星の子

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.23
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本棚登録 : 2114
レビュー : 315
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022514745

感想・レビュー・書評

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  • 病弱な自分の健康を願うばかりに新興宗教にのめり込み、耽溺していく両親。子どもである主人公の視点からの日常が短く平易な文章で、淡々と綴られる。「こう読まれたい、受け取ってほしい」という作者の思惑をばっさりと破り去り、読み手に大きく委ねた勇気のある作品に思える。読み進むと、日常の幾重もの違和感。主人公の子どもにとっては日常で当たり前の状態。相対はない。それしかない。親は幸せを願っているのに、失う仕事、経済的基盤、周囲との繋がり等々の本末転倒の羅列。表面的には家族に食事も会話もある。通学も進学もする。
    しかし、栄養の偏りや生来の感覚である空腹に本人が気づかない。子どもは自分では気づけないものである。何が充足で不足なのかを知って育つという点でもやはり家庭は大切と痛感。最後に、家族3人が同じ流れ星を探し続け、右往左往する光景は「幸せ」という「魔法の杖」を手に入れようと執着する両親の滑稽な姿に見えた。

  • 怪しい新興宗教にはまっている両親と、
    その家に生まれた娘。
    中学生の娘の眼を通して描かれる家族の日常は
    拍子抜けするほど歪みが無い。
    彼女の周りには、
    親子の愛も友情もあって穏やかに日々を過ごしている。
    ただ、引っ越すたびに家がどんどん狭くなっていったり
    両親が一日一食しか食事をとらなかったりと
    当然の事としてさらりと書かれている出来事に、
    読んでいて『これは異常事態だ』と頭の中で黄色信号がともるのだ。
    彼女が感じている平凡な日常と
    読んでいるこちらが受け取る危機感のギャップに
    なんだか不穏なもの感じずにはいられない。
    少しずつ『世間の見る目』を理解してきた彼女は
    どちらの道を選ぶのだろう。
    私には明るい方へ進む終わり方に思えたのだけれど。。。

  • 『あひる』からネガティブな感情をもらったので、この本の予約もとても迷いました。手にして読んでみるとあっさりしている。文中で出てくる、とあるものの「見えた」「見えない」の(一見すると無意味のような)繰り返しに一人でイライラして、一体何を言いたいのか訴えたいのか、わからなくてネタバレや他の方の感想を見て、初めて“なるほど……”っと思いました。

    今まで当たり前だと思っていたこと、学校とかから教え込まれた価値観がねじれるような感じ…がする。白黒つけにくい事柄、ふだん目をつむって見ないようにしている物事などをテーマに持ってくるので、とても感想を書きにくくて…淡々としているから読みやすいんだけど、とてもしんどいと思う。

    私は、つい雄三おじさんになって読んでしまったけど、宗教にのめり込んでいる両親にもなれるし、家出した姉にもなれる。南先生の反応は悲しかったけど、そういう自分も、きちんと私の中に存在している。見守ってくれる友人のなべちゃんになることも出来る。生きているこの世界で、色々なものに縛られているけど、心はもっと自由でありたいと思うし、のびのびしたい…と願う。

    あとからじわじわ…としみてくるというか、目に見えない細かい棘が刺さっているようで、気持ちが落ち着かない。この作家さんの本を読むといつもこうなるから困る。あと不思議なんだけど、自分が子供だった頃、昭和50年代にスッと戻る気がして、懐かしいような胸が苦しくなるような…そんな気分になる。ほんと不思議だと思う。

  • 主人公・林ちひろは中学3年生。
    出生直後から病弱だったちひろを救いたい一心で、
    両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき、
    その信仰は少しずつ家族を崩壊させていく。
    第39回 野間文芸新人賞受賞作。


    不思議な小説でほんのりとしたおかしみに包んでいますので、想像していたような重苦しさが無かったです。僕的にはタッチが川上弘美さんのような寓話めいたものに感じられました。そのまま受け止めるとしたらよく分からない話ではあるのですが、親子の愛はふんだんにあって、友達も居て自分の考えもしっかり持った天真爛漫と言ってもいい主人公です。こういった話であれば悲壮感を軸足に置いて、少女が親から独立していく姿を描きそうなものですが、あっけらかんとしたこの少女には周りの心配も届かないのです。

    さて、この本の趣旨はなんなのか?という所に話が及ぶ所ですが、私はそう話が苦手。基本楽しむために読んでいるので難しいこと考えずにのめり込むのが好き。
    でもこの本は文学的とはいえそんなにしかめっ面して読まなくても楽しめます。
    ちょっと前に流行った「コンビニ人間」は主人公が自分が生きていくためにコンビニを自らの神殿として、自分が巫女としてコンビニに尽くし、輝いていく現代の寓話として読みましたが、この本の主人公ちひろは初めから世界に愛されているという自信を感じられます。彼女は親と一緒に宗教を実践していますが、そこに救いを求めているのではなくて、彼女にとって、そこにすでに有ったものなのではないかと思いました。これは世界的に見て、生まれた時から何らかの宗教に関わる世界の大多数の人に近い感情ではないかと思います。
    そう考えると親が子供と別れたくないという感情は、はばかられるものではなく自然なものだと思います。でも読んでいると少女を何とか抜けさせようとする常識的な親類の方に肩入れしてしまいます。ジレンマです。

    この本を最後まで読んだ人はラストシーンの印象が、奇矯な両親に縛られたかわいそうな女の子と見る、目が覚めた少女が親から旅立っていく予兆の両方を感じるでしょう。
    でも恐らくこの少女はこの親を捨てる事はないような気がします。何故ならばこの両親の愛情は歪ではあってもとってもまっすぐに少女をに向かっているからです。

    ちなみに途中途中けっこう剽軽な話が出てきますので、普通に笑える本としても僕は評価します。

  • 初読

    おお…
    不穏さ、心のざわつき。
    そんな言葉が浮かんでも、ぴたりとハマる感じがしない。
    小川洋子曰く「読み手の言葉を奪う」
    三浦しをん曰く「あらすじを説明してもこぼれ落ちるものの方が多い」
    うん。その通りだ。

    水入れ替え事件のまーちゃんとか
    エドワードファーロングとか隣の席の田所君とか
    なべちゃんと彼氏の新村くんとか海路さんのやきそばとか
    うまいなぁ……

    これどう終わるんだろうとドキドキして
    娘を真ん中に抱き締め合う親子にあぁ…としか言えないのだった。

  • 病気がちな女の子として産まれたちーちゃん。か弱い娘をどうにかしたくて新興宗教にどっぷりとはまる両親。そんな家庭環境に生まれた時からおかれてるちーちゃんは、両親を信じ、友達を信じ、宗教の仲間を信じる。

    新興宗教側から見た日常を描くと、こんな感じになるのかなと想像する。新興宗教を弾劾する作品ではない。一般的に胡散臭いものと思われるものでも、当事者からしてみれば純粋な存在である。チャラチャラした男を好きになるのも、そこに信じる何かがあるわけで、信じることについては、新興宗教も人を好きになること、友達と過ごす日常も、等しく人間の純粋な気持ちが生み出すものだ。

    偏見とは自分勝手な概念だ。ちーちゃんのニュートラルな行動を見ると、偏見を持たないことがどれだか難しいのか思い知らされる。

  • なるほど、なるほど…。

    今回の芥川賞候補作として発表されたこちら。

    何より装丁が素敵。
    色が良い。

    内容は新興宗教ものなのでだいぶデリケートなんだけど、
    切ない暖かさがつまっている。

    友達、みんなこんな風なら良いのにね。
    そうしたら色んなこと乗り越えられるね。

    愛するひとの信じることを自分は信じられるのか。

    お友達の、みんな騙されてるのかもしれないという話のくだりに哲学を感じた。


    ラストの余韻が凄い。
    きっとあの夜のあと、色んなことが大きく変わるんだと思う。
    良い方向だけでは無いだろうけれど。

    あえて描かれない部分に深い奥行きを感じる作品だった。

  • 今日の天気のせいではあるけれど、冷え冷えと、寒々とした話。
    主人公が赤ん坊のときに虚弱体質だったことが引き金で新興宗教にどっぷりそまってしまった両親。
    長女は脱出するのだが、主人公は親との絆を切るには至らない。
    登場するだれもが、情に流され理に弱い。
    典型的な、悪気のない人たち。。。
    ぶるぶる。。。。。
    育てるものがこのように弱ければ、理は学校教育から学び取るしかない。
    主人公の通う学校も登場するのが、教師という立場の希薄さも伝わって来る。唯一、遠慮を知らない級友たちは、キッカケを与えられるかもしれないのだけれど。。

  • 主人公はどこかとぼけていて、作品全体も明るいのに、名状しがたい不気味さがそこはかとなく漂う。
    それが今村夏子の作風なんでしょうね。
    衝撃のデビュー作「こちらあみ子」、完成度の高さに脱帽させられた「あひる」、「こちらあみ子」に併録された「ピクニック」「チズさん」も、それぞれの要素に濃淡はあれど、そんな作品でした。
    得難い作家です。
    本書の主人公は、あるきっかけで新興宗教に入信することになった両親を持つ女の子。
    女の子の1人称視点で、物語は進みます。
    両親は聖水を飲むだけでなく、聖水を浸したタオルを頭に載せて暮らしています。
    家族で教団の教会に行って、集会に参加することもあります。
    母の弟が家族を脱会させようと一計を案じます。
    なんて書くと、「名状しがたい不気味さがそこはかとなく漂う、なんて嘘。もう立派に不気味。っていうか怖い」とムキになって食って掛かる人もいそうです。
    まあまあ、早合点しなさんな。
    あのね、上に紹介したようなことが、無垢な女の子の視点で淡々と語られるのです。
    正邪善悪の判断は一切なし。
    分別のついた大人の読み手としては、書かれていないことがあまりに多い。
    ぅでもね。
    この「書かれていない」ということが、今村夏子の作家としての稀有な才能の発露なの。
    凡百の作家は、書いてしまうんだ。
    だって書くのが作家だもの。
    でも、今村夏子は書かない。
    書かないで、読者の想像力を喚起する。
    こうやって簡単に書いているけどね、なかなか出来ることじゃない。
    やっぱり凡百の作家が同じことをしたら、それは単なる「不足」と指摘されるのがオチだもの。
    ラストも素晴らしい。
    ここからややネタバレだから気をつけてくださいね。
    いいですか。
    いきますよ。
    このラストの場面は、家族が同じものを見ているようで、全く違うものを見ているという暗喩だと思いました。
    主人公の「私」はやがて巣立つのでしょう。
    心に沁みる、切ない場面です。
    うん、素晴らしい作品です。
    ただ、「こちらあみ子」にあったような、巧まざるユーモアが足りない気がしました。
    ファンは欲張りなんです。

  • 最近とても好きな今村夏子さんの作品。
    「あひる」、「こちらあみ子」に引き続き手に取った。

    今まで読んできた今村作品とは異なる印象、全体に漂う「不穏感」は少なかったように思う。
    個人的にはその「不穏感」中毒になっていたので、「あひる」の方が好みだったかなぁ…

    自分のために宗教にのめり込んでしまった両親。
    周囲からの異物を見る目に気が付きながらも、両親を裏切ることができない主人公。
    両親、親戚、学校との関係を何とか成立させようと、努力する主人公がとても印象的だった。

    根底にある、信仰の部分を変えることって、そう簡単なことではないように感じる。

    自分だったらどうするかなぁ…と考えながら読み進めた。
    働き始めるまで我慢して、その後は程良い距離感で付き合うことを選択するだろうか。
    すぐに決別できる決断はできない気がする、ましてその理由が自分にあったのなら。

    両親と星を見ながら終わる最後のシーン。
    個人的には、主人公、そして両親共に離れて暮らすことを覚悟したように感じた。

    <印象に残った言葉>
    ・あんたはどう?だまされてるの?(P108 なべちゃん)

    ・最近増えてんだよ、季節はずれの不審者が…(P118 南先生)

    ・わからない。わからないけど、お父さんもお母さんも全然風邪ひかないの。わたしもたまにやってみるんだけど、まだわからないんだ。(P173 ちひろ)

    <内容(「Amazon」より)>
    大切な人が信じていることを、わたしは理解できるだろうか。一緒に信じることができるだろうか…。病弱なちひろを救うため両親はあらゆる治療を試みる。やがて両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき…。第39回野間文芸新人賞受賞作。

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著者プロフィール

今村夏子(いまむら なつこ)
1980年広島県生まれ。2010年「あたらしい娘」で第26回太宰治賞を受賞。「こちらあみ子」と改題、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で2011年に第24回三島由紀夫賞受賞。2016年、文芸誌『たべるのがおそい』で2年ぶりの作品「あひる」を発表、同作が第155回芥川龍之介賞候補にノミネート。同作を収録した短篇集『あひる』で、第5回河合隼雄物語賞受賞。2017年、「星の子」で第157回芥川龍之介賞候補ノミネート、第39回野間文芸新人賞受賞。 2019年、「むらさきのスカートの女」が第161回芥川龍之介賞を受賞した。

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