あの日、マーラーが

著者 : 藤谷治
  • 朝日新聞出版 (2015年8月7日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022512949

作品紹介

2011年3月11日。東京・錦糸町の錦糸ホールで新世界交響楽団のコンサートが開かれようとしていた。演目はマーラーの交響曲第五番。しかし、14時46分、東日本大震災が発生する。そんな中、3カ月前に離婚したばかりの八木雪乃、音楽評論家の永瀬光顕、アイドルおたくで今は楽団のヴァイオリニストのファンである堀毅、夫亡きあと、三田のワンルームマンションで暮らす川喜田すずらは会場に向かうが…。

あの日、マーラーがの感想・レビュー・書評

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  • オケについて、マラ5について、フィクションとは思えないほどのリアル感のある描写。複数の登場人物たちがマラ5を通して間接的に繋がる話で、それぞれの関係は希薄なので淡々と進んでいく感じ。フィクション要素(ご都合主義)を増やして、もう少しドラマチックに持っていってもよかったのでは?

  •  「船に乗れ!」が代表作の藤谷治の新作。どの小説も自分も音大志望だった作者の「音楽観」が覗き見られて楽しいです。
     これは3.11当日の夜に錦糸町のトリフォニーホールで演奏されたマーラーの「交響曲第5番」を主題に、4人の観客と1人の演奏家のを描いたオムニバスのような作品。このコンサートは2012年にNHKでドキュメンタリーになったほど有名なもので、「音楽の力」か「不謹慎」かで(演奏家個人にとっても)今でも評価が分かれるようです。
     小説の方は多彩な人物の描写がちょっととっちらかってたり、藤谷治の特徴でもある「描写のバラツキ」があったりしますが、安心して読めます。僕が好きなのはコンサート終了後すぐ、GFに会いに入間まで歩き出す楽団員のパートかな。
     クラシック好きでなくても楽しめます。おすすめ。

  • 2016年1月24日に開催されたビブリオバトルinいこまで発表された本です。テーマは「音」。

  • あの地震の日の夜にあった演奏会の物語。長く長く揺れるのが本当に怖かった当時の自分の気持ちと重なるところもあり、読むのも少し覚悟もいったけれど、マーラーの演奏の描写がよくてほっとした。

  • 東日本大震災が起こった日、東京フィルがそれでもコンサートを強行したという事実をもとに、再構成した小説です。
    さまざまな立場の人間の群像劇になっており、それらはすべてフィクション。
    ただし、だからと言って嘘はないんだと思う。

    色々なバックグラウンドを持つ人々、音楽というものに対する知識も感じ方も関わり方も違う。
    未曾有の大災害に対して何を考えたかも違う。

    何かドラマティックなことが起こったわけでもないし、
    災害に対する音楽の力を強調する作品でもない。

    ただ、あの日、東京にいたみんなが多分感じたことを、キャラクタを通じて描いています。
    それは、罪悪感であったり、東北の現状を知りながら自分のことしか考えられない身勝手さであったり、非日常への戸惑いであったり。もちろん、それぞれの感じ方で。

    そして、そこに音楽がたまたまあったというお話なんだろうと思います。

    大きな理由はなく、人間が人間であるために、音楽がそこにあった。それを描きたかったのかなと思いました。

  • あの日、本当ならいつものように過ぎて行くはずの日常が、現実とは思えないほど一瞬で消えさった。その3月11日に実際に行われたマーラーの第5番の演奏会をもとにして生まれた物語。
    演奏会をめぐる、登場人物それぞれのエピソードが時間を追いながら平行して語られる。今までの人生で抱えてきたもの、震災による混乱、先の見えない不安が入り混じった中での音楽の思考は、マーラーの音楽が彼らに何かしらの光をもたらしたと感じるものだった。
    再読する時は、音楽と一緒にぜひ読みたい。

  • さらっと読めば、淡々と綴られていくなんてことのない小説。
    ただ、あの震災の日が書かれている、ということが、大きな背景になっている。
    そこに通奏低音のように響く、マーラーの5番。
    行間からあの重々しい複雑なメロディがたちのぼってきて、演奏会のシーンでは知らず涙が出た。
    音楽には、それを聴いていなくても感情をこんなふうに揺さぶる力がある。
    そして小説にも、文字から本来聴こえない音楽を、想起させる力がある。
    確かに、敗軍のラッパが聴こえた。
    改めて形のない二つの表現方法の力に、敬意をおぼえた。

  • 事実を元にしたフィクションとのことだが、あの日本当に演奏会があったのね~。
    錦糸町ということはあのオケかしら・・・

  • 2011年3月11日の大震災の当日,すみだトリフォニーホールでダニエル・ハーディングの指揮でマーラーの交響曲5番のコンサートが開かれた.その事実を下敷きにした小説.
    いろいろな背景を持つ男女が,その日にコンサートホールにきて,音楽を聴きながら,あるいは演奏しながら,それぞれ,いろいろなことを考えるという話.
    みんな悩んでいるのはわかるが,ちょっと思索的すぎるのではないか.地震の後だから仕方ないのかな.

    読みながら,あの日のことをいろいろ思い出した.ときどきこういう風に思い出すのは大事だな.ほんとうに様々な感情にとらわれた日であった.

  • これはいい本だ!
    音楽の聞き方、音楽へのかかわり方を書いた本が好きで、津村記久子の『ミュージック・ブレス・ユー!』に並ぶと思った。

    はじめは、新世界フィルとか錦糸ホールとか、微妙な言い換えにもやもやするが、読みすすめていくうちにまったく関係なくなってゆく。
    頭のなかにそのマーラー5番が聞こえていないことも、音楽を聞くことについての読書なのに、まったく問題がなくなってしまう。といいながら、ここに書かれた音楽の流れるのにあわせて、文字がゆらゆら目を滑っても気にならない。なんだろうこのかんじは!
    全部がまるっと理解できなくても、共感できなくても、読書は音楽は私たちを拒まない。みたいな。ちょっとこれからよく考える。

    154ページの引用箇所は、「(…)この物語で偶々名前を与えられた幾人かの聴衆のうちでは、(…)」と続くのだが、円城塔『エピローグ』だと、物語は自立していて、登場人物は主人公に選ばれたことに自信を持てとか言われてなかったっけ。小説は、ここにある大きな物語を一部切り取って、誰か大きな視点に語られたものなのか? それでいいのか、登場人物のプライドとして?という。

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