院内カフェ

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.62
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  • 本棚登録 :368
  • レビュー :78
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022512895

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】ロングセラー『漢方小説』の著者が、中年期の身体や心模様を軽妙なタッチで描き、気持ちがほっこりなごむ傑作。総合病院のカフェを舞台に、不妊の夫婦、患者との関係を模索する医師などが、治療とは何かを問いかける。

感想・レビュー・書評

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  • 舞台は病院内に併設されたカフェ。
    そこでバイトするスタッフと、
    お客としてやってくる人々の悲喜こもごもな物語。

    私自身長女で、親の老いを感じざる負えない年齢だということや、
    登場人物の人生が、他人事とは思えない部分が多々あって…。
     
    なかでも朝子と孝昭夫妻の話が印象的。
    夫婦間に交わされる手紙がとても素敵でした。

    「さやか」という小さい女の子が、辛い闘病の現実から逃げるために
    ”まりあちゃん”というもう一人の自分を作ってるんですよ。
    病気なのは自分ではなく”まりあちゃん”なんだと。
    この子の母親はそれをわかって「まりあちゃん」って…。
    本当は諭すべきなのでしょうが…。
    つらいですね。

    ”病んでる者にまず必要なのは、薬でも原因の究明でもなく、たぶん救いなんだ”
    と言う孝昭の言葉、わかる気がします。

    家族って、誰かが病気になって初めて
    正面から向き合えることがあるのかもしれない…。


    亮子と航一も、とてもいい夫婦関係。
    共有する悩みが互いの思いやりにつながっていてね。

    バイトの村上君も、飄々としていていい感じだし。
    ”病気が良くなるクッキー”
    この院内カフェなら、ありそうな気がしてきます。

    「ウルメ」「ゲジデント」「マダム・スプラッシュ」
    私もよく行く場所のスタッフさんに、
    ニックネームつけられてたりして…。

    病院て、診察が終われば速やかに立ち去りたい場所。
    でもこんな「院内カフェ」があったら、ちょっと寄っていきたくなる。
    心地よい香りのする素敵な物語でした。

    それにしても、あの聖夜の贈り物は誰の仕業なんだろう・・・。

  • 相田亮子は大して売れない作家活動の傍ら、土日は病院内のカフェでバイトしている。

    受付カウンターの隣にある、そのカフェはチェーン店で、病院だからと言って特別メニューを出すわけではなく、他の支店と同じラインナップだ。
    仕切られているわけでもなく、もちろん入り口ドアも無い。
    ベージュのリノリウムの床が、こげ茶のフローリング風味に変わるところ…そこが境界線。
    入院患者も来るし、家族や、見舞い客も来る。
    医師や看護師、もちろん病院とは関係ない人が外から来ても構わない。
    皆、平等に“お客様”である。
    病院内にあって病院ではなく、しかし完全に日常の街ではない、ある意味、病院に存在する“異物”かもしれない。

    亮子はつい、お客様の言動が気になってしまう。
    大声で同じことを繰り返す、黄緑のジャンパーの小男、スマホから目を離さない毛深い医師。
    夫に飲み物をぶちまけた、品のいい中年女性。

    亮子は夫との間に子供ができない。
    自分の遺伝子は要らないと、神様に言われているような気がする。
    バイトの村上くんが語る、人類には無用の長物となった免疫反応の話。
    免疫障害で起きる深刻な病気の話が出るのも、舞台が病院らしいところ。

    しかし、医療小説ではなく、それぞれの日常の、人生の話である。
    境界のあいまいさがこの本の優しいところだ。
    変わったものも、いらないと思われるようなものでも、等しく存在を許され、世界に肯定されている。
    独立してそこにあり、誰も拒まないカフェのように。
    もう一杯、好きなものをこれで。
    残ったら「歳末助け合い」の箱に。
    メリークリスマス。

  • ★3.5

    受診する程病気じゃない。入院する程病んでいない。
    けれど、どこか不安な私達はあのカフェで病院の傍らにいることで癒されている。
    過去にあそこで「何かが良くなった」経験があるからだ…。

    このお話の舞台は総合病院に併設されている全国チェーンのカフェ。
    お店は街にあるのと同じ造り、同じメニュー、同じマニュアル。
    それでも、ここは病院で街とは異なる客が集う。
    土日だけこのお店でアルバイトする主婦で作家の亮子。
    自然酵母のパン職人の夫との間には子供が出来ない。
    不妊は病気なのだろうか…。
    「このコーヒーは体にいいですか?」と毎回大声で尋ねるウルメ。

    妻が夫にソイラテを浴びせかけた上品な中年夫婦。
    自分を守る為に、もうひとつの人格を作り上げてる幼い女の子。
    院内カフェに集う様々な人々にそれぞれの物語があり、
    視点が次々と変わり、それぞれの立場から見える物語は、
    やがて色々な所で繋がっていく。交錯していく。

    夫にソイラテを浴びせかけた朝子の介護人生に疲れ切ってる様子。
    いつの間にか、気付いたら両親の介護の道に引き込まれていた。
    どれだけ時間を費やしても、世話になっているという意識が薄れてゆく…。
    両親を看取り、これからって思ってる時に夫の難病が発覚。
    心が通い合わない夫とのこれからが考えられなくなる。
    しかし、朝子も院内カフェで気持ちが切り替えられた。

    精神的に自立していないから家族に振り回される。
    肉親から自分を切り離せず、どこかで依存している人間が家族の介護をすると、
    老いや病に自分も一緒にのみ込まれてしまい、とっても苦しく辛い…。
    その言葉に、あぁー私の事だって凄く凄く胸に突き刺さって苦しかった。

    どれだけ尽くしても、尽くしてもきっと後悔が残るだろう介護…。
    けれど、それでもいつかは介護の嵐にのみ込まれる事になると思う。
    そんなとき、じゃあどうやって自分を保つのか…。
    病にのみ込まれないこと、巻き込まれないようにすること。
    それが何より大事。ただ、病人のそばにいるだけの人。
    病んでる人が、いつでも入れるように病院に寄り添って、
    でも関わらず独立してそこにある。その強さを私も持ちたい。
    「院内カフェ」の様になりたい。
    そういう気持ちでいる事が大切だって思わされたこの本を読んで良かった(*˙︶˙*)☆
    カフェの暖かな雰囲気や心地よさが伝わる温かな気持ちになれました。

  • 病院に併設された全国チェーンのカフェ。そのカフェを中心に、そこで働く人、入院・通院患者、ドクター、お見舞いの人、それぞれのいろいろなエピソードで繋がる長編小説。

    前から気になっていた本。初読みの作家さんです。出会って良かった。すごく好きでした。
    最後には、不覚にも泣かされてしまいました。

    かなり後ろ向きだった亮子とパン屋の夫、カフェで揉めてた夫婦、それぞれの関係が後半に向かって改善していく感じが、たまらなく良かったです。
    マダムスプラッシュとか、お湯のSとか、そのフレーズだけでも、鼻の奥がツンときます。

    サンタクロースは、ゲジデント、がいいな。

  • 病院内にあるカフェが舞台。
    今どきの病院には院内にオシャレなカフェが併設されているのが普通なのか? ここいら田舎の病院には、一応喫茶コーナーはあるけれどもそれとは全然印象が違うものだと思う。
    だって、チェーンのカフェなら街なかで見かける店舗と変わらないのだろうから、病院内にあるとはいっても別物、別空間扱いじゃないのかな? だからこそ、気分転換ができるのだと思う。
    特殊な場所にあるカフェだからか、同じ人が訪れたりするんだろうし。何度も見かける人のことってなんか気になっちゃうもんね〜。
    注意深くみていたら、いろいろなことが起こっているのね。
    最後の粋なはからい、あれゲジデント先生じゃないの?
    人は見かけによらないのではないだろうか。

  • 病院は異空間。あの中に足を踏み入れると例え家族の付き添いでも健全な世間とは隔離されたような気持ちにさせられます。
    そんな中で唯一世間に戻れた気になるのが病院内のカフェでした。
    あの頃の気持ちを何年も経って偶然手に取った小説で思い出すとは。
    変わらないあの場所にほっとしたことがある人なら、きっと苦しいほど共感してしまう小説。
    登場人物をみんな応援したくなるお話。
    なぁーんだ、これも“いい話”じゃないの(*^^*)

  •  物語は、週末の閑散とした院内カフェの描写から始まります。
     お客は、常連客2人と初めて訪れた藤森夫婦の4人。
     そこでちょっとした事件が起こります。
     物語はその後、そこに居合わせた人々を描いていきます。
         
     藤森朝子さん・孝昭さん夫婦の介護・闘病問題。なかなか深刻で、いずれ自分にも似たような問題が起こるかもしれないと思うと気が重くなります。
     幸い私の両親はまだ元気なようですが、年々老いて行くのが辛い。私のことが精神的ストレスの原因でもあるので申し訳ないのですが、ここまで来るともうどうしようもないのです。
        
     語り手の相田亮子さんは間りん子というペンネームを持つ作家。週末だけ院内カフェでアルバイトしています。
     相田さん夫婦には子どもができないという悩みがあります。
     亮子さんは、遺伝子が残らないとか、絶滅種だとか突き詰めて考えています。
     私は結婚すらしていないのだから、チャンスすらないのです。
          
    「選ばれなかったんじゃなくて、もし何か環境がすごく違うことになっていたら、発動することになっていた『種』なんじゃないかな。今の時代では出番がなかっただけで」
    「いつの時代にも、おれたちみたいな変わり者がいることは必要なんだよ」
          
    ……と本作品では納得していましたが、私にはそんな風に語り合う相手すらいません。
           
     孝昭さんの闘病問題をきっかけに、藤森夫婦のズレが明らかになり、離婚問題が浮上。
     孝昭さんは、自分を守るために「自分を閉ざす」という方法を学びます。それがまた夫婦間のズレを大きくすることに。
     朝子さんが孝昭さんに書いた手紙にはどういうことが書かれていたのか。
     似たような問題に直面する前に読んでおく価値があります。
          
     物語は、週末の閑散とした院内カフェの描写から始まります。
     お客は、常連客2人と初めて訪れた藤森夫婦の4人。
     そこでちょっとした事件が起こります。
     物語はその後、そこに居合わせた人々を描いていきます。
     ただ一人、間りん子さんの院内カフェでのアルバイトの相方でありエスプレッソマシン担当の村上君についてだけは、特に描かれていません。
     彼もまた興味深いキャラであり、彼もまた一つの物語を生きているのでしょうね。
     文筆の才もあるようだから、村上君バージョンの『院内カフェ』もあるのかもしれません(彼の書くバージョンは“いい話”系寄りか)。
        
     最終章は、クリスマスイブの院内カフェ。主要な登場人物が再登場し、物語はまとまります。
     クリスマスイブに向かう人々の群像を描くということで、日本版「ラブ・アクチュアリー」といった感がありますが、本家に比べると少々wetでheavy。
     しかし、重厚で読み応えあります。
          
     最後、間りん子さんはウェブサイト向けに依頼された童話を書き始めます。
     哺乳類に後を譲って絶滅した最後の恐竜の童話。
     これ、読んでみたい。
       http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20160726/p1

  • 私が読んできた中島たい子とは少し芸風(この本流にいうと)が違った。伏線が全部回収されていく感じがとても良かったし,最初は目をしかめながら読んでいたウルメもとっても良かった。きっとプレゼントはゲジデンスだと思う。温かかった。

  • 一気読み2時間で読了。
    こんな風に、心や体の痛みと戦う人の気持ちが書けるということは、著者も何か、つらい目に会ったんだろうか。
    つらい経験の中から、こんな話を紡ぎ出せるのなら、作家ってすごいと思う。

  • たぶん自分が読む初めての作家さんだと思うけれど、笑ってしまったり、ちょっと泣けたり、良かった〜。

    プレゼントの贈り主は絶対にあの人。
    ちゃんと伏線あるし。

    総合病院内にある全国展開のカフェ、私も散々親族を病院に連れて行ったけれど一度も利用できる状況じゃなかったし、今も毎日その外を通るけれども健常者が(お見舞いや付き添いなどの用が無く、自分の為だけには)わざわざ寄る場所でもない。
    だから一度も利用したことがない。

    院内カフェって、やはり不思議な存在であり空間であると思う。

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