老乱

著者 :
  • 朝日新聞出版
4.02
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感想 : 87
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022514318

感想・レビュー・書評

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  • 妻に他界されてから一人で生活している父親と、その息子夫婦が主に描かれています。父親のもとを訪れた息子夫婦がその生活の様子から認知症を疑い、受診の結果はレビー小体型認知症の中期と診断される…。父親の思いと息子夫婦の思いがかみ合わず、認知症状は悪化の一途をたどる…。最終的には認知症の父親を受け入れることになる…。読み終えてみて、ノンフィクションかのように感じたが小説だよね…ってこと、それくらい真実味がありました。家族が感じることだけでなく、当事者どう受け取るのかも描かれているのがよかったです。また父親の日記の変化からも目を離せなかったです。認知症介護の過酷さ、つきなみだけど大変さ、人それぞれだけどどんな過程で認知症は進行していくのか…そんなことを知るための良書とも言えます。多くの人が今後の課題として受け止めてほしいです。

  • 認知症を患った父親とその息子夫婦の物語。
    始めは妻が主に介護をしているが、症状が進むにつれ夫である息子も手伝うようになる。しかし、どちらも父親に対して"禁止"することばかり求めるため、次第に夫婦の手に負えなくなって行く。
    この作品では、父親側からの感情も描かれており、息子たちの対応が父親本人の意思に反し、全く介護になっていないことが分かる。
    肉親だからこその愛憎がもどかしく、しかしどの家庭でも起こり得る認知症と介護の問題は、これからの時代必修課題である、とつくづく感じさせられた。

    • かなさん
      借買無 乱読さん、はじめまして!
      この作品、読み応えありましたよね…。
      認知症介護について、介護者側から描かれている作品は多いけれど
      ...
      借買無 乱読さん、はじめまして!
      この作品、読み応えありましたよね…。
      認知症介護について、介護者側から描かれている作品は多いけれど
      この作品は要介護者側から描かれていて…
      フィクションなのに、ノンフィクションのような
      そして真実味をひしひしと感じてしまいました!

      借買無 乱読さんとは、同じ作品を読むことも多いみたいで
      私がレビューを投稿すると、
      そこに借買無 乱読さんのレビューがすでに投稿済みになっていて…
      以前から気になっていました。
      今後読まれる作品にも興味がありますので
      フォローさせて頂きます。よろしくお願いします。
      2023/01/22
    • 借買無 乱読さん
      かなさん
      コメント・フォロー、ありがとうございます。
      自分が読んだ本の拙い感想を書いているだけなのですが、これからもいろいろ"乱読"して行き...
      かなさん
      コメント・フォロー、ありがとうございます。
      自分が読んだ本の拙い感想を書いているだけなのですが、これからもいろいろ"乱読"して行きますので、どうぞよろしくお願いします。
      2023/01/22
  • 非常に読みやすい。介護される老人の面からも書いているのが良かった。認知症のこと、サポートのこと、参考になる点が多いのでは。誰もがなりうるし、認知症と接することも多くなるだろう、読んで良かったと思う。家族の一員、恩返し等、発想の転換は、認知症の方に関わらず、いろんな面で言えるし、大切なところですね。久坂部さんはドクターなので、ズバリと書いてくるし、現状が伝わる。硬くなくて文章うまいなあ。

  • 意外にも初読みの作家さんだった(自分では読んだことがあるような気がしていた)。

    認知症とは無縁の生活を送っている人が読めば、本書は冗長に思えるかもしれない。
    私には、この本の状況よりもっともっと悲惨だった部分と、この本の状況よりはかなり恵まれていた部分との両方がある。

    本書の雅美の心情に共感した。
    しかし雅美の方が、私よりよっぽど偉い。

    稀に本書の和気医師のような無責任なことを言う医師っている。
    本書では、この和気医師の発言に一番腹が立った。

  • 主人公の幸造が認知症を患いその視点から物語は始まるが交互に嫁の視点からも語られるため介護される側、する側の両方の気持ちが感じられる。

    幸造はボケ防止に日記をつけているのだがだんだんと病気が進むにつれ文章が正しく書けなくなってくる。とても切ない。

    介護は綺麗事ではなしえない。自分がされる側する側どちらかになる時が来ても想定通り、予想通りにはならないだろう。その時が来たら覚悟するのみ。ありのままを受け入れる。簡単なことではないけど。
    この本の最後のように感謝の気持ち、恩返しの気持ちで介護し、また介護されるのは理想だろうけど自分にそれができるか、自分は感謝される様な人間になれるか自信はない。
    だけどこの本を読んで良かった。表面しか知らない介護の中身を少しだけ知れたように思う。
    解説も良いですね。

  • 素晴らしい本と出会いました。

    認知症患者と、その家族の数年間。
    介護をする家族の苦労は想像を絶するものとは思っていましたが、認知症を患った本人の気持ちというのを考えたことはありませんでした。
    少しずつ出来ないこと、わからなくなることが増える事実に、恐怖や不甲斐ない気持ちを持つ幸造さんを思うと、介護をする側の気持ちは二の次であるべきだと感じました。

    知之雅美夫妻が、幸造さんに対する気持ちを改めてからの終盤は涙が止まりませんでした。

    幸造さんが幸せな人生と思えて本当に良かった。

    私には両親、義両親が4人健在です。
    とても幸せなこと。
    この先いつかこんな日が来るかも知れませんが、その時は今までの感謝の気持ちを忘れることなく、自分に出来ることをしたいと思います。


  • 認知症が進行して行く男性が物語テラーの形の異質な介護小説なので興味深く読了しました。多数の人に訪れる認知症だが渦中の語り手が恐れや悩みや悔しさ等を日記に綴ることで抗ったり受容したり確認したりする体裁が取られている。医師であり作家でもある作者の伝えたいことが分かりやすく語られていますね♪ つい過日読んだばかりの「長いお別れ」と併せて凄く理解できる小説でした。そして他人事ではなく誰もが遭遇する可能性の高い終末に思いを至すひとときでした。

  • 父親の姿と重なって、怒りながら、泣きながら読んだ。
    介護する側だけでなく、される側の気持ちや受け止め方など、逆視点での見方を知ることで、言葉のかけ方や対応の仕方、予測できない行動に対しての理解など、とても勉強になった。
    幸造さんの日記…認知症が進むにつれて、だんだんできないことが増え、否定的悲観的になるのを、とてもつらい気持ちで読んだ。誰よりも自分の事が分かっていてこんなに傷ついているのかと、周りの対応がこんなにも認知症患者を追いつめているのかと、本当に反省することばかりだ。
    幸せな一生だった…。最後にそう思ってもらえるように、私も父にできる限りのことをしたいと思った。

  • 実際に認知症の祖母を抱える家族としては読んでいてとてもつらい内容だった。家族の苦労もさることながら、日記に綴られる認知症患者本人の苦しみや恐怖に精神をえぐられた。少しずつ記憶が欠けて行って、周りのことが自分でできなくなっていって、周りから疎まれるような存在に自分がなってしまう…それはどんなにもどかしく、辛くて悲しいことだろうか。
    ちんぷんかんぷんなおばあちゃんに冷たく接したこともあったのを思い出し、反省した。今後は腹が立つことがあってもこの本を思い出して、優しくしようと思う。この本を読んでよかった。

  • 読み応えのある作品で、一気に読めた。

    優しかった義父が少しずつ少しずつ壊れていく。
    変化を先に気が付いた嫁やそれを受け入れがたい息子の葛藤と共に、壊れていく自分に不安や痛々しいほど頑張ろうと思っている義父。
    「老い」や痴呆症状について学べると共に 患者の葛藤が真実味を帯びて迫ってくる。

    いま 一人で住んでいる母の心の声が聞こえてきそうだ。

    そして 自分自身の老いも始まっていることに気づかされる1冊だと思う。 

    ちょっと辛いけど お勧め。

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著者プロフィール

医師・作家・大阪人間科学大学教授

「2016年 『とまどう男たち―死に方編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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