星の子

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.25
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本棚登録 : 1888
レビュー : 286
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022514745

感想・レビュー・書評

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  • 怪しい新興宗教にはまっている両親と、
    その家に生まれた娘。
    中学生の娘の眼を通して描かれる家族の日常は
    拍子抜けするほど歪みが無い。
    彼女の周りには、
    親子の愛も友情もあって穏やかに日々を過ごしている。
    ただ、引っ越すたびに家がどんどん狭くなっていったり
    両親が一日一食しか食事をとらなかったりと
    当然の事としてさらりと書かれている出来事に、
    読んでいて『これは異常事態だ』と頭の中で黄色信号がともるのだ。
    彼女が感じている平凡な日常と
    読んでいるこちらが受け取る危機感のギャップに
    なんだか不穏なもの感じずにはいられない。
    少しずつ『世間の見る目』を理解してきた彼女は
    どちらの道を選ぶのだろう。
    私には明るい方へ進む終わり方に思えたのだけれど。。。

  • 主人公・林ちひろは中学3年生。
    出生直後から病弱だったちひろを救いたい一心で、
    両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき、
    その信仰は少しずつ家族を崩壊させていく。
    第39回 野間文芸新人賞受賞作。


    不思議な小説でほんのりとしたおかしみに包んでいますので、想像していたような重苦しさが無かったです。僕的にはタッチが川上弘美さんのような寓話めいたものに感じられました。そのまま受け止めるとしたらよく分からない話ではあるのですが、親子の愛はふんだんにあって、友達も居て自分の考えもしっかり持った天真爛漫と言ってもいい主人公です。こういった話であれば悲壮感を軸足に置いて、少女が親から独立していく姿を描きそうなものですが、あっけらかんとしたこの少女には周りの心配も届かないのです。

    さて、この本の趣旨はなんなのか?という所に話が及ぶ所ですが、私はそう話が苦手。基本楽しむために読んでいるので難しいこと考えずにのめり込むのが好き。
    でもこの本は文学的とはいえそんなにしかめっ面して読まなくても楽しめます。
    ちょっと前に流行った「コンビニ人間」は主人公が自分が生きていくためにコンビニを自らの神殿として、自分が巫女としてコンビニに尽くし、輝いていく現代の寓話として読みましたが、この本の主人公ちひろは初めから世界に愛されているという自信を感じられます。彼女は親と一緒に宗教を実践していますが、そこに救いを求めているのではなくて、彼女にとって、そこにすでに有ったものなのではないかと思いました。これは世界的に見て、生まれた時から何らかの宗教に関わる世界の大多数の人に近い感情ではないかと思います。
    そう考えると親が子供と別れたくないという感情は、はばかられるものではなく自然なものだと思います。でも読んでいると少女を何とか抜けさせようとする常識的な親類の方に肩入れしてしまいます。ジレンマです。

    この本を最後まで読んだ人はラストシーンの印象が、奇矯な両親に縛られたかわいそうな女の子と見る、目が覚めた少女が親から旅立っていく予兆の両方を感じるでしょう。
    でも恐らくこの少女はこの親を捨てる事はないような気がします。何故ならばこの両親の愛情は歪ではあってもとってもまっすぐに少女をに向かっているからです。

    ちなみに途中途中けっこう剽軽な話が出てきますので、普通に笑える本としても僕は評価します。

  • 最近とても好きな今村夏子さんの作品。
    「あひる」、「こちらあみ子」に引き続き手に取った。

    今まで読んできた今村作品とは異なる印象、全体に漂う「不穏感」は少なかったように思う。
    個人的にはその「不穏感」中毒になっていたので、「あひる」の方が好みだったかなぁ…

    自分のために宗教にのめり込んでしまった両親。
    周囲からの異物を見る目に気が付きながらも、両親を裏切ることができない主人公。
    両親、親戚、学校との関係を何とか成立させようと、努力する主人公がとても印象的だった。

    根底にある、信仰の部分を変えることって、そう簡単なことではないように感じる。

    自分だったらどうするかなぁ…と考えながら読み進めた。
    働き始めるまで我慢して、その後は程良い距離感で付き合うことを選択するだろうか。
    すぐに決別できる決断はできない気がする、ましてその理由が自分にあったのなら。

    両親と星を見ながら終わる最後のシーン。
    個人的には、主人公、そして両親共に離れて暮らすことを覚悟したように感じた。

    <印象に残った言葉>
    ・あんたはどう?だまされてるの?(P108 なべちゃん)

    ・最近増えてんだよ、季節はずれの不審者が…(P118 南先生)

    ・わからない。わからないけど、お父さんもお母さんも全然風邪ひかないの。わたしもたまにやってみるんだけど、まだわからないんだ。(P173 ちひろ)

    <内容(「Amazon」より)>
    大切な人が信じていることを、わたしは理解できるだろうか。一緒に信じることができるだろうか…。病弱なちひろを救うため両親はあらゆる治療を試みる。やがて両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき…。第39回野間文芸新人賞受賞作。

  • さらっとすぐに読み終えた。
    なんだか、不思議な感じがした本でした。

  • 今村夏子さんを読むのは「こちらあみ子」に続いて2作目。

    新興宗教にどっぷりハマった両親を持つ娘・ちひろちゃん。
    ちひろが幼い頃からその日常は当たり前にあった。小学生の時から他の家とは違うことを薄々気づいていただろうけど、さすがに中学生にもなると家族や、その家族が信じるものと向き合わなければならない時がくるわけで…。

    信じる者は救われる。そこにつけこんで悪さを企む輩もいる。
    本作ではその宗教の実態についての詳細は書かれていないけれど、飲むと元気になるという「命の水」を扱っていることから胡散臭さが窺えます。
    だけどちひろちゃんのお父さんもお母さんもそれを本当に信じている。ちひろのことも愛しているし、とても幸せそう。。。それがなんとも歯がゆい…。子としても親を悲しませたくないもの。
    ラストはその先のもっと踏み込んだ内容を読んでみたかったなぁ。
    問題提起だけしてあとは読者に放り投げてるような気も。

    レビューを書いているととても重苦しい話のように思えるけど、物語全体を包む雰囲気は不思議とあたたかい。
    木地雅映子さんの作風に似ているなぁと感じました。

  • なんだろうなー。

    傍から見てると救いがない感じがするんだけど
    当人達は別に不幸せではなさそうなんだよね。

    何度か目を覚ますチャンスはあるにもかかわらず、
    結局そのままなんだもんな。

    昔私の通っていた小学校にも
    家族ぐるみで宗教にはまっているという子がいたけど、
    やっぱり噂になっていた。
    そういう人が数人いて、中には友人を勧誘する奴もいたから
    さすがに「気を付けた方がいい」というのは話に出た。
    それだって、きっと親族とか仲良しの人が
    説得したことはあるんだろうけど、続けてたもんなぁ。
    「親に言われて」「親がやってたから」っていうのはきっかけでも、
    結局は自分もその世界の人間になっちゃうんだろうね。

    無宗教派からすると理解しがたい世界だけど、
    それが彼らの世界だというのなら仕方がないよね。

  • 「……ぼくは、ぼくの好きな人が信じるものを、一緒に信じたいです。……それがどんなものなのかまだ全然わからないけど、ここにくればわかるっていうんなら、おれ来年もここにきます、えー、くることを、おれはおれの好きな人に、約束します」
    (P.199)

  • しあわせって、普通ってなんだろう、と思わず考えてしまった。ちひろの家族は外から見てまともじゃなくて、そのことをちひろも大きくなるにつれてぼんやりと理解はしていて。でもその家庭が当たり前で育った子は、周りから何を言われても気付く、ということが出来ないんじゃないか。ちひろから見た世界が語られるせいか、普通の日常のように読めて、でもどこかおかしくて、すんなり読み終えてしまった。けれど、読み終わった今の方が息苦しくてしんどい。家出をした姉 まーちゃん、目を覚まさせようと「お水入れかえ事件」を起こした雄三おじさん、ホームルーム中大声で怒鳴ってちひろを注意した南先生、普通の友だちのように接してくれるなべちゃん、全員がどうしようもなくて、他にできることもなくて、どうしたら良かったのかもわからなくて。こわい。救いがない。苦しい。

  • 今村さんの小説は独特なものがある。読んでいて心地よいかというと、そうではない。でも引き込まれる。心の奥で波風が立つ。胸がざわつく。こういう小説も、文学には必要なのだ、と思わせる。

  • ★3.0
    耐え難いことや藁にも縋りたくなることがあって、何らかの宗教に嵌ってしまうのは分からなくもない。主人公・ちひろの両親も、家庭を蔑ろにしているわけではなく、むしろ娘たちへの愛情は豊か。が、徐々に狭くなっていく家、不審人物に間違えられる両親、全てを当たり前に受け入れるちひろに、違和感と言いようのない不安が付き纏う。そして、「大切な人が信じるものを一緒に信じたい」という気持ちは尊いけれど、果たして何の疑いもなく信じるだけで良いのか、と疑問が過ぎる。何となく、3人が同じものを見るのはこれが最後な気がする。

著者プロフィール

今村夏子(いまむら なつこ)
1980年広島県生まれ。2010年「あたらしい娘」で第26回太宰治賞を受賞。「こちらあみ子」と改題、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で2011年に第24回三島由紀夫賞受賞。2016年、文芸誌『たべるのがおそい』で2年ぶりの作品「あひる」を発表、同作が第155回芥川龍之介賞候補にノミネート。同作を収録した短篇集『あひる』で、第5回河合隼雄物語賞受賞。2017年、「星の子」で第157回芥川龍之介賞候補ノミネート、第39回野間文芸新人賞受賞。 2019年、「むらさきのスカートの女」が第161回芥川龍之介賞を受賞した。

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