささやかな幸福をもたらす小鳥との交流。
    世間一般とは異なる価値観で生きる人達だが、孤独で単調な彼らの世界の思いがけない美しさ。
    密やかに生きる彼らの姿に切なさを感じた。

  • 長編なのに、掌編という言葉が浮かぶ。小川洋子さんの物語はいつも。そして小鳥がテーマとなるこの物語はさらに。

  • この世界を体験できるのは、日本人の特権。良いとか悪いとか、関係ないんだよなー。共感も感動もなし。だけど、惹きつけるものがあるってすごい。
    2013/10/2読了

  • 淋しい…読み終わった感想は、ひたすら淋しい。
    穏やかな穏やかな、ことりの小父さんの生活。
    そんな風に淡々と静かな暮らしに少しだけ憧れも感じるけれど、やっぱりどうにも淋しくて。
    幸せの形なんて、人それぞれ。
    だから小父さんに対し「かわいそう」なんて思うことは失礼なことだし、小父さん自身、「淋しくないですか?」と問われてもきょとんとするのでは無いか、と思う。
    だけどどうしても、小父さんにもう少しだけ、人の温かさに触れてもらいたかった、そっと寄り添う手に出会ってもらいたかった…という気持ちが去らない。
    しんとした静けさがある素敵な小説だけれど、『博士が愛した数式』にあった人と人との心の触れ合いが感じられなくて、切なくなってしまいました。

  • 小川洋子さんは、私が一番好きな作家です。

    例えば、仕事で酷く落ち込んだ時に「今ちょっと暗すぎる話は読みたくないなー…でもパワフル青春物も勘弁」なんて思う事があります。

    過去に他の作品を読んだことがある作家だとしても、作品によりガラっと作風が変わることもあるので、そういう精神状態の時は本を開く前に少し躊躇してしまうのです。

    しかし、小川洋子さんだけは全く躊躇うことなく開けます。何故なら、どの物語を開いても、そこには必ず静かで穏やかな世界が約束されているからです。

    そんなところも、私が彼女の作品を愛する理由の1つです。しかしながら、受け取る側の問題か、ここ何作かは「以前ほどに馴染めない」のです。

    『ことり』も残念ながらそうでした。大好きな小川先生ワールドは確かにそこにあるのに、以前ほどにその世界にシンクロできないというか…

    私がマンネリ化しているのか?また何年か後に再読したい作品です。

  • 人と違うと住みにくいと思っているのは、人を気にしているから。小父さんは、幸せだったのか。ことりが嫌いな私には、なかなか感情移入できず、ある小父さんの生涯にとどまってしまった。

  • いやー素晴らしい。ポーポー語しか話さない鳥好きのお兄さん、どこまでも子供に寄り添おうとする優しい母、無関心で自分の殻の中に閉じこもる父をもつ小鳥のおじさんの一生をたんたんと描いた小説。この夫婦の関係は兄弟の関係ともどこかだぶる。おじさんは小鳥を世話することで兄に寄り添い続けたのかもしれない。常にどこか義務感を抱えて。おじさんの一生は寂しいものだったのに、読了感が充実しているのは、このおじさんの人生がどこか美しく完成されたものとして描かれているからか。最後のメジロが飛び立つことでおじさんも人生から解放され自由になる。完璧。

  • 小鳥の小父さん。
    最後までそのよびかたのまま。
    障害のある兄の世話と管理人という仕事と幼稚園の小鳥の世話だけの小父さんの生涯。
    せつなくさびしい。

  • 小川洋子ワールド満載。
    途中、あまりに淡々としてて飽きそうになったけど、なんとか読み終えた。
    どこで読んだのか、孤独死もまた、その人の選んだ自由な死で悲観することはないという一節を思い出した。

  • 色んな人に出会うけれど

    急に別れが来て二度と会えない。

    出会ったり別れたり・・・

    時々無性に寂しく悲しくなるけど
    でも読むのをやめられない。

  • 小鳥の小父さんが死んだとき、その胸の中に抱えられた鳥かごに入ったメジロが、美しい囀りを辺りに響かせていた。

    小父さんのお兄さんは、幼い頃から独自の言語、ポーポー語で話していたが、それを聞き取れる人は弟である小父さんただ一人だった。

    両親が死んで二人暮らしになっても、
    小父さんはゲストハウスの仕事に行き
    お昼にはサンドイッチと缶詰のスープを二人で食べ
    架空の旅行を年に数回行い
    幼稚園の鳥小屋を金網越しに眺め、
    お兄さんは、毎週水曜日に青空薬局でポーポーキャンディを買い、包み紙で小鳥のブローチを作った。

    世界でたった自分一人だけでポーポー語を話し、それが誰にも通じなくとも抗議することもなく
    ひたすら鳥たちを愛し、ひっそりと生活し死んでいったお兄さん。

    お兄さんが死んでからは
    図書館で鳥が出てくる本を読み
    幼稚園の鳥籠を掃除し世話をするようになった小鳥の小父さんの、決して華やかとはいえないけれど
    孤独のなかに溢れる優しさと、いつまでも鳴き続ける鳥たちの歌声。

    鳴き合わせ会はちょっと怖いねw

    結局は小鳥の小父さんが心を通わすことができたのは
    ポーポー語を話すお兄さんただ一人だったのがなんだか切ない。
    )^o^(

  • ネットとかとは全く無縁の静かな世界でひっそりと暮らす「小鳥の小父さん」。欲はなく、決して怒らず、あらゆる事を自分を勘定に入れず、よく見聞きし解り、サウイウモノニワタシハナリタイ・・・って雨ニモマケズになっちゃったけど、そんな感じ。この前に二冊続けてつまんない本読んでイラついてたのがちょっと落ち着いた。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、2階開架 請求記号:913.6//O24

  • なんらかの障碍のある小鳥好きの兄と、生涯支え続けた弟、小鳥のおじさん。淡々と静かに、時に漣がたってもまた元通りに・・・読んでいるほうはともすれば飽きてしまうが、小川さんの筆致がそうはさせない。

  • 久々の小川洋子。少女と、文鳥の目のまわりのところのくだりが好き。
    2013/08/18読了。

    小川作品の魅力はその透明度の高さにある。人物たちはその生活感を根こそぎ奪われるからだ。食事然り、仕事然り、人や動物の世話然り。

    小鳥の小父さんと小鳥たちの閉じた世界の物語。

    小鳥たちは自由に求愛の歌を歌う。
    だが、小父さんの歌は届くことはない。司書の女の子にも、園長さんにも、小鳥たちにも。
    晩年、小父さんは偶然庭で見つけたメジロの幼鳥の世話をする。
    その姿は愛らしく、小父さんとメジロの蜜月はなんという「美しさ」であろうか。
    しかしその月日は、鉄工所の男の出現で終わりを迎える。
    鳴き歌会というなんとも現実らしい趣味の世界の中で、小鳥たちの「美しさ」を語ることを小父さんは許さない。
    お兄さんのポーポー語が誰にも伝わらなかったように。
    「私のためになど、歌わなくていいんだよ」
    その小鳥は、小父さんの愛に応えた唯一の存在であった。だがその小鳥も、誰にも気づかれることなく、空の中に消えてしまった。

  • 「小鳥の小父さん」と呼ばれていた人の静かで不思議でちょっと哀しい物語です。
    子どもの頃小鳥を飼っていたことはあるけれど、今まであまり小鳥について考えたことはなかったように思います。
    この小説の中で、一人でただひっそりと暮らしているだけの小鳥の小父さんが不審人物とみなされてしまうのがとても悲しく感じました。確かに何かと物騒な世の中ではあるけれど、人付き合いが苦手というだけで犯罪者予備軍であるかのように噂されてしまうとしたら、なんだか生きづらい世の中だなと思います。
    少し静かで落ち着いた気持ちになりたい人におすすめの一冊です。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川洋子の作品

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