若い読者のためのサブカルチャー論講義録

Kindle版

β運用中です。
もし違うアイテムのリンクの場合はヘルプセンターへお問い合わせください

  • 朝日新聞出版 (2018年3月12日発売)
3.98
  • (12)
  • (17)
  • (10)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 332
感想 : 17
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784022514295

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  大学の講義を一冊にしたもので、結構楽しんで読んだ。宇野常寛という人が何の研究者なのかはわからないが、サブカル研究者とかでいいのだろうか。
     少年マンガやロボットアニメを解説しながら、日米安保もしくは成長物語から脱成長へと進む話をからめていく。
     ハンターハンターでゴンが父親と再会して、少年の成長物語を放棄して、まだまだ少年マンガには書くべきものがあることを示したとか、述べられているが、それはそれとして、ハンターハンターが影響を与えているのはあの「実は自分たちの住んでいた世界は巨大な湖の真ん中の小さな島だった」だろう。あと、ものすごい長い科白。大量のモブキャラ。あのモブキャラの使い方もあきらかにワンピースの大量性とは異なる。
     あの外側の世界は宇宙と似てる。宇宙は地球が消し飛ぶほどのエネルギーを持つものがたくさんあり、実際に人類は到達できない。この「実際に到達できない」は、チートクラスに強くなった念能力者たちとからまり、宇宙に挑戦する人類のような絶望感と面白さを、今までの世界に打ち付ける。世界を上書きしたような展開。これはトリコやなんか島に乗り込んでいく話とか、いろんなマンガに影響を与えた気がする。でも決定的に異なるところは、「宇宙にとっては王位継承戦争は一発で消し飛ばせるもの」であることだ。王位継承戦争を巡って、様々な思惑が交差しているが、あの湖の底から化け物みたいなやつが現れたら幻影旅団ごと全員死亡である。この、物語の世界に侵入した宇宙物理の大きさみたいなものが、あの話の未だ誰もできてない面白さになっているように思う。
     あと、ビューティフルドリーマーは女性の欲望の実現に邪魔な存在がどんどん排除されていく世界への押井守からの告発的映画だというのはまあそうだろうなあと思うし、クローズの自己完結性やセカイ系の作品群を「結末でアスカにフラれないエヴァ」と先輩の批評家の言を引用したり、男の子は世界の運命を背負っている女の子に愛されることによって何者でもない自分を肯定できるというセカイ系への喝破はわかりやすかった。
     あと、『リンダ リンダ リンダ』は観たくなった。
     そして、「まだ存在してないけれど現実の可能性を探り出すための虚構、そういった想像力がこの先のサブカルチャーには求められていくのではないか」と結論している。
     このサブカル話のなかに、タケシ映画のキッズリターンを入れていきたいなと、私は考えてる。何者でもない自分をいかに肯定または否定するか、が、大きな問題設定であることはよくわかった。

  • アニメやJPOPなど身近な文化から、現代思想について論じられた本。

    身近なので分かりやすく、また内容としても現代思想のながれなどもわかり、とてもよかった。

  • 2018/4/7読了。
    主に男子向けのマンガ・アニメ・アイドルといったサブカルコンテンツの流行の変遷を追うことで、それらが写した社会と個人、欲望と想像力の関係を分析し、通史的に提示する。極めて王道的な手法によるサブカル文芸概論。
    講義録という語りの文体が大変読みやすく、半藤一利の「昭和史」シリーズを思わせる歴史一気読み本と言って良い。
    もう一つ思い出したのが、最近読んだピエール・バイヤールの『読んでいない本について堂々と語る方法』。本書では多くのコンテンツの内容やストーリーがざっくり要約されて紹介されるのだが、『読んでいない〜』を読んだ後では、その紹介を信用して良いのかどうにも信用がならず、困った(笑)。そこを盲目的に信用しないで読むのが、評論を評論家の創作物として客観的に読む批評的な読み方というものなのだろう。

  • P290
    目的のない青春の美しさ

    P291
    何かのためにモラトリアムがあるのではなく、
    モラトリアムそれ自体が楽しい

    P291
    日常の愛おしさ

    P293
    ハルヒは学園生活を楽しむために、無自覚だが、
    オカルト的な文化を用いている。
    そして自覚なハルヒであるところのこなたは完全に、
    当時の視聴者と同じように自分の高校生活という
    現実を豊かにするために、アニメという文化を
    コミュニケーションのツール、
    つながりの口実として使用している。
    これはある種の、新しいタイプのオタクの
    自画像だと思う。
    つまらない現実からの逃避ではなく、
    自分の人生を、いまこの〈現実〉を豊かにするために
    アニメを使う。

    P303
    日常と非日常の混在

  • マンガ・アニメ・アイドルなどの歴史を当時の社会情勢から紐解いた本。ガンダム、エヴァと初めロボットアニメが盛り上がった背景にある日本の敗戦コンプレックスなど、流行った当時の日本人のマインドとサブカルが多いにリンクし合っていることを解説してくれている。また本の序章と結論で述べられている「サブカルの意義」。元々は、社会的活動で現実を変えられないことを知ってしまった若者たちが「世界が変わらないのであれば自分の見方を変えいよう」という虚構への逃げ道としてのサブカルだった。しかしその役割を終えた今は「現実にない(けど実現できそうな、するべき)未来を提示する」のが役割なのではないか、という点が興味深かった。

  • 「ゼロ年代の想像力」を潜り抜けてきた身としては、平易に復習ができてとてもよかった。ただ、時代をするどく写し取ったサブカル作品もある一方、そうではないものもあふれてていたわけで、サブカルを読めば時代が理解できる、というよりは、時代に沿ったサブカル作品はこれなので、あわせてこう読める、ということにしかならないのでは、という疑問も頭をよぎった。主題としては、ここにあげられたサブカル作品での想像力をこれからの世界に活かせないかということなのだが。それは”まだ存在してないけれど現実の可能性を探り出すための虚構、そういった想像力がこの先のサブカルチャーには求められていくのではないか。”(p.386)と。///ジャンプをはじめ、アニメ、マンガというものがどのようなテーマ、形で描かれ、それが発表された時代をどう写していたかということについては説得力を持って読めた。"カリフォルニアン・イデオロギーが広がることで、「自意識を変える」よりも「世界を変える」ことのほうにリアリティが出てきた。社会の前提が変化したことで、サブカルチャーについて語ることが、そのまま社会を語ることに結びつかなくなっています。"(p.36)といった視点も含めて。/わざわざ作家の想像力で作られた虚構って、相対的に需要が下がらざるをえない。面白い現実に出会うためのコストが百分の一、1万分の1になってしまってる。アニメからアイドルへのサブカルチャーの中心の移動はその一側面、不可逆の現象。/人間はもう情報をパッケージしたソフトというものと手を切ろうとしています。/といった状況も踏まえて、それでも、”虚構、あるいは目に見えないものの世界を一度経由することで得られる思考法−を抽出すること”という問題意識で書かれた一作。あげられた作品でどれかひとつといえば、それまでのロボットアニメの常識をことごとくこわしたという「ガンダムW」に興味が。

  • コミュニティモデル、作品の過程を一緒に作っていくモデルはサブカル以外のその他の多様なビジネスに転用される一方で、やっぱりコンセプチャルな本物が良いよね、と回帰していくというサイクルが繰り返し続いているように思う。

    今の時代の流れを感じつつ必要な見せ方で売り出すことと、そもそも本質的にいいものをつくること、当たり前ですがこの二つが大事かと思った。おもしろい本でした!

  • 面白かった。
    サブカルチャーをこんなふうに捉えて分析することで、歴史や社会情勢との関係、影響、
    そして人々がその時代ごとに何を求めていたのか、どんな欲求を満たすためにサブカルチャーが作られていたのか、すごくよくわかった。
    サブカルを見ればその時代が分かる、って感じに。

    実際私が通ってるサブカルはAKB48あたりからだけで、前半は全くわからないアニメの話ばかりだったけど、自分の親や祖父母の世代と照らし合わせて読んでた。
    超納得する分析がたくさんあった。

    最終的に、虚構の役割は、
    努力すれば実現できるかもしれないけど今はまだ存在していないものを提案し、これから存在しうる可能性を探り出すこと、って言ってた。
    結論それかぁ、わかってたよー、というオチだったけど、そのオチに行くまでの宇野さんの分析、解説は読む価値あったなあと思って読んでよかった。

  • 面白かった!

    「世界の終わり」というモチーフが、バブル経済下の嗜好品であるということは、
    近年の作品で「大災害」がジョークとして扱われなくなったことでもわかる。

    ドラマを見ていても、フィクションに求められることがどんどん変わっていて、
    大げさな演出や主人公の立ち回りは、視聴者には共感し難く、
    インターネットの力で、ずっと「現実」とリンクしている。

  • サブカルチャーについて、非常に読みやすくわかりやすく書かれていた。久しぶりに熱中して一気読みしてしまった。

  • 圧倒的におもしろい!
    特に前半は漫画好きにはたまらない内容。あらゆる作品群を線的(あるいは面的)に捉えるとこうも刺激的なストーリーとなるとは…
    戦後日本文化史的な読み物として多くの人に読んでほしい。そして議論したい。こんなに人と議論したくなる本は久々だ!

  • サブカル論の本が読みたくて図書館で借りてきたらハマって一気に読み終わった。
    作品の抽象的要素を抽出して社会との関わりを考えるのもまた面白いと思った。
    若い世代としてわかりみがある記述もあればいやそれは違うだろうというのもあった。良くも悪くも筆者の主張が強く、偏っている。
    正直昔のコンテンツを知らなくてそこへの興味は微妙だったけど、そういう論じ方があるのかというのを知る部分で読む手が進んだ感じ。なので昔のコンテンツの見方については筆者の偏見しか知らない。
    扱うのがもっと新しくかつ他の人の視点による本が読みたい。
    しかしこれは全体的サブカルチャー概論を扱っているものかつ図書館にあるやつで最も新しいものだったので険しいかも。
    少女漫画・コンピュータゲーム・ボーカロイドの回が紙面の都合で収録できなかったらしい。そこを収録してほしいという気持ちになった。

  • サブカルチャーとしてのアニメやアイドルがその時代の背景や人々の思想をどう反映しているかとてもわかりやすかった。
    今まで見てきたコンテンツをまた違った視点で見れるようになった。

  • 主にマンガ・アニメ・アイドルに関してのサブカル論。僕はこの辺にあまり明るくないけど、戦後日本の歴史と人々の意識を絡めながら説明されているので、論じられている対象を全然知らなくても面白かった。これからのコンテンツ作りについて考えたい人たちにもおすすめ。

  • 宇野さん @wakusei2nd の新著『若い読者のためのサブカルチャー論講義録』読んだ!まさに『母性のディストピア』副読本なので、挫折した方はまずこちらから。体験価値が最重視される時代に探求すべき想像力の可能性にトキメク。
    #長リョ本
    amzn.to/2CsyTcP

  • 途中で止めるはずだったのに最後まで一気読み。
    断絶したネット以降の若い世代に伝えることを意識的にしているのは宇野さんは、未来へ理想だけを言うのではなく現実と時代性、その反映としての虚構の中に活かせるものやヒントがあるからやってるのがよく伝わる。
    つまり戦後日本社会、世界的にユースカルチャーの時代があって、20世紀は自動車と映像の世紀だった。それが終わっていく、前世紀とは意味を変えていく中で、その遺産を引き継いで新しい社会を構築できるかアップデートできるかって話のために知ってたらいいよね、サブカルチャーの歴史や表してたことはこんなもので発展したんだよっていう講義録。
    宇野さんのTwitterなんかの正論だなあ、みたいことでも言い方が強かったりするとアレルギーや条件反射で敵意をむき出しにする人がいるけど、こういう仕事に対しても批判するのかな。まあ、いるんだろうけど、本や文章読めないか意図的に誤解している人たちなんだろうな、きっと。
    それは善とか悪とかの二項対立じゃなくて、様々な立場でグラデーションがあるはずなのに、今は敵か味方かみたいな判断しかしない状況にネットは加速していっている。そんな人々の自意識が直接繋がると人類滅ぶよみたいなことは富野由悠季がガンダムで何十年前に描いちゃってるとかは『母性のディストピア』読めばいいわけだよね。
    こういう本が図書館とかにあって、興味ある中高生が読むのが一番よいのだろうなあ。そんな若い読者が何年かして作り手だったり新しい社会を作る人たちになってほしいと考えて作られていると感じる。

全16件中 1 - 16件を表示

著者プロフィール

1978年生まれ。評論家。批評誌「PLANETS」「モノノメ」編集長。主著に『ゼロ年代の想像力』『母性のディストピア』(早川書房刊)、『リトル・ピープルの時代』『遅いインターネット』『水曜日は働かない』『砂漠と異人たち』。

「2023年 『2020年代のまちづくり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宇野常寛の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×