刑事の結界 叩き上げ警部補 島田伸一の事件簿

制作 : 朝日新聞横浜総局編集 
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 43
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022510334

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学】団塊のノンキャリ刑事・島田伸一の40年の叩き上げ人生。神奈川県内を舞台に法と犯罪、己と組織、犯人と被害者、警察官と人間……。シマさんがその境に立ち続けた「刑事の結界」を描いた朝日新聞連載の実話ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 結界とは元々は仏教用語であり、聖なるものと俗なるものをわける境目のことである。本書では、法と犯罪、犯人と被害者、己と組織、警察官と人間などの境界線の意味で使っているようである。

    刑事はかつて、「でかさん」と呼ばれていたという。頑固で口が堅く、情に厚い。本書は、どこか昭和の匂いがする一人の「でかさん」・島田伸一が在職中に経験した事件を、島田の視点から書き起こしたものである。書き手は朝日新聞横浜総局の若手記者。島田を始め、多くの証人の話を聞き取り、いくつかの事件を小説風に仕上げている。

    技巧的にうまいという類の本ではない。が、ある種、朴訥な印象の事件簿からは、現実の事件の収まりのつかなさがにじみ出ていて、被害者・加害者・刑事のそれぞれの心情や葛藤が浮き彫りになっている。

    わずか十数年前、捜査は今よりも相当泥臭いものだったようだ。女児殺害事件の遺留品から、犯人の血液型がB型であることが判明し、刑事らは人海戦術で担当地区に住む対象者すべての唾液試料、爪、さらには陰毛までも集め続ける。何ヶ月にも渡る捜査で、犯人は次第に追い詰められていく。

    故郷に仕送りをしようと来日した中国人が起こした事件は悲しい。家族に楽な暮らしをさせようと努力してきたのに、思いが裏目裏目に出て、結局殺人犯となってしまう。収監されてもなお、家族への思いは消えない。

    殺人事件の中でも、親が子どもを失う事件は悲痛である。
    一人暮らしをしていて非業の死を遂げてしまった娘。一人暮らしをさせなければよかった、別の大学に行かせればよかったと親はさまざまに後悔をする。そうであっても、力を尽くしてくれた刑事に、世話になったと礼を言う。

    事件はときに、整合性が取れる形で解決はしない。
    神隠しのように姿を消していなくなった子。名探偵が出てきて魔法のように見つけ出してくれたりはしない。いつまでも帰って来ない子を、しかし、親は待ち続けるのである。

    さまざまな事件と対峙しつつ、刑事・島田はまた、人間・島田としての顔も見せる。
    刑事としての立場と一人の人間としての立場が重なり、揺らぎ、そこに人間臭さが生まれる。

    現実の捜査の手触りを感じさせる1冊である。

  • 刑事ドラマのラストは事件解決、一件落着・・・だが現実はそのようにはいかない。子どもの誘拐事件は未解決のまま。蓄えの送金を刑事に託す死刑囚、生い立ちや動機を知ると同情をしてしまうほどの犯人。ドラマでは表現されない現場の実情もある。多くの人間に向き合ってきた刑事の事件簿にはスッキリとした解決はなくても、胸に迫るものがある

  • この話は現実だ。「絶対に犯人捕まえますから」って言われる刑事さんたちの言葉がほんとに悲しくて。

  • 刑事ドラマは好きだが、本物の警察官は蛇蝎のように嫌っている。呼吸をするように嘘をつき、平気で犯罪を仕立て、結局何もしない存在するだけ無駄な存在だと思っている。しかし警察周辺のエピソードは真実味があってつい読んでしまう。この本もそう言った種類のもの。コンパクトに話が収められていて非常によい。主人公の刑事も朴訥でいい。でも警察官はやっぱり大嫌いだ。

  • 「~だった」「~だった」って、『プロジェクトX』のナレーション " だけ " を文章にしたみたい。
    ……と思ってしまったら、もう頭の中で田口トモロヲが喋る喋る。
    うるさいよ、田口トモロヲ!(違う)

  • ミステリー、犯罪小説家は好んで読むが、
    実際、本当に身近に、これらの事が降り掛ったらどうだろう、
    もう二度と、タイトルも作家名すら目に耳にしたくないのではないかと
    想像する。
    その強烈さは、形や色を変えながらも決して癒えることはなく、いつまでも関係各者に影響を及ぼし続ける。

    そんな恐ろしさ、悲しさを感じ取れる。

    明日は来ない、かもしれないことへの想像力を持ちたい。

  • 過酷な職場を定年まで勤め上げられた刑事さんには素直にご苦労様でした、第二の人生も豊かにお過ごし下さいと思う。
    このような形でも、刑事と言う仕事に触れられて嬉しい、感謝しかない。
    勤め上げられた刑事さんのノンフィクションは定期的に刊行して欲しい。
    たとえ良くある”地味な”事件でも、きっと興味深く読めるはず。

    ただ、どこかお涙頂戴な文章には辟易しました。
    被害者家族の心情や刑事さんの執念とか、いいこと書いてあったのになぁ。
    何故だろう。美味しそうなラーメンだったのに‥

  • 朝日新聞・地方版連載の書籍化。
    「地獄」と呼ばれた捜査1科特殊班を支え、2012年に退職したノンキャリア刑事の実録ものだ。
    神奈川県警の川崎署・緑署・鶴見署・中原署・相模原署・大和署と歴任した地元の刑事さんというのも引き込まれた要因。
    役柄上、失態があればすぐに大きな批判の対象になる警察だけど、こうしてリアルな事件簿を紐解くと、やはり並大抵の苦労ではない。因果な商売とはこのことだ。
    ミステリのような謎もトリックもなく、灰色の頭脳を持つ天才探偵も登場しない、地を這うような捜査。
    ここで回想される事件に、生まれながらの凶悪犯はいない。犯罪史に残る大事件もない。普通の人間が坂を転げるように罪を犯し、普通の人がある日突然被害者になって命を奪われる理不尽。それはいつ何時、僕らの生活を侵してもおかしくない。そういう事件の方が、よほど怖い。
    その人間の暗い闇を、日常と犯罪の「結界」に立ち続けた刑事の目線からドキュメントした良書。現在連載中の第2部も、やはり面白い。

  • うん、良いと思う。
    とても好感が持てる。

  • 2番乗り。有隣堂書店たまプラーザ店にて発見。気になる。(2013/4/2)

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