悪医

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022511256

感想・レビュー・書評

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  • 阪大卒の現役医師(在宅医療が専門のようです)が描き出す医療者と患者のズレ。

    がんを告知されても、抗がん剤が効かなくても、どこかに希望を見出したい患者と、せめて残された時間を心安らかに苦痛を少なく過ごして欲しい医師。

    生き延びたいがため、金儲け主義の悪質な病院に騙されたり、高額な新しい治療法にすがってみたり・・・「生」への執着のすさまじさと病気の残酷さ、エゴや僻み、異性への関心・・・

    現場で働いていると、先生方が一生懸命お仕事されていることも分かるし、ベテランであっても担当患者の死にショックを受けたり、それ以外の雑務にも追われ毎日疲弊していることも知っている。
    世間一般の人が思うほどには、医師というのは(潤っている開業医の先生のイメージが世間一般のイメージとすると)楽な仕事でもおいしいことばかりの仕事でもないと感じる。

    医療には限界がある。人にも寿命がある。
    でも、自分や大切な人がもし「告知」されてしまったら、「余命宣告」されてしまったら、、、どんな選択をするだろう。

    ちなみにこれは消化器外科の先生にお借りして読みました。

  • 医師ならでは描ける迫力のある内容でした。末期癌患者の苦悩が伝わりました

  • 最後に救われた

  • 35歳の外科医森川と52歳の胃癌患者小仲、2人の視点で物語は進んでいく。
    再発し抗がん剤治療を受けたが効果が得られず、治療の余地はない、と宣告されたところから始まる。

    医師は患者の為を思い、治療で命を短くしてしまうことより体調の良いうちに好きなことをして余生を過ごしてほしいという本音。
    患者は治療をすることで生きる希望を見出し、たとえ命を削っても諦めたくないと願う。

    どちらも理解できるだけに難しい問題。
    抗がん剤の研究データを取る為に無理に投薬を続ける医者、高額な無保険治療も効果があるのは3割だけ、、、信じるものは何なのか。自分は最後どう生きたいのか。

    森川医師と小仲が再び交わる最後の場面。2人の思いは違えど決して相手を忘れなかった事で少し前進出来たのではないか。
    テーマが重いゆえ答えが出たわけではないが、気持ちが温まるような結末であった。

  • さすがに 現役のお医者さん
    医師としての ものの見方、考え方
    そして対象となる
    患者、それも末期の癌患者の側からの
    見方、感じ方が
    ものすごくリアルに描かれていく

    ややもすれば
    避けて通りたい
    「癌の告知」にも
    きちんととらまえて
    ーほんとうに このような場面が
     あったのだろうな
    と思わせられる説得力が物語をフィクション以上のものに
    伝わってくるものがある

    ラストの描き方に
    共感を覚える

  • 怖い表紙だけど、すごくいい本でした。
    医師である久坂部さんだからこそ書ける、医師と患者の間にある深い溝。
    がんを宣告された患者はどこまでも治療を欲し、治療が最善ではないと知っている医者は治療よりも残された時間を有意義に使えという。どちらの言い分もよくわかるだけに辛く、でも希望を持てるラストだった。
    でもこうやって久坂部さんが小説にするということは、現実問題解決が難しい問題なのかもしれないな。

  • 医師の考えと患者さんの思いのすれ違いがテーマです。
    主人公は、52歳の男の患者さん。
    胃がんになり、肝臓に転移があることがわかりました。
    すでに進行がんです。
    もう一人の主人公の35歳の外科医がこの患者さんを診ていました。
    外科医は、患者さんにこれ以上治療はないと宣告しました。
    患者さんは、見捨てられたとショックをうけ、外科医をどんでもない悪医としてうらみます。
    そしてなんとか治療をしてくれるところはないかとドクターショッピング(医師を探しまわること)を繰り返します。
    これ以上は、ネタバレになり久坂部氏から怒られそうなので書きません。
    最後は、どのようになるか読みながら想像していましたが、こんな手があったのかという終わり方でした。

    さすが作家になる方は、ちょっと深いです。
    ぜひ読んでみてください。

    http://ameblo.jp/nancli/entry-11870874807.html

  • 末期ガンの患者小仲に「これ以上治療法がない。」と余命を申告した森川医師の両者の苦悩。患者は「俺に死ねというこたか?」医師は「苦しい治療をするより有意義な時間を・・」
    小仲は外来を飛び出し他の医療機関にかかるが、そこは診療報酬のために無駄に患者を苦しめ治療と称して実験台にされていることを看護師から知らされる。そうこうするうちに病状は進みホスピスで最期を遂げる。
    死ぬ前に小仲は森川のテレビ出演を見て、自分のことを覚えていてくれ、悪医と思い込んでいたのは本当は患者思いの医師であったのだと誤解をとく。
    もし、自分があるいは家族が末期ガンで余命を申告されたらどうするか?抗癌剤の副作用に苦しんでまで生に固執するか、素直に受け入れるか考えさせられた。

  • これ読んですっかりガンに詳しくなった気分。
    ここに出てくる患者があまりにも最後まで治療にこだわってるのが
    私的には?で、私だったら抗がん剤で苦しんでまで多少長生きしても
    うれしくないけどなぁ。
    ま、実際なってみないとわからないのかな。

    それにしても途中主人公が苦しむ描写がすごくて
    がん、コワ~ってぞっとした。
    でもお医者さんも人間でいろいろ悩んで苦しんでいるのが
    分かりなんだか救われる思いでした。

  • 医師でなければ書けない小説である。もちろん、意図的に誇張されたところもあるとは思うが、医師たちの間ではきっとこういう会話が交わされているかもしれないと想像され、なんだか読んでいて多少なりとも不快な気持ちにさせられた。

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著者プロフィール

医師・作家・大阪人間科学大学教授

「2016年 『とまどう男たち―死に方編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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