物語のおわり

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.55
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022512215

作品紹介・あらすじ

妊娠三ヶ月で癌が発覚した女性、
父親の死を機にプロカメラマンになる夢をあきらめようとする男性……
様々な人生の岐路に立たされた人々が北海道へひとり旅をするなかで受けとるのはひとつの紙の束。
それは、「空の彼方」という結末の書かれていない物語だった。
山間の田舎町にあるパン屋の娘、絵美は、学生時代から小説を書くのが好きで周りからも実力を認められていた。
ある時、客としてきていた青年と付き合い婚約することになるのだが、憧れていた作家の元で修業をしないかと誘いを受ける。
婚約を破棄して東京へ行くか、それとも作家の夢をあきらめるのか……
ここで途切れている「空の彼方」という物語を受け取った人々は、その結末に思いを巡らせ、自分の人生の決断へと一歩を踏み出す。
湊かなえが描く、人生の救い。

感想・レビュー・書評

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  • ミステリー作家から脱却しようとしているのか、新たな境地を開拓しようとしているのか分からないが一味違う作品になっている。
    序章に投げかけられた一つの物語。
    その物語の結末は一体どうなったのか。
    物語を読んだそれぞれの人達が自分の人生と照らし合わせて新たな一歩を踏みこんでいく。

    湊かなえ作品らしく構成ありきか。
    独白形式の序章は見事でグッと引き込まれる。
    この序章がバトンのように見知らぬ人の手へ渡っていく構成も面白いし、悪くない。
    しかしいかんせんくどい。
    二人、三人ならまだしもこれだけの人達にうまいことリレーされるって、ないよね(^_^;)
    ちょっと残念だな。
    あとは最後のオチ、これもなくても良かったんじゃないかな。
    読者にゆだねてくれればよかったのに・・・。

    なんだかんだといいいつつ、「告白」の衝撃を忘れられずついつい手に取ってしまう湊かなえ作品。
    デビュー作が衝撃的だと逆に大変だなぁ。
    でもまだまだ期待していますよ!

    • 夢で逢えたら...さん
      こんにちは。vilureefさんも読まれてたんですね。同時期に偶然です(^^)

      vilureefさんは序章で引き込まれたんですね。私は...
      こんにちは。vilureefさんも読まれてたんですね。同時期に偶然です(^^)

      vilureefさんは序章で引き込まれたんですね。私は序章でリタイアしかけました(;´▽`)
      読み手によって受取り方が違うから読書って面白いですよね。
      オチは無理にでもいい話でまとめようとする作者の意図が見えて冷めました。

      >なんだかんだといいいつつ、「告白」の衝撃を忘れられずついつい手に取ってしまう湊かなえ作品
      いや、まったくその通りです!
      2014/12/15
    • vilureefさん
      夢で逢えたら...さん、こんにちは♪
      いつも花丸&コメントありがとうございます。

      そうなんですよ!同時期に読んでいたみたいですね(*...
      夢で逢えたら...さん、こんにちは♪
      いつも花丸&コメントありがとうございます。

      そうなんですよ!同時期に読んでいたみたいですね(*^_^*)
      夢で逢えたら...さんの正直なレビュー、いいですよね~。
      今回も☆一つ、わらっちゃいました。
      でもおっしゃる通りで、最後が強引でしたよね。

      「告白」を超える作品を読むことがあるのでしょうか。それとも「告白」を知らなければもっと素直に読めるのでしょうか。
      なんだかジレンマですよね(^_^;)
      2014/12/16
  • 冒頭───
     あの山の向こうにはなにがあるのだろう。物心ついた頃にはすでに、わたしはぼんやりと遠い景色を眺めながら、そんなことばかり考えていました。深い山間の盆地にある、小さな町で生まれたわたしの目に映るのは、町を取り囲む大きな壁のような山とその上に広がる青い空ばかりです。両親は夫婦二人で小さなパン屋を営んでおり、午前二時に起きてパンを作り、午前六時から午後六時まで店を開け、仕込みを終わらせて午後九時には床に就くという毎日を過ごしていました。店の名前は<ベーカリー・ラベンダー>。しかし、父も母も生まれたときからこの町で過ごし、旅行に出たこともなく、紫色の花が絨毯のように広がっているという北海道のラベンダー畑など見たこともありません。
    ───

    湊かなえの一人称独白形式“ですます調”の語りを読み出すと、まだ物語の伏線も語られていないのに、何故か背筋がぞわぞわしてくる。
    まるで、パブロフの犬の条件反射みたいに。
    初めて読んだ『告白』の印象が強烈に残っているからだろう。

    イヤミスの女王、湊かなえ。
    その女王の作風がここ最近変わってきている。

    この前作の「山女日記」も嫌な読後感とは程遠く、爽やかな物語だったし、最新作のこの作品も、心がほのぼのするような物語だった。
    別にぼくは、これまで彼女のイヤミス作品を特に期待して読んできたわけではなかったから、作風が変わったからといって何の不満もない。
    それどころか、どんな作品でも書ける才能を持った湊かなえという作家に憧憬の念を抱くだけだ。

    誰が書いたのか分からない男女のささやかな恋愛『物語』。
    何故かその話は肝心の結末まで書かれておらず、『物語』は途切れている。
    女性は夢を叶えるために東京に旅立つのか?
    彼女を駅前の停留所で待っていた恋人の思いとは?
    はたして、本当の結末はどうなったのか?
    そんな序章のもとに、この小説は始まる。

    舞鶴からフェリーに乗っての北海道の旅。
    その旅の途中で手渡されるのが、この一つの『物語』。
    少女から、妊婦に。
    妊婦から、写真家志望だった若者に。
    若者から、テレビ番組制作会社に就職が決まった女子大生に。
    女子大生から、進路問題で娘と喧嘩をした父親に。
    父親から、今の自分の姿に疑問を抱く四十代の女性管理職に。
    そして、女性から『物語』を手渡された最後の人物は───。

    いろいろな別れや後悔を伴った思い出を胸に北海道の旅を続ける人々の手によって、その『物語』は次から次へと受け継がれていく。
    この未完の『物語』を手にして読んだ人たちは、その人なりのエンディングを思い描くことで、自らの旅の目的に対する答えを見出す。
    それは、未来に希望に満ちた暖かな光が射し込むようなものだった。

    人生の曲がり角にはいろいろな選択肢がある。
    夢を抱きながら、その度々、誰もが迷い悩む。
    どちらが正解かなんて誰にも分かりはしない。
    でも、自分が本当に求めているのは何かを真剣に考えれば、それが結果的には正しい選択だったということになるはずだ。
    もちろん人間だから、後悔しない人生なんてありえないけれど。

    闇の中に一筋の美しい光が射し込んでくるような物語。
    ありきたりな言葉で締めくくりたくはないけれど、感動しました。

  • いつからそうなったかはっきり覚えていないが、
    1冊の本を読み終わるといつも思うことがある。

    私はなぜ、この本に引き寄せられたのか。
    私が受け取らなければいけないメッセージがあるのか。
    だとしたら、ちゃんと汲み取って
    自分に沁みこませることができたのだろうか、と。

    この物語を読んで、やはりと確信する。
    自分が選んでいるようで、実は読まされているんだと。
    物語の方が、必要な読者を引き寄せているのだと。

    「空の彼方」という題の、誰が書いたともわからない
    原稿のコピーの束を不思議な縁で受け取る、
    それぞれの事情で北海道を旅する人々の物語。

    「空の彼方」には結末が書かれていない。
    小説なのか、本当の話なのかもわからない。

    「空の彼方」を受け取った人々は、
    登場人物の誰かに感情移入し、
    結末を自分なりに考えることで
    自分自身の気持ちを整理し、
    次に進むべきものをはっきりと捉えていく。

    私はどんな結末にするのか…。
    考えてみたけれども、ぼんやりとしか思いつかなかったです。

    それは、今選択しなければいけない重要なことや
    強い苦悩がないということなのでしょうか…。

    何かに思い悩んで立ち止まった時に
    再読したい一冊です。

    湊さんは『望郷』以来のご無沙汰でした。
    最初に読んだのが『夜行観覧車』で、
    何年も敬遠してしまい、
    ふと読んだ『望郷』で心を動かされ、
    何か他にも読もうと思ってのこの3冊目でした。

    ますます好きになっていきます。
    やっぱり私は後味の悪いものより、
    救いがある、光がさしている湊さんの方が断然好きですね。

    北海道の風景がとてもいいです。
    札幌・函館・小樽しか行ったことのない私。
    死ぬまでに絶対に行きたいと思っていた
    三浦綾子記念文学館が出てきたのが嬉しかったです。

    やはり、行きなさいというメッセージだな、これは。

  • やっぱり湊さんの小説はおもしろいな~
    ある田舎町の夢を諦めた女性の未完の小説がキーになってるんだけど、
    それを手にする人達も自分の人生と照らし合わせていくし、
    きっと人っていろんな挫折というか、諦めを抱えながら生きていくもんなんだろうなって思える。
    多分、誰でも当てはめられる。

    そして、最後この小説は未完じゃなかった。
    北海道を舞台に素敵なお話しを読めて満足です。

  • 一人の女性の物語が、北海道の地で、人の手を渡って読まれていく。
    その物語には結末が記されていないため、読む人によって創造される最後のストーリーは其々異なり、面白い。
    そして全ては繋がって、読了後には、あぁすごかった…とため息が漏れた。

    途中、あれ、これ湊かなえさんの本だよねって作者の名前を確かめるくらい、今作にはイヤミス感がない。ただただ話の展開、繋げ方が素敵で、感動した。

  • 未完の小説が繋いでいく物語。
    湊かなえにしては意地悪度が少なく、読後感がいいです☆

    深い山合いの盆地で、小さなパン屋を営む両親のもとで育った少女・絵美。
    小さな頃から空想好きで、小説家になるのが夢でした。
    年上の男の子・ハムさんと知り合い、年月がたって婚約することに。
    そんなとき、作家デビューのチャンスが訪れますが‥?

    「空の彼方」という短編小説はこういった内容で、結末が描かれていないもの。
    この原稿が北海道旅行をしている人の手から手へ渡り、それぞれの立場で違う結末を思い描くのです。

    夫より一足早く旅行先に来ている、ある悩みを抱えた女性。
    フェリーで出会った二人連れに、原稿を渡されて‥?
    家を継ぐために、プロのカメラマンになることを諦めようとしている男性。
    そして、不登校になっていた少女は‥

    昔の話から始まるせいか、全体的には古風で真面目な雰囲気。
    小説家を目指す少女に思い入れがあるのでしょうか。ちょっとした捻りがきいていて、展開に意外さもあり、面白く読めました☆

  • 北海道を旅行している気分になれました。 
    おそらく一度でも北海道旅行の経験があるのなら記憶の軌跡とともに。
    原稿が佐伯の元に届くのは奇跡というより運命的なものであろう。この物語を読むと偶然は必然で引き寄せている、と。

  • 絵美が小説家になる決心をした時、婚約者は...と中途半端な原稿が北海道を旅する人から人へ渡り、各々の物語の続きを紡ぐ。

  • 湊さんの作品を二冊続けて読んだ。最初に『絶唱』次にこちらを。
    『山女日記』を読んだ感想と通じるものがある。
    読後感は爽やか、ふんわり優しい。それから人との絆、心の繋がりを描いているという共通点。
    読んでいて、分かりやすく、情景も浮かべやすく、自分ならば…とあれこれ対峙しながらたのしく読み進められた作品です。

    ある夢を抱きながらも自由に羽ばたけない女性が主人公の一つの物語ー
    が、北海道の大地を背景にたまたまのご縁繋がりで人から人へと渡り、それを読んだ人が自分と重ね合わせながら、物語の続きを思い巡らす。。夢と現実のギャップに行き詰まりかけている人達です。そうこうして、この物語の本当の主人公と深い繋がりのある人のもとへ辿り着き…⁈
    読み手は、本当の続きをラストに来て知ることが出来る安堵感もプレゼントしてもらえて(笑)

    色んな世代の人たちに受容されるはず…この物語は人の話しであって何処かに私が居るのだから。

    • 嵐さん
      こんばんは。湊かなえさんのこの作品は全く知らなかったです。読んでいて分かりやすくて情景が浮かび読んだ後に爽快感を感じる事の出来る作品は最高に...
      こんばんは。湊かなえさんのこの作品は全く知らなかったです。読んでいて分かりやすくて情景が浮かび読んだ後に爽快感を感じる事の出来る作品は最高に面白いですよね。買ってまだ読んでいない本がたくさんあるのでそれを読んでから私も読んでみますね。
      2015/11/27
    • kakerikoさん
      嵐さん、こんばんは。早々にいいね&コメントをありがとうございます。私は近所に市立図書館があるおかげで、殆ど借りて読んでいます。手元に置いてお...
      嵐さん、こんばんは。早々にいいね&コメントをありがとうございます。私は近所に市立図書館があるおかげで、殆ど借りて読んでいます。手元に置いておきたくなった本は買いますけど(笑)湊さんの本、たくさん出版されていますよね、、私も味読なのも多いです。
      そうそう、買ったまま本棚に立ててそのままの本、わたしも数知れずです(苦笑)ではまた(^-^)/
      2015/11/27
  • 読みやすい短編連作。
    登場人物がみんな良い人でした。
    それぞれ置かれた環境により思い描く続きの物語が違うのが面白かった。
    最後にきれいに繋がって気持ちよく読み終わりました。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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