優しい鬼

制作 : 柴田元幸 
  • 朝日新聞出版
3.68
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本棚登録 : 164
レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022513137

作品紹介・あらすじ

南北戦争以前、横暴な夫のもとに騙されて来た女性が、二人の娘たちと暮らし始めると…。優しくて残酷で詩的で容赦ない長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 次々と起こる残酷な出来事もただ過去の一ページとして、密やかに語られる。
    その言葉の余白にあるのは、後悔や恐れ、悲しみ、憎悪?

    時に小説はそこにある言葉以上に能弁になる。

  •  時系列と登場人物の相関に混乱、空をつかむような読後感。だったので、一気に2回読んじゃった。2回目で糸がほどけたようにスルスルと理解できた。理解できたら、なんという物語なんだと、ため息が出た。

     14歳で騙されるように「楽園」と呼ばれる農場に連れてこられたジニー・ランカスターは、ライナス・ランカスターと結婚し、2人の黒人の少女たちと4人での暮らしを始める。独裁的な夫は3人にとって加害者であり、ジニーは2人の少女たちにとって加害者であり、2人の少女たちはライナス、ジニーにとっての加害者となる。淡々と描かれる支配される側・支配する側がパタンと回転する様は不気味以外のなにものでもない。
     あとがきにて訳者はこう述べている。
    『支配する側・される側の両方に語らせることを通して、奴隷制の悪を「告発」するというような姿勢は作者にはない。といってむろん、奴隷制を肯定しているわけではまったくない。夫との関係においては被害者であり、奴隷との関係においては加害者であるジニーについて、被害者でもあったことによって加害者であったことが相殺されるわけでは決してない、とハントは強調している。』
     こういう図式は世界そのものにも当てはまるのかもしれない。ハントのように、静かで謙虚な目で世界を見つめたい。

     私は、私だけじゃなく多くの人は、言葉で正解を求めすぎるけれど、言葉になる前の何かをそのまま受け取ることだって尊い。ジニーの語りは拙いけれど、綺麗な言葉じゃないからこそ響くものがあった。

  • 残酷で痛々しい出来事なのに、淡い夢の中の風景のようにぼんやりしてなんだか輪郭も定かでない。それなのに、大きな年代史のようでもあり、ボルヘスを連想させるようでもあり。。。
    スーがつらい出来事の時に体から心を離してしまうように、残酷で痛々しい日常を遠いところから眺めてぼかしているのかもしれない。

  • 何これ、すごい。
    と、読みながらずーっとビックリしてました。
    世界には、すごい作家がたくさんいるんだなぁ、と毎回思うことをまた思った作品。

    幻想的に描かれているのに、なんだかすごくリアリズム。
    人の記憶の持つ不思議な特性が生々しく再現されている。

    辛い思い出、苦しい記憶というのは、輪郭がボンヤリして、時間の前後も混沌として、後で振り返ろうとしたとき細部がよく分からないことって、実際あるよなぁ、と思う。
    そのボンヤリ具合、抜け落ち具合がすごくリアルで、読んでいると、まるで語り手が本当にそばにいて、少しずつ休み休み話しているのを聞いているような気がしてくる。
    自分の愚かさが原因で起こることは、思い出すのが苦しいから、特にあいまいになる。
    よくこんな作品書けるなぁ。人の罪を、こんなにも美しく。

    最初のうち、主人公が白人なのか黒人なのかも分からない。だから社会のどの階層の人なのかも正確に分からない。南北戦争より少し前の戦争で脚を失った、ってことは、たぶん白人? 「優しい鬼」って、誰のこと? いったい誰のことを指しているの? ねえ、あなたいったい何の話をしているの? と、頭の中をぐるぐる回る疑問。とにかく読むのがやめられない。

    作者がピンホールカメラで撮った、っていう写真もすごくいい。ピントがぼけていて、まるで登場人物が頭の中で思い浮かべている風景を覗き込んでいるみたい。

    あとがきで言及されていた他の二作品、「インディアナ、インディアナ」と「ネバーホーム」も柴田さん訳で出ているなんて、くーっ、なんという幸せ。
    絶対読もうと思ってます!

  • 南北戦争以前のアメリカで、奴隷制度や教育の不足から倫理的には獣以下の暮らしを送る人々を、とある白人女性の視点で描いた、壮絶な寓話のような物語。作品の力は文句なしの星5つなのだけど、あまりの悲惨さにメンタルゲージが削られたぶんー1。

  • 重く、深く、残酷で孤独。差別の激しかった時代の南部アメリカ。負の連鎖から逃れられないかのように、優しさと残虐さと懺悔が交錯する。その描写は激烈であるけれど、と同時に風景画のような美しさと温かさを感じる不思議な文章でした。時系列と視点がコロコロ変わるのでゆっくりと読み進めなければ理解が難しい。再読必至。

  • かなり衝撃を受けた。

    物語は、昔の時代や奴隷制度の黒い部分を背景としている。そして、現代でも人種差別は、依然として根深い問題である。

    「楽園」でのジゴクのような日々が、あくまで静かに叙情的に語られる。
    人間は、残酷であると同時に美しくもあるのだ。
    それを切々と訴えかける。

  • 19世紀から20世紀にかけての米国南部が舞台。もちろん人種絡みの話なんだけど、語り手や時代が錯綜するせいか、誰の肌が黒いのかがかなり後半までわからなかった。私って、かなり鈍い⁇

  • ひとのレビューを読んでも、どこにそんなことが書かれていたのかすら分からなかった。
    自分のあたまの悪さを痛感。

  • Twitter文学賞3位2015

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