星の子

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.28
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本棚登録 : 1327
レビュー : 201
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022514745

感想・レビュー・書評

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  • 『あひる』からネガティブな感情をもらったので、この本の予約もとても迷いました。手にして読んでみるとあっさりしている。文中で出てくる、とあるものの「見えた」「見えない」の(一見すると無意味のような)繰り返しに一人でイライラして、一体何を言いたいのか訴えたいのか、わからなくてネタバレや他の方の感想を見て、初めて“なるほど……”っと思いました。

    今まで当たり前だと思っていたこと、学校とかから教え込まれた価値観がねじれるような感じ…がする。白黒つけにくい事柄、ふだん目をつむって見ないようにしている物事などをテーマに持ってくるので、とても感想を書きにくくて…淡々としているから読みやすいんだけど、とてもしんどいと思う。

    私は、つい雄三おじさんになって読んでしまったけど、宗教にのめり込んでいる両親にもなれるし、家出した姉にもなれる。南先生の反応は悲しかったけど、そういう自分も、きちんと私の中に存在している。見守ってくれる友人のなべちゃんになることも出来る。生きているこの世界で、色々なものに縛られているけど、心はもっと自由でありたいと思うし、のびのびしたい…と願う。

    あとからじわじわ…としみてくるというか、目に見えない細かい棘が刺さっているようで、気持ちが落ち着かない。この作家さんの本を読むといつもこうなるから困る。あと不思議なんだけど、自分が子供だった頃、昭和50年代にスッと戻る気がして、懐かしいような胸が苦しくなるような…そんな気分になる。ほんと不思議だと思う。

  • 怪しい新興宗教にはまっている両親と、
    その家に生まれた娘。
    中学生の娘の眼を通して描かれる家族の日常は
    拍子抜けするほど歪みが無い。
    彼女の周りには、
    親子の愛も友情もあって穏やかに日々を過ごしている。
    ただ、引っ越すたびに家がどんどん狭くなっていったり
    両親が一日一食しか食事をとらなかったりと
    当然の事としてさらりと書かれている出来事に、
    読んでいて『これは異常事態だ』と頭の中で黄色信号がともるのだ。
    彼女が感じている平凡な日常と
    読んでいるこちらが受け取る危機感のギャップに
    なんだか不穏なもの感じずにはいられない。
    少しずつ『世間の見る目』を理解してきた彼女は
    どちらの道を選ぶのだろう。
    私には明るい方へ進む終わり方に思えたのだけれど。。。

  • 病気がちな女の子として産まれたちーちゃん。か弱い娘をどうにかしたくて新興宗教にどっぷりとはまる両親。そんな家庭環境に生まれた時からおかれてるちーちゃんは、両親を信じ、友達を信じ、宗教の仲間を信じる。

    新興宗教側から見た日常を描くと、こんな感じになるのかなと想像する。新興宗教を弾劾する作品ではない。一般的に胡散臭いものと思われるものでも、当事者からしてみれば純粋な存在である。チャラチャラした男を好きになるのも、そこに信じる何かがあるわけで、信じることについては、新興宗教も人を好きになること、友達と過ごす日常も、等しく人間の純粋な気持ちが生み出すものだ。

    偏見とは自分勝手な概念だ。ちーちゃんのニュートラルな行動を見ると、偏見を持たないことがどれだか難しいのか思い知らされる。

  • 主人公・林ちひろは中学3年生。
    出生直後から病弱だったちひろを救いたい一心で、
    両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき、
    その信仰は少しずつ家族を崩壊させていく。
    第39回 野間文芸新人賞受賞作。


    不思議な小説でほんのりとしたおかしみに包んでいますので、想像していたような重苦しさが無かったです。僕的にはタッチが川上弘美さんのような寓話めいたものに感じられました。そのまま受け止めるとしたらよく分からない話ではあるのですが、親子の愛はふんだんにあって、友達も居て自分の考えもしっかり持った天真爛漫と言ってもいい主人公です。こういった話であれば悲壮感を軸足に置いて、少女が親から独立していく姿を描きそうなものですが、あっけらかんとしたこの少女には周りの心配も届かないのです。

    さて、この本の趣旨はなんなのか?という所に話が及ぶ所ですが、私はそう話が苦手。基本楽しむために読んでいるので難しいこと考えずにのめり込むのが好き。
    でもこの本は文学的とはいえそんなにしかめっ面して読まなくても楽しめます。
    ちょっと前に流行った「コンビニ人間」は主人公が自分が生きていくためにコンビニを自らの神殿として、自分が巫女としてコンビニに尽くし、輝いていく現代の寓話として読みましたが、この本の主人公ちひろは初めから世界に愛されているという自信を感じられます。彼女は親と一緒に宗教を実践していますが、そこに救いを求めているのではなくて、彼女にとって、そこにすでに有ったものなのではないかと思いました。これは世界的に見て、生まれた時から何らかの宗教に関わる世界の大多数の人に近い感情ではないかと思います。
    そう考えると親が子供と別れたくないという感情は、はばかられるものではなく自然なものだと思います。でも読んでいると少女を何とか抜けさせようとする常識的な親類の方に肩入れしてしまいます。ジレンマです。

    この本を最後まで読んだ人はラストシーンの印象が、奇矯な両親に縛られたかわいそうな女の子と見る、目が覚めた少女が親から旅立っていく予兆の両方を感じるでしょう。
    でも恐らくこの少女はこの親を捨てる事はないような気がします。何故ならばこの両親の愛情は歪ではあってもとってもまっすぐに少女をに向かっているからです。

    ちなみに途中途中けっこう剽軽な話が出てきますので、普通に笑える本としても僕は評価します。

  • 今日の天気のせいではあるけれど、冷え冷えと、寒々とした話。
    主人公が赤ん坊のときに虚弱体質だったことが引き金で新興宗教にどっぷりそまってしまった両親。
    長女は脱出するのだが、主人公は親との絆を切るには至らない。
    登場するだれもが、情に流され理に弱い。
    典型的な、悪気のない人たち。。。
    ぶるぶる。。。。。
    育てるものがこのように弱ければ、理は学校教育から学び取るしかない。
    主人公の通う学校も登場するのが、教師という立場の希薄さも伝わって来る。唯一、遠慮を知らない級友たちは、キッカケを与えられるかもしれないのだけれど。。

  • なるほど、なるほど…。

    今回の芥川賞候補作として発表されたこちら。

    何より装丁が素敵。
    色が良い。

    内容は新興宗教ものなのでだいぶデリケートなんだけど、
    切ない暖かさがつまっている。

    友達、みんなこんな風なら良いのにね。
    そうしたら色んなこと乗り越えられるね。

    愛するひとの信じることを自分は信じられるのか。

    お友達の、みんな騙されてるのかもしれないという話のくだりに哲学を感じた。


    ラストの余韻が凄い。
    きっとあの夜のあと、色んなことが大きく変わるんだと思う。
    良い方向だけでは無いだろうけれど。

    あえて描かれない部分に深い奥行きを感じる作品だった。

  • <感想>
    最近とても好きな今村夏子さんの作品。
    「あひる」、「こちらあみ子」に引き続き手に取った。

    今まで読んできた今村作品とは異なる印象、全体に漂う「不穏感」は少なかったように思う。
    個人的にはその「不穏感」中毒になっていたので、「あひる」の方が好みだったかなぁ…

    自分のために宗教にのめり込んでしまった両親。
    周囲からの異物を見る目に気が付きながらも、両親を裏切ることができない主人公。
    両親、親戚、学校との関係を何とか成立させようと、努力する主人公がとても印象的だった。

    根底にある、信仰の部分を変えることって、そう簡単なことではないように感じる。

    自分だったらどうするかなぁ…と考えながら読み進めた。
    働き始めるまで我慢して、その後は程良い距離感で付き合うことを選択するだろうか。
    すぐに決別できる決断はできない気がする、ましてその理由が自分にあったのなら。

    両親と星を見ながら終わる最後のシーン。
    個人的には、主人公、そして両親共に離れて暮らすことを覚悟したように感じた。

    <印象に残った言葉>
    ・あんたはどう?だまされてるの?(P108 なべちゃん)

    ・最近増えてんだよ、季節はずれの不審者が…(P118 南先生)

    ・わからない。わからないけど、お父さんもお母さんも全然風邪ひかないの。わたしもたまにやってみるんだけど、まだわからないんだ。(P173 ちひろ)

    <内容(「Amazon」より)>
    大切な人が信じていることを、わたしは理解できるだろうか。一緒に信じることができるだろうか…。病弱なちひろを救うため両親はあらゆる治療を試みる。やがて両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき…。第39回野間文芸新人賞受賞作。

  • さらっとすぐに読み終えた。
    なんだか、不思議な感じがした本でした。

  • 今村夏子さんを読むのは「こちらあみ子」に続いて2作目。

    新興宗教にどっぷりハマった両親を持つ娘・ちひろちゃん。
    ちひろが幼い頃からその日常は当たり前にあった。小学生の時から他の家とは違うことを薄々気づいていただろうけど、さすがに中学生にもなると家族や、その家族が信じるものと向き合わなければならない時がくるわけで…。

    信じる者は救われる。そこにつけこんで悪さを企む輩もいる。
    本作ではその宗教の実態についての詳細は書かれていないけれど、飲むと元気になるという「命の水」を扱っていることから胡散臭さが窺えます。
    だけどちひろちゃんのお父さんもお母さんもそれを本当に信じている。ちひろのことも愛しているし、とても幸せそう。。。それがなんとも歯がゆい…。子としても親を悲しませたくないもの。
    ラストはその先のもっと踏み込んだ内容を読んでみたかったなぁ。
    問題提起だけしてあとは読者に放り投げてるような気も。

    レビューを書いているととても重苦しい話のように思えるけど、物語全体を包む雰囲気は不思議とあたたかい。
    木地雅映子さんの作風に似ているなぁと感じました。

  • 太宰治賞の受賞作「こちらあみ子」がとても印象的だったので引き続き同じ作者の作品を読んだ。次女の生後の酷い虚弱体質が知人の紹介で快復したので夫婦でその某宗教に嵌まったが否定する人々との軋轢も。主人公はその次女ちひろ、当たり前のように両親からの宗教的な影響を受け成長していく。姉は否定して家を出たけど ちひろは否定するでもなく肯定するでもなく緩く受け入れている。中3になった彼女の今後がどのようになるのかは気になるところだけど。
    昔 騒がしかった霊感商法 霊視商法がベースにあるようだけど、何故に作者が注目したのかな?

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プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年「あたらしい娘」で第26回太宰治賞を受賞。「こちらあみ子」と改題、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で2011年に第24回三島由紀夫賞受賞。

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