アンダーグラウンド・マーケット

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022512437

作品紹介・あらすじ

二〇一八年、日本は二つの経済構造を持つ国になっていた。移民の流入とともに浸透したデジタル仮想通貨「N円」での取引は、税務当局に捕捉されない無税の地下経済圏を生み、表の社会が無視できなくなる規模に成長していたのだ。その一方、「公平な税制」の名目で引き上げられた税金は社会を二つの階級に引き裂き、企業の正社員にならなければ地下経済に生きるしかない状況を生んでいた。木谷巧は、そんな企業の外で働いて生きる「フリービー」と呼ばれる存在。ITエンジニアとしての技能を活かして、中小企業の商売をN円の無税取引に改造する仕事で報酬を得ていた。ある日、巧はとあるWebの改造を引き受けるが、それは表と地下、二つの巨大経済圏を揺るがす事件の始まりだった-。日本SF大賞受賞作家が描く、驚愕の近未来。

感想・レビュー・書評

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  • ビットコインにTポイントを付けてみないかみたいなお話に若干陰謀チックなものが、絡んでくる。いままで、読んだことない話でした。もう少し明るく未来を描いて欲しかった。

  • 大量移民と仮想通貨をテーマに日本を舞台とした近未来SF
    サクサクよめて、スリル感も味わえたのはよかった

    けど、SFとしてみるとちょっと物足りない

    大量移民が独自の地下経済を形成、日本人の若者も急速な貧困化、貧困層の住居は私物を置けないほどの盗難多発。しかし、テロや暴動の脅威を感じさせるものが全くない。治安のあり方がアンバランス。

    都心に一棟で数千人規模の貧困者向け住宅ができる。でも、エレベーターの設置義務を回避するため5階建て。いや首都の一等地でエレベータケチるほど土地に価値がないってことはないでしょ。

    事件発生時でトレースされたのは、二つの口座間で金が動いただけ。なのに直ちに税務署は売上金だと認識し、さらに記帳されていないことを把握。超優秀。しかし泳がせておけば地下経済の多くを把握できるのに、たった数万円をすべて是正させて手の内をばらす無能という矛盾。さらにそもそも申告納税で決算前での記帳漏れの指摘とか何の意味があるんだ。

    などなど。細かいとはいえ多数の設定内の整合性のなさを感じてしまうと、SFとしてはちょっと物足りなさを感じた。もっとも、移民と仮想通貨にテーマを絞るために、あえてそれ以外の点の不整合は切り捨てたのかもしれないけど。

  • 仮想通貨のことは全く分からないので,こんな世の中になりつつあるのは本当に困る.でもこの本はwebエンジニア達3人を主人公にしてトラブルに巻き込まれながらたくましく切り抜けていくハラハラドキドキのエンタメで,とても楽しめました.そして,デザイナーの鎌田くん,真っ当な性格と写真のセンスと推理力に惚れちゃいました.

  • 舞台は2018年の東京。
    「近未来」といえば近未来すぎるほどの設定だが、TPPによる移民自由化により東京には外国人によるコミュニティが根を張り、他方、日本人の若年層では正規雇用からあぶれた者たちが「フリー・ビー」としてエスニックコミュニティと地下経済に関わりながら生きている。

    キーになるのが「N円」と呼ばれる仮想通貨。
    貧しくも厳しい外国人とフリー・ビーの社会では、高率の消費税を負担せずに簡易に決済できるN円が普及し、N円による地下取引によるアンダーグラウンドマーケットの存在が肥大しつつある。
    ECサイトの構築支援を生業とする主人公のフリー・ビーたちは、N円決済にまつわるトラブルに巻き込まれ、やがて巨大勢力の陰謀渦巻く危険な領域へと足を踏み入れていく。

    仮想通貨「N円」は、否が応でもBitcoinを連想させるが、(名指しこそされないものの)Bitcoinが失敗した後にアジア発で侵入してきた通貨として描かれる。
    EC、移民、税制、雇用環境…今日的な社会の課題が背景として設定され(TPPのほかマイナンバーにも言及される)、しかもその課題の捉え方が適切でリアリティがある。
    フリーのクラウド型会計システムがデファクトスダンタードになっており、そこにN円による決済を組み込むスキルが重宝される、なんてかなりマニアックだが実に「ありそう」な話だ。
    一方で、電車賃にも窮する主人公たちの移動手段が、高速で走ることのできる自転車である点が、小説に文字通りの疾走感を与えてくれる。

    とにかく設定が魅力的だ。
    が、本作では設定の魅力ばかりが勝って、お話自体はわりと淡白に終始してしまった印象。
    この設定で様々なエピソードが読みたくなる。

  • SF

  • 移民などアンダーグラウンドで税なしで流通する仮想通貨の話.むづかしかった.

  • 貧富の2極化が極端になった2018年の東京で、高額の税金に耐えられなくなった低所得層と移民が仮想通貨N円を基盤にした地下経済で生きているお話。

    短編ひとつ、短編集ひとつ、長編ひとつ読んだ藤井太洋。現代日本SF界注目の1人って感じ。

    ちょっと違えばそうなってそう、という絶妙に現実的な世界設定の中で地道な仕事や生き方を見せてくれるのが作風かな。
    ちょっと閉塞感がある舞台が多い気がする。
    未来予想図SF好きだ。
    語り口の雰囲気も好きだな〜。

    小川一水のお仕事SFに似てる感じ。
    さて次はどれを読むか。

  • デジタル仮想通貨「N¥」

  • もっとスピード感が欲しかった 場面がいちいち長い。

  • 良かった。仮想通貨で仕入れも売上も完結できて脱税できるのはわかる。でも裏帳簿を表に付け替えるとか1店摘発されると芋づる式で取引先に査察が及ぶとかまではあまりわかっていない。会計に明るくないからか。
    表のクレジットカード同様の信用の大事な口座になってて大変そう

  • 2017/1/23

  • 面白かった。10年後には現実になっている可能性もあるかも。

  • ちょっとだけ未来が舞台の話。移民が増えて、N円という電子貨幣による地下経済が発展。格差社会はさらに進んで、正社員になれなかった若者はフリーランスでグレーな仕事を請け負いながら何とか食いつないでいるという社会。何だかリアルすぎて、本当にこういった未来が訪れるんじゃないかと想像できてちょっと怖い。

  • この作品の世界観は結構好きで何度も読み返してしまう。多国籍でむせかえるような活力と引き替えに、安定的で同質的な社会を失ってしまった数年後の日本。そこでは、旧来の経済構造に依存する日本人と、そうした枠組みから切り離されたアンダーグラウンド経済の住民の階層社会が構成されていた。その社会を、最先端のIT技術を武器に泳ぐ主人公たちの姿がまたいい。お金ないから自転車で移動とかもいい。まあ、かなりの部分、現実も後追いするだろうと思わせるリアリティ。

  • 近い将来、こんな風になるかも・・・な設定は面白かった。
    大量の移民が流入してくると日本は大混乱だろうなぁ。
    治安の悪化も心配だ。実際、移民問題で困っている国があるじゃない。

    仮想通貨が当たり前に使われるようになって、便利な部分もある反面、
    悪用されそう。
    経済格差も拡大していて、少なくとも私にはあまり過ごしやすい
    世の中にはなっていないように思えた。

  • 面白かった!
    ほぼ現在と言っても違和感のないような、リアルな近未来。
    地下経済で流通する仮想通貨N円を基盤として生活する「フリービー」木谷巧と仲間との、エンジニアとしての日々。
    「表」の金しか信用できない層と、「N円」しか使いたくない層の、文化や価値観まで細かく描かれていて、思わず「そうか、そういう相手と仕事するときは気をつけなきゃな」と思いそうになるほど。
    エンジニアとしての仕事に絡んで事件が発生するのですが、これもまた「ああ、ありそう」と思わせるリアリティ。
    キャラクターもいい。
    仕事の相棒である鎌田に、凄腕だがデザインセンスが壊滅的な森谷。仕事相手である斉藤は、なんというか無自覚に失礼なことばかりしでかすので、半ばまでは登場する度イライラしてしまいましたが、どうやら本気で主人公を友人と思っているらしい…とわかってからは何となく許せるような気持ちに。ええい、この間抜けめ。とは思うものの、どこかしらかわいく感じられます、ええ。
    うーん、面白かった。続編とかないだろうか。

  • 電子書籍になっている、「ヒステリアン・ケース」と「アービトレーター」を加筆し本にまとめたもの。

    http://www.wildhawkfield.com/2015/04/under-ground-market.html 参照。

    ヒステリアン・ケースは移民と電子通貨と低所得な労働者の話。アービトレーターはビットコインとポイントシステムを混ぜたような話。

    アービトレーターのラストは頂けない。日本を代表する企業の部長職にある者が提携を申し込もうとしているのに武力で解決しようなどとはあり得ない。やろうと思えば誰でもリアルタイムで不特定多数に放映できる状況なのに。

    藤井氏の他の著作はすばらしかったので、それに比べると微妙な感じ。ラストを変えればもっといいのに。

  • おかんが図書館で借りた本。

    プログラム言語などがわかる人だともっと楽しめるのかもしれない。
    未来、こうなる可能性もなきにしもあらずなんじゃないだろうか。

  • 2020年の日本でのオリンピック開催を話しに盛り込むことで身近に感じることができた。すぐに話の中に出てくるような地下経済や仮想通貨が流通するとは思えないが、藤井さんの作品の特徴の疾走感によって、あっという間に話しに引きこまれてしまった。唯、最後が尻つぼみになってしまったのが残念。

  • 仮想通貨が地下経済で発達した日本が舞台。前作の「オービタル・クラウド」と同様、本作は今までにないジャンルであり、とてもいい刺激になる。

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著者プロフィール

藤井大洋:1971年鹿児島県奄美大島生まれ。小説家、SF作家。国際基督教大学中退。第18代日本SF作家クラブ会長。同クラブの社団法人化を牽引、SF振興に役立つ事業の実現に燃える。処女作『Gene Mapper』をセルフパブリッシングし、注目を集める。その後、早川書房より代表作『Gene Mapper -full build-』『オービタル・クラウド』(日本SF大賞受賞)等を出版。

「2019年 『AIが書いた小説は面白い?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

藤井太洋の作品

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