優しい鬼

制作 : 柴田元幸 
  • 朝日新聞出版 (2015年10月7日発売)
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  • レビュー :21
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022513137

作品紹介

南北戦争以前、横暴な夫のもとに騙されて来た女性が、二人の娘たちと暮らし始めると…。優しくて残酷で詩的で容赦ない長編小説。

優しい鬼の感想・レビュー・書評

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  • 次々と起こる残酷な出来事もただ過去の一ページとして、密やかに語られる。
    その言葉の余白にあるのは、後悔や恐れ、悲しみ、憎悪?

    時に小説はそこにある言葉以上に能弁になる。

  •  時系列と登場人物の相関に混乱、空をつかむような読後感。だったので、一気に2回読んじゃった。2回目で糸がほどけたようにスルスルと理解できた。理解できたら、なんという物語なんだと、ため息が出た。

     14歳で騙されるように「楽園」と呼ばれる農場に連れてこられたジニー・ランカスターは、ライナス・ランカスターと結婚し、2人の黒人の少女たちと4人での暮らしを始める。独裁的な夫は3人にとって加害者であり、ジニーは2人の少女たちにとって加害者であり、2人の少女たちはライナス、ジニーにとっての加害者となる。淡々と描かれる支配される側・支配する側がパタンと回転する様は不気味以外のなにものでもない。
     あとがきにて訳者はこう述べている。
    『支配する側・される側の両方に語らせることを通して、奴隷制の悪を「告発」するというような姿勢は作者にはない。といってむろん、奴隷制を肯定しているわけではまったくない。夫との関係においては被害者であり、奴隷との関係においては加害者であるジニーについて、被害者でもあったことによって加害者であったことが相殺されるわけでは決してない、とハントは強調している。』
     こういう図式は世界そのものにも当てはまるのかもしれない。ハントのように、静かで謙虚な目で世界を見つめたい。

     私は、私だけじゃなく多くの人は、言葉で正解を求めすぎるけれど、言葉になる前の何かをそのまま受け取ることだって尊い。ジニーの語りは拙いけれど、綺麗な言葉じゃないからこそ響くものがあった。

  • 残酷で痛々しい出来事なのに、淡い夢の中の風景のようにぼんやりしてなんだか輪郭も定かでない。それなのに、大きな年代史のようでもあり、ボルヘスを連想させるようでもあり。。。
    スーがつらい出来事の時に体から心を離してしまうように、残酷で痛々しい日常を遠いところから眺めてぼかしているのかもしれない。

  • 南北戦争以前のアメリカで、奴隷制度や教育の不足から倫理的には獣以下の暮らしを送る人々を、とある白人女性の視点で描いた、壮絶な寓話のような物語。作品の力は文句なしの星5つなのだけど、あまりの悲惨さにメンタルゲージが削られたぶんー1。

  • 重く、深く、残酷で孤独。差別の激しかった時代の南部アメリカ。負の連鎖から逃れられないかのように、優しさと残虐さと懺悔が交錯する。その描写は激烈であるけれど、と同時に風景画のような美しさと温かさを感じる不思議な文章でした。時系列と視点がコロコロ変わるのでゆっくりと読み進めなければ理解が難しい。再読必至。

  • かなり衝撃を受けた。

    物語は、昔の時代や奴隷制度の黒い部分を背景としている。そして、現代でも人種差別は、依然として根深い問題である。

    「楽園」でのジゴクのような日々が、あくまで静かに叙情的に語られる。
    人間は、残酷であると同時に美しくもあるのだ。
    それを切々と訴えかける。

  • 19世紀から20世紀にかけての米国南部が舞台。もちろん人種絡みの話なんだけど、語り手や時代が錯綜するせいか、誰の肌が黒いのかがかなり後半までわからなかった。私って、かなり鈍い⁇

  • ひとのレビューを読んでも、どこにそんなことが書かれていたのかすら分からなかった。
    自分のあたまの悪さを痛感。

  • Twitter文学賞3位2015

  • 素晴らしい作品。
    とっかかりは「何を読んでいるか分からない」、おとぎ話のような語り口で登場人物の立場(主人/奴隷)や人種(黒人/白人)の説明もない。現在と過去、現実と空想が重層的に入り混じる。
    しかし、だんだん「何を読んでいるか分かってくる」と、歴史の暗部を描く、その地獄の闇の深さにおののく。子供のような年齢で嫁いだジニーは残虐な夫に虐待されるが、自分と年齢の近い奴隷の娘たちに対しては虐待を加える。復讐された後でも、その罪は消えず一生背負っていかなくてはならない。次世代のプロスパーの「憎しみは憎しみを返す」という指摘、「善き神は私たちを見下ろすとき色なんか見ない」という言葉などは、我々への問いになっている。
    翻訳も見事だ。ジニーのひらがなの多い童話的な文章と、ジニー、プロスパーの文章の使い分けなど、原文がどうなっているのか分からないが、世界観をくっきりと構築している。さすが柴田さんというしかない。

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