坂の途中の家

著者 :
  • 朝日新聞出版
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レビュー : 243
  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022513458

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】最愛の娘を殺した母親は、私かもしれない。虐待事件の補充裁判員になった里沙子は、子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、いつしか彼女の境遇に自らを重ねていく。社会を震撼させた虐待事件と〈家族〉であることの光と闇に迫る心理サスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • 我が子を虐待死させた母親・水穂。
    その裁判の補充裁判員に指名された主人公・里沙子。
    水穂と自分自身をシンクロさせてしまい悩みぬく…。

    あまりの息苦しさに、何度も途中でやめようかと…。
    もちろん子供の問題だけではなく、
    夫婦関係、親子関係のあり方もとてもリアルで…。
    私自身も、母となれていたら、こうなってしまった可能性もあるわけで…。

    ただ、産める喜びと痛み、育てる喜びと苦しみが、表裏一体なんだとしたら、
    母親だけが感じることのできる、至福の瞬間もあるのでは…と思うのです。

    まぁ、それを感じられる余裕すら、失っていたってことなんでしょうけれど…。


    でも、貶め傷つけることで、自分の腕の中から出て行かないようにする。
    それも愛情の一種だなんて、思いたくはないです。

    • 杜のうさこさん
      azu-azumyさん、こんばんは~♪

      優しいメッセージをありがとう~~~。
      とても嬉しいです。

      そうなんです。
      この類のテ...
      azu-azumyさん、こんばんは~♪

      優しいメッセージをありがとう~~~。
      とても嬉しいです。

      そうなんです。
      この類のテーマは、いろんな意味でつらいです…。
      自分もそうなっていたかも…と常に思いながら読んだんですが、
      経験がないから、その苦しみに寄り添ってあげたくても、そうしきれない自分と、
      せっかく母となることができたのに…と、
      心のどこかで責めている不遜な自分もいたりして…。

      角田さんに完全にやられちゃいましたね。
      逃げ出したくても、そうさせない筆力を感じました。
      2016/03/13
    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      重いテーマが続くね。
      私は多分読まないテーマだと思うけど、こうやって杜のうさこさんの感想を読んで一緒に考え...
      こんばんは(^-^)/

      重いテーマが続くね。
      私は多分読まないテーマだと思うけど、こうやって杜のうさこさんの感想を読んで一緒に考えさせてもらって助かっています。
      いつもありがとう(*^^*)♪
      2016/03/14
    • 杜のうさこさん
      けいたんさん、こんばんは~♪

      わぁ、温かいコメント、ありがとう~~。
      嬉しくて、しっぽふりふりしちゃうよ!
      あ、うさちゃんはふれな...
      けいたんさん、こんばんは~♪

      わぁ、温かいコメント、ありがとう~~。
      嬉しくて、しっぽふりふりしちゃうよ!
      あ、うさちゃんはふれないのか(笑)

      東野さんの作品はね、テーマは重かったけど、読後感は良かったの。
      でも、角田さんの方は…。
      修行だったね…。

      でもそう言ってもらえると、読んだかいもあります。
      こちらこそ、いつもありがとう(*^-^*)
      2016/03/15
  • 苦しくて息がつまりそうでした。子どもを産み育てた経験があれば誰もがそうなるでしょう。
    産まれた瞬間のあの世界中から祝福されているような絶対的な幸福感が、自宅に帰った瞬間から日常の中で薄れていく。理由のわからない泣き声にとまどい、二時間ごとに起こされる夜中の授乳にうんざりし、自分では泣き止まないのに祖母に抱かれるとすぐに泣きやむことに敗北感を感じ、保育雑誌との成長の違いに落ち込む。過ぎてしまえばどれもこれも笑い話にできるのに、あのときのあの絶望の深さたるや。その絶望の淵から抜け出せるかどうかは、そばにいる誰かとの関係による。夫や、実母や、義母。その中のだれかとしっかりと手を取り合って助け合っていられるなら、絶望はいつかまた幸福感へと戻っていくのに。ここにいる不幸な2人の母親。なぜ我が子に手を上げるのか、なぜ虐待は無くならないのか。私はそんなこと絶対しない、なんて絶対言えない。
    夜中に泣きやまない子どもを抱いたまま、マンションの窓から飛び降りそうになったことくらいあるよね、スーパーでだだをこねる子どもの頭を叩きたくなったことあるよね、言う事をきかない子どもに腹を立てて無視したことあるよね、そう、誰もが彼女たちと紙一重なんですよね。
    と書いて来て、ふと思い出しました。この夫たちの許せなさたるや。けど、この夫たちを作ったのはまぎれもない「母親」なんですよね。結局、ぐるぐるとこの連鎖は続いていくということなのでしょうか。

  • 幼児虐待のニュースが頻繁に新聞をにぎわす現代に、タイムリーな題材で、作家角田光代の凄さを如何なく発揮した傑作。
    裁判員になった主人公が、被告人とシンクロしてしまう裁判員裁判が舞台。
    ある書評に、「読むのがつらい小説である。つまらないからではない。むしろ面白い。しばしば逃れたいと思うものの結末が気になる。」と、記されているように、読み手を捉えて離さない、凄まじいまでの磁力がある。
    それは、主人公と同じような立場の女性ばかりでなく、立場を異にする男性にとっても・・・

  • ため息をつき、眉間に縦皺を刻み
    うっすらと息苦しささえ感じながらこの本を読んだ。
    いやいや期の娘を育てる主人公の思いや、
    彼女が姑や夫から投げつけられた言葉の数々が
    忘れていたはずの過去の記憶を鮮明に浮かび上がらせてきて辛いのだ。
    だけど先を読むことを止めることなんかできない。
    私が漠然と感じ、感じていながらも言葉にできなかった感情を
    作者の角田さんは、見事なロジックで紐解いてくれたのだ。
    あぁ・・・そうだったのか、
    だから私は幸福な時間を過ごしていたはずなのに
    あんなにも悲しくて、あんなにも孤独だったのかと
    20年以上歳月を経て差し出された答えに
    泣きたいような、でも懐かしくて愛おしいような気持になった。
    この瞬間も、朝も夜も泣き止まない赤ちゃんに疲れ
    子育てに悩んで孤軍奮闘している全てのお母さんたち
    どうかどうか、がんばって。

  • 読んでいてこれは評価4だな・・・と思っていたけど、後半で失速。
    この小説の主人公は幼い子供をもつ母親で、彼女の目線で全編描かれている。
    それが最初は丁寧に細やかに心理描写されているな・・・と思い、刺激的な事柄で読ませるのでなく、人物の心理描写によって読ませるのはすごい!と思った。
    そのすごい!が後半にはあまりにも同じような事を堂々巡りして考えている主人公にむつこさを感じるし、主人公の頭の狭い世界ですべてストーリーが進んでいくことから閉塞感を感じた。

    この物語は裁判員に選ばれた子供をもつ若い母親の話。
    彼女が裁判員として任された事件は自分と同じような若い母親が我が子を虐待し、風呂に沈めたという事件。
    家族構成が被告人と似た境遇にある主人公はだんだん彼女と自分を重ね、自分自身の生活や人生を見直していくこととなる、と言う内容。

    実際、この話は裁判員に選ばれるまでをざっと書かれていて、その後は裁判員として事件に関わる事となったたった1週間程度の事が書かれている。
    それがすごく濃い。
    同じ小さい子供をもつ母親として、親との関係がうまくいってないこと、夫との関係において、だんだん主人公は被告人と自分を重ねていく。
    それに対して他の裁判員は被告人の気持ちが理解できない、と主人公は感じ疎外感を感じる。
    同じように家庭の中でもある種の疎外感を感じている。
    そして、夫との関係である事に気づいていく。

    まず、これを読んで思ったのは狭い世界にいると自信をなくす事につながるし、パワーを人に奪われるという事にもなるという事。
    もちろん、同じ状況であってもそうでない人はいるけど、それはしっかり自己肯定できる人なのかもしれない。
    また、裁判員制度とはこういうものなのだというのもこの小説を読むと具体的に分かる。
    これを読むと、読む前から想像していた通り、やはり裁判員になるという事はかなりな負担になるのだと分かる。
    こんな事を普通に国民に強いるなんておかしいと私は思う。

    主人公は被告人と自分を重ね、自分の生活を改めて客観的に見直すけれど、同じように私自身も主人公と自分を重ねて自分を見つめたりもした。
    主人公の夫は明るくて優しいとあるけど、私にはえらく冷たい男だと思えた。
    だけど、考えてみればうちも似たようなもん・・・というか、これよりひどいか・・・と思ったし、そんな相手に何も言えなくなる主人公に「もっと言いたい事言えばいいのに」と思ったのもつかの間、自分もこんなもんだ・・・と気づかされた。

    刺激的な事柄はなく、読み手によっては退屈と思える話かもしれないけど、私にとっては読みがいのある本だった。
    色々と考えさせられる本だった。

  • 久々の徹夜本でした。
    もうここまでにしよう、と思っても手が止まりませんでした。

    3歳になる子供を預け、子供を虐待死させてしまった母親の裁判員に選ばれ裁判へと行く女性。


    駄々を捏ねる子供の書き方が物凄くリアルで、
    自分の娘と私自身の事を思い出しイライラとした気持ちになりました。

    子供って基本イライラするんです。
    やって欲しくない事いっぱいするし、小さな体のどこから出すんだってくらい大きな声出すし
    言い出したらキリがないくらい。

    引っ叩いてやりたい事なんて毎日です。
    実際に手を上げてしまった事もあります。

    きっと誰もが紙一重なのだと思う。
    1日の終わりにリセット出来なかった感情が
    次の日に繰り越されて、
    その気持ちが溢れた時に何か重大なことを起こしてしまう。


    始終胸が詰まる思いで読んでいました。
    夫婦間での微妙なズレや子育中の周りからのちょっとしたカチンとくる言葉、
    良くここまでうまく書けたなと敬服しました。


    【追記】
    日々イライラし葛藤しながらも、きっとどうにか子供と笑える道を私は見つけていくと思います。
    毎日の疲れが吹っ飛んでしまう様な、嬉しい気持ちになれる事も知っているから。

  • 裁判員制度の裁判員に選ばれた主人公が、被告の女性を通して自分のことを見つめなおす、といったような話です。

    淡々とした日常、2歳の反抗期が始まった子供との毎日が裁判所にいくようになって少しづつ変わっていくのか、変わったのは主人公の心情か…。

    全体的に重い感じなのですが、だんだん、被告についての話だったか、主人公の主婦のことだったかわからなくなるような感じもあって、たとえば子供が居なくても、夫婦間の関係でなくても、同じような状況になって同じような心理状態になることがあるだろうと共感できて、あっという間に読んでしまいました。

    おもしろい、というより、興味深い1冊でした。

  • 同じような専業主婦として娘を二人育てたので里沙子の気持ちや状態がよく分かる。

    「後半同じことの繰り返し」「閉塞感」が読んでいて辛かった、というレビューを見かけましたが、そう読者に感じさせられたならそれは角田さんの思惑通りだったんじゃないかな?

    あの堂々巡りな繰り返し感とか閉塞感こそが子育てしていた時のあの時そっくり。

    里沙子が外へ出ればその感じる閉塞感は薄らぐと思うけど・・・

    もしこの話に20年後くらいの続編があるならば

    文香ちゃんが大きく育ってお父さんの顔色を伺うようになってその父親の呪縛から解き放たれるには主人公である母親が文香ちゃんの味方になって一緒に旦那に必死に自分の気持ちを伝えようとする事がくるのかな、とか

    そんなふうに味方になったのに娘に疎ましく思われちゃうけどそれが親離れなんだからちょっと寂しいな、とか

    いや、あーちゃんはここまでイヤイヤ言える子だから里沙子とはまた違って、むしろ旦那と一緒になって主人公を下に見るような態度とってきたりして陽一郎とあーちゃんのステレオ状態で苦労するのかな、とか

    旦那の親の死とか介護とか老いに直面して
    里沙子自身が亡くなった後、旦那は娘にどういう扱われ方をするんだろう、娘にどう負担になるんだろう、とか。

    家から出て働いたりして閉塞間はなくなっても
    結局悩みはたぶん死ぬ直前まで続くのかな

    とか色々考えさせられる本でした。

  • ネット上に本作について語る著者のインタビューがありました。「出版前にゲラを読んでいたとき、最後の最後に、実はこの里沙子という女がおかしくて、周りは何ひとつ悪くないんじゃないか、と思ってぞっとしたんですけど、まさに読み手がそう感じるように書きたかったので、ぞっとした後で、自分で『よっしゃあ』と思いました(笑い)」
    私は、まんまと、著者の術中にはまっていました。

    この作品キャッチフレーズは「感情移入度100%の社会派エンターテイメント」だと帯にありますが、かなり強烈な皮肉ではないかともいます。
    実は、これほど世代、性別、経験(子供がいるかどうか、あるいは何歳か)によって、共感できるかどうかに差が出る小説も珍しいのだから。
    ある人にとっては、「これは私の話だ。」かもしれないけど、ある人にとっては著者の狙い通り、「里沙子だけおかしい」になりうる。その気持ち悪さ、これがこの作品の最大の「味」なのだと思います。

  • 気が詰まるというか、息苦しさが満ちた物語で、実際に子育て真っ最中だったりする方は、はたしてフィクションとして楽しめるのか、不安になるほどでしたが…

    補充裁判員に選ばれた主人公が担当することになったのは幼児虐待死事件。その事件にのめりこんでいくうちに、彼女は自身と被疑者を重ね合わせていき、それまでの平和な日常すべてがずれていくようになる…

    細やかな日常描写、なにげない台詞の応酬から、どうしようもない無理解が横たわっていること、その絶望的な悟りがやってきて、深い崖底を覗きこんでいるような気持にさせられます。そしてけして主人公の「結論」が正しいのかどうかはわからないというぼやかし方が、やはり読み手を不安にさせます。彼女の懸案は本当に、そうなのか?否定する材料も肯定する材料もない。

    ただ、「彼女の事件」はだれにでも日常に起こりうるものだったと感じさせる手管に飲み込まれてしまいます。そうでない、と否定したいのに。

    …この後彼女は、つつがなく日常を送るのだろうとは思います。胸底に不穏をため込んだまま。けれどいつそれが表出するか、それとも沈殿するのかは、だれにもわからない。

    それがとても恐ろしくてたまらなく思うのでした。

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