クラウドガール

著者 : 金原ひとみ
  • 朝日新聞出版 (2017年1月6日発売)
3.18
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022514448

作品紹介

【文学/日本文学小説】姉妹にしか分かりえない、濃密な共感と狂おしいほどの反感。刹那にリアルを感じる美しい妹・杏と、規律正しく行動する聡明な姉の理有。二人が「共有」する家族をめぐる「秘密」とは? スピード感と才気あふれる筆致がもたらす衝撃のラスト! 初の新聞連載。

クラウドガールの感想・レビュー・書評

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  • 自分が見ている世界が、どうやら他の人にはまったく違う様に見えているらしいと気づいたのは
    いつの頃だったか・・・
    世の中に正しいことは一つで
    白いものは白いし黒いものは黒い。
    そんなシンプルな世界は、それと同時に
    あっけなく崩壊してしまった。
    同じものを見たって、ある人は美しいといい
    ある人は残酷だという。
    それはたとえ仲良く育った姉妹であっても同じこと。
    同じ母親に育てられながら、全く違う母の姿を見ていた姉妹は母の死因すら共有できず憎しみと混乱に陥ってしまう。
    だけど、人はどうしたって自分の見たいものだけを見て信じたいものしか信じられないようにできている。
    自分の取捨選択だけを頼りに生きていこうとする姉妹の姿は、逞しさという一点でそっくりだと思った。

  • 読みやすいけど鬱になりそう。

  • 金原さんの小説の描写は、一見、不純、不道徳、不潔、背徳、堕落。
    でもそれのみを見て作品を否定するのは筋が違う。逆にそれって日本文学の正統な流れをくむものだと思う。川端康成しかり、谷崎潤一郎しかり。中上健次しかり。
    だから、現在の「清潔志向」の日本で、金原さんの作品を、さも下品で汚れたものを見るように嫌悪するのは真っ当ではない。
    言ってしまえば、文学とはそういうものなのだ。
    人間の奥底に潜む汚れて澱んで私たちのような一般人の目に見えなくなっている人間存在の核となるものを取り出すために、あえて汚れて腐臭を放つ泥のなかに手を突っ込み、その「何か」を取り出し、誰にでも見えるように作業をするのが作家の本分だ。

    金原作品を読むのは「蛇にピアス」に続き2作目。
    相変わらず登場人物の感情の起伏が尋常でなく、また、酒、セックス、夜遊びが女子の日常生活として明確に描かれるさまは彼女の独擅場だろう。

    でもしかし、私は「蛇に~」を読んだとき、彼女に日本文学の正統な承継者になってほしかったが、本作品ではそこまでに到達しているとは思えなかったため、あえて苦言を以下に連ねる。
    1 女性の綿々たる感情の吐露や行動は、姉の理有、妹の杏ともに突飛な場面もあるものの破綻せずに描き切っているように思う。
    しかし、男性の心理や行動の描写が、女性に比べると格段に劣る。どこかから取ってつけたかのような「切り貼り」の人物描写であり、男性の会話が入ると、途端に物語のテンションが下がるように感じる。つまり、男性の描写が力不足。

    2 比喩などの使用が自分なりに咀嚼できていないのではないか?
    『選んだのが地獄へと続く道であったとしても、「地獄に行くか行かないか決められない地獄」から脱出できたということはある種の解放だ。戦争がいつ起きるかいつ起きるか、と怯えている人が、実際に戦争が始まった時ある種のカタルシスを得るように、私は今、自分が何らかの興奮状態にあるのに気づいていた』(P25)
    でも金原さんって戦争を体験したことないでしょ?戦争が起きそうな状況に身を置かれたこともなければ、外国生活でも臨場感をもって見聞きしたわけでないはず。だとすると幾多の表現の可能性からなんで戦争の比喩を選択したの?その必然性は?

    3 帯に「衝撃のラスト」と書いてるけど、全然衝撃を受けなかった。(なお、このラスト自体を否定しないけど)。
    金原さんは日常と非日常をうまく織り交ぜて描くのがうまいものの、描写の革新性というか、オリジナリティーを獲得しているとはいまだ言い切れないような気がする。
    言わば金原さんの現状満足というか自己保身でラストが“落ち着いている”としか思えない。「最新作のラストが前作を超えた」というカタルシスが欠けている。

    以上、厳しいことを並べて書いたけど、冒頭に言ったように、金原さん自身には作家としての「まじめさ」「清純さ」が存在するという、ある意味の矛盾が、彼女の作品を面白くしていることは間違いないので、次回作に期待する意味で星4つ。

    しかし気になることが1つある。金原さんはこのまま40代、50代になっても、この作風を続けるのだろうか?
    いや、大きなお世話なんだけど、作中人物がこのままどんどん自分の実年齢と乖離していくのに自己撞着しないのかと思って。
    生きるうえで避けえない苦しみを金原さんは書くという行為によって切除していこうとしているのならば、いつまでも女子大生や女子高生を描いているだけでは、人生の歩みを進める自分自身の靄を晴らすのにしんどくなるはず。
    西原理恵子さんみたいにやんちゃさを保ちながら自分と作品とを同時に年齢相応に成長させている作家もいるので、そういう作風の変化(進化)も期待したいのだけど。

  • 亡くなった母の呪縛から逃れられない姉妹のお話でした。

    評判はよいみたいですが、私には正直よく理解が出来なくて・・・つまらない、というわけではないんですけどね。

    沢山の情報の中からどの情報を選択し、どう受け取るのかは各人によって異なるんだ、ということを再認識しただけ、かな。

  • 話が回収されぬままというか、開放して終わるというか。ミステリ風なせいかいつもほどのキレや悪意が少なかった気がする。ただただ若い主人公たちについていけなくなっただけかな。

  • 性格が正反対の姉妹。それぞれが恋人を作りますが、相手に求めるものも、自分が与えるものも全く異なっています。そして、すでに亡くなった母親の存在は二人の人生を激しく揺さぶります。姉妹というつながりは絡み合い、激流となります。底知れぬ余韻が残りました。

  • 雲をつかむような話なの?

  • 図書館にて。
    母親という仕事にもきっと向き不向きがある。
    瀕死の母親を見殺しにして、傷を負った2人の娘。
    母親は自分が子供を産むことに疑問を感じなかったんだろうか。
    自分が小説の世界でしか生きられないことはわかっていただろうに。
    懸命に二人が自分たちらしい生き方を探しているのが痛々しく、つい母親目線で見てしまう。
    小説家で母親でもあるこの作者はどういうつもりでこの物語を描いたのだろう・・・。

  • 人気小説家を母に持つ姉妹。死んだ母を忘れようとしながらその呪縛に囚われている姉。いまは幻となった家族で暮らす幸せだけをおぼろげに望み、恋に流されていく妹。

    姉と妹、娘と母。それぞれがひとりの「女」であり、相手を想う心や視る目は肉親だからこそ複雑にならざるをえない。 女たちの心に秘められたものは自分たち自身にもよくわかっていないような怖ろしさを孕んでいる。

  • 小説家だった母は死んだ 自殺それとも病死
    残された姉妹の記憶は食い違う

    この小説は事実認知の歪みを書いている
    起こった事象は見方によりずれてくる
    事実を他者と全く同じくは共有できない
    クラウドの中から引き出してきた時に
    互いの認知のずれに気付いた

    姉妹は共依存の関係だった
    現実と向き合うと絶望し小説の世界だけで呼吸ができる母
    その母に愛して欲しい理有
    母に執着をしない杏
    寄り添うように生きてきた二人が他者の介在でバランスが崩れていく

    杏は、人間は時間が経つと変化すると連続性を否定する
    進化、進歩も認めない
    だから歪んだ母を、浮気する彼氏を受け入れてきた
    その時の母、彼氏は今母彼氏とは違うから

    理有は全ての記憶を経験を繫ぎ合わせた
    その先に自分がある
    しがらみ、役割に縛れている

    人と記憶を共有することの脆さ
    他者との関係性を独特な切り口で
    書いた事がこの本の独自性だと思う

    依存から少しづつ離れ個として
    生きていく二人がクラウドの中から
    何を取り出しどう感じるのかを
    考える時、
    自分の中の事実が
    他者とは共有出来てない
    事実とは個人のものなのかもしれないと
    考えさせられる哲学的な側面がとても
    面白い本だった

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