私に似た人

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.42
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本棚登録 : 623
レビュー : 117
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022511713

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】引き裂かれた心は、取り戻すことができるのか? いま文庫で爆発的に売れている『乱反射』から5年──《小口テロ》が日常化する社会に生きる人々の出口なき感情を描く社会派エンターテインメントの傑作にして、著者の新たな達成が、いよいよ全貌を現す!

感想・レビュー・書評

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  • 10話収録の連作短編集である。
    「小口テロ」という共通項が物語を貫いている。

    読み終わって感じたのは、短編が収録されている順序の見事さだった。
    ただ、最終話だけは少し唐突な感じがしてしまったことが残念だ。
    「私に似た人」というタイトルに込められた貫井さんの思い。
    メッセージをきちんと受け取ることが出来ただろうか。
    自分だけが被害者だという歪んだ考えを人は受け入れやすい。
    何故なら、原因は自分以外のところにあると思えば憎む相手が出来るから。
    憎むことで自分と向き合わなくてすむから。
    確かに完璧な社会なんてないとは思う。
    どんなに真面目に働いてもその日暮らしでいっぱいいっぱいのことだってあるだろう。
    その働き場所さえ与えられない状況では、どう足掻いても上を目指すなんて永遠に無理だと思ってしまう気持ちも何となくわかる。
    それでも、社会を憎む=だから誰かの命を奪ってもいいことではない。
    何の罪もない人を巻き込んだ先にあるのは、 甘ったれた自己満足と犯罪者の烙印だけだろう。
    闘うべき相手はもっと別にいる。
    そんな気がしてならない。
    事故や事件が起きたとき、被害者たちを目の前にしても積極的に何か行動できるかというと難しいかもしれない。
    でも、少なくとも動画を撮りまくったりすることだけはしたくない。
    すぐそこで苦しんでいる人がいる。
    何も出来ないかもしれないけれど、せめて自分にも出来る何かを見つけようとする意思だけは持ちたいと思う。

  • 優遇される富裕層と、搾取される貧困層。そんな冷淡な社会への抗議として、立て続けに起こる「小口テロ」。貧困にあえぎ、自分の居場所を見つけられず、ただ社会への怒りを募らせたレジスタントたち。しかしその背後に彼らを操る存在があった。
    タイトルの通り、どこかしら自分自身にも共通点を見出す登場人物がいるのかもしれません。テロに対する姿勢はさまざまだけれど、今の社会が完璧なものであるとはきっと誰もが思っていないはず。その不満をただ爆発させるのか、押し殺すのか、それとも変えようと動くのか。そしてその変え方は……決して賛同はできないけれど。考えは分からないでもない、かな。
    各話の扉に描かれた黒い模様がどんどん大きくなっていくのが、まるで広がる「絶望」を表しているようで印象的でした。

  • 小口テロが相次いで起こる日本の話です。きっかけは今の日本でも起こっている事です。今起こっている事件の犯人の動機が「むしゃくしゃして」というのも、この本のテロの理由と似ています。大黒幕の「トベ」が誰なのか、いろいろ考えるのが面白かったのですが、あっという間に分かり、「え、、、(ぽかーん)」でした。もっと焦らして、推理させて欲しかったです。最初はインクの一滴だったのが紙に染み込みジワジワ広がっていくような所がこの本の好きなところです

  • テロをテーマにした10篇からなる短編集。
    各話は独立した話ではなく、どこかで登場人物がつながった短編集になっている。
    それがこの本の主題に合っている。
    社会や人間はどこかでつながっている。
    そう読み手が自然に感じる事により、本全体に深みや厚みが感じられる。

    ここで描かれているテロは組織的な大がかりなものではなく、「小口テロ」と呼ばれる個人が起こしたもの。
    そして、その小口テロを起こすのはワーキングプアと呼ばれる、世間的に貧困層に属する人々。
    彼らの裏には「小口テロ」を扇動する「トベ」という人物の存在がある。
    「トベ」に触発され、テロに走る人々。
    そして、大切な人をテロにより殺された人。
    「トベ」を追う刑事。
    「トベ」殺害を企てる人。
    ワーキングプアの人たちを蔑み見下げる主婦。
    自分も「トベ」になろうとする人。
    この本には様々な人物がテロに対する自分なりの考えをもち、行動する。
    自分の今いる生活環境や立場から。

    この本のタイトルにもなっている「私に似た人」がその中にいるだろうか?と思ったけど、どうもどの人も違う・・・と思った。
    ただ、人を富裕層、中間層、貧困層と分けて、自分は貧困層の人とは違う、と区別する人には嫌な感じを受けた。
    そういう人を非難した人に似てると言えば似てるのかもしれない。

    でも、考えてみれば、その人たちもテロや閉塞感のある今の時代やこの国について自分なりの考えをもっている訳で、最も悪いのは何も考えない人ではないか、と思った。
    自分はそういうのとは全く無縁の所にいて、そんなことを問題としてとらえる事すらしない人、または自分がその中にいても目の前の手軽なもので思考を止めてしまった人。

    ・・・と、こんな風にいろいろと考えさせられる本でした。
    悪意は悪意を呼び、連鎖していく。
    自分は無縁だと思っても、どこでそんな悪意にぶつかるか分からない。
    最初に書いたようにそれは社会や人はどこかでつながっているから。
    それを考えずにいるという事こそが人として危ない事でないかな?とそんな自分なりの考えをもちました。

  • 私も目の前で展開する事件に身を投じることができなかったことが2度ほどある。とても危険だったし、周囲の連中もその判断は正しかったと評価してくれたけれど、今でも軽いトラウマになっている。都会に住んでいる人ならば、多くの人が経験したかもしれないテーマだと思う。ストーリーは問題を提起しつつ、エンターテイメントとしても楽しめる絶妙の仕上がり。締めも良かったです。

  •  日本で続発する小規模なテロ。自らを《レジスタント》と称する実行犯たちに、直接の接点は見出せない。いつしか、一連の事件は《小口テロ》と呼ばれるようになり…。

     現実に、秋葉原連続殺傷事件など、テロと呼んでも差し支えない事件が発生しているのだから、この設定は絵空事ではない。貫井徳郎さんの新刊は、テロをテーマにした異色の連作短編集である。全10編の語り部はすべて異なる。

     テロの実行犯。直接の接点はないが実行犯を見下す者。捜査関係者。何より忘れてはならない、被害者や犠牲者の遺族。様々な関係者の目を通し、テロを多面的に切り取っているのが興味深い。《小口》なだけにリアリティは高く、胸が締めつけられる。

     生活に困窮する人々が誰でもテロに走るわけではない。誤解を招く面もあるだろう。実際、作中でもほとんどの人は難色を示すが、ごく一部が一線を越えてしまった背景とは…。実際にも起こり得るのではないか。作中同様、捜査陣は手を焼くに違いない。

     小口だろうが大口だろうが誰かが傷つく、それがテロ。どんな大義があろうが決して許されない。しかし、実行犯に共感する者もいる事実。今は見下す側でも、いつ転落するかわからない時代に、我々は生きている。家族のためにも、現在の生活を維持したい。しかし、いざ転落してしまったら…。100%他人事と言い切れるのか。

     登場する多くの関係者たちに共通しているのは、誰も救われていないということ。世界中で連日発生する無差別テロは、新たなテロを生む。《小口テロ》とて同じ。何の解決にもならないことなど、最初からわかっていただろうに…。

     このまま読者も救われずに終わるのかと思ったら、最後に舞台がクアラルンプールに飛び、意外な結末が用意されていた。だが、「彼」のように考えられる人間は少数派だろう。

     日本という国が問題だらけなのは確かである。作中のHさんのように日本批判を繰り返す有識者は多いが、僕は基本的に日本が好きだ。好きな日本であり続けるために、我々にできることは何か。問題意識は持っていたい。

  • まぁまぁ面白かった。
    わかるわかると思う部分も多いからか、読みやすい。ぐんぐん読める、止まらないって感じではなかったけど、ラストどう終わるのかな~と思って最後まで読んだ。
    ラストは、意外とあっさりしていた。

  • 2018.4.22-130

  • SNSを通じて、生活に絶望している社会的弱者が繋がり、次々と小規模の自爆テロを起こしていく話。日本人社会の集団心理の弱点はよく言い当てているし、現代社会で実際に起こりそうな気もするが、事件の鍵となる「トベ」なる人物が判明する結末が唐突。総理大臣が「トベ」なのかと思って読んでいた。タイトルの由来も不明。あまり楽しめなかった。

  • 小規模自爆テロ

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。93年『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で日本推理作家協会賞、『後悔と真実の色』で山本周五郎賞を受賞。他書に『天使の屍』『崩れる』『灰色の虹』『新月譚』『微笑む人』『ドミノ倒し』『私に似た人』『我が心の底の光』など多数。

「2018年 『女が死んでいる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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