ブラックボックス

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022510457

感想・レビュー・書評

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  • ブラックボックス / 篠田 節子 / 2013.09.25(29/160)
    ・男の顔は地位と立場によって作られる。
    ・植物工場怖い、ブラックボックス的食品。。。

  • 工場生産される食に恐怖を感じた。いや、いつも感じてることだけど。

    ただちには健康に影響はありませんと発表した政府のダレカサンを思い出す。

    内部告発もままならない日本の企業体質も描かれ怒りや無気力感も感じる。

    自分と家族を守るのは自分の本能なんだなと再認識。
    怪しきは近寄らず!

  • フィクションだよね??と何度も立ち止まってしまう。
    実際にありそうで。

    食の安全。って難しい。
    昔はあまり聞かなかった「アレルギー」も今じゃ当たり前だし。
    じゃあどうしたらいいのか?という答えは簡単じゃないけれど、不安は拭い去れない。

    【サラダ工場のパートタイマー、野菜生産者、学校給食の栄養士は何を見たのか?

    会社の不祥事で故郷に逃げ帰ってきた元広告塔・栄実、
    どん詰まりの地元農業に反旗を翻した野菜生産者・剛、
    玉の輿結婚にやぶれ栄養士の仕事に情熱を傾ける聖子。

    真夜中のサラダ工場で、最先端のハイテク農場で、閉塞感漂う給食現場で、彼らはどう戦っていくのか。
    食い詰めて就職した地元のサラダ工場で、栄実は外国人従業員たちが次々に体調不良に見舞われるのを見る。
    やがて彼女自身も……。

    その頃、最先端技術を誇るはずの剛のハイテク農場でも、想定外のトラブルが頻発する。
    複雑な生態系下で迷走するハイテクノロジー。

    食と環境の崩壊連鎖をあぶりだす、渾身の大型長編サスペンス。】

  • 「安全安心安全安心安全安心…忍び寄るモンスター作物の恐怖 」

     東京で美人アナリストとしてもてはやされた加藤栄美は、勤め先の会社社長の不正により職も名声も失い故郷の町へ帰ってきた。食べていくためパートタイマーとして勤め始めたサラダ工場で苛酷な夜間勤務の内に見たものとは。地元企業が進めるハイテク農場での野菜栽培の陰に忍び寄る静かなる恐怖。

     最先端の技術を駆使し効率を上げコスト削減を極めた先で作られる野菜が不気味だ。無菌の状態で人工の養液を使いLEDの光の照射により栽培された野菜はもはや自然の恵みとは言えない。管理されたシステムのもと規格通りに製造された工業製品だ。

     それ自体には危険はないものの、ある条件のもとで反応し発癌性物質を生みだす製品は、地元をほぼ独占する企業の流通システムに乗って、学校へ、病院へ、ファミリーレストランへ拡散していく。工場の従業員や子供たち、体調を崩していく彼らに、特定はできないものの、工場ラインの最先端にいる栄美、栄養士として危機感を持つ聖子、地元に密着した大企業によってハイテク農場の実験台として利用された地主の剛、「食の安全」のキーワードのもとに再会したかつての同級生たちは何かがおかしいと思いはじめる。

     さしたる原因もわからず一人また一人…と体調をくずしていく人間とは裏腹に、無菌状態の工場システムから規格通りで粒揃いの野菜がベルトコンベアーに載せられ「安全安心安全安心安全安心…」と音を立てながら次々と繰り出されていく様を想像して寒気がする。

     食品工場のラインや農薬、食品添加物についてなどの専門的な内容も著者の綿密な取材とスピーディーでスリリングなストーリー展開のうちにすんなりと身体に入ってくる。小説ではあるが、今ある社会のリアルな問題を想起させてそのいちいちが読み逃せない。

     福祉や宗教を取り上げたものもそうだったが、こういう社会派ホラーを書いたら篠田さんは本当にピカイチだ。しかも怖いだけではない。そこに描かれる人間には一様に「哀しさ」がある。「悲しさ」ではなく「哀しさ」。そうして、篠田さんの描く哀しい人たちはたまらなく愛おしい。

  • 栄美 聖子 剛

  • 今そこにある、見えない、そして静かに進行する「食」の恐怖が独特の篠田節で綴られています。

    食の合理化、自給率の向上に名を借りた企業の利益追及、それを取り巻く利権によって、人間にとって欠かすことの出来ない「食」が喰い物にされる構図は、どこかのエネルギー企業と妙にだぶる。

    私たちは知らないうちに、危険な要素を含む「食」を安全と思い込まされ、気が付くとそれにどっぷり首まで浸かっている。何かの拍子に問題が生じても、強力な既得権益団体に煙に巻かれてしまう構図。

    何ら後ろ盾を持たない者が、こうした潜在的な危険性を孕む問題の核心に辿り着き声を上げても、力を持った企業にとってもみ消すのはいとも容易い。

    自分と家族の健康は自助努力でしか得られない、辛く厳しい時代になってしまった。

  • カット野菜食べるの嫌になった(笑)

    恐い描写がわんさかわんさか出てきて

    途中、いつまで続くのかと思った。

    学校給食と絡ませてきたのも恐い。

    最後は少しスッキリするけど、

    食卓を任されてる立場なだけに、

    読後は苦さも残った。

  • フィクションと分かっているけど、いろいろ考えさせる内容だ。
    リーダビリティが抜群なのは、さすが篠田節子。あっぱれ。

  • コンビニやオシャレなカフェに並ぶカット野菜。
    何種類もの野菜が見栄え良くカットされ、きれいな容器に納められて販売されている。
    手軽に購入できて、すぐに食べることができ、とても便利なものだと思っていた・・・が、この作品を読んで思わずゾゾッ。

    サラダ製造工場の深夜パートをしている栄実は、何年か前は第一戦の企業で華々しい活躍をするOLだった。しかし、会社社長が脱税とインサイダー取引の疑いで逮捕されてからは、栄実までもが、世間から冷たい目でみられ、逃げるように故郷に戻って来た。そこで就職口を探してもなかなか見つからない。やっと見つけたのが外国人労働者ばかりのサラダ製造工場の深夜パートだった。

    オーガニック野菜のカップサラダを製造するライン工場で単調な勤務をしているうちに、栄実はその野菜たちが本当に身体にいいものか、不信感をもつようになった。そのうちに、身体の不調を訴えるパートが続出し、同じ会社がだしている学校給食を食べている子供たちにも異変がおこりだした。

    形のいいみずみずしい野菜や新鮮さが売り物の産地直送野菜は、消費者が欲しいと思うものだが、それが、見せかけだけの創りモノだとしたらどうだろう。
    無農薬をよそおった化学製法で育てられた野菜たちは、細菌にたいしても無抵抗だったのだ。
    安全だとばかり思っていた野菜製造方法に裏切られた気がしたのは私だけだろうか。

    今よりも一層おいしいものをつくろうとする努力はとても尊いものだが、どこまで化学の力に頼ればいいのか、難しい問題だと思った。
    旬の野菜は何の手もかけずとも、みずみずしい、美味しさがある。
    野菜などは自然のままに育てるのが一番いいのだろう。

    外国人労働者の実態や環境汚染問題も考えさせられた。
    久しぶりの篠田ホラーは、
    食の問題をリアルに再現した現代のサスペンスだった。

  • 思ったより面白かった。仕事柄研修生のこととかも気になる話題だし。ここに書いてある実態は本当に氷山の一角だろうけど、ちょっと打ちのめされた。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

篠田節子の作品

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