言うほど斬新な視点ではなかった。
写実的な肖像画を気に入られて、信長と何度か接点があった。「冷酷な現実主義者にも意外な一面がありました」と言いたいのかもしれないが、淡々と物語られるだけなのでそれほど印象にも残らなかった。
信玄の肖像を柔和に描いてから家康が油断した、というのも穿ち過ぎ。そこまで肖像画が影響したとは思えない。
主人公を現代にも通じる絵師と持ち上げることで、歴史上の人物の影が薄くなっている。本能寺の変や秀吉が非常に駆け足。
物語後半で信長の娘が「信長の肖像」を振り返っていることだけがタイトルになっている。