星の子

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.25
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本棚登録 : 1881
レビュー : 286
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022514745

感想・レビュー・書評

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  • 「自分の大切な人が信じるもの」を、わたしは信じるべきなのか。ラストシーンが美しく、切なく、思わず涙がこぼれた。同じ空を見ているはずなのに、星が見える人と、見えない人。

  • 主人公はどこかとぼけていて、作品全体も明るいのに、名状しがたい不気味さがそこはかとなく漂う。
    それが今村夏子の作風なんでしょうね。
    衝撃のデビュー作「こちらあみ子」、完成度の高さに脱帽させられた「あひる」、「こちらあみ子」に併録された「ピクニック」「チズさん」も、それぞれの要素に濃淡はあれど、そんな作品でした。
    得難い作家です。
    本書の主人公は、あるきっかけで新興宗教に入信することになった両親を持つ女の子。
    女の子の1人称視点で、物語は進みます。
    両親は聖水を飲むだけでなく、聖水を浸したタオルを頭に載せて暮らしています。
    家族で教団の教会に行って、集会に参加することもあります。
    母の弟が家族を脱会させようと一計を案じます。
    なんて書くと、「名状しがたい不気味さがそこはかとなく漂う、なんて嘘。もう立派に不気味。っていうか怖い」とムキになって食って掛かる人もいそうです。
    まあまあ、早合点しなさんな。
    あのね、上に紹介したようなことが、無垢な女の子の視点で淡々と語られるのです。
    正邪善悪の判断は一切なし。
    分別のついた大人の読み手としては、書かれていないことがあまりに多い。
    ぅでもね。
    この「書かれていない」ということが、今村夏子の作家としての稀有な才能の発露なの。
    凡百の作家は、書いてしまうんだ。
    だって書くのが作家だもの。
    でも、今村夏子は書かない。
    書かないで、読者の想像力を喚起する。
    こうやって簡単に書いているけどね、なかなか出来ることじゃない。
    やっぱり凡百の作家が同じことをしたら、それは単なる「不足」と指摘されるのがオチだもの。
    ラストも素晴らしい。
    ここからややネタバレだから気をつけてくださいね。
    いいですか。
    いきますよ。
    このラストの場面は、家族が同じものを見ているようで、全く違うものを見ているという暗喩だと思いました。
    主人公の「私」はやがて巣立つのでしょう。
    心に沁みる、切ない場面です。
    うん、素晴らしい作品です。
    ただ、「こちらあみ子」にあったような、巧まざるユーモアが足りない気がしました。
    ファンは欲張りなんです。

  • 短いのであっという間に読めた。
    第三者からすると悲惨そうな人生も当事者からみればそんなに悲惨なわけでもないのかもしれない。
    だって、本当のことは当人にしかわからない。

  • さらっとすぐに読み終えた。
    なんだか、不思議な感じがした本でした。

  • 今村夏子さんを読むのは「こちらあみ子」に続いて2作目。

    新興宗教にどっぷりハマった両親を持つ娘・ちひろちゃん。
    ちひろが幼い頃からその日常は当たり前にあった。小学生の時から他の家とは違うことを薄々気づいていただろうけど、さすがに中学生にもなると家族や、その家族が信じるものと向き合わなければならない時がくるわけで…。

    信じる者は救われる。そこにつけこんで悪さを企む輩もいる。
    本作ではその宗教の実態についての詳細は書かれていないけれど、飲むと元気になるという「命の水」を扱っていることから胡散臭さが窺えます。
    だけどちひろちゃんのお父さんもお母さんもそれを本当に信じている。ちひろのことも愛しているし、とても幸せそう。。。それがなんとも歯がゆい…。子としても親を悲しませたくないもの。
    ラストはその先のもっと踏み込んだ内容を読んでみたかったなぁ。
    問題提起だけしてあとは読者に放り投げてるような気も。

    レビューを書いているととても重苦しい話のように思えるけど、物語全体を包む雰囲気は不思議とあたたかい。
    木地雅映子さんの作風に似ているなぁと感じました。

  • 初読み作家。芥川賞候補作。
    ちひろは、生後まもなく原因不明の湿疹にかかり、その治療を契機に両親が新興宗教にはまっていく。親戚の忠告にも耳を貸さない両親。そんな家に嫌気がさして家出してしまう姉。ちひろは成長するにつれ周囲とのずれに気がついていくも、自分の為に宗教にすがった両親の愛情から離れることもできず・・・
    独特の雰囲気のある話で、恐怖感すら覚える箇所も。ちひろの周囲には、いい人が多いのが救いか。子供には荷が重い話ゆえ、けなげさが。

  • 第137回芥川賞候補。新興宗教の熱心な信者を両親に持つ女の子の話。主人公は信仰を生活の一部として受け入れている様子が自然で、モデルがいるのかなーと思いました。素直な両親は、親切そうな落合さんに利用されているように感じました。人気者の南先生の性格も良くないし、様々な表と裏とか、本当と嘘とか、淡々とした物語の中に複数の面が描かれていて、読後なんとなく考え続けてしまいます。夜の散歩のエピソードは、両親との別れかなーと私は感じました。主人公は納得しないかもしれないけど。物語の先にいろいろな可能性があって、良い結末だと思いました。

  • 初めての作家さん。
    主人公の女の子の体が弱かったことから新興宗教らしきものにはまっていく両親。異常な世界を、わりと冷めた目で眺めつつも、主人公自身、普通の人からみたら奇妙な行動をとってしまう。
    そのはざまで、もがいている感じが少し恐い感じがしました。ラストはどうとでも解釈できる終わり方で、これから主人公はどうなってしまうのか...考えさせられて終わります。
    不思議な世界観の本でしたが、自分では気がつかないだけで、傍から見ると自分もこの主人公と同じではと感じさせる本です。

  • なんだろうなー。

    傍から見てると救いがない感じがするんだけど
    当人達は別に不幸せではなさそうなんだよね。

    何度か目を覚ますチャンスはあるにもかかわらず、
    結局そのままなんだもんな。

    昔私の通っていた小学校にも
    家族ぐるみで宗教にはまっているという子がいたけど、
    やっぱり噂になっていた。
    そういう人が数人いて、中には友人を勧誘する奴もいたから
    さすがに「気を付けた方がいい」というのは話に出た。
    それだって、きっと親族とか仲良しの人が
    説得したことはあるんだろうけど、続けてたもんなぁ。
    「親に言われて」「親がやってたから」っていうのはきっかけでも、
    結局は自分もその世界の人間になっちゃうんだろうね。

    無宗教派からすると理解しがたい世界だけど、
    それが彼らの世界だというのなら仕方がないよね。

  • 「……ぼくは、ぼくの好きな人が信じるものを、一緒に信じたいです。……それがどんなものなのかまだ全然わからないけど、ここにくればわかるっていうんなら、おれ来年もここにきます、えー、くることを、おれはおれの好きな人に、約束します」
    (P.199)

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著者プロフィール

今村夏子(いまむら なつこ)
1980年広島県生まれ。2010年「あたらしい娘」で第26回太宰治賞を受賞。「こちらあみ子」と改題、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で2011年に第24回三島由紀夫賞受賞。2016年、文芸誌『たべるのがおそい』で2年ぶりの作品「あひる」を発表、同作が第155回芥川龍之介賞候補にノミネート。同作を収録した短篇集『あひる』で、第5回河合隼雄物語賞受賞。2017年、「星の子」で第157回芥川龍之介賞候補ノミネート、第39回野間文芸新人賞受賞。 2019年、「むらさきのスカートの女」が第161回芥川龍之介賞を受賞した。

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