- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022512284
作品紹介・あらすじ
イタリアに留学している香田節子は、行方不明となった担当教官を捜すうち、現存しないとされていたイタリアの国民文学『神曲』のダンテ直筆原稿の存在を知る。だがその内容は改竄されていた。明らかになってゆく知られざる史実。そして十九世紀の芸術家であるロダンが"真実の歴史"を世に問うため、"地獄の門"を作成した事実にまでたどり着くのだが-コペルニクス、ガリレオ、ロダン-「権力」との相剋を描き出す、企みに満ちたデビュー作。
感想・レビュー・書評
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16世紀の場面と現代が交互に語られる。
主人公は香田節子25歳
イタリアはボローニャにある大学の美術学科に通っているが、大学生活も佳境を迎え、残すは卒業試験ぐらい。
小論文の単位を受理してもらおうと大学に来ていたのだが、担当であるアンジェロオルタ教授がまてどもまてども来ない。失踪ではなどと囁く者もいた。
学校側の帰りに教授の自宅に寄ると、妻のサラでさえ居場所がわからないと言うが心配する気配はない。
アンジェロがいなくなってから一週間後くらいに届いたという一通の封筒を渡され開けてみると、中にはオルタ教授の自宅にある文書庫の書架番号が記された紙。
その本の中には古いボローニャ方言と思われる言語で書かれた書簡が2枚あり、節子は解読を依頼されるが、よくわからない。サラに紹介され、図書館に勤めているというオルタ教授の助手カシワタカシを訪ね、再度教授の自宅に伺う。ロダンの彫刻を見せてもらうと、埋もれていたのはなんとロダンによる未知の傑作だった。
どうもその作品はダンテの「地獄の門」に関するものらしく、謎が深まる。カシワ曰わく、教授がダンテに関して調査しているらしく、節子を心当たりのある場所へ案内するという。
読み終わってすぐに「ダンテの『神曲』を読んでみよう!」そう思った。というより、「読んでみよう!」と思わせてくれる力がこの小説にあると思う。ダンテはもちろん、『神曲』とロダンの関係のことも知らなかったが、本書は僕のようなビギナーにもわかりやすく説明してくれている。展開としてはミステリー、謎解きもので、スイスイと読み進められるかと思う。ただ、最後は(ハッピーエンディングなのだけれど)少し書き急いだかなという気がするし、余韻を残すような終わり方であればなあと感じた。ただ、デビュー作でこの完成度はこれからが楽しみな作家さんだし(大体デビュー作というものは大したクオリティではないという偏見があるが、もちろん必ずしもそれは正しくないということも知っている)、次回作も歴史ものを書いているということなので、期待したい。
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/4729詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
神曲も読んでみなければ・・・と思わせられました。
いつになるか分からんけど、いつかね。 -
谷川悠里、2014年発表の小説。
イタリア中部の大学都市ボローニャを舞台にした作品。日本からの留学生節子が、行方をくらました教授を捜すうちにダンテの「神曲」を廻る秘密に関わることになるお話し。
歴史ミステリーあるいは書誌学ミステリー風の作品だろうか、と思いつつ読み始めたのですが、そうではありませんでした。ダンテの「神曲」を核にして、ガリレオやロダン等々の登場する歴史ドラマを随所に挟みながら、宗教裁判や禁書にまつわる歴史を語る物語り。
かなり物足りない感もありますが、読み応えのある良い作品です。 -
キリスト教の歴史等、世界史の知識があった方がよりよいですが、なくても十分楽しめます。
なかなか知的興味を刺激するテーマでした。
だけど、最後はちょっと唐突かつ尻切れとんぼな印象を否めませんでした。
あと、文章の癖からか、テーマは面白いのに、読み出したらページをめくる手が止まらないとまではいきませんでした。
せっかく面白い物語なので、文庫化されるときに、最後を膨らませて、伏線も全部回収したら、もっとスリリングな物語になるだろうと思います。
著者の今後に期待します。